倍プッシュだ……!
マスター名:西川一純
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/12/12 20:49



■オープニング本文

 天に瞬く星々の、輝き受け継ぐ黄金の印。
 時は現在、場は集星。今、星座の力を持つアヤカシたちとの戦いが激化する―――


 星の一欠片(スターダスト・ワン)。それは八十八星座が描かれた黄金のメダルである。
 黄道十二星座を模した星座アヤカシも三体目を撃破したが、あまり話を出来る状況ではなかったため星の一欠片の謎については遅々として解明が進んでいない。
 しかし、六分儀座と八分儀座という、思いもよらぬ星座アヤカシから思いもよらぬ情報が飛び出した。
 導星の社(どうせいのやしろ)。星座アヤカシ曰く、それがあるから星座アヤカシが発生するし星の一欠片の効果も発動するという。
 問題は、集星という地域にそのような社の記録はなく、また伝承も無い。今までに散々調べたのでそれは確かだ。
 無いはずの場所に無いはずのものが今もある。誰が、いつ、どこで? 手がかりは得たが、未だに謎は深い―――
「さて、今回の星座アヤカシは孔雀座パヴォ。最初に言っておくけど、今回はかーなーり特殊な戦いになるわよ」
「脅かしっこなしですよ。今までたくさんの星座アヤカシを打ち破ってきた開拓者さんたちです、今回だって……」
「12人の討伐隊があっさり全滅したって聞いても?」
「それは数が不吉すぎます」
 開拓者ギルド職員、西沢 一葉と鷲尾 亜理紗は、今日も今日とて持ち込まれる星座アヤカシ依頼を整理していた。
 星座の力を宿し星の一欠片をその身に秘めているとはいえ、アヤカシはアヤカシ。たまに妙な耐性を持っている奴はいるが、それらも最終的には力押しで打ち破るもの。
 一葉もそれは重々承知しているが、承知していてなお釘を刺すということは相当変わったアヤカシなのだろう。
「孔雀座は一切の攻撃を受け付けない。奴を倒すには、麻雀で勝たないといけないの」
「…………はいぃ?」
「とある町の寄り合い所に突然現れたそいつは、破壊活動なんかは行わない代わりに村人たちに麻雀勝負をしかけていったの。負けると強制的に負の感情を抜き取られ、2、3日は動けない状態にされちゃうのね」
「あ、死にはしないんですね」
「まぁね。でもそいつ、めちゃめちゃ麻雀が強くて誰も勝てないの。物理で殴ろうにもダメージが全く入らない以上、麻雀で勝つしか無い。話を聞きつけた麻雀に自信のある一般人や、さっきも言った討伐隊が挑んだけど、結果はお察しの通り」
 ちなみにその討伐隊にも死者は出ていない。孔雀座自体にはほとんど戦闘力はないのだ。
 しかし気になるのはその討伐隊の出処。少なくとも石鏡が手配したものではないらしいし、ギルドから出された依頼でもない。
 忘れられがちだが星の一欠片は一点ものではない上、誰にでも使用可能な代物だ。ギルドの依頼で集まって行っている者の他にも誰かが集めているのかもしれない。
 星座の力、星の一欠片。悪用されなければいいのだが……。
「そういうわけで、今回は荒事は一切無し。どうにかして麻雀で孔雀座を倒してもらいます」
「はい先生! 孔雀座はどこにいるんですか?」
「例の村の寄り合い所に居着いてるわよ。今日も今日とて雀卓で相手を待ってるんだって」
「……孔雀座って、人の形してるんですか?」
「ううん。鳥の孔雀まんまの姿。雀牌は、あの派手じゃない方の、飛ぶための羽で器用に持つみたい」
 シュールな光景である。
 他にも、通常の麻雀とは少し違ったルールがいくつかある。

・符計算は面倒なのでカット。
・一翻1000点、二翻2600点、三翻5200点、四翻、五翻は満貫、六翻、七翻は跳満、八翻、九翻は倍満、十翻、十一翻は三倍満、十二翻以上は役満で固定とする。
・開拓者の持ち点は各自30000点。
・孔雀座の持ち点は開拓者の数×30000点となり、それをゼロにすれば孔雀座撃破。
・孔雀座一人に対し開拓者3人の4人打ち麻雀。開拓者側は逐次入れ替え可能で、持ち点が少なくなったら一旦交代というのもあり。
・どちらかが全滅するまで続行。徹マン覚悟。
・今回重要となるのは運のパラメーターである。
・イカサマは通用しないししてこない。イカサマがあった場合、バレようがバレまいが孔雀座の能力で即時8000点の罰則がつく。

