|
■オープニング本文 天に瞬く星々の、輝き受け継ぐ黄金の印。 時は現在、場は集星。今、星座の力を持つアヤカシたちとの戦いが激化する――― 「麒麟座と一角獣座がやられたようだな……」 「ククク……奴らは星座アヤカシの中でも強い方……」 「しかし人間ごときに負けるとは星座アヤカシの面汚しよ……」 「いよいよ我々の出番やも知れんな……」 岩盤に閉ざされた空間……星見の間。天井に描かれた星座だけが淡い光を放つその場所に、謎の人影が4人。 それらは全て翼を備えており、薄暗い星見の間においても異彩を放っていた。 そこに新たな人影。その姿を認めた四人は畏まり片膝をついて礼を尽くす。 「我が主よ。今こそ我らに出撃の許可を」 「それは構わんがな……お前たちでやれるのか? 開拓者ギルドの開拓者……それに平坂空羅なる男。やつらに星座アヤカシは連敗続きであるぞ」 「我らを今までの十把一絡げと一緒くたにされては心外ですな」 「ククク……やられた連中はろくに協力しなかったのが敗因……」 「我らの連携を以ってすれば黄道十二星座にも遅れは取りませぬ……」 「主のため命を賭して戦いましょうぞ……」 「そのテンプレ喋りをなんとかしろと言っているのだが……まぁいい。とっとと行け」 『はっ!』 出入口のないはずの星見の間から四人の姿が消え、残されたのは主と呼ばれた人影のみ。 やれやれとため息を吐くその人影に、どこから入ってきたのかペガサス座の少年忍者が声をかけた。 「……任せて大丈夫なのですか?」 「無理だろうな。善戦はするかも知れんがやつらでは勝てまい」 それをわかった上で何故……とは問わない。星座アヤカシはやられようがとにかく天井の星座を輝かせてくれればそれでいいのだ。 すべての星座が輝く時、最強の星座は蘇る。その時こそ主と呼ばれた人影の悲願が叶うのだ。 「ところでペガサス。平坂空羅はどうしている?」 「どうも何も……相変わらず星の一欠片集めに没頭していますよ。その才は日に日に高まっている印象です」 「あの才は惜しい……どうにかしてこちらに引き込めんか?」 「難しいでしょうね……言って聞くような性格ではありません」 「ふ……それもまた英雄の資質、か?」 「は……」 「まぁよい……今はせいぜいあの四体の戦果を期待せずに待つとしよう。鷲座アクイラ。風鳥座アプス。烏座コルヴス。そして白鳥座キグナス……力不足を仲の良さでカバーできると良いがな……」 そして星見の間から全ての人影が消え、静寂が戻ってくる。 その直後、開拓者ギルドに『翼を持つアヤカシ四体に村が襲われた』という一方が入った。 烏天狗のような格好をした四体のアヤカシは村を占拠するような形で村人を人質にとっている。ただ、『例の開拓者共を呼んでこい! そうすれば人質は開放してやる!』との要求をしており、実際に犠牲者などはでていない模様。 よほど自信があるのか……それともただの馬鹿なのか。それは戦ってみないと分からない―――? |
■参加者一覧
三笠 三四郎(ia0163)
20歳・男・サ
鷲尾天斗(ia0371)
25歳・男・砂
真亡・雫(ia0432)
16歳・男・志
相川・勝一(ia0675)
12歳・男・サ
叢雲・暁(ia5363)
16歳・女・シ
各務 英流(ib6372)
20歳・女・シ
何 静花(ib9584)
15歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●仲良き事は美しき哉? 「ようやく到着したようだな……」 「ククク……貴様らは開拓者の中でも要注意人物……」 「しかし人間ごときに卑怯な作戦を使うなど星座アヤカシの面汚しよ……」 「人質は開放してやる。思う存分戦おうぞ……」 集星の北に位置するとある村。いや、集落といったほうが正解といえる小規模なそこには、カラフルな翼を背負った四体のアヤカシが並んでいた。 全員烏天狗のような格好だが、烏座は一体しかいない。後の三体は付き合いで同じような格好をしていると思われる。 アヤカシたちは人質に取っていた村人たちに目配せすると、とっとと失せろと言って開放する。その背中を撃とうとすることもなく、村人たちは無事に戦場から退避したのだった。 