激闘! 打鞠拳!
マスター名:猫又ものと
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 易しい
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2014/08/02 14:47



■オープニング本文

「打鞠〜す〜るならっ♪」

 ……どうしてこうなったのか、今となっては誰もわからない。

「こういう具合にし〜やしゃ〜んせ〜♪」

 酒の席で、誰かが『打鞠拳しようぜ!』と言い出したことが発端だったような気がする。

 打鞠拳とは、石鏡のとある地域に古くから伝わる遊戯の一種である。
 じゃんけんをし、負けた側が服を一枚ずつ脱いでいき、全裸になったら負けというごく簡単な法則。
 難しい道具が要らないため、宴会などでもよく行われるが、じゃんけんの際も、服を脱ぐ際も踊るように優雅に動くのが由緒正しいお作法である。

 どうしてこうなったのか分からないが、もう一度言う。
 この勝負、服を脱ぐ。
 要するに全裸になったら負けである。
 女性、男性問わず始まったら最後、慈悲はない。
 最後の1枚が剥かれるその時まで勝負は続く。

「毬門!」
「打ち入れ!」
「よよいのよい!」

 ――後悔しても遅い。
 君はこの無慈悲な戦いに足を踏み入れてしまった。
 さあ、開拓者達よ。
 この戦いを勝ち抜き、生き残れ!
 ……羞恥心的な意味でも、社会的な意味でも。
 健闘を祈る!


■参加者一覧
天河 ふしぎ(ia1037
17歳・男・シ
シルフィリア・オーク(ib0350
32歳・女・騎
高崎・朱音(ib5430
10歳・女・砲
神座早紀(ib6735
15歳・女・巫
八条 高菜(ib7059
35歳・女・シ
サライ・バトゥール(ic1447
12歳・男・シ