「おおまかに纏めるとこんな感じかしらね。細かい質問はいつもみたいに貴女が受け付けて頂戴」
「はーい。ところで最後の質問なんですが、どうして麻雀なんでしょうね?」
「……一索って何が描かれてるか知ってる?」
「あっ……(察し)」
 星座と麻雀。全くイメージが合致しないが、孔雀という一点で共通点があるのは確かだ。
 麻雀が得意な者もそうでない者も、是非孔雀座撃破に尽力していただきたい―――


■参加者一覧
水鏡 絵梨乃(ia0191
20歳・女・泰
鷲尾天斗(ia0371
25歳・男・砂
水月(ia2566
10歳・女・吟
各務 英流(ib6372
20歳・女・シ
神座亜紀(ib6736
12歳・女・魔
何 静花(ib9584
15歳・女・泰
鴉乃宮 千理(ib9782
21歳・女・武
緋乃宮 白月(ib9855
15歳・男・泰


■リプレイ本文

●ざわ……ざわ……
 件の村に辿り着いた開拓者たちは、早速孔雀座が居座っているという村の寄り合い所に足を運んだ。
 村は至って平穏そのものだが、あちこちで寝込んでいる者がいる。村人の中には勿論、話を聞きつけて返り討ちにあった者も多いようである。
 それは寄り合い所の中も同じで、玄関先や廊下は勿論、孔雀座が座している雀卓の周りもまた死屍累々といった様相を呈している。まぁ、死人はいないのだが。
「さぁ孔雀座さん、導星の社とやらのことを教えて下さいまし」
「ただで情報を聞き出そうっていうのかい? 随分と虫のいい話だ。聞きたければ俺に麻雀で勝つんだな」
 各務 英流(ib6372)はこの返答を予想していた。というより、普通はそう言うだろうとだれでも思う。
 念のための確認、挨拶のようなものだ。気を取り直して開拓者たちは早速卓に着く。
 孔雀座から見て左隣に何 静花(ib9584)、右隣に鷲尾天斗(ia0371)、正面に水月(ia2566)という席順。
 なお、水月は麻雀のことを『不思議な力を秘めた石を揃えて不思議な呪文を唱えることで敵にダメージを与えあうという、摩訶不思議な闇のゲーム』と認識していたらしく、触れるのはこの依頼がほぼ初めて。
 ビギナーではあるが、他の開拓者たちからルールは教えてもらったらしく、一人でも打てるようになった。
 山を積み終えサイコロを振った結果、起家は水月となったようだ。
「さァて、何処まで出来るかなァ」
「むこうぶちの孔雀、なんともゲンが悪いじゃないか」
 それぞれに配牌を確認し、麻雀が進行していく。流石にいきなり天和などというぶっ飛んだことは孔雀座はやってこない。
 鷲尾は早上がりを狙うべく、タンヤオのみだろうがピンフのみだろうがとにかく和了る方向性のようだ。これは序盤に少しでも貯金が欲しいためである。
「カン」
 何が四萬を暗槓し、ドラ表示牌を増やす。これは似たような戦略を使うところの水月をサポートするためでもある。
「(……捨て牌から見て、孔雀座のやつは筒子を貯めこんでるか?)」
 すでに七巡。早和了を目指したい鷲尾だったが、いまいちツモの流れが悪い。
 比較的おとなしい孔雀座の捨て牌を見つつそんなことを考えていると……。
「ん……揃った、の……。ツモ……」
 水月の可愛らしい声が響き、和了を宣言する。
「えっと……東で二役、対々和で二役、リーチをしてないからツモは付かなくて……満貫なの……」
「……オイ、ちょっと待て。それって……」
 二萬3枚、七筒3枚、三索3枚、東3枚、そして中2枚。パタパタと倒された水月の手配を見て鷲尾と何が絶句する。
 四暗刻。言わずと知れた役満の一つである。
 その点数は48000点。この卓では四暗刻単騎をダブル役満と設定しないとのことだが、むしろそれに救われた格好だ。