「あいつ等バカだろ。見たらわかるわァ」 「でも、よかったですよ。『約束通り人質は開放してやる。ただし、死体でな!』なんて言われなくて」 「それにしても連携攻撃をしてくるなんて……こっちも連携はしっかり、かな? とにかく出陣っ」 馬鹿正直に人質を開放した四天王に対し、鷲尾天斗(ia0371)は肩をすくめながら断言する。三笠 三四郎(ia0163)も同感ではあったが、これで後顧の憂いはない。後は実力勝負である。 相川・勝一(ia0675)は仮面を付けつつ号令をかける。他のメンバーと四天王もそれに応え、戦闘態勢を取ったのだった。 自分たちの特徴を最大限活かすため、戦闘開始と同時に空へ舞い上がる四天王。その一糸乱れぬ行動に一瞬見惚れた開拓者達であったが、発射された羽手裏剣はしっかりと回避。 続けて四天王が各々得意とする属性の魔法弾のようなものを発射してきたが、それも迎撃・回避に成功する。 「僕は三笠さんと白鳥座に回ります!」 「じゃあ僕は風鳥座ね! 焼き鳥パーティーだ!」 「個別に集中は敵の数が多いからマズイかなァ。俺は暁と一緒に風鳥座を見るぜェ。勝一は烏座、お前らは鷲座な」 「心得た!」 「勝手に決めないでくださいまし!?」 「いや、ありゃ戦陣だ。こっちの能力を上げてくれるんだから文句は止しておいてやろう」 真亡・雫(ia0432)は三笠とともに白鳥座を、叢雲・暁(ia5363)と鷲尾は風鳥座を、相川は烏座を、各務 英流(ib6372)と何 静花(ib9584)は鷲座を担当することになる。 だが、基本的に四天王はバラけて動かない。常に固まり四人で一人であるかのように行動する。 もっとも、自分の担当を決めておくといざという時助かるのは確かなのだが。 「どうやら目標を定めたようだな……」 「ククク……しかし奴らは飛ぶことができぬ……」 「人間ふぜいが翼持つ我らに挑むなど天に唾するが如きよ……」 「我らの連携を思い知らせてくれようぞ……」 四天王は開拓者たちとは逆に、目標を一人に絞り全員で攻撃を仕掛ける。空から急降下し真亡に突撃をかける! 「くっ! 魚座のメダルを!」 真亡は魚座のメダルを使い、美少女化+チャームの効果を発揮する。それは人間に興味のないアヤカシたちにとっても効果があるが、四天王は攻撃を手を緩めない。むしろ苛烈さが増したような気さえする。 サポートのため鷲尾が魔槍砲で砲撃を、叢雲が飛魚座のメダルを使用する。 叢雲の飛魚座=『発動の度、分身を一体生み出す。攻撃力は無く、一度攻撃を受けると消える』 「ハッ、このアトモスフィアは……ボランス!」 「反応しなくていいから手伝ってよ〜!」 しかし鷲尾の砲撃を白鳥座が氷の壁で、叢雲+分身の攻撃を鷲座が火炎を吐き出して妨害。 その隙に風鳥座と烏座が真亡に仕込み杖で斬りかかり手傷を負わせる! そしてすぐさま四人で上空へ。 「ちっ……こりゃァ一筋縄じゃ行かなそうだなァ。伊達に四天王なんて自称してねェってか?」 らしくない鷲尾の敵への賞賛。しかし四天王は悪い気はしなかったらしく、ふふんと笑ってみせる。 半分は本音だが、半分は情報収集のための演技だ。鷲尾は続けてこんなことを聞いてみる。 「お互い死んじまったら質疑応答できネェからなァ。一応答えてくれねェか? 倒す事で最強の星座復活に近づくなら、なんでお前等同士討ちしねぇの?」 「アヤカシの使命は負の感情を還元すること……」 「ククク……我らは一度でも負の感情を還元すれば星座を輝かせる……」 「一度輝かせてしまえばあとはやられようが問題無いということよ……」 「かと言って貴様らは我らを放置できまい……」 つまり、星座アヤカシは必ず一度は人間から負の感情を還元する必要があり、その後は使い捨てにしても構わないということ。それを彼ら自身構わないと思っているのだ。 四天王の場合、人質にとった村人たちからすでに負の感情は還元している。鷲座、風鳥座、烏座、白鳥座の星座は輝いているということだろう。 問題は、還元が終わった星座アヤカシたちを放置していても人類にはメリットが全く無いということ。とにかく普通のアヤカシ同様、見敵必殺していく他はない。 「お前等の主って何者なんだ? やる事がどうもアヤカシっぽくない。