鳳凰は炭の中から蘇る?
マスター名:西川一純
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/06/21 15:39



■オープニング本文

 天に瞬く星々の、輝き受け継ぐ黄金の印。
 時は現在、場は集星。今、星座の力を持つアヤカシたちとの戦いが激化する―――

 星の一欠片(スターダスト・ワン)。それは八十八星座が描かれた黄金のメダルである。
 石鏡の極一部の地域で出現するアヤカシを倒した時のみ落とすことがあると言われており、好事家たちの間で注目されている逸品だ。
 その一部の地域とは、三位湖の真東辺りに位置する『集星(イントネーションはしゅ↑うせい)』と呼ばれる地域であり、星の一欠片を求めてアヤカシ狩りをする者も増えてきたとか。
 最近それに関する依頼が立て続いているが、本来落とすほうが珍しいはずの星の一欠片を、依頼に入った開拓者たちは全て手に入れている。これは奇跡的な数字である。
 これが単なるラッキーや偶然なのか……それとも何かを示唆しているのかは謎のヴェールに包まれたまま―――
「さて、今回の星座は鳳凰座……フェニックスの登場ですよ! これはテンション上がりますね!」
「いやぁ……どうかしらね」
 開拓者ギルド職員、鷲尾 亜理紗と西沢 一葉。星の一欠片関連を一手に任されている二人組である。
 だが、先に事情を知っているらしい一葉は微妙な顔をして頬を掻く。
「どうかしました?」
「その鳳凰座ね、多分イメージと違うわよ」
「同じ技は二度と通用しないとかじゃないんですか? これはもはや常識! とか言わないんですか?」
「言わない。喋りはするみたいだけど」
 一葉が言うには、この鳳凰座は見た目はまさにフェニックスそのものであるという。
 炎に包まれた全長2mほどの鳥。その姿は美しくすらあり、近くの物を延焼させたりしない優しい炎。
 だが、本人(?)の性格に色んな意味で問題があるようだ。
「……死にたがりぃ?」
「そ。フェニックスってからにはやっぱり何度死んでも蘇っちゃうわけね。苦しい思いをしても痛い思いをしても復活しちゃうから、もう生きてるのが嫌になっちゃったんだってさ」
「……考えるのをやめちゃえばいいのに」
「不死身もいいことばっかりじゃあないってことよ」
 本来、アヤカシが死にたがるなどということはないはずで、それだけを考えても異例の存在だ。
「このフェニックスさん、完全に死なないと星の一欠片落とさないんですよね?」
「勿論。封印とか氷漬けとかは駄目。ちなみに話すとただのおっさんだからカッコイイイメージを絶対に持たないこと」
「やめてー! 私の中のイメージを返してー!」
 はっきり言おう。星の一欠片関連の話は個体差はあれ基本ギャグ路線である(ぉぃ
 死にたくても死ねないおっさん鳳凰を往生させ、メダルを手に入れるのが今回の目的だ。
 人助けと思って、知恵と実力を見せていただきたい―――


■参加者一覧
鷲尾天斗(ia0371
25歳・男・砂
真亡・雫(ia0432
16歳・男・志
トゥルエノ・ラシーロ(ib0425
20歳・女・サ
各務 英流(ib6372
20歳・女・シ
何 静花(ib9584
15歳・女・泰
雁久良 霧依(ib9706
23歳・女・魔
緋乃宮 白月(ib9855
15歳・男・泰
アリム(ic0501
14歳・男・ジ


■リプレイ本文

●おっさんおっさん
「んー? おぉ、お前さんたちが例の開拓者だな、ひっく。待ってたぞぉ」
