|
■オープニング本文 「打鞠〜す〜るならっ♪」 ……どうしてこうなったのか、今となっては誰もわからない。 「こういう具合にし〜やしゃ〜んせ〜♪」 酒の席で、誰かが『打鞠拳しようぜ!』と言い出したことが発端で。 更に『1対1じゃつまらないから団体戦にしましょ!』とかいう流れになって、この状況がある。 打鞠拳とは、石鏡のとある地域に古くから伝わる遊戯の一種である。 じゃんけんをし、負けた側が服を一枚ずつ脱いでいき、全裸になったら負けというごく簡単な法則。 難しい道具が要らないため、宴会などでもよく行われるが、じゃんけんの際も、服を脱ぐ際も踊るように優雅に動くのが由緒正しいお作法である。 団体戦の場合は、東軍、西軍に分かれてじゃんけん勝負を行い、勝った側が一斉に負けた側に襲いかかり、服を剥く。 1回のじゃんけんで、どれだけ効率良く相手軍の服を剥くか。 これが勝負の分かれ目となる。 どうしてこうなったのか分からないが、もう一度言う。 この勝負、服を脱ぐ。 団体戦の場合は、否応なしに服を剥かれる。 要するに先に全員が全裸になったら負けである。 女性、男性問わず始まったら最後、慈悲はない。 最後の1枚が剥かれるその時まで勝負は続く。 「毬門!」 「打ち入れ!」 「よよいのよい!」 ――後悔しても遅い。 君達はこの無慈悲な戦いに足を踏み入れてしまった。 もう引き返すことは出来ない。 さあ、勇敢なる開拓者達よ。 1枚でも多く敵の服を剥け! 間違っても味方の服は剥くな! そしてこの戦いを勝ち抜き、生き残れ! 健闘を祈る! |
■参加者一覧 / 神町・桜(ia0020) / 雪ノ下 真沙羅(ia0224) / 柚乃(ia0638) / 相川・勝一(ia0675) / 葛切 カズラ(ia0725) / 天河 ふしぎ(ia1037) / 御樹青嵐(ia1669) / 雷華 愛弓(ia1901) / 珠々(ia5322) / 叢雲・暁(ia5363) / ネオン・L・メサイア(ia8051) / エメラルド・シルフィユ(ia8476) / 煌夜(ia9065) / 草薙 玲(ia9629) / エルディン・バウアー(ib0066) / アクエリア・ルティス(ib0331) / 玄間 北斗(ib0342) / シルフィリア・オーク(ib0350) / シルフィール(ib1886) / リュミエール・S(ib4159) / リィムナ・ピサレット(ib5201) / 高崎・朱音(ib5430) / 御調 昴(ib5479) / アムルタート(ib6632) / 神座早紀(ib6735) / 霧雁(ib6739) / レムリア・ミリア(ib6884) / 八条 高菜(ib7059) / 雁久良 霧依(ib9706) / サエ サフラワーユ(ib9923) / 白隼(ic0990) / サライ・バトゥール(ic1447) / ノエミ・フィオレラ(ic1463) |
■リプレイ本文 今回も、宴会場は異様な熱気に満ちていた。 そして壇上では、八条 高菜(ib7059)がノリノリで観客を煽る。 「皆の衆ー! 待ちに待った第二回の開幕だー!」 「うおおおおお!」 「女の裸が見たいのかー!? 男の裸が見たいのかー!? 私もだ皆の衆! 私は見たい! ついでにお持ち帰りもしたい!」 「うおおおおお!」 「欲望のままに戦えー! 脱がせー! しかーし! 触るのは合意があってからだー!」 「うおおおおお!」 「分かったか皆の衆ー! 無論私も参加だからなー!」 「高菜ったら相変わらずねえ」 「またこれですか……」 「大丈夫だって、早紀。今回は俺が出て、返り討ちにしてやるからよ!」 どこかで見た光景に深々とため息をつくシルフィリア・オーク(ib0350)に、お盆を手にしたまま空ろな目をしている神座早紀(ib6735)。 宴会の手伝いをしていたら巻き込まれる悪夢再び。 まあ、今回は相棒の月詠がいるし、全部任せよう。私は何も見なかった。 宴会場が混沌とし始める中、御調 昴(ib5479)は黙々と窓や出入り口の目張りをしていた。 この後予想される狂態。それが外に漏れたら色々大問題である。 備えあれば憂いなし。打鞠拳に目張りありである。 「よーし! 準備は良いか皆の衆ー!!」 「ちょっと高菜! 離しなさいよ!」 ノリノリの高菜に壇上に引きずり出されるシルフィール(ib1886)。 そこに雷華 愛弓(ia1901)が、はいっ! と元気に挙手をした。 「高菜さん。私は見学でもいいですか?」 「あら。どうしてぇ? 折角いいモノ持ってるのにぃ」 愛弓の豊かな胸に熱い目線を送る高菜。それに彼女は握り拳を作って答える。 「私は、役目を果たさないといけないんですよ!」 「役目?」 「あのですね……」 こそこそ話をする2人。高菜がにんまりと笑って何度も頷いている。 その光景を見て不敵に笑う高崎・朱音(ib5430)。そこにレムリア・ミリア(ib6884)も挙手をする。 「ねえ。私からも一つ提案があるんだけど」 「どうしたのじゃ?」 「1勝につき勝者側の攻撃時間を制限したらどうかしら。例えば10秒間とかね。時間無制限じゃ勝負にならないでしょう」 「ふむ。成程な。どうじゃ?」 「うん。じゃあそれ採用」 小首を傾げる朱音に頷く高菜。打鞠拳の支配者は今回も健在のようです。 「それではこれより、打鞠拳を開催するぞー! と言う訳でカズラちゃん、後宜しく!」 「はーい! お任せあれ♪ それでは、司会はこれより葛切カズラが勤めさせて戴くわ。宜しくね〜!」 高菜の宣誓にウィンクで応える葛切 カズラ(ia0725)。 