■リプレイ本文

 宴会場は異様な熱気に満ちていた。
「打鞠拳が見たいかー! 見たいのか皆の衆ー! 私もだ! 私もだ皆ー!」
「うおおおおお!」
「開拓者は皆の為なら体を張るべきだー! と言う訳でそこの3人! 前に出ろおおお!」
「うおおおおお!!」
 ノリノリで観客を煽る八条 高菜(ib7059)に、近くで余興のダンスをしていたサライ(ic1447)が引きずり出される。
「皆さん酔ってますね……」
「仕方がないのう……」
「えっ。あの……?」
 続いて引っ張りだされた高崎・朱音(ib5430)。お盆を手にした神座早紀(ib6735)に至っては状況が掴めていない。
「この3人だけにやらせる訳にはいかない! 無論私も張るぞー!」
「うおおおおおお!」
「いい返事だこのスケベ野郎どもー!」
「……高菜さん。提案があります」
「何かな?」
「反則した人は、罰として『恥ずかし固め』をするというのはどうでしょう」
 はいっ! と挙手をするサライ。
 『恥ずかし固め』とは、後ろ手に縛り立った状態で片足を高く上げさせて吊り、股間を隠せないようにする事を指す。
 その提案に高菜が満足気に頷くと、観客達は更に盛り上がる。
「よし! 反則を期待しよう! では、栄えある第一試合はこの2人ー! 皆、刮目せよーー!」
「いぇああああああ!!!」
「えっ!? えええっ?!」
「あら。私? いいわよ〜」
 高菜に壇上に押し出されてオロオロする天河 ふしぎ(ia1037)。
 シルフィリア・オーク(ib0350)は突然の指名にも関わらず、余裕の笑みを浮かべてふしぎの前に立つ。
 ふしぎはキッチリとした外套。対するシルフィリアは、気品漂う紅いマントから黒いドレスが覗いて……。
 これは、なかなかいい勝負になりそうである。
「打鞠〜す〜るならっ♪ こ〜いう具合〜にし〜やしゃ〜んせ〜♪」
 そしてなし崩しに始まる大合唱。
 ……ど、どうしよう。
 でも、挑まれたら断る訳にはいかない。そう。やるしかない……!
 意を決したふしぎ。
 掛け声と共に、じゃんけんを繰り出し……結果は。
「あら。私の負けね」
「ふふふ……。シノビ式じゃんけん術を使いこなす僕に、勝てると思わない方がいいぞ!」
 スターパラソルを可愛らしく回して床へ置くシルフィリアに、不敵な笑いを浮かべるふしぎ。
 シノビ式じゃんけん術とは、超越聴覚を駆使し、相手の心音や指の摩擦音から瞬時に出す手を読む術である。
 ちなみに打鞠拳の巫女ちゃんの通信講座で、誰でも受講可能らしいぞ!
「見え見えなんだぞ!」
 シノビ式ジャンケン術のお陰か、破竹の快進撃を見せるふしぎ。
 扇で隠しながら止め具を外すと、するすると身体を滑るように落ちていくマント。
 モノクルを取り、スケイルメイルを色っぽく身を捩りながら外すと、たわわな胸がドレスの上からでもハッキリ分かる。
 太ももから手をゆっくり這わせ、ハイヒールを片足つづ脱ぎ捨てると、ドレスのリボンに手を伸ばし、少しずつ緩めて行き……。
 うおおおお! と歓喜の声を上げる観衆。
 立て続けに負けて、シルフィリアの真っ白い肉質な太ももが露になった辺りで、ふしぎの挙動がおかしくなった。
「あら。シノビ式じゃんけん術はもうおしまい?」
「白い足が綺麗だな〜……って、違うぞ! なっ、なんにも見てない! 見てないんだからなっ!」
 彼女の言葉にミエミエの嘘をつくふしぎ。彼は超越聴覚を再度使うも、自分の心音で聞こえない。
 シルフィリアの艶っぽい姿に調子を崩され、今度は連敗を期す。
 震える手でペンダントと指輪をそっと外すと、魔槍砲と剣を静かに床に置く。
 足袋をしなやかな動きで脱ぎ捨て、ゴーグルを外すと、黒い長い髪がさらりと靡く。
 そして、キャスケットを華麗に投げ、ロングコートをふわりと脱ぐと……そこに現れたのは黒で統一された豪華なスーツ。
 彼の重装備にどよめく観客。シルフィリアもふう、とため息をつく。
「そんなに着こんで暑くなかったの……?」
「暑いよ! でも、酒の席だからおめかしして来たんだーっ!」
「そう。まあ、これからが本番ってところね」
「負けないぞ!」
 火花を散らす2人。
 何回目かの勝負。今度はふしぎの勝ちだ。
 何とも言えぬ扇情的な動きで首飾りを外すシルフィリア。
 観客達の目は既に彼女の豊かな胸に釘付けだが、肩からかかるストラで隠されているため良く見えない。
 次の勝負もふしぎが勝つと、観客から歓喜の声が上がった。
 いよいよストラが外され、たわわな胸の谷間が露になるはずだ……!
 観客の期待を感じるのか、クスッと笑ったシルフィリア。
 ストラをススス……と焦らすように動かすと、胸の谷間から真っ赤な薔薇が現れる。
「お楽しみは、後に残しておくものよ?」
 言い放ち、胸の谷間からゆっくりと薔薇を抜き出した彼女。
 薔薇を客席に投げ入れる頃には、客席の男達の鼻の下が伸び切っていた。
「今度は私の勝ちね♪」
「ううう……」
 負けたふしぎは、悔しそうに溜息をついてスーツに手をかける。
 羞恥心からか、身を竦めるようにして上着を脱ぐ様が、妙に色っぽい。
 女子と見紛う顔とこの仕草……うん。悪くないかもしれない。
 続く勝負。再度負けたふしぎは、パリッとしたズボンを片足づつ抜いていく。
「下着じゃないから、恥ずかしくないんだからなっ!」
 開き直ったように叫ぶ彼。
 贅肉がひとかけらもない鍛えられた筋が美しく、ふしぎが男子なのだと言う事は疑いようがない程の見事な肉体。
 そこに身につけているのがローライズのパンツにオーバーニーソックスという、アンバランスな格好が何とも罪深い。
 その後、シルフィリアから胸元を隠すストラとカチューシャを奪取する事ができたふしぎだったが、再び負けてソックスが奪われ、とうとうローライズ1枚になってしまった。
「絶体絶命のピンチ。しかし僕には、絶対勝てる究極奥義があるのだ!」
 ふははは! と不敵に笑うふしぎ。
 打鞠拳における究極奥義スキル『夜』を使って、相手が決まり手を出した瞬間に時を止める。
 向こうの手が分かれば勝ったも同然……!
 しかし、そんな彼の目論見は早紀の声によって打ち砕かれた。
「ちょーっと待って下さい! 今、後出しでしたよ!」
 彼女の声にどよめく観客。サライが可愛らしく首を傾げる。
「えーと。これって反則になるんでしょうかね?」
「スキル使って直接剥いた訳じゃないけど……どうなるのかしら」
「正々堂々と勝負はしておらぬのう。どうするのじゃ?」
 戸惑うシルフィリアに頷いた朱音は高菜に目線を向ける。
 その場にいる全員の視線を受け止めた打鞠拳の支配者は、うんうん、と頷いて審判を下した。
「んじゃ、面倒だし反則扱いで」
「『恥ずかし固め』じゃな。やるかの、サライ」
「お任せください! 朱音さん」
「いやああああ!?」
 どこからか荒縄を持ってきた2人。会場に、ふしぎの悲鳴が響き渡り……。
「……という訳で第一試合の勝者はシルフィリアー! 称えよ野郎共ー!」
「ふふふ。ありがとう」
 高菜の声に、湧き上がる歓声。シルフィリアは豊かな胸をぐっと寄せてサービスしながら、観客達に手を振った。


