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■オープニング本文 「打鞠〜す〜るならっ♪」 ……どうしてこうなったのか、今となっては誰もわからない。 「こういう具合にし〜やしゃ〜んせ〜♪」 酒の席で、誰かが『打鞠拳しようぜ!』と言い出したことが発端だったような気がする。 打鞠拳とは、石鏡のとある地域に古くから伝わる遊戯の一種である。 じゃんけんをし、負けた側が服を一枚ずつ脱いでいき、全裸になったら負けというごく簡単な法則。 難しい道具が要らないため、宴会などでもよく行われるが、じゃんけんの際も、服を脱ぐ際も踊るように優雅に動くのが由緒正しいお作法である。 どうしてこうなったのか分からないが、もう一度言う。 この勝負、服を脱ぐ。 要するに全裸になったら負けである。 女性、男性問わず始まったら最後、慈悲はない。 最後の1枚が剥かれるその時まで勝負は続く。 「毬門!」 「打ち入れ!」 「よよいのよい!」 ――後悔しても遅い。 君はこの無慈悲な戦いに足を踏み入れてしまった。 さあ、開拓者達よ。 この戦いを勝ち抜き、生き残れ! ……羞恥心的な意味でも、社会的な意味でも。 健闘を祈る! |
■参加者一覧
天河 ふしぎ(ia1037)
17歳・男・シ
シルフィリア・オーク(ib0350)
32歳・女・騎
高崎・朱音(ib5430)
10歳・女・砲
神座早紀(ib6735)
15歳・女・巫
八条 高菜(ib7059)
35歳・女・シ
サライ・バトゥール(ic1447)
12歳・男・シ |
■リプレイ本文 宴会場は異様な熱気に満ちていた。 「打鞠拳が見たいかー! 見たいのか皆の衆ー! 私もだ! 私もだ皆ー!」 「うおおおおお!」 「開拓者は皆の為なら体を張るべきだー! と言う訳でそこの3人! 前に出ろおおお!」 「うおおおおお!!」 ノリノリで観客を煽る八条 高菜(ib7059)に、近くで余興のダンスをしていたサライ(ic1447)が引きずり出される。 「皆さん酔ってますね……」 「仕方がないのう……」 「えっ。あの……?」 続いて引っ張りだされた高崎・朱音(ib5430)。お盆を手にした神座早紀(ib6735)に至っては状況が掴めていない。 「この3人だけにやらせる訳にはいかない! 無論私も張るぞー!」 「うおおおおおお!」 「いい返事だこのスケベ野郎どもー!」 「……高菜さん。提案があります」 「何かな?」 「反則した人は、罰として『恥ずかし固め』をするというのはどうでしょう」 はいっ! と挙手をするサライ。 『恥ずかし固め』とは、後ろ手に縛り立った状態で片足を高く上げさせて吊り、股間を隠せないようにする事を指す。 その提案に高菜が満足気に頷くと、観客達は更に盛り上がる。 「よし! 反則を期待しよう! では、栄えある第一試合はこの2人ー! 皆、刮目せよーー!」 「いぇああああああ!!!」 「えっ!? えええっ?!」 「あら。私? いいわよ〜」 高菜に壇上に押し出されてオロオロする天河 ふしぎ(ia1037)。 シルフィリア・オーク(ib0350)は突然の指名にも関わらず、余裕の笑みを浮かべてふしぎの前に立つ。 ふしぎはキッチリとした外套。対するシルフィリアは、気品漂う紅いマントから黒いドレスが覗いて……。 これは、なかなかいい勝負になりそうである。 「打鞠〜す〜るならっ♪ こ〜いう具合〜にし〜やしゃ〜んせ〜♪」 そしてなし崩しに始まる大合唱。 ……ど、どうしよう。 でも、挑まれたら断る訳にはいかない。そう。やるしかない……! 意を決したふしぎ。 掛け声と共に、じゃんけんを繰り出し……結果は。 「あら。私の負けね」 「ふふふ……。シノビ式じゃんけん術を使いこなす僕に、勝てると思わない方がいいぞ!」 スターパラソルを可愛らしく回して床へ置くシルフィリアに、不敵な笑いを浮かべるふしぎ。 シノビ式じゃんけん術とは、超越聴覚を駆使し、相手の心音や指の摩擦音から瞬時に出す手を読む術である。 