観客の興奮が高まる中、東軍と西軍の精鋭達が発表される。 ■東軍 柚乃(ia0638) 天河 ふしぎ(ia1037) 煌夜(ia9065) エルディン・バウアー(ib0066) アクエリア・ルティス(ib0331) シルフィール リュミエール・S(ib4159) リィムナ・ピサレット(ib5201) 高崎・朱音 御調 昴 アムルタート(ib6632) 霧雁(ib6739) 雁久良 霧依(ib9706) サエ サフラワーユ(ib9923) サライ(ic1447) ノエミ・フィオレラ(ic1463) ■西軍 神町・桜(ia0020) 雪ノ下 真沙羅(ia0224) 相川・勝一(ia0675) 葛切 カズラの相棒、初雪 御樹青嵐(ia1669) 珠々(ia5322) 叢雲・暁(ia5363) ネオン・L・メサイア(ia8051) シルフィリア・オーク エメラルド・シルフィユ(ia8476) 草薙 玲(ia9629) 玄間 北斗(ib0342) 神座早紀の相棒、月詠 レムリア・ミリア 八条 高菜 白隼(ic0990) 「む。拙者も引き立て役をと思っていたのでござるが……」 「はぁ?! 何でわしの名が入っておるのじゃ!?」 「いやあああ!?」 「やっぱり私って……」 むう、と考え込む霧雁に、食ってかかる桜。悲鳴をあげる勝一とさめざめと泣き始めるサエに、カズラは淡々と答える。 「足りない分についてはその場にいた開拓者を手当たり次第、投入させて貰ってるわ。勝一さんとサエさんは最初から参加列にいたじゃない。霧雁さんと桜さんは諦めて」 「ふむ。人手が足りないのであれば仕方がないでござるな」 「な、な……!?」 「待って下さい! これは相棒の陰謀でええ!!」 「違うんですううう!! 間違って参加列に紛れちゃったんですううう!!」 頷く霧雁。呆然とする桜に泣き叫ぶ勝一とサエ。 そして、エメラルドは今更ながらに打鞠拳のルールを確認していた。 「ふむふむ。軍の代表者1名がじゃんけん勝負をし、勝利した軍が敵軍から服を剥ぎ取る……?」 「何!? 自ら服を脱ぐのではないのか?!」 「そうらしい……。何か猛烈に嫌な予感がするぞ……!」 青ざめる桜とエメラルド。しかし、今更逃げる事は許されない……! 「それでは1回戦! じゃんけん代表者、東軍、リィムナさん! 西軍、暁さん! 前へ!」 「よーし! 負けないぞ!」 「えええっ」 カズラの声に腕を捲し上げながら前に出て来る暁。そしてリィムナの顔には珍しく焦りの色が浮かぶ。 送られる各軍への応援。 彼女はそれに曖昧な笑みを返し……霧依の目線にギクリとする。 そう。彼女は昨夜、ちょっと牛乳を飲みすぎた。 その上、寝る前に厠に行くのも忘れてしまった。 そういう時、彼女は翌朝どうなるか……? あああ。ヤバイ。剥かれたら皆に知られてしまう。 そんな事になったらもう、死ぬしかない……! 「打鞠〜す〜るならっ♪」 「こういう具合にし〜やしゃ〜んせ〜♪」 始まる大合唱。暁が曲に乗って舞い、その動きに合わせて揺れる豊かな胸。普段だったらそれを楽しむリィムナだが、今回はその余裕がない。 こうなったら一か八か、やるしか……! 「毬門!」 「打ち入れ!」 「よよいのよい!」 暁が手を出した瞬間、自分以外の時を止めたリィムナ。 彼女の手はグー。という事は……! 手を開き、前に出し……時間が動き出した途端、ピピー! と言う甲高い笛の音が鳴り響いた。 「はいっ。反則! 後出しでしたよっ」 ビシィッ! とリィムナを指差すサライ。 「あら。それ本当?」 「間違いないですっ! 『夜』ですね。今のは」 小首を傾げるカズラに、彼がこくりと頷く。 「リィムナちゃん反則ね♪ それじゃ、恥ずかし固め、いってみよー!!」 「お任せ下さい! 霧依さん!」 荒縄を手に襲い掛かる変態……いやいや、霧依とサライ。 会場内に響く幼女の悲鳴。あっという間に衣服を取り上げられて……最後の一枚を剥がそうとしたサライの手が止まり、くすりと笑う。 「んー。リィムナさん、オムツって事は、今朝もやったんですね?」 「ダメえええ! 見ないでえええ!!」 「そうなの。リィムナちゃん今朝もおねしょしたのよ。だからお仕置きに、ね♪」 暴れるリィムナを押さえつけて笑う霧依。その説明に、打鞠拳参加者と観衆の微妙な目線が幼女に注がれる。 「ごめんなさーい! 離してえええ!!」 リィムナの哀れな悲鳴。彼女がサライによって縛り上げられて行く間、霧依はその横にオムツを吊るし、更にぺたりと貼紙をする。 ――私は今朝おねしょした上、反則しました。 「ではここで反則負けのリィムナさんに、司会者よりプレゼントです! 奥義! 蠱惑姦淫蕩触手遊戯!」 「私もお手伝いするよ〜!」 突如、奥義を繰り出すカズラに、便乗して魔法の蔦を草を伸ばすリュミエール。 「な、何……?! ひっ……!」 怯えるリィムナに襲いかかるぬめぬめとした細い突起。 イカの手に似た無数のそれが、幼女のほっそりとした薄い身体を這い回り……。 うっとりとするカズラに、ぐっと拳を握り締めるリュミエール。 リィムナの表情が、怯えからだんだんと愉(以下自主規制)。 今回の打鞠拳、始まる前から色々酷い事になってます! 「……えーと。司会者がお仕置きに夢中ですので、司会を一時交代致しつつ、打鞠拳を再開します。東軍代表の反則により、じゃんけん勝負は西軍の勝利! これより、西軍による衣服争奪に移行します。両軍、前へ!」 冷や汗を流しながら宣言する愛弓。観客は盛り上がり、両軍に緊張が走る。 