 集星の中央部に広がる平原地帯。件の鳳凰座、フェニックスのアヤカシがいると言われた地点には、情報通り全身を炎に包んだ鳥が大地に降り立っていた。
 否、正確に言うなら尻餅をつくような形で地面にどっかりと座り、隣に置いてある酒樽に嘴を突っ込んで酒をかっくらっていた。誰かが差し入れたのか盗んできたのかは不明。
 ほろ酔い気分で翼をバサバサやって開拓者たちを迎えるあたり、もう戦闘意欲はゼロに等しい。
「げぇっぷ。あー、かったるいわー」
「……ええと、このおっさ……男性が鳳凰? なんかこう……イメージと違う……」
「貴様それでも火の鳥かぁーっ! 貴様に燃えているのは何だ! 瘴気か、魂か、意志かっ! いいや違う、貴様は灰だ残屑だ塵だ! 貴様は生きちゃ居なかった! そこに立て、目だ、耳だ、鼻!」
「うすらやかましいわい! そっちのねーちゃんも勝手なイメージを押し付けんな! ひっく……まぁなんでもいいわ……ちゃっちゃと頼むでよ」
 なんとなく嫌そうな渋そうな顔をするトゥルエノ・ラシーロ(ib0425)。何かに怒っていきなり殴りかかろうとする何 静花 (ib9584)。
 一瞬テンションを上げてツッコミを入れたフェニックスであったが、すぐにやる気を削がれ酒樽に嘴を突っ込む。
 アヤカシに殺してくれと言われた開拓者も珍しかろう。しかもそれが本人の意志と関係なくなされる復活なので非常にたちが悪い。
「死にたがりの鳳凰、ですか? 変わったアヤカシも居るのですね。どうかこれ以上苦しまなくて良い様に、何とかしてあげたいです」
「は、話をするまでもなく死にたいと。うーん、延々と愚痴も困るんですけど、それはそれで寂しい……」
「ええと……本当にいいのそれで? 生きていればいいことあるかもしれないわよ?(な、なにアヤカシを励ましてるの私は……!)」
「いいのいいの、俺の人生ツマランのよ。働いてもだーれも認めてくれないし? それどころか恨まれて殺されるし? でも復活しちゃって死ねないし? なーんかもー全部面倒くさくなっちゃってさー」
「やっぱり愚痴!?」
 緋乃宮 白月 (ib9855)や真亡・雫 (ia0432)はわりと本気でフェニックスのことを思いやっている。
 倒すことに躊躇はないが、その境遇に同情はする。トゥルエノも同義だ。
 酔っぱらいの愚痴は長くなりがちだ。時間の関係もあり開拓者たちはお仕事を開始する。
「というか! ただ死にたいなど甘えですわ! 死ぬ為にはそれなりの演出という物が必要だと、分らせてあげますわ!」
 ぐっと拳を握って力説した各務 英流 (ib6372)が一番手。
 何のツッコミを華麗にスルーし、各務は道具袋から何故かくさやの干物を取り出す……!
「臭っ!? なんだお前、酒のつまみにしてもそりゃ駄目だろ!」
「まずはくさやの干物で! 嗅覚と味覚を抹殺するッ! 首にナマコを巻いて触覚を殺し! 鳳凰を模した恥ずかしい絵で視覚! あなたの中二病的黒歴史を耳元で語り聴覚を殺すッ! こうして五感を封じれば不死身とはいえただの肉の塊……! 残った第六感は頭を鈍器で殴って消しましょう!」
 息もつかせぬ連続攻撃の後、どぐしゃ、と長斧の柄で鳳凰の頭を叩き潰す各務。
 抵抗する意志がないとはいえ、随分あっさりと潰れたものである。
 しかし……
「なるほどなァ……潰れた部分が瘴気化して潰れてない部分で吸収、損傷した部分が元に戻る感じか。便利なやつだ」