ちなみに打鞠拳の巫女ちゃんの通信講座で、誰でも受講可能らしいぞ! 「見え見えなんだぞ!」 シノビ式ジャンケン術のお陰か、破竹の快進撃を見せるふしぎ。 扇で隠しながら止め具を外すと、するすると身体を滑るように落ちていくマント。 モノクルを取り、スケイルメイルを色っぽく身を捩りながら外すと、たわわな胸がドレスの上からでもハッキリ分かる。 太ももから手をゆっくり這わせ、ハイヒールを片足つづ脱ぎ捨てると、ドレスのリボンに手を伸ばし、少しずつ緩めて行き……。 うおおおお! と歓喜の声を上げる観衆。 立て続けに負けて、シルフィリアの真っ白い肉質な太ももが露になった辺りで、ふしぎの挙動がおかしくなった。 「あら。シノビ式じゃんけん術はもうおしまい?」 「白い足が綺麗だな〜……って、違うぞ! なっ、なんにも見てない! 見てないんだからなっ!」 彼女の言葉にミエミエの嘘をつくふしぎ。彼は超越聴覚を再度使うも、自分の心音で聞こえない。 シルフィリアの艶っぽい姿に調子を崩され、今度は連敗を期す。 震える手でペンダントと指輪をそっと外すと、魔槍砲と剣を静かに床に置く。 足袋をしなやかな動きで脱ぎ捨て、ゴーグルを外すと、黒い長い髪がさらりと靡く。 そして、キャスケットを華麗に投げ、ロングコートをふわりと脱ぐと……そこに現れたのは黒で統一された豪華なスーツ。 彼の重装備にどよめく観客。シルフィリアもふう、とため息をつく。 「そんなに着こんで暑くなかったの……?」 「暑いよ! でも、酒の席だからおめかしして来たんだーっ!」 「そう。まあ、これからが本番ってところね」 「負けないぞ!」 火花を散らす2人。 何回目かの勝負。今度はふしぎの勝ちだ。 何とも言えぬ扇情的な動きで首飾りを外すシルフィリア。 観客達の目は既に彼女の豊かな胸に釘付けだが、肩からかかるストラで隠されているため良く見えない。 次の勝負もふしぎが勝つと、観客から歓喜の声が上がった。 いよいよストラが外され、たわわな胸の谷間が露になるはずだ……! 観客の期待を感じるのか、クスッと笑ったシルフィリア。 ストラをススス……と焦らすように動かすと、胸の谷間から真っ赤な薔薇が現れる。 「お楽しみは、後に残しておくものよ?」 言い放ち、胸の谷間からゆっくりと薔薇を抜き出した彼女。 薔薇を客席に投げ入れる頃には、客席の男達の鼻の下が伸び切っていた。 「今度は私の勝ちね♪」 「ううう……」 負けたふしぎは、悔しそうに溜息をついてスーツに手をかける。 羞恥心からか、身を竦めるようにして上着を脱ぐ様が、妙に色っぽい。 女子と見紛う顔とこの仕草……うん。悪くないかもしれない。 続く勝負。再度負けたふしぎは、パリッとしたズボンを片足づつ抜いていく。 「下着じゃないから、恥ずかしくないんだからなっ!」 開き直ったように叫ぶ彼。 贅肉がひとかけらもない鍛えられた筋が美しく、ふしぎが男子なのだと言う事は疑いようがない程の見事な肉体。 そこに身につけているのがローライズのパンツにオーバーニーソックスという、アンバランスな格好が何とも罪深い。 その後、シルフィリアから胸元を隠すストラとカチューシャを奪取する事ができたふしぎだったが、再び負けてソックスが奪われ、とうとうローライズ1枚になってしまった。 「絶体絶命のピンチ。しかし僕には、絶対勝てる究極奥義があるのだ!」 ふははは! と不敵に笑うふしぎ。 打鞠拳における究極奥義スキル『夜』を使って、相手が決まり手を出した瞬間に時を止める。 向こうの手が分かれば勝ったも同然……! しかし、そんな彼の目論見は早紀の声によって打ち砕かれた。 「ちょーっと待って下さい! 今、後出しでしたよ!」 彼女の声にどよめく観客。サライが可愛らしく首を傾げる。 「えーと。これって反則になるんでしょうかね?」 「スキル使って直接剥いた訳じゃないけど……どうなるのかしら」 「正々堂々と勝負はしておらぬのう。どうするのじゃ?」 戸惑うシルフィリアに頷いた朱音は高菜に目線を向ける。 その場にいる全員の視線を受け止めた打鞠拳の支配者は、うんうん、と頷いて審判を下した。 