「いいか、諸君! ふしぎだ! ふしぎを重点的に狙え! いくぞ!」 両軍睨み合う中、エメラルドが西軍の面々に向かって叫び……それが、戦端を切る合図となった。 「とにかく逃げ回るわよ!」 「分かりました!」 煌夜の声に頷く昴。2人はなるべく周囲に溶け込むように、静かに移動を繰り返す。 「こういう時は飛ぶに限るっ!」 アムルタートは跳ね回り、アクエリアと柚乃が派手な悲鳴をあげて逃げ回っていたが、アクエリアが突然転倒した。 「大丈夫ですか!?」 「いたた……」 アクエリアを助け起こそうとした柚乃。彼女の足には、鞭が絡みついていて……。 恐る恐る顔を上げると、レムリアが艶やかな笑みを浮かべていた。 「いつまでも逃げられると思ったら大間違いよ?」 「さあ、そろそろ覚悟はいいかしら?」 「大丈夫よ。痛くしないから」 笑顔で迫る白隼とシルフィリア。 乙女の大ピンチ。絹を切り裂く悲鳴が響く。 「大丈夫か!? 今助けに……!」 その状況を察知して走り出したふしぎ。その前に影が立ち塞がる。 「さあ! あなたの着衣、戴きましょう!」 ビシィッ! と謎のポーズを決める青嵐。その無駄にカッコいい、周囲の全てを圧するような威厳に、ふしぎが固まる。 「か、カッコよさなら僕だって負けな……」 「隙ありー!!」 「いやっほーう!」 彼の隙をついて飛び込むエメラルド。そこに月詠も走り込んで来てふしぎを取り押さえる。 「とにかく剥いちまえばいいんだよな!?」 「そうだ! 遠慮なくやれ!」 「加勢するのじゃ!」 「ごめんなさい。これもカズラの命令なの……!」 「いやあああっ!!」 そこに桜と、いい訳しながら初雪も加わり、ふしぎの悲鳴が響き渡る。 そこにのこのことリュミエールがやって来た。 「ふしぎ、大変だね」 「あっ。リュミエール! 助けてよ!」 「んー? うん。まあ、頑張れ!」 「えっ。何で!? 君、東軍でしょ!?」 「そうだけど……まあ、色々あるよね」 驚くふしぎをにこにこと見守るリュミエール。 見れば、彼女の着衣に乱れ一つない。 要するに……僕は、売られたのか!? ――誰か。誰か助けは……。 「残念ながら、救い手はいないようですね」 冷酷な笑みを浮かべる青嵐。 その向こう側。地獄のような光景が広がっていた。 「貰ったあ! NINJAに素早さで勝とうとか思っちゃダメだよ〜」 「何で私があああ!!」 逃げ惑うも暁に捕まり、抵抗空しく上着を剥かれ、さめざめと泣き叫ぶサエ。 「お洋服、戴くのです!」 「あら♪ 可愛い子! 好きなだけ持ってっていいのよ〜♪」 「……あの。撫でるのやめて貰えませんか」 「やだー! 気のせいよぉ♪」 間合いを詰める珠々に、たわわな胸見せつけ、両手を広げてお迎えする霧依。 この女性、幼女好きの変態なので、珠々にとっては別な意味でやり辛い相手である。 負けるな! 珠々! 「すみません、衣服を……きゃうっ」 ノエミから衣服を奪おうとして、悲鳴をあげる真沙羅。 ネオンの手が己の臀部を撫で回しているのを知って、もじもじしながら恋人を見上げる。 「ちょ、ちょっと……。今は私達の攻撃ですよ?」 「ん? そうだったか?」 はっはっは! とわざとらしく笑うネオン。 そんなやり取りも気にせず、酒をがぶ飲みして完全に出来上がっているノエミはばさー! っと服を脱ぎ始める。 「わはは! いいだろう! 持って行けー!!」 「あああ! それじゃ勝負にならないですよ!」 「うるさい! お前も脱げー!!」 「いやああん」 慌てて止めに入ったサライに襲いかかるノエミ。 妙に彼が嬉しそうなのは気のせいだろうか? 「良かったなぁ、真沙羅。剥く手間が省けたぞ」 「んっ……。ネオン様、お尻撫でないで下さい……」 ヒャハハハ! と奇妙な笑い声をあげながらサライを剥いていくノエミをまったりとした目線で見つめるネオン。 その手は真沙羅の柔らかい尻から離れる事はなく――。 「皆楽しい事になっておるではないか」 にんまりとしながら周囲を観察する朱音。そこに玲が駆け寄ってくる。 「さあ、洋服戴きますよ!」 「おお、玲ではないか。どうじゃ、後ほど我と改めて勝負をせんか。そうしたら、衣服は全部くれてやってもいい」 「勝負……ですか?」 「うむ。ちょっと趣向を凝らしたものを、の」 愉しげに笑う朱音に気圧されて頷く玲。うっかり、彼女の服を剥くのを忘れてしまった。 「す、すみません。着衣を戴いて宜しいですか……?」 「ああ、はい。仕方ありませんからね」 顔を真っ赤にしてお願いする勝一に、こくりと頷くエルディン。 「あ、お手伝いしましょうか?」 「ややや。お構いなく。自分で脱ぎますから……」 勝一の気遣いを制したエルディンは、頬を染めぎこちなく法衣を脱いで、丁寧に畳んで床に置き……向かい合う2人は何だかとても背徳的で、主にカタケット的な意味で衆道が好きなお姉さま達大興奮である。 「拙者に勝負を挑もうなど、10年早いでござるよ……!」 「まだまだなのだぁ〜!」 そして、着衣の止め具や紐を的確に狙って来る北斗の手を、器用に避けたり受け止めたりしている霧雁。 緩まぬ北斗の攻撃の手。素早く死角に回り込み、霧雁の装備を弾き落とす。 「おぬし、なかなかやるでござるな……!」 「そっちこそなのだぁ〜」 息をつかせぬ攻防。2人は、何だか息の合った舞を踊っているようで……。 シノビ同士の高レベルな争いは、滅多に見られるものではなく。観客達は多いに盛り上がる。 「さあ、全部剥くぞ!」 「分かったわ!」 「急ぐのじゃ!」 「おー。こいつ、結構いい身体してんじゃん」 「いやあああ!! 変なとこ触らないでえ!」 