「さて、我はチョキ以外は出さぬからのぉ? よいか? チョキ以外は出さぬぞ」
 迎えた2回戦。顔を合わせるなりそう宣誓した朱音にどよめく観客達。
 それに、高菜がキラキラと目を輝かせる。
「……と言う事はアレですね。勝ったり負けたり調整しつつお互い全裸なれと。そういう事ですね!?」
 えーと。どうしてそうなるんですかね。高菜さん。
 しかし朱音はそれを否定する事なく、ニンマリと笑う。
「うむ。勝っても負けても美味しいしの。我としては」
「そうね。そうよね! そういう事なら遠慮なく行っちゃいますよー!」
 頷きあい、オーホホホホと高笑いをする朱音と高菜。
「鞠門!」
「打ち入れ!」
「よよいのよい!」
 ハイテンションで歌う2人。朱音は宣誓通りチョキ。高菜はグーだ。
「あら勝っちゃいましたねー。では一枚♪ はっやくっ、はっやくっ♪」
「仕方ないのう」
 ノリノリで小躍りする高菜に、呟く朱音。
 振袖の中に手を入れると紐ショーツをするすると引きずり出して投げつける。
「こ……これは! 少女とは思えぬ、白いレースたっぷりのセクシーな下着ですね……!」
 それをがっちりキャッチし、嘗め回すように観察するサライ。
 朱音は動じる事もなくフフンと笑う。
「ふ、どれからとは決まっておらぬしの? これからならば体は見られなかろ?」
「むむ。考えましたね。では次ですっ」
 歌と共に繰り出すジャンケン。今度、高菜はパーを出した。
「あら、負けちゃいましたねー。ご褒美たーいむ♪」
 負けたのに全然悔しげな様子がない高菜。
 後ろを向いてまずは肩を出し、背中を見せ……帯をするすると解いて、艶かしく着物を脱いで行く。
 そこで観客は、うおおおお!? と驚きの声をあげる。
 着物を投げ捨てた彼女はなんと、草履と赤いショーツのみ。
 成熟した豊かな双丘がぷるぷると震える。
「た、高菜さん胸が見えちゃいますよっ」
「あらー。そおー?」
 手にした紐パンツと両手で慌てて高菜の胸を隠すサライ。
 見た目に違わず柔らかで、持ち上げるとずっしりと重みがあって気持ちいい。
 ふにふにと形が変わる高菜の双丘に観客も大興奮である。
 ――ちなみに、サライのこの一連の行動はらきすけを装ったガチすけである。
 この少年、いたいけな顔をしてなかなかのやり手ですぞ……!
「これはこれは。なかなかに福眼じゃのう」
 ニヤニヤとする朱音。見た目は少女だが、中身はオッサンらしい。高菜やサライとアレな意味でいい勝負である。
「んふふー。何だか興奮して来ちゃったー! さあ、朱音ちゃんも脱ぎ脱ぎしちゃいましょうねえ♪」
 手をワキワキしながら迫る高菜。次の手はグー。彼女の勝ちである。
 朱音は頷くと、帯を外し、可愛らしい色合いの振袖を思い切り良く脱ぎ捨てる。
 そして観客達は、二度目の驚きの声をあげた。
 着物を脱いだ朱音は、サンダルにリボン、根付と……既にほぼ裸で、身を隠すどころか見せ付けるように仁王立ちしていたからだ。
「何を隠す必要があろうか。我の身体を見て喜ぶような変態はおらぬじゃろ」
「かわいいっ! 平べったい胸も小さなお尻もかわいいわぁっ!」
「つるぺたの美学ですね! 最高です!」
 ニヤァ、と笑う朱音。高菜とサライは変態なので勿論大喜びである。
「もー我慢できないっ! 早くジャンケンして残りも脱ぎましょう! さあ! さあ!」
 鼻息荒く迫る高菜。こうなって来ると打鞠拳などただの言い訳である。
 勝ち、負け、勝ち、負け、と順番に続き……あれよあれよと高菜も朱音も生まれたままの姿になった。
「のう、高菜。この勝負、どっちが勝ったのかのう?」
「んー。しいて言うならどっちも勝ちですよね。楽しいし♪」
「それでは引き分けかの?」
「……という訳で第二試合は引き分けー! 称えよ野郎共ー!」
 高菜の声に、再び湧き上がる歓声。そして、この勢いのまま第三試合に雪崩込む。