「炎が延焼しない、つまり周りに瘴気や熱を発散せず、自分の中だけで循環している系のアヤカシなのかも知れません。周りの害意はもちろん、自分の陰鬱な気分、つまり瘴気を自分で餌にしてしまうような」
 鷲尾天斗 (ia0371)やアリム(ic0501)は、自らが行動に出る前に他の面々が鳳凰を殺した後の復活行程を観察していた。
 どうやらアリムが言うように自己循環しているらしい。これは他のアヤカシには無い能力だ。
 ただ、この特殊な能力のせいで戦闘能力が削がれてしまったのだろう。本末転倒な結果となり現在に至る。
「雑ーーー! 最後めっちゃ雑やん! そんなら最初っから頭潰せばいいだろーが!」
 すっかり元通りになった頭で抗議する鳳凰座。勢いで屁をこくあたりただのおっさんである。
「演出が必要ですと言ったでしょう。えっと……鳳凰、さん?」
「とりあえず試すことは必要ですよ、フェニックス……さん?」
「疑問形になってるー!?(ガビーン)」
 各務と緋乃宮は、このアヤカシをどう呼んでいいか迷っていた。
 自分の中にある鳳凰のイメージとあまりに合わないこのアヤカシの言動に、脳が拒否反応を起こし始めているようだ。
 しかしどう見ても鳳凰でしかないコレをどう呼ぶのか。
「呼びやすいように名前つけた方がいいかしら? 鳳凰でも充分なんだけど鳳凰のおっさんだから……鳳凰っさん(ほうおっさん)っていうのは―――」
『それで』
「いいんだ……それで……」
 鳳凰本人までもが声を揃えて言うので、トゥルエノは冷や汗混じりながら黙るしかなかった。
「ふふ……それじゃあ満を持して私の出番かしら」
 そう言いつつ歩み出たのは、妙に露出度の高い服装のナイスバディなお姉さん……雁久良 霧依 (ib9706)である。
 何故かおまるのような白鳥の装飾がついた飾りを頭に載せ、水鳥のような創作ダンスを踊りブリザーストームを連射!
 完全に凍りついた鳳凰っさんであったが、十秒も経たないうちに氷を中から破ってしまう。
「目に嬉しい格好はともかくよォ、その飾りと踊りはなんなんだ?」
「こうすると星の一欠片アヤカシに良く効くって小耳に挟んだの♪ オーロラエクスタ―――」
「やめてください! 二重の意味で危ないです!」
「残念♪」
 鳳凰っさん本人は凍りづけでもよかったのだが、彼の身体がそれを拒否した。
 しばれるしばれるなどと言いつつ翼の先を手のように擦りつけている様はまたしてもイメージブレイカーだ。
「ならもう一つの手よ。一億回死んだ犬、だったかしら。とある絵本の主人公は愛を知ることで、二度と蘇らなくなったわ。鳳凰さんも同じかも」
「愛ぃ? べっぴんな雌の鳳凰でも紹介してくれるんかい」
 訝しげな顔をする鳳凰っさん。雁久良は自らの豊かな胸に彼の顔を埋めるように押し付けつつ抱きしめ……嘴に濃厚なキスをした。
「!?」
「鳳凰っさん……愛してるわ。たっぷり愛しあいましょう♪ 私は受け攻めどっちもOKよ♪」
 うっとりとした顔する雁久良。その道具袋から、鞭やら荒縄が―――
「ふぉぉぉっ、おっちゃん頑張っちゃうぞーーー! げへへへへ、僕ぁ、僕ぁもうーーーっ!」
「やめろォ!! うちの嫁が記録係をクビになりかねんような行動は慎めェ!」
「くっ! 働くお姉様も素敵というかこれ以上この男との時間を増やしてほしくないので仕方なく同調しましょう!」
「貴様! 真亡・雫に続いてスケベリストに加えて欲しいか!?」
「ちょ!? あれは彼女の美しさをなるべく壊さないようにするためでですね……!」