その間も、すごい勢いで手を動かすエメラルドと初雪、桜。月詠に上から下までじろじろと見られて、照れている暇もなく……ふしぎはみるみるうちに肌を曝していく。 「ふしぎ、がんばれー」 「協力に感謝します。次は容赦しませんが」 「怖いなー。大丈夫だよ。次回以降も協力するからさ」 目を細める青嵐に、ニヤリと笑みを返すリュミエール。 彼女、勝敗の行方より、ふしぎがいかに酷い目に遭うかという事が重要らしい。 いやー。最大の敵は味方、とは良く言ったものですね! そしてその近くでは、妙にピンクな空間が構築されていた。 「ちょっ。高菜ってば……」 「んふふふ」 「やめて……」 「あらー。シルフィーちゃんったら抵抗するのは口だけぇ?」 耳にかかる高菜の吐息。シルフィールはじたばたと暴れてみるが、思うように力が入らない。 抵抗も出来ない程に酔ってしまったのは、正直失敗だったかもしれない。 「ほらほら。胸が見えちゃうわよ〜」 「こらっ。揉んだらダメ……」 艶っぽい笑みを浮かべて舌なめずりする高菜。 あともう少しで、ドレスが脱げる……と言うところで、1回戦終了の笛が鳴り響き、短いようで長い10秒が終わった。 「はい! 1回戦そこまで! 司会者が戻られましたので交代します!」 「愛弓さん、ありがとう。これより司会者、復帰致します。触手攻めは後でもできるからね! んー。まだ皆結構服着てるわね。じゃあ、2回戦! じゃんけん代表者、東軍、アムルタートさん! 西軍、勝一さん! 前へ!」 立派に代役を務めてくれた愛弓に頭を下げつつ、不穏な事を言うカズラ。 「え、僕ですか? お手柔らかにお願いします」 可愛い虎の着ぐるみ姿で、勝一がおずおずと壇上に上がる一方で、アムルタートは近くにいた煌夜を壇上に押し上げようとしていた。 「ちょっと、呼ばれたのは私じゃないわよ?」 「分かってるよー。だって責任ジューダイでしょー? これ代わってくれたら、その分剥ぎ取りで頑張るからー! ねっ? お願い!」 両手を合わせて可愛くお願いする彼女に、煌夜はため息をつく。 勝とうが負けようが、どちらかの軍が全裸になるまでは勝負は続くのだ。だったら、早く終わらせた方がいい。 「煌夜さん、あの……」 昴が心配していると思ったのか、笑顔を向ける煌夜。 彼は真面目な顔で手招きして、彼女にそっと耳打ちする。 「僕、ちょっと気付いた事があるんですよ。あのですね……」 ごにょごにょと話し込む2人。その様子に、司会者が首を傾げる。 「東軍代表は煌夜さんに変更でいいのかしら?」 「ええ。構わないわ」 頷く煌夜。昴の言う事が本当なら、この勝負、勝てる……! 「打鞠〜す〜るならっ♪」 「こういう具合にし〜やしゃ〜んせ〜♪」 再び始まる大合唱。勝一は恥ずかしそうに、煌夜はどこか諦めた様子で、堂々と舞う。 「毬門!」 「打ち入れ!」 「よよいのよい!」 煌夜が出したのはチョキ。一方の勝一は……。 「昴君、やるじゃない」 「あああ! どうしてパーしか出せないって分かったんですかああ!!」 手を叩いて喜ぶ昴に笑顔を返す煌夜。勝一ががっくりと膝をつく。 そう。勝一とて、負ける訳にはいかないと思っていたが……何せ着ていたのがもふもふの着ぐるみである。手にはしっかり肉球までついていたので、上手く握る事もできず。当然チョキなんて器用な事も出来る訳がなく。パーしか出せなかったのである。 「じゃんけん勝負は東軍の勝利! これより、東軍による衣服争奪に移行するわ。両軍、前へ!」 カズラの張りのある声に轟く歓声。舞う座布団。両軍は再び睨み合う……前に、ふしぎが逸早く行動を開始した。 「さぁ皆、宝をその手に掴め、この旗の元に!」 勇ましく指揮をするふしぎだが、既にぱんつ1枚でそれも台無しである。 しかし彼の鼓舞は、確実に東軍の動きを素早くしていた。 「ううう。天河せんぱいがそういうなら、がんばります……!」 いつの間にか北斗がかけてくれた上着を押さえつつ、握り拳に力を入れるサエ。 北斗は西軍。サエは東軍。敵同士であるが、紳士的な行動に涙が出る。 せめて正々堂々と戦わなければ……! サエはその紳士を目標と定め、えいやっと突っ込んで行く。 「さっきはよくもー!」 「あらあら。怖いわねえ」 形の良い胸にかろうじて下着が張り付いている状態で怒っているアクエリア。目が空ろな柚乃も既に水着姿で……そんな姿にした張本人であるレムリアが、挑発的な笑顔を向ける。 「剥かれた分くらいは!」 「取り返しますよ。ふふふ」 そう言って、飛び掛るアクエリアと柚乃。 しかし、スキルを使い回避力を上げたレムリアにはなかなか追いつけない。 「こうなったら挟み撃ちよ!」 「分かりました!」 作戦を変えた2人。同時に襲われ避けきれず、彼女の着衣を奪取する。 「……向こうも本気みたいねえ」 目を爛々とさせている女子達に肩を竦めるレムリア。 彼女はちらりと仲間達を見て、酷い事になってるわね……とため息をつく。 「ごめんなさいね。これも勝負なの」 「すみません、洋服戴きますね!」 「しょうがないなー」 「あーもー! 脱げばよいのじゃろう! 脱げば!」 じわじわと迫る煌夜と昴に忍刀と足袋を差し出す暁。桜は自棄気味に巫女服を叩きつける。 煌夜も肌襦袢から胸が零れそうになっているし、元々着衣が少ない暁と桜はこれ以上剥くと色々見えてしまいそうで……。 昴としては目の保養……いやいや。これ以上剥くとヤバいかな、と思い、煌夜にそっと声をかける。 「煌夜さん、もういいですよね」 「何言ってるの、昴君。勝負は無情なの」 ピシャリと跳ね除ける煌夜。 そう。