 おかしい。宴会のお手伝いをしていただけなのに、何故こんな事に……?
 舞台に立たされ呆然とする早紀。いくら考えても答えは出ない。
「巫女様とこんな事するのは畏れ多いですが……それがいいんですっ!」
 スリットが沢山入った色っぽいバラージドレス姿でふふふ……と笑うサライ。
 笑う姿すら何だか色っぽいのは、『夜春』の効果だろうか。
 ――どうせ戦うなら一番最後に、巫女である早紀と勝負したいと思っていたので嬉しい。
 早紀は、対戦を求めて来た可愛らしい少女を空ろな目で見つめ……ふと、違和感を感じて目線を下げると――彼女、もとい彼の身体の中心に、もっこりと、山が出来上がっているのに気がついた。
 ――スゴク、オオキイデス。
「いやああああああ!? 不潔っ! 変態ーーーっ!!」
「変態とは何ですか! 女子の裸体を見た健全な男子の自然な反応ですよっ!」
「お黙りなさい! 女の子かと思って安心していたのに……! 精霊の裁きを受けるがいいのですっ!」
 涙目でキッと睨みつける早紀。しかし、当のサライにとっては、ああ、巫女さんに睨まれるのもいいなあ、とかちょっとしたご褒美状態である。
 こんな! こんな女装趣味の変態に負ける訳には……!
 緊張に顔を強張らせながら勝負に臨む早紀。
 サライも正々堂々と臆する事なく。
「打鞠〜す〜るならっ♪」
「こ〜いう具合〜にし〜やしゃ〜んせ〜♪」
 巫女と踊り子は、厳かに、華麗に舞いながらジャンケンを繰り出し続け……早紀は潔く、サライは恥ずかしげにもじもじと、一枚一枚、薄皮を剥ぐように2人は少しずつ着衣を減らして行く。
「可愛いですねえ……」
 とうとう下着姿になり、耳まで赤くなる早紀をうっとり見つめるサライ。
 羞恥に身悶える巫女さん。なんて素晴らしいんだろう……。
 サライのじっとりとした目線と、観客の舐るような目線に早紀の我慢は限界を突破した。
「こ、こんなの素面ではとても耐えられません!」
 手近にあった酒を一気に煽る早紀。
 彼女は別な意味で赤くなると、うふふふ……と不気味な笑いを浮かべ始めた。
「姉しゃん。私はどうしてこんな辱めを受けてりゅんでしょうね……?」
「さ、早紀さん……? 大丈夫ですか?」
 ぶつぶつと呟く早紀。サライの問いかけに反応を示さない。目が完全に据わっている。
「そう……。そうでしゅね、姉しゃん。目撃者さえいなければ何も恐れる事はないでしゅよね」
 呂律回ってないし。
 しかも早紀さん、何か聞いたらいけない声聞いちゃってません?
「神座家の名誉はまもりましゅ! 安心してくだしゃい! 姉しゃん!」
 キュイイイイイイ……!
 あ。ヤバイ。精霊砲が来る……!
「野郎共ー! ここで第四回戦開催を宣言するぞー! 四回戦目は生き残りをかけたサドンデスだー!」
「ポロリもあるわよ! 首がね!」
 突然の高菜とシルフィリアの宣言に混乱する観客達。
「総員退避ー!!」
「死にたくなければ全員逃げろーー!!」
 出口を求めて走る総員。そして非情にも充填が完了し……。
 ドーーーーーン!!
「僕に任せて、お前らは先に行け」
「俺、この宴会が終わったら結婚するんだ」
 ドーーーーーン!!
 次々と光の洪水に飲み込まれていく仲間達。
「あーはははは! 皆消えてしまえばいいんでしゅう〜!」
 早紀は破壊の化身となり、宴会場を恐怖の底へと叩き落した。


「むー。結局、早紀とサライの勝負はつかんかったのう」
「皆さんの裸体ステキでしたし、僕もうどっちでもいいです」
「やっぱりサドンデスしましょうよ!」
「とりあえず早紀ちゃんが正気に返ってからかしらね……」
「いいから早くこの縄ほどいてえええ!!」
 懲りない打鞠拳参加者達。

 ――そして、この騒動は後に『光の七時間』と呼ばれ、早紀は酔いが覚めるまで周囲を焼き尽くしたという。