「……そうなの……?」
 小首を傾げる水月。勿論四暗刻のことも覚えたが、今回の手役がそうなるとは思っていなかったようだ。
 これでオール16000。水月はいきなり30000から78000に浮き上がり、点棒を増やす。
 だが孔雀座、この時意外にも冷静。しばらく水月の手配と捨て牌を眺めた後、自分の手牌を崩し次の局の準備を始めた。
 なにせ孔雀座はスタートが240000点。224000点になったところで大して痛くはない。
 問題なのは鷲尾と何。共に14000点となり、親の跳満でも直撃されたら即トぶ。
 かと言ってあの場面で水月に和了るなというのも無理な話だが。
 東二局。親はそのまま水月で、この局は鷲尾が喰い断でわずか四巡目で孔雀座からロン。点棒を15000に戻し、親は何へ。
 東三局。配牌時に一向聴であった何がすぐさまテンパイ、リーチをかけてプレッシャーを掛ける。
「人鬼が鳥なんて、格好つかないだろ? それ、当たりだ」
 孔雀座が捨てた九筒でロンし、リーチトイトイドラ2で満貫。これで何は26000、孔雀座は211000となる。
 ここまで孔雀座にいいところは全く無く、少しずつ点棒を吐き出している。正直拍子抜けだ。少なくとも誰も勝てない雀豪という風にはとても見えない。
 逆に言えば、イカサマ無しの平手打ちであることは確信できる。できればこのままの調子で行きたい……そう思った東四局。
「ロン。タンピン三色ドラ2。裏ドラが乗って倍満だな」
「あう……やられたの……」
 教科書に乗っていそうな手堅い構成で水月から点棒を奪う孔雀座。これで一気に開始時近くまで回復する。
 流石に水月は相手の捨て牌から手配を読めるところまでは来ていない。最初の四暗刻とここまでの三局で、運はあるが実力的に水月が一番狙いやすいと判断したか。
 南一局。全体的に手が重く、十二巡目まで和了りはない。
 軽い舌打ちとともに鷲尾が打ち出した八萬に―――
「ロン。チートイドラドラ、満貫」
「ぐ! こいつ、親番になった途端に調子づきやがって……!」
 そう、今は何から移って孔雀座が親。どうやら今までのは『見』、つまり様子見に過ぎなかったのである。
 鷲尾の点棒が7000となってしまったため、南二局開始と同時に水鏡 絵梨乃 (ia0191)と交代する。
 どうやら怪我が完治していないようで、本来の実力が発揮できるかどうか……。
「楽しく打とう」
「元からそのつもりだ」
 そんな状態でもわくわくして不敵に笑う水鏡に対し、孔雀座もニヤリと笑った。
 さて、水鏡としては是非とも孔雀座の親番を流してしまいたい。しかし怪我で運も逃げていっているのか手は重い。
「(こんな時に清一色の二向聴……!? こんな重い手よりタンヤオの一翻でいいってのに……!)」
 二向聴と言えば聞こえはいいが、ツモの流れが欲しい萬子ではなく索子に偏っている。それに対し、孔雀座の手配には有効牌がポンポン転がり込む。
「ツモ。メンタンピンドラ1。満貫」
 孔雀座による親の満貫、4000オール。これで孔雀座の点棒は262000、水鏡26000、水月58000、何22000。
 南三局。ここで事態が動く。
 孔雀座から白をポンした水月が少し水鏡と何に視線をやると、二人はすぐにその意図を理解した。
 何から中を差し込んでもらい、ポンする水月。そして手牌には発の暗刻。大三元確定の、またしても大物手。恐ろしい子である。
 これがわずか4巡目から開始されたこと。現物を切り続けるのにも限度がある。
 ダマのままだが張っているのは間違いない。孔雀座が水月の現物を切り続けベタオリモードに入った時だった。
「らしくないな。素人に気を取られ過ぎだ」
 牌を倒しつつ水鏡がロンを宣言する。孔雀座が捨てた三索で一気通貫のみ。安手ではあるが孔雀座の親を流すことに成功する。
「麻雀は運だけでやるもんじゃない。負傷していようがボクの経験は変わらないな」
「……面白い……!」
 南四局。ここでまた水月の強運が発揮される。
 配牌の時点で混一色、白、ドラ3が確定の一向聴。しかも初手のツモで有効牌を引き込みダブルリーチ発進である。
 先程は孔雀座の親を流すため先に上がれた水鏡に譲ったが、この速度ならば誰も追いつけまい。
 問題はツモるとまた仲間の点棒をも減らしてしまう点。なるべく孔雀座が当たり牌を捨ててくれることを祈りつつツモ切りを繰り返す。
 やがて……
「あ……ロン、なの……」
 現物がなくなり、孔雀座が苦し紛れに捨てた五筒で直撃を取る。
 合計九翻、子の倍満で16000。これで孔雀座は243400で半荘終了となった。
 西一局。半荘交代の取り決めがあったので、水月が神座亜紀(ib6736)に、何が各務に、水鏡が鴉乃宮 千理(ib9782)に交代する。
 孔雀座の点棒は開始時より少し増えてしまったくらい。まだまだ先は長い。
「ロン。タンヤオのみじゃなぁ」
 喰い断だろうが一役は一役ということで、鴉乃宮がすぐさま和了を取る。
 西二局。親の各務は流れが悪いらしい。
 できれば孔雀座に親を回すのは避けたいところなのだが……。
「(ぐぬぬ……国士無双狙いは安手での早上がりに変化しづらいですわ……!)」
 国士無双とはそういうものである。
 各務が切り飛ばした一筒に対し、孔雀座はポンを宣言。牌を捨てた後、直後の神座の七筒をポンする。
「(何あれ!? バカホンか見え見えの清一色だよね!?)」
 強引な打牌を見て眉を寄せる神座。確かにあまり美しいとは言い難い。
 しかし同時に、その知力で理解する。麻雀において絶対的な大量の点棒を持っている孔雀座は、多少振り込もうがさして痛くないのだと。
 だから多少強引であろうと相手の点棒を減らしトばす事のほうが重要なのだ。格好つけて麻雀など出来はしない。
「せっかく綺麗な羽を持ってるのに、こんな所で麻雀ばかりしてたら雌も逃げてくね。宝の持ち腐れだね」
 あえて挑発めいたことを言ってみるが、孔雀座はわざとらしく羽を広げてフフンと笑う。
「生憎アヤカシである俺は雌になんぞ興味はなくてね。あるとすれば人間から負の感情を抜き取ることを喜びとすることだけだ」
 揺れない心。アヤカシとしての本分と能力。このアヤカシ、侮れない。
「(ふんだ。なら……!)」
 神座は孔雀座の捨て牌から考え、六筒を切り出す。
 危険すぎる打牌。相手の手はおおよそ判明しているというのに。
「そんなところを切ってくるか? ロンだ」
「おっと失礼……頭ハネじゃ。いやぁ運が悪いのぅ」
「……!」
 神座が危険な筒子を切ったのはわざとであったことを孔雀座はようやく知った。
 孔雀座の自動能力で罰則が付かなかったということは、イカサマではないらしい。よくも都合よく鴉乃宮が和了れたものである。
 とはいえタンヤオピンフの二役のみで清一色を流されてしまったのは痛い。いくら親番が回ってきたとはいえ、流れは孔雀座に無いように思われる。
 西三局。それを証明するかのように、早々に各務がリーチ。リーチ七対子ドラ2でお手軽満貫、孔雀座の親をあっさり流す。
 ただしツモであったため、孔雀座の点棒は238400にしかなっていないが。
 西四局。今度は孔雀座が反撃に出る。
 鴉乃宮が捨てた六索でロン、発のみで1000点回復。その後、北四局まで細々としたやりとりがあったもの、孔雀座の点棒は未だ222400。
 本気で長丁場になる。見学をしていた他のメンバーも徹マンを覚悟したのであった。
 
 最初の一荘が終わってからどのくらいの時間が経っただろう?
 始めたのは夕方前だった気がするが、すでに空は白んでいる。
 途中、仮眠や食事、トイレなどの休憩を挟んではいるがやはりずっと頭を使いっぱなしというのはキツイ。
 結局、何と各務はトび、水月と神座は点棒は潤沢にあるが眠気に負けてお休み中、一人病欠が出ているので未だ孔雀座と卓を囲んでいるのは水鏡、鷲尾、鴉乃宮の三人。
 この時点で、水鏡21000、鷲尾13600、鴉乃宮39000、孔雀座111200となっている。
「ったくしぶてェなァ。あんだけ時間経ったのにまァだ6桁かよ……」
「取っては取られの繰り返しじゃからのう。八連荘を狙おうにも途中で邪魔されるしな」
「なるほどな……麻雀の腕もさることながら、長丁場による衰弱でも人間を追い詰められるのか。よくできてる」
 不敵な笑みを浮かべる三人であったが、どうしても消耗は隠せない。
 麻雀とは『如何にして自分が和了るか』というゲームではなく、『如何にして相手を降ろすか』というゲーム。アヤカシである孔雀座にはなんでもない長丁場も人間にしてみれば寝込んでもおかしくない期間なのだ。
 もし孔雀座に役満でも和了られたら今までの苦労が水泡に帰す。それだけはすまいと神経を尖らせているのも消耗する理由の一つだ。
 もう何度目かの南二局。鷲尾にチャンス到来。
 配牌時点で三暗刻確定、しかもそのうちの二萬がドラ。欲張れば四暗刻まで伸びるかもしれないし、そこまで行かないまでも裏ドラが乗れば倍満は堅い。
 流れも悪くなく、4巡目にはテンパイしリーチを掛ける。
 対して孔雀座はすでにベタオリモード。流石に点棒が半分も減ると慎重になってくる。
 だが、ベタオリは現物があったればこそ。暗刻で抱えていた九萬を打ち出した孔雀座に、鷲尾が言葉の刃を突きつける。
「おっとォ、当たりだな。メンタン対々和三暗刻ドラ3! 親倍だ。裏ドラが暗刻に乗れば数え役満だぜェ」
 そしてノッている時の鷲尾は恐い。見事裏ドラを乗せ、数え役満を直取りする。
 63200点。ついにゴールが見えた……!
「なかなかやるな……嬉しいぞ、強い奴と打てて」
「俺は面倒臭ェだけだけどなァ」
 連荘の南三局。今度は鴉乃宮が魅せてくれる。
「む、ツモったぞ。字一色」
『はぁ!?』
 さも当然とばかりに呟いた鴉乃宮に対し、孔雀座は勿論、鷲尾と水鏡もぎょっとして鴉乃宮の手配に目を通す。
 なるほど、先ほど北をポンしたのはそういう意図だったのか。流石に北以外暗刻では察知は難しい。
 孔雀座の点棒は47200。役満直撃でトぶ……!
「親は俺だな。なに、ここで取り返せば済むことだ」
 南四局。今まで散々孔雀座が親の時に苦労をさせられていたので楽観視はできない。
 折角射程内に収めたので、この機を逃したくない。
「通らばリーチだ」
 8巡目。孔雀座がリー棒を放り出しリーチを宣言。
 通らばと言ったのは、開拓者の誰かが張っているであろうことを察知したからである。
 だが……!
「甘いな。当たりだ」
「む……!」
 くっくと笑いながら鴉乃宮が牌を倒す。
「混一色ドラ2。おっと裏ドラで一気に跳ねたか。これは重畳」
 リーチでの放流を含めて28200。親もあっさり流され流石に顔を歪ませる。
 西一局、親は水鏡。
 全体的に手が遅く、全員が大物手かカス手か判断がつかない。
 孔雀座は考える。ここは降りて、次の局に賭けるか?
 ……冗談ではない。自分が今やっているのは麻雀だ。博打だ。
 賭けるなら未来ではなく今、この一時!
 恐いのは親の水鏡による三倍満以上か子の役満。しかし、跳満だの役満だのがこれ以上続くものか!
 力強く切り出した牌は……一索。自らを象徴する一索だった。
「……最後に大きいの振り込んだな……」
「な!?」
「一筒、一萬、一索の三色同刻に対々和、三暗刻、ジュンチャンに門前清自摸和、ドラ3。数え役満だ」
「……! ……そうか……一萬と一筒の四枚目を切り飛ばしてまでか。ふ……良い麻雀だった……」
「楽しかったよ。また打ちたいな」
「あぁ……機会があれば、また―――」
 麻雀は……博打は恐い。高い役が続いたからもう高い役には当たらないなどという考えはすでに泥沼。
 博打に身を焼いた孔雀座は、黄金のメダルとなって水鏡の手の中に煌めく。
「……ロン、紅孔雀……」
 印象深い星の一欠片がまた一つ。
 星座の輝き方はそれぞれ……といったところであろうか―――