全力で剥いて、一刻も早く敵陣営を全裸にしてしまった方が結果的に被害は防げるのだ。 「悪く思わないでね……?」 「いやーん! えっちぃ〜☆」 「くっ。ええい、こうなったら好きにするがよいわ!」 「見てませんっ! 僕見てませんからっ」 薄く笑いを浮かべる煌夜にクネクネと身を捩る暁。胸に巻かれたサラシを解き始めた桜に、昴は慌てて己の顔を両手で覆う。 「西軍の大将はあなたでしょうか? 申し訳ありませんが脱いで戴きますよ!」 「大将になった覚えはありませんが……良いでしょう」 睨み合うエルディンと青嵐。青嵐は、白い祈祷服を堂々と脱ぐと、ゆっくりと床に置く。 「お手伝いしましょう」 「それはどうも」 相手が男性であれば、遠慮する必要はない。滑るような手つきで青嵐の服を次々と奪っていくエルディン。 しかし、青嵐の表情はピクリとも動かず、動じる様子もない。 「ほう。あなた、いい身体してらっしゃいますねえ」 「あなたこそ。無駄のない身体をしている」 何故かお互いの身体を賞賛する2人。痩身優美な男性達が見つめ合って服を脱がしている、一部のお姉さま大歓喜な非常に罪深い状況になっている事に気付いていないらしい。 その頃、天妖の初雪は、小さな身体を生かして青嵐の祈祷服の中に隠れていた。 最初彼が自ら脱いだのは、彼女が見つからないようにする為である。 最終的に、軍の中の一人でも服を1枚でも着ていればこちらの勝ち。 ――何があっても隠れているんですよ。 彼に言われた言葉を思い出す初雪。口から心臓が飛び出しそうだが、動かないように頑張る。 「ごめんねえ。服貰っていいかな」 「分かってる。やる以上は負けて愚図るのは女がすたるってもんよ」 思い切り良く脱ぎ始めた月詠に、へらへらと笑うリュミエール。 からくりの脱衣ショーも悪くないなぁ……とか、完全に酔った頭で考えていたリュミエールは、思いついた疑問に小首を傾げる。 ……からくりって、肌は陶磁器のような素材で出来ているはず。という事は、胸はどうなのだろう。 「ねーねー。月詠ちゃん。からくりの胸って柔らかいの? 固いの?」 「何なら触って確かめてみるか? 但し金取るけどな」 「お金取るのかー。どうしようかなー」 ニヤリと笑う月詠。リュミエールは何だかとても真剣に悩んでいるようで……。 「そういえば、サライとやりあうのは初めてだったわね。手加減しないわよ」 「はいっ。僕も全力で頑張ります!」 くすりと笑うシルフィリアに、ぽっと頬を染めるサライ。 しかし、彼の目線は彼女の大きく柔らかそうな胸に釘付けである。 狙いは清楚かつ純真な少女にしようと思っていたが……それは後にして、まずはむちむちボディを楽しまないと……! そんな邪な事を考えつつ、可愛らしく飛び掛るサライ。 シルフィリアはそれを簡単に避ける。 「あっ。逃げちゃダメですよ〜」 「ふふ。簡単に捕まったら面白くないでしょ?」 そんなやり取りから続く、2人の追いかけっこ。サライの足がもつれて、彼女の胸に頭から突っ込む。 「ああっ。すみませんっ」 「あらあら。困った子ね」 恥ずかしそうに顔を上げるサライ。当然だが、わざとである。 シルフィリアも、わざとえっちな目に合わせ、動揺を誘って体勢を整えるくらいの気積りがあったし、その程度では動じない。 動じないが……。 「……胸から手を退けてくれないかしら?」 「あああ。そうでした! わ。赤いレースの下着ですかっ。セクシーですねえ。さすがカップも大きい」 「ちょっと! いつの間に取ったの!?」 気付けば、サライが自分のブラジャーを広げている。 シルフィリアは瞬時に身を離すと、すぐには踏み込めないように距離を取る。 「……シノビとして全くなってないでござるな」 そんなサライの様子を見てため息をつく霧雁。 ちなみに彼は、真沙羅とネオンから衣服を頂戴しようと思っていたが……。勝手に盛り上がって脱ぎ始めているので、そのまま様子を観察していた。 女性に興味がない訳ではないが、この程度で動じていてはシノビの名が廃る。 こういう時こそ、今しか出来ない事をしなくては……。 「可愛い真沙羅は我以外には触れさせない。という事で、我が脱がすぞ」 「はい。お願いします……」 きっぱりと断じるネオンに、頬を染めて頷く真沙羅。 じわじわと、見せ付けるように着衣を奪われ、敏感なところを撫でられて、真沙羅の身体がだんだんと朱に染まっていく。 「や、ね、ネオン様……。そこはダメ……」 「まったく、悪い娘だな。ほら、皆が見ているぞぉ♪」 「うむ。じっくり拝見させて戴いているでござるよ。さ、拙者の事は気にせず続けるでござる」 「あぁ……そんなぁ……」 霧雁の言葉に顔を覆う真沙羅。 そうしている間も、ネオンの手が彼女のボリュームのある艶美な躰を這い回る。 「さっきはよくもやってくれたな! 覚悟しろ!」 「貴様、まさか私に不埒を働こうなどと思っておるまいな……?」 「不埒って……そりゃ打鞠拳なんだから、そういう事するでしょ」 「フフン。面白い。出来るものならやってみろ」 啖呵を切るふしぎを睨みつけて脅しをかけるエメラルド。 ――どうせ奴は草食系。本気で襲ってきたりはすま……。 「ぎゃああっ!? 何をするかーっ!?」 「やってみろって言ったのエメラルドじゃないか!」 「本当にやる馬鹿がどこにいる! そこに直れ! 叩き切ってくれる!」 服を奪われ、逆ギレして抜刀するエメラルド。そこにカズラが走って来て速攻取り押さえられる。 「はいはい。抜刀は禁止よ〜」 「な!? 離せ!!」 「それは認められないのよ。ごめんねえ」 揉み合いになるエメラルドとカズラ。 