「んじゃ、面倒だし反則扱いで」 「『恥ずかし固め』じゃな。やるかの、サライ」 「お任せください! 朱音さん」 「いやああああ!?」 どこからか荒縄を持ってきた2人。会場に、ふしぎの悲鳴が響き渡り……。 「……という訳で第一試合の勝者はシルフィリアー! 称えよ野郎共ー!」 「ふふふ。ありがとう」 高菜の声に、湧き上がる歓声。シルフィリアは豊かな胸をぐっと寄せてサービスしながら、観客達に手を振った。 「さて、我はチョキ以外は出さぬからのぉ? よいか? チョキ以外は出さぬぞ」 迎えた2回戦。顔を合わせるなりそう宣誓した朱音にどよめく観客達。 それに、高菜がキラキラと目を輝かせる。 「……と言う事はアレですね。勝ったり負けたり調整しつつお互い全裸なれと。そういう事ですね!?」 えーと。どうしてそうなるんですかね。高菜さん。 しかし朱音はそれを否定する事なく、ニンマリと笑う。 「うむ。勝っても負けても美味しいしの。我としては」 「そうね。そうよね! そういう事なら遠慮なく行っちゃいますよー!」 頷きあい、オーホホホホと高笑いをする朱音と高菜。 「鞠門!」 「打ち入れ!」 「よよいのよい!」 ハイテンションで歌う2人。朱音は宣誓通りチョキ。高菜はグーだ。 「あら勝っちゃいましたねー。では一枚♪ はっやくっ、はっやくっ♪」 「仕方ないのう」 ノリノリで小躍りする高菜に、呟く朱音。 振袖の中に手を入れると紐ショーツをするすると引きずり出して投げつける。 「こ……これは! 少女とは思えぬ、白いレースたっぷりのセクシーな下着ですね……!」 それをがっちりキャッチし、嘗め回すように観察するサライ。 朱音は動じる事もなくフフンと笑う。 「ふ、どれからとは決まっておらぬしの? これからならば体は見られなかろ?」 「むむ。考えましたね。では次ですっ」 歌と共に繰り出すジャンケン。今度、高菜はパーを出した。 「あら、負けちゃいましたねー。ご褒美たーいむ♪」 負けたのに全然悔しげな様子がない高菜。 後ろを向いてまずは肩を出し、背中を見せ……帯をするすると解いて、艶かしく着物を脱いで行く。 そこで観客は、うおおおお!? と驚きの声をあげる。 着物を投げ捨てた彼女はなんと、草履と赤いショーツのみ。 成熟した豊かな双丘がぷるぷると震える。 「た、高菜さん胸が見えちゃいますよっ」 「あらー。そおー?」 手にした紐パンツと両手で慌てて高菜の胸を隠すサライ。 見た目に違わず柔らかで、持ち上げるとずっしりと重みがあって気持ちいい。 ふにふにと形が変わる高菜の双丘に観客も大興奮である。 ――ちなみに、サライのこの一連の行動はらきすけを装ったガチすけである。 この少年、いたいけな顔をしてなかなかのやり手ですぞ……! 「これはこれは。なかなかに福眼じゃのう」 ニヤニヤとする朱音。見た目は少女だが、中身はオッサンらしい。高菜やサライとアレな意味でいい勝負である。 「んふふー。何だか興奮して来ちゃったー! さあ、朱音ちゃんも脱ぎ脱ぎしちゃいましょうねえ♪」 手をワキワキしながら迫る高菜。次の手はグー。彼女の勝ちである。 朱音は頷くと、帯を外し、可愛らしい色合いの振袖を思い切り良く脱ぎ捨てる。 そして観客達は、二度目の驚きの声をあげた。 着物を脱いだ朱音は、サンダルにリボン、根付と……既にほぼ裸で、身を隠すどころか見せ付けるように仁王立ちしていたからだ。 「何を隠す必要があろうか。我の身体を見て喜ぶような変態はおらぬじゃろ」 「かわいいっ! 平べったい胸も小さなお尻もかわいいわぁっ!」 「つるぺたの美学ですね! 最高です!」 ニヤァ、と笑う朱音。高菜とサライは変態なので勿論大喜びである。 「もー我慢できないっ! 早くジャンケンして残りも脱ぎましょう! さあ! さあ!」 鼻息荒く迫る高菜。こうなって来ると打鞠拳などただの言い訳である。 勝ち、負け、勝ち、負け、と順番に続き……あれよあれよと高菜も朱音も生まれたままの姿になった。 「のう、高菜。