 とりあえず鳳凰っさんと雁久良を引き離す一同。元気になりこそすれとても殺せそうな手段には思えなかったのだ。
 もしかしたら雁久良なら腹上死させることも可能かもしれないが『見せられないよ!』になってしまう。
 それぞれテンションが上がって収集がつかなくなりかけたその時だ。
「鎧屋の弟子が言いました。『親方。この鎧、見た目は立派だけど紙製でしょ。大丈夫なんですか』親方が答えました。『騙されたと客がわかった時には死んでおる』」
 ピタリ、と全員の動きが止まる。
 アリムのジョークというか小話は、完全に空気を破壊した。
「医者が患者に言いました。『大分病状がいいですね。明日よりは』。ある勇敢な将軍は自分の怪我を兵に心配させないよう赤いマントを着けました。一方、臆病な将軍は茶色いズボンを―――」
「わかった! わかったからもう止めてくれぇ!」
 涙まで流しつつ、鳳凰っさんはアリムの小話を無理矢理止める。
「あれ? 面白くありませんでしたか?」
「面白いとも言えんし面白くないとも言えない! シャレにしては捻りが効きすぎててむしろ感心しちまうからなんかこうモヤモヤするわ!」
「むぅ。陰鬱な気分が晴れるかと思ったんですが」
「あーもう面倒くさいな! 白月、頼れるのはお前だけだ!」
「よくわかりませんけどわかりました」
 何は緋乃宮を一番の常識人と判断し、同じ泰拳士ということもあり連携を要請する。
 アリムにツッコミを入れていた鳳凰っさんを爆砕拳で上空に打ち上げ、落ちてきたところを回し蹴りで緋乃宮の方へ叩き送る。
「天呼鳳凰拳ーーー!」
「うわぁーーーっ! がはっ!」
 緋乃宮が渾身の力を込めて放った一撃で、鳳凰っさんは空中で五体バラバラになる。なってなお顔から地面に落ちるのは様式美である。
 しかし緋乃宮は容赦無い。続けて崩震脚を発動、バラバラになった身体のパーツを範囲攻撃で更に細かく砕く!
「痛いんですがそれは」
 頭が半分吹っ飛び脳みそが露出している状態でも鳳凰っさんは普通に生きていた。
 全員で事細かく観察していたが、どうも核を中心に復活するというタイプでもないらしい。
 搦め手が駄目となれば今までにないくらい細かくしてやればどうだという考えだったのだが、これも不発だったようだ。
「不純物を混ぜるのも駄目かァ。仕方ねェ、雫、あれやんぞ」
「白梅香ですね。了解です」
 鷲尾と真亡は、瘴気を浄化する白梅香を使える。
 循環すべき瘴気そのものを浄化してしまえばどうだという流れらしい。
 まるで屠殺するように鳳凰っさんの首を鷲掴みにする鷲尾。苦笑いしながらも鳳凰っさんの足を持つ真亡。
 周囲に梅の香りが漂い始めるその時―――
「おいコラ。なんで大地から瘴気吸い上げてんだよ!」
「知らんがな。身体が勝手にやってんだ。浄化されるより速く瘴気吸ってるぞ、多分」
「おまえ死ぬ気あるんだろォな……」
「あるよー。おじちゃんしぬきひゃくぱーせんとだよー。ぐえっ!?」
「上等じゃねェかオイ。このまま首の骨へし折ってやろうか」
「そ、そんなんしたって無駄だって! 痛いもんは痛いんだぞ!?」
 様々なアイデアの下、何度も殺される鳳凰っさん。しかしとどめを刺すまで至らない。
 それを見ていたトゥルエノは、ある閃きを得た。
「炎の中から蘇るのが伝説なら―――」
 言いつつ、開拓者たちは場所を移動し三位湖のほとりまでやってきた。
 そしてトゥルエノはおもむろに鳳凰っさんを荒縄でぐるぐる巻きにすると、重りを付けて湖の中に放り込む!