この好機を逃さず更に着衣を強奪しようと踏み込むふしぎ。 「よいしょっと」 そこに、リュミエールの足が伸びて来て、見事にそれに引っかかってつんのめり、彼は手をつこうとして……。 むにゅり。 あ。柔らかい。気持ちイイ。何だろう。以前にも触った事があるような気がする。 そこではたと我に返るふしぎ。見下ろすと、エメラルドのたわわに実った乳房を鷲掴みしていて……。 「やっ、ば、馬鹿ぁっ!? 触るなぁっ!!」 「ち、違うんだ! これは事故……」 ばっちーーん!! 思い切り平手打ちされ、鼻血を撒き散らしながら吹き飛ぶふしぎ。 どこかで見た光景に、リュミエールがニヤリと笑う。 「踊り手を脱がそうだなんて……悪い人ね。捕まえてごらんなさいっ」 「よーし! 捕まえちゃうぞー!」 始まる白隼とアムルタートの追いかけっこ。 白隼は手強そうだが、煌夜と約束した。全力を尽くさねば彼女にも申し訳がない……! 周囲へ気を張り巡らせ、まるで背後に眼があるかのように行動する白隼。 アムルタートも軽い一蹴りで空に舞い上がるかのように跳躍し、肉薄する。 スキルと知力、身体能力……それら全てを駆使する2人の動きは、まるで完成された舞楽にも見えて……。 白隼は嬉しそうに微笑むと、コートをするりと外しアムルタートに手渡す。 「えっ。何?」 「貴方が素敵な舞を見せてくれたから。お礼にあげるわ」 「……本当にいいの?」 「勿論。でも、この先も遠慮はなしよ?」 「うん! ありがとう!」 がっちり握手をするアムルタートと白隼。 打鞠拳を通じて深まる交流。うん。素晴らしいですね!! 一方その頃、珠々は霧依を撒くため、奥義を使い高速で移動していた。 さすが奥義。こんな使い方も出来るのだな……と考えている間に、蕩けそうな笑みを浮かべた霧依が執念で追い縋ってくる。 この人が幼女好きというのは本当らしい。 だって、どんなに撒いても追ってくるし……! しつこい……! 「さ。珠々ちゃん。脱ぎ脱ぎしましょうねえ」 「にゃー!」 「うんうん。優しくしてあげる♪」 「にゃーー!!」 何故か猫のような声をあげる珠々。 その反応は、霧依を更に悦ばせているようだった。 「ショタ! ショタだわー!」 「いやあああ!?」 奇妙な笑い声をあげながら凄い勢いで勝一を剥くノエミ。 勝一は恥ずかしがる暇もなく、あっという間に褌一枚になる。 「もう脱ぐものないのですけどー!?」 「はあああん♪」 もじもじしている勝一をガン見して変な声を出しているノエミ。 鎖骨胸板お尻……舐め回す様に見つめうっとりとため息をつくと、近くでサエと対峙していた北斗の腕をガッシと掴む。 「ちょっとそこの人! 抱き合って貰えます!? 男性同士で!」 「そういう趣味はないのだぁ〜」 「ちょっとでイイから! ホラ! 脱いで脱いで!」 「やめるのだぁ〜」 嬉々として北斗の上着を剥ぐノエミ。彼はサエに動きを封じられる結果となり、着衣を奪われて行く。 「むううう! 手がっ。手が届かないですうううっ」 そしてサエは、北斗を剥こうとするも彼に頭を押さえられ、ジタバタと暴れていた。 「少しでも! お役に立つのですううう!」 「北斗さん! しっかり……!」 無我夢中で腕を振り回すサエ。せめて彼女を引き剥がそうと走り出した勝一だったが、月詠の目線に気がついて立ち止まる。 「……ふーん。ちっせえのかと思ってたけど見かけによらねえなあ」 「何がですか?」 「だからソレだよ。ソレ」 「えっ……? きゃあああ!?」 月詠の指差すままに下を見た勝一。何かスースーすると思ったら、褌がない!? 彼女は真顔で、勝一の顔と彼のぞうさんとを見比べて何度も頷いている。 「勝っても負けても妾には面白い事になるという訳じゃの」 そして主の褌を手にした人妖の桔梗が、くつくつと笑った。 一方その頃、ピンクな空間はまだまだ続いていた。 「ちょっと。高菜、本当に……」 「んん? 本当に止めちゃってもいいのぉ?」 高菜に耳朶を噛まれてびくりと跳ねるシルフィール。 心はどんなに抗っても、元夫が刻み付けていったものを身体は忘れてはくれない。 「あ。あ……」 潤むシルフィールの瞳。誘うように動(以下自主規制)。 ようやく、2回戦終了の笛が鳴り響いた。 「はい! 2回戦そこまで! んー。裸の人増えて来たわね。次で勝敗が決まるかしら? じゃあ次、3回戦! じゃんけん代表者……」 言いかけた司会者を、朱音がすっと手を出して制止する。 「カズラよ。3回戦は我が出て、サシで勝負したい。対戦相手も指定してよいか?」 「あら。朱音さんはまだ剥かれてないのね。いいわ。誰にする?」 「私……ですよね」 壇上に上がって来る朱音を見て頷くカズラ。遅れてやってきた玲に、彼女は目を丸くする。 「玲さんも剥かれてないんだ。分かったわ。じゃあ、3回戦はちょっと趣向を変えるわよ! 代表者、東軍、朱音さん! 西軍、玲さん! 前へ!」 宣言と歓声と共に始まる3回戦。 どこか楽しそうに、余裕すら見せつつ勝負に臨む朱音。 玲は少し緊張した面持ちで、軽やかに舞う。 2人は、打鞠拳の作法の通りに華麗に舞いながらジャンケンを繰り出し続け、一進一退の勝負を繰り広げる。 「毬門!」 「打ち入れ!」 「よよいのよい!」 何度目かのじゃんけん勝負。朱音の勝ちだ。 剥かれる事を覚悟して、目を閉じる玲。 次の瞬間、何だかやけに涼しくなって……うおおお! と歓声が上がった。 「いや、すまぬのぉ?」 ニヤニヤと笑う朱音。玲が目線を下げると、さっきまであったはずの衣服が全てなくなっていて……。 「い、いやあああ!?」 響き渡る玲の悲鳴。 ああ。