かと言って人間でもなさそうだ」 鷲尾はダメ元で質問を続ける。……が。 「アヤカシっぽくないとは見る目がないようだな……」 「ククク……我らの主は黄道十二星座最強……」 「あのお方に比べれば人間などゴミも同然よ……」 「より多くの負の感情を得るためならば同族を見殺しにできるのもアヤカシぞ……」 「答えんのかよォ!」 鷲尾は思わずツッコミを入れたが、かなり重要な事を聞いた。 主と呼ばれているのは黄道十二星座の一体であり、かなり強大な力を持っているらしい。 その黄道十二星座最強ですら復活を画策する最強の星座とは、いったい……? 「鷲尾さん、考えるのは後にしましょう。今は彼らを何とかしないと」 「……そりゃそうなんだが、魚座使ったまんまあんまり近寄らなないでくんねェか? 魅力的過ぎんだよ」 「あっ、ご、ごめんなさい! 味方にも効果あるんでしたっけ!?」 真亡のチャームは、美少女化した真亡があまりに可憐であることも含め味方にも影響が出る。慌てふためくさまも絵になる真亡の肩を、相川がぽんと叩いた。 「雫、そういうシュミもあったか……」 「違うよ!? ねぇ勝一くん違うよ!? うわっ!?」 別に女装癖があるわけではないと弁解しようとした真亡だったが、そこに四天王からの魔法弾爆撃が降り注ぐ。執拗に真亡が狙われているのは、やはりチャームの影響か? 「反撃しましょう。メダルも使って行きませんとね」 三笠の号令の下、各人星の一欠片を手に発動する。 三笠の鳳凰座=『上空にのみ放てる三日月型の炎。射程は5。威力は本人の攻撃依存』 鷲尾の小馬座=『10mの高さまで自由にジャンプできるようになるが、落下の衝撃は軽減できない』 真亡の小犬座=『犬耳と尻尾が生える。もふもふ』 各務のカシオペア座=『ダッシュするときのみ加速+防御力アップするが、曲がれなくなる』 叢雲の牛飼い座=『敵を自動追尾するオーラの牛が出現。ただし、目標をしっかり意識しないと別の相手を狙ってしまうことも』 何の水蛇座=『巨大な水蛇……蛟を召喚。ただし言うことを聞いてくれるとは限らない』 というわけで、戦場に突如全長20mはあろうかという巨大な蛟が出現したのだった。これには開拓者も四天王も度肝を抜かれる。 「オィィィィッ! 何とかしろよあれェェェ!」 「いや、その、なんだ。時間経過しないと消えないタイプらしい」 「真亡さんはまたそんな可愛さアピールをして……恐ろしい子ッ!」 「ち、違いますよ! 僕だって使ったこと無いメダルだったんですから!」 「ふむふむ……飛べないまでも対空戦闘には使えそうですね。後は……」 てんやわんやしている面子に比べ、三笠は至って冷静に状況を把握していた。 一方、四天王も蛟の出現には驚いたらしい。一旦距離を取り作戦会議中だ。 「妙なものが現れたようだな……」 「ククク……コワイ……」 「助っ人を呼ぶなど戦士の面汚しよ……」 「しかし主に見栄を切った以上、蛇の一匹や二匹で退くわけにはいかんぞ……」 うーん、と腕組みをして悩む仲良し四天王。しかし鷲座の背後に大口を開けた蛟が…… ぱくり。 体を伸ばした蛟が鷲座を丸呑みにしてしまい、げっぷする。 それを見た他の三体は、状況を把握すると同時に叫んだ。 『アクイラー!?』 そこからの行動は早い。白鳥座が氷結弾を蛟の顔面に放ち、その隙に風鳥座が風の刃で蛟の胴体を切断、烏座が飲み込まれた鷲座を救出。 鮮やかな流れで、体中ベトベトになってはいたが鷲座は無事に助け出されたのだった。 「仲間を助けるのにあそこまで必死になれるなんて……少し見直します」 「蛟は倒されると消えるのか。もったいない気もするが、こちらに攻撃されても困るしなぁ」 「とにかく、今は好機だ! 続けっ!」 美しき友情につけ込むようで多少気は引けるが、六分儀座のメダルを使う相川の音頭に従い一同は攻撃を再開。 「他の人と同じ効果が出ないだけに、これがどんな効果なのかわからないが……使える効果が出ることを期待する!」 相川の六分儀座=『地面に倒れた状態の巨大なオーラの柱が出現、扇が広がるような軌跡で上空の敵を打ち落とす』 その効果で烏座が叩き落とされ、地面に激突。