【初夢】スライムが現れた!
マスター名:猫又ものと
シナリオ形態: ショート
EX
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2014/01/20 13:25



■オープニング本文

※このシナリオは初夢シナリオです。
 オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。


 突如として現れたアヤカシは、手のひらサイズの小さな粘泥だった。
 紫色のスライムは、何もせず。
 あまり強そうには見えないそれは、10数匹で、ただぷよぷよしていた。


「……何か、どこかで見た光景だな」
「そうだったっけ?」
「うわ。気持ち悪ィ!」
「さっさと倒しちゃいましょう」
 頷き合う開拓者達。


 カイタクシャ1の こうげき!
 パープルスライム1に 0のダメージ!


「あれ? 今確かに当たったのにな……」
「ちょっと! 剣! 剣!!」
「な……!? 溶けた、だと?!」
「……このスライム、もしかして……」


 パープルスライム1の こうげき!
 カイタクシャ3に 0のダメージ!


「うおっ!」
「大丈夫!?」
「ぎゃああああああ!! 俺の鎧がああああああ!!」
「鎧も溶けた……! やっぱりーーーー!!」


 パープルスライム2は なかまを よんだ!
 パープルスライム16が あたらしく あらわれた!

 パープルスライム3は なかまを よんだ!
 パープルスライム17が あたらしく あらわれた!

 パープルスライム4は なかまを よんだ!
 パープルスライム18が あたらしく あらわれた!

 パープルスライム5は なかまを よんだ!
 パープルスライム19が あたらしく あらわれた!

 パープルスライム6は なかまを よんだ!
 パープルスライム20が あたらしく あらわれた!

 パープルスライム7は なかまを よんだ!
 パープルスライム21が あたらしく あらわれた!

 パープルスライム8は なかまを よんだ!