皆に生まれたままの姿を見られてしまった。 もう、お嫁にいけない……! ――ブチィッ! 「……今、変な音がした気がするのだぁ」 玲に衣服をかけてやろうと走る北斗。彼が首を傾げた直後、ゴゴゴゴゴ……と言う地を這うような音が聞こえて来た。 「……やった事の覚悟、できてるんでしょうねぇ……?」 「うん? だから手が滑ったと言っ……」 「問答無用! 覚悟ーーッ!!」 どうやら玲、羞恥心の限界を超えてしまったらしい。 打鞠拳の大魔神、ここに爆誕! 「もうこうなったら全員道連れにしてやる……!」 次の瞬間、朱音に飛び掛る大魔神。一瞬で彼女を素っ裸にすると、どこからか出して来た荒縄でぐいぐいと縛り上げる。 「こらこら。これでは全て丸見えではないか!」 「丸見えにしたんですよ! 幼女に食い込む荒縄、堪りませんなぁ!」 言う割に動じていない朱音。 ウヒヒヒと妙な笑い声をあげる大魔神。ゆらりと立ち上がり、次の犠牲者を求めて移動を開始する。 「非常事態発生! 総員退避! 剥かれたくなければ全員逃げなさい!!」 カズラの声に別な意味でどよめく観客。 剥かれてはたまらないと、出口に殺到し始める。 そして事態を収拾しようと、エルディンは必死に大魔神と戦っていた。 「玲さん、落ち着いて下さい」 「次はお前を剥いてやろうかあああ」 「これは勝負ではありません。一方的な略奪です。人の心を取り戻すのです……!」 「やかましいわああ!!」 エルディンの着衣を次々奪う大魔神。彼の表情に、だんだん焦りの色が滲み始める。 「ああっ! そこは最後の砦、や、やめっ」 「そーれ! ご開帳ー!!」 ――ブチィッ! 「……今、変な音がしたのだぁ」 ゴゴゴゴ……。 再び聞こえる音。未来の予想がついて、北斗は深々とため息をつく。 「触るんじゃねぇっつってんだろうがーー!」 打鞠拳はまた新たな魔物を生み出したらしい。 ぞうさんをぶらぶらさせながら、エルディンが吠える。 そして次に狙われたのは柚乃だった。 「あのっ。見ての通りもう水着だけなんです! 許して下さい……」 「ゆーるーさーんー!」 手をワキワキしながら追ってくる玲から本気で逃げる柚乃。 しかし、相手は限界を突破した大魔神。そう簡単に逃げ切れる訳もない。 大魔神の魔の手が柚乃のパンツを掴み、引き降ろしたと思ったその時……柚乃の姿が消えた。 「消えた……?」 「おーーっほほほほ……」 どこからともなく聞こえて来る笑い声。開拓者達が振り返ると、そこには滅したはずの生成姫が……! 「な、生成姫が何でこんな所に!?」 「いや、あれは柚乃さんですね……。絶対絶命の危機に瀕し、開拓者にとって脅威になるものに変身したのでしょう」 「おーーっほほほほ!」 愕然とするふしぎに、状況を淡々と説明する青嵐。 会場内に、柚乃……否、生成姫の笑い声が響く。 そうしている間にも、犠牲者は次々と生まれ続けていた。 「うわああん! もうやだ! お家帰るううう!!」 「な、何でー! 何で私ってえええ!」 「もういやぁ。皆きらーーい!!」 大魔神に一瞬で裸にされたアクエリアとサエが片隅でびーびー泣いている。 エメラルドも乙女の顔丸出しでわんわん泣き叫んでいた。 「くっ。皆しっかりして!」 「そうだよ! すぐに助けが……!」 たわわな胸を両手で、柔らかそうなお尻は大きな羽で隠して仲間を励ます白隼。 言いかけたふしぎは、白隼のむっちりボディがしっかり目に入ってしまい、鼻血を噴出して床に倒れる。 別な意味での犠牲者が増えて困惑する彼女。その背に、そっと上着がかけられて……顔を上げると、爽やかな笑顔の北斗と目が合った。 「もう大丈夫なのだ。そっちの女子達にも渡して欲しいのだ」 「ありがとう。助かったわ。それにしても酷い有様ね……」 「うん。服を配ろうにも全然手が足りないのだ」 「これを着たら手伝うわ」 「ありがとなのだ」 「私もお手伝いします」 頷き合う白隼と北斗、愛弓。打鞠拳にも良心が存在したらしい。 良かった! 本当に良かった! 「この機会に異性の服を羽織れば、きっと生まれ変わった気持ちになれますよネ!」 ……愛弓さん? それちょっと違うんじゃ……。 その頃、大魔神も負けじと配下を増やし続けていた。 「だいじょーぶ! 皆で裸になれば怖くないよ!」 「そうだよ! NINJAはZENRAになってからが本番だよ!!」 謎の理論を振りかざすアムルタートと暁。迫られたリュミエールはやれやれと肩を竦める。 「私の裸が見たいのか? このロリコン!」 「えー。一人で服着てたら寂しいでしょ?」 「というか、私達をロリコンと主張するって事はアレ? つるぺた?」 「つるぺた言うなあああ!!」 小首を傾げるアムルタートと暁に、リュミエールが吠えた……と思った途端。一瞬にして着衣がキャストオフされた。 「え、あっ、ちょっ、やん馬鹿ぁ! 変態!」 「本当だー! つるぺただー!」 「可愛い〜!」 「珠々ちゃんはどうかなっ?」 「やっぱりつるぺたかなっ」 「ふぎゃああああ!」 次は珠々を目標に定めた2人。彼女はネコが喧嘩してる?! と勘違いされそうな悲鳴を上げて、じたばたと暴れる。 「おー。猫だね、猫」 「ぺったんこを見て何が楽しいんですかあああ!」 「あ、人間語喋った」 大魔神の配下達の餌食となりかけた珠々。死力を振り絞って奥義を発動。ヒトとは思えぬ速さで離脱する。 「ふむ。ただ剥かれるのは面白みに欠けますね」 何を思ったのか、突如脱ぎだす青嵐。 衣服の肌蹴方から、角度に至るまで、如何に美しく脱ぐかに注力したその様はいっそ清々しい。 そしてノエミさん大歓喜。 