救出しようと他の三体も動くが……! 「風鳥座、いっただき〜♪ ロングホーンだ!」 「鬼八人衆として妖四天王には負けられないのだ!」 牛飼い座で出したオーラの牛を突撃させる叢雲と、竜座で射程を伸ばし竜の形を模した何の空気撃が風鳥座と鷲座を直撃。しかしフリーの白鳥座がすり抜け、ようやく立ち上がった烏座と合流――― 「トッキュウ各務ー、トッキュウ各務ー、到着ですわーッ!」 「合流なんてさせませんよ」 『!?』 カシオペア座の効果で急加速した各務は、硬くなった体に物を言わせ烏座に体当たりをぶちかまし弾き飛ばす。 続いてテーブル山座を使った三笠が、発した重力波で白鳥座を50mばかり無理やり後退させ仲間から大きく引き離した! 「ふっ、日当り良好の二つ名は伊達ではない」 「全然強そうに聞こえないがな……」 「うるさいよ」 「ひでぶっ!?」 爆砕拳+紅砲で、起き上がろうとしていた鷲座のこめかみを打ち抜き沈黙させる何。 「よし、ついでだ……叢雲、おまえもやってみるか?」 「おっけー! メダルの合成……シノビと牛が今一つに! 目覚めよ烈火な牛の力!」 何と叢雲がメダルを両手に同時発動を狙う。 しかし前回の鷲尾同様、星座の力がスパークし対消滅、二人は焼かれるようなダメージを受けてへたり込んでしまった。 メダルも色を無くし、黒ずんでしまう。次の依頼までには輝きを取り戻すとは思うが。 「チッ、やっぱなんぞ特別な才能が必要ってかァ? 正しく矢の雨、遠慮せず喰らいなァ!」 矢座のメダルを使い、オーラの牛にふっ飛ばされた風鳥座に追撃を加える鷲尾。続けて戦陣を使用、指示を出す。 「コンビネーションをするには、必ず司令塔が必要! なければ各個撃破すりゃいいだけだしなァ! 雫、勝一、キメろやァ!」 「させるものか! ダイヤモンド……ガストォォォ!」 「貫け瞬風! 穿て蓮華の芳香! 白蓮華抄ッ!」 白鳥座の放った吹雪を瞬風波で相殺し、走り込んでの白蓮華抄で、白鳥座を一刀両断にする。……が、白鳥座の最後の言葉を聞いた真亡は、一瞬我が耳を疑った。 「まーま……? なせぐだーってなんでしょうか……」 最後まで仲間を案じるのかと思いきや、よく知らない言語だか単語だかを聞かされ戸惑う真亡であった。 「まったく、梃子摺らせてくれた。しかしこれまでだ!」 「くぅっ! 俺一人でも切り抜けて、風鳥座を助けに―――」 しかし相川が放った鬼切混じりの槍は、烏座の仕込み杖をあっさりへし折りその体を貫いた。 仕込み杖は携帯に便利だが強度がまるで玩具。それは、誰が言っていた台詞だったか……。 「ふ、ふふふ……我もまた、星座アヤカシの面汚しであったか……。戦士よ、我の最後の言葉を聞いてもらえるか?」 「……言ってみるがいい」 「カラスが鳴くからかーえげぶしっ!?」 「聞いた僕がバカみたいじゃないかぁっ!」 烏座も撃破され、残るは昏倒中の鷲座と矢の雨を受け負傷した風鳥座のみ。 その風鳥座に向かって飛来する三角のオーラの板。各務が使う南の三角座によるブーメランだ。 仕込杖で一旦弾くものの…… 「いかに飛び回ろうと、この三角からは逃れられませんわーッ!」 思念操作型なので三角プレートは宙を回転しつつ風鳥座の背中に突き刺さる。 もう反撃のしようもない。彼らは四体で真価を発揮するアヤカシである以上、一体だけでは勝ち目はゼロ。 ふらふらとしていたところに三笠のテーブル山座による重力波を撃ち込まれ、ダメージこそ無いものの鷲座のところまでもんどり打って転がされる風鳥座。 そしてその目の前には、魔槍砲を構える鷲尾の姿があった。 「何か言い残すことはあるかァ? 言っとくが烏座みたいなこと言ったらお仕置きな」 「ふっ……そうだな……」 気絶したままの鷲座を見た後、青く晴れた空を見上げ、風鳥座は呟いた。儚く、切実に。 「……一人だけストーンは……嫌だ……」 何のことかはよく分からなかったが、鷲尾は風鳥座の意を汲み取り鷲座もろとも砲撃の連打で消し炭にする。 残された4枚の鳥系星座メダル。どこか憎めないアヤカシであったが、逃すわけには行かないのだ。 星の一欠片をきっちり回収した開拓者たちは、村人たちを呼び戻し全て片付いたことを告げ、手厚い歓迎を受けたのだった――― |