この勝負、どっちが勝ったのかのう?」 「んー。しいて言うならどっちも勝ちですよね。楽しいし♪」 「それでは引き分けかの?」 「……という訳で第二試合は引き分けー! 称えよ野郎共ー!」 高菜の声に、再び湧き上がる歓声。そして、この勢いのまま第三試合に雪崩込む。 おかしい。宴会のお手伝いをしていただけなのに、何故こんな事に……? 舞台に立たされ呆然とする早紀。いくら考えても答えは出ない。 「巫女様とこんな事するのは畏れ多いですが……それがいいんですっ!」 スリットが沢山入った色っぽいバラージドレス姿でふふふ……と笑うサライ。 笑う姿すら何だか色っぽいのは、『夜春』の効果だろうか。 ――どうせ戦うなら一番最後に、巫女である早紀と勝負したいと思っていたので嬉しい。 早紀は、対戦を求めて来た可愛らしい少女を空ろな目で見つめ……ふと、違和感を感じて目線を下げると――彼女、もとい彼の身体の中心に、もっこりと、山が出来上がっているのに気がついた。 ――スゴク、オオキイデス。 「いやああああああ!? 不潔っ! 変態ーーーっ!!」 「変態とは何ですか! 女子の裸体を見た健全な男子の自然な反応ですよっ!」 「お黙りなさい! 女の子かと思って安心していたのに……! 精霊の裁きを受けるがいいのですっ!」 涙目でキッと睨みつける早紀。しかし、当のサライにとっては、ああ、巫女さんに睨まれるのもいいなあ、とかちょっとしたご褒美状態である。 こんな! こんな女装趣味の変態に負ける訳には……! 緊張に顔を強張らせながら勝負に臨む早紀。 サライも正々堂々と臆する事なく。 「打鞠〜す〜るならっ♪」 「こ〜いう具合〜にし〜やしゃ〜んせ〜♪」 巫女と踊り子は、厳かに、華麗に舞いながらジャンケンを繰り出し続け……早紀は潔く、サライは恥ずかしげにもじもじと、一枚一枚、薄皮を剥ぐように2人は少しずつ着衣を減らして行く。 「可愛いですねえ……」 とうとう下着姿になり、耳まで赤くなる早紀をうっとり見つめるサライ。 羞恥に身悶える巫女さん。なんて素晴らしいんだろう……。 サライのじっとりとした目線と、観客の舐るような目線に早紀の我慢は限界を突破した。 「こ、こんなの素面ではとても耐えられません!」 手近にあった酒を一気に煽る早紀。 彼女は別な意味で赤くなると、うふふふ……と不気味な笑いを浮かべ始めた。 「姉しゃん。私はどうしてこんな辱めを受けてりゅんでしょうね……?」 「さ、早紀さん……? 大丈夫ですか?」 ぶつぶつと呟く早紀。サライの問いかけに反応を示さない。目が完全に据わっている。 「そう……。そうでしゅね、姉しゃん。目撃者さえいなければ何も恐れる事はないでしゅよね」 呂律回ってないし。 しかも早紀さん、何か聞いたらいけない声聞いちゃってません? 「神座家の名誉はまもりましゅ! 安心してくだしゃい! 姉しゃん!」 キュイイイイイイ……! あ。ヤバイ。精霊砲が来る……! 「野郎共ー! ここで第四回戦開催を宣言するぞー! 四回戦目は生き残りをかけたサドンデスだー!」 「ポロリもあるわよ! 首がね!」 突然の高菜とシルフィリアの宣言に混乱する観客達。 「総員退避ー!!」 「死にたくなければ全員逃げろーー!!」 出口を求めて走る総員。そして非情にも充填が完了し……。 ドーーーーーン!! 「僕に任せて、お前らは先に行け」 「俺、この宴会が終わったら結婚するんだ」 ドーーーーーン!! 次々と光の洪水に飲み込まれていく仲間達。 「あーはははは! 皆消えてしまえばいいんでしゅう〜!」 早紀は破壊の化身となり、宴会場を恐怖の底へと叩き落した。 「むー。結局、早紀とサライの勝負はつかんかったのう」 「皆さんの裸体ステキでしたし、僕もうどっちでもいいです」 「やっぱりサドンデスしましょうよ!」 「とりあえず早紀ちゃんが正気に返ってからかしらね……」 「いいから早くこの縄ほどいてえええ!!」 懲りない打鞠拳参加者達。 ――そして、この騒動は後に『光の七時間』と呼ばれ、早紀は酔いが覚めるまで周囲を焼き尽くしたという。 |