これぞ打鞠拳に光臨した神……! 「昴君。どうしてこっち見ないの?」 「いえあの……」 煌夜の甘い声に、ドキドキする昴。 大魔神に服を剥かれた彼女は、何だか妙にエロくなってしまった。 これも打鞠拳の魔力だろうか。 「服、剥かれちゃったの。隠すの手伝ってくれるかしら」 「え、もう羽根で隠してますよ?」 背中に生えた大きな羽根で、既に煌夜の身体を覆っている。 不思議そうな昴の唇を、彼女はつんつん、と突く。 「そうじゃなくて、ね?」 「あ、ハイ。それじゃ失礼します」 おずおずと、煌夜の丸い豊かな胸に手を乗せる昴。 ああ、柔らかいなぁ。 ちょっと揉んじゃったり……いやいや。 しかしアレですよ。これはものすごくラッキーですよ!! 「……昴君。声に出てるわよ?」 「ひええ!? わ、忘れて下さいー!」 その頃、大魔神の配下と化したサライが、無関係の人間を襲っていた。 「早紀さん! 今日こそ一緒に脱ぎましょう!」 「近づかないで下さい! 『光の七時間』再現しますよ!」 「来なさい! あれを恐れて清純な巫女さんが剥けますか!?」 早紀の脅しに胸を広げるサライ。 嫌な予感がして目線を下げると、彼の身体の中心に、もっこりとした山が出来ていて……。 「いやあああ! 変態ーーっ!」 「何とでも言って下さい! さあ! れっつぬぎぬぎ!」 びよーん! と早紀にとびかかるサライ。 そこに一陣の風が吹き抜けて、彼を吹っ飛ばした。 「俺の早紀に何すんだこの兎野郎あぁぁ!!」 憤怒の表情でサライの襟首を掴んでぶんまわす月詠。 彼女は主から荒縄を受け取ると、テキパキとサライを縛り上げて行く。 「縛りプレイですか……! 刺激的ですね!」 こんな状況でも全く懲りない彼。霧雁は首を振って深々とため息をつく。 「サライ君、はしゃぎ過ぎでござる。シノビとして修行が足りぬ。丁度月詠さんが縛り上げてくれている事だし、このままお仕置きでござる! ノエミさんも手伝ってくだされ」 「いよっしゃーー!! ショタのお尻ぺんぺんだあ!!」 ノエミ、再び大歓喜。 霧雁はサライを膝に乗せると、尻を叩き始める。 そして、お仕置きを受けているのがもう1人。 「他人に剥かれるとは迂闊だったな」 「ご、ごめんなさいぃ……」 「我以外に触れられて興奮するなんて……お仕置きが必要だ」 「は、はい……」 じっとりとしたネオンの目線。恥ずかしいのか、くねくねと身を捩らせる真沙羅だが、それがむしろ豊満な身体を見せ付けるような動きになっている。 「どうした。そんなに蕩けた顔をして。これではお仕置きにならんか? ん?」 「はぅぅ。ね、ネオン様ぁ、優しく、お願いします……」 「いい子だ。じゃあ別室に行こうか」 ぶるぶると震える真沙羅の頬を撫でるネオン。 ネオンは恋人の身体を抱え上げると(以下自主規制)。 「トイレいきたいーー!!」 一方、はずかし固めのまま暴れるリィムナ。 台詞からして切羽詰った状況であるようだが、皆忙しくてそれどころではないらしい。 霧依は桜の背中に己のろけっとおっぱいを押し付けると、ちらりとリィムナを見る。 「リィムナちゃんは後で遊んであげるからちょっと待ってね。さあ、桜ちゃんも芸術的に縛ってあ・げ・る♪」 「ギャアアア!! なんでわしなんじゃーー!」 「幼女が好きだからよ!!」 きっぱりと言い切る霧依。あまりに自信満々に言われた為、桜は固まってしまい……そのまま縛り上げられる。 「やっぱりこうなるのねえ……」 「お、お姉ちゃん、大丈夫?」 「うん。小鈴のお陰で助かったわ。ありがとね」 疲れたように呟きつつ、相棒の頭を撫でるシルフィリア。 彼女も大魔神に着衣を奪われ、豊満な果実を弄ばれかけたが、人妖の小鈴が身を挺して庇ってくれた為、難を逃れた。 そして、大いに暴れた大魔神はどうなったかと言うと……。 「ちょっと……。私をこんな目に合わせて覚悟は出来てるんでしょうね!」 「ごめんなさあい! レムリアさん」 愛用の鞭を手に、大魔神の上に跨るレムリア。座った眼でピシィ! と鞭を振るう。 「痛ー!!」 「女王様とお呼び!」 「ごめんなさぁい! 女王様〜!」 「大魔神に司会者より触手のプレゼントです!」 「いやあああん!!」 「といれーー!!」 会場内に響くレムリアが奮う鞭の音と、玲とリィムナの悲鳴。 触手がずるずると動き回る音も加わって、一層混沌が深まる。 そういえば、高菜さん達はどうしたんでしょうね? 「シルフィーちゃん、苦しいの?」 「う、あ……」 まだまだピンク空間続行中だったようです! 「高菜ぁ、助けて……」 「やん、かーわい……。これは応えてあげないといけませんねぇ」 熱い吐息と共に哀願するシルフィール。 高菜は優しく(以下自主規制)。 「……皆、何やってんの?」 ようやっと隠れていた衣服から出てきた初雪。 周囲の惨状を、彼女は呆然と見渡した。 今回の打鞠拳は、霧雁と珠々が着衣を残したまま離脱に成功。そして初雪が無傷で済んだ事から西軍の勝利となった。 「すごい力作が出来ました! これは皆に見て貰わなきゃ!」 そして、役目を果たした愛弓の手には冊子が出来そうな紙の束。 彼女は、打鞠拳で行われた全てを絵と文字で記録していた。 そして霧雁がガン見していた結果得た、参加者達のほくろやあざ、各部のサイズなどの詳細も書き加えられ、それは見応えのある小冊子が完成。 広く知らしめるべきと開拓者ギルドに飾ろうとしたが、危険物として回収されて叶わなかった。 「むー。残念。折角いい出来ですし、冬に販売するしかないですかね」 不穏な事を呟く愛弓。 打鞠拳の戦士達の戦いは、まだまだ続く……のか? |