「へべっ!?」
 炎纏いし鳳凰。もしその炎が溺死によって消えるなら? という考えだ。
 鳳凰っさんが沈んでから10分。トゥルエノはそろそろいいかと縄を手繰り寄せてみると……。
「あらら……本人はぐったりしてるけど炎はそのままなのね。まぁ延焼しない時点で普通の炎じゃないのはわかってたけど……」
「ならすんなや! 俺は鵜飼いの鵜か!?」
「てめぇ! 鮎吐け!」
「んが」
「ホントに吐き出したー!?」
 流石に鮎ではなかったが、何かしらの魚を喉の奥から吐き出す鳳凰っさん。もうトゥルエノも困惑気味というかキャラが壊れ気味である。
「こうなったらこの手で行きましょう!」
 めげずに頑張るのは各務。何やらカンペのようなものを取り出し、鳳凰っさんに手渡した。
 何が何やらわからないようだったが、とりあえず鳳凰っさんは書いてあることを音読してみる。
「なになに……『俺……この戦いが終わったら故郷の幼馴染と結婚するんだ……。無事に生き残ったら後でパインサラダを作ってやるからな。へっ、わかったらここは俺に任せて先にいけ!』……ってなんだよこれあべしっ!?」
 言い終わる前に各務とトゥルエノが鳳凰っさんを斬り刻む。
「諦めないで鳳凰っさん! このターンを凌げば勝てるわ! 次回『鳳凰っさん、暁に死す! 依頼スタンバイ!』」
 露骨すぎる死亡フラグの乱立で何とかならないかと思った各務であったが……
「あぁ、今回も駄目だったよ。あいつは人の話を聞かないからな。つーか最後の嘘予告は生存フラグだろ」
 お前もだろという何へのツッコミはとりあえず置いておいて、言葉通り鳳凰っさんは再生した。
 手詰まりか。そんな空気が流れた時である。
「降臨……マンを持して」
「だからいちいち危ねェんだよおまえは。今度はなんだ」
「逆転の発想よ。今までの対戦者は見た目に惑わされて、炎系攻撃を使わなかったんじゃない? 案外、燃やして消し炭にすれば復活しないかも」
 雁久良の言葉にも一理ある。鳳凰に炎が効かないなどというのはそれこそイメージでしかない。
「見よ、隕石の砕けるさまを! ギガンティックエクスプロージョン!」
 メテオストライクを発動し、鳳凰っさんに叩きつける雁久良。
 特大の火炎弾が爆裂し、炎に包まれた鳥を焼く。
「こ、これは……!?」
「さらにエルファイヤーで追い打ち! 鳳凰昇天〜っ! 熱い? 熱いわよねぇ。まだまだよ、もっと燃えなさい……んふふふっ」
 嗜虐的に笑う雁久良。しかし鳳凰っさんはそれどころではない。
 確かに今まで火炎攻撃など受けたことがなかった。熱い。だが、今までにない確かな予感がある。
 命が危ない。今自分は危険に晒されている。理屈は分からないがそう感じた。
「任せろ。こんなこともあろうかと用意してある」
 鳳凰っさんの考えを察したのか、地面に打ち込まれた杭のような柱のような木に何が鳳凰っさんを荒縄でふん縛る。
 その足元には焚き火というか木々が正確に配置されており、何をするかは一目瞭然であった。
「ファイヤー!」
 各務が木々に点火し、火あぶりの刑が始まる。いや、正確には燻し焼きだろうか?
 火の周りで扇子を持ち踊る何と各務。当然他のメンバーは彼女らが何をしているのかはわからない。いや、実は彼女ら自身もあまりよくわかっていないだろう。
 そして焼かれているご本人様は……
「そうか……今わかった。俺が生まれた意味! 俺は……焼き鳥にされるために生まれてきたのだ……!」
『はい?』
「ありがとよガキども……よければ俺のこと喰ってやってくれよな。あばよ……!」
 やがて鳳凰っさん本人にも火が点き、その身を焦がしていく。
 彼はあくまで鳥であり、食材でありたかったのかもしれなかった。
「……アヤカシは死ぬと瘴気になるから喰べられないんですけどねぇ」
「救われたようですからいいじゃありませんか。今までお会いしたアヤカシとは、一線を画した方でしたね」
 アリムと緋乃宮は消火をしつつ黄金のメダルを拾い上げ、雁久良に手渡す。
「さよなら、鳳凰さん……」
 メダルに口付け、涙を流し別れを告げる雁久良。
 鳳凰は、意外にも炭の中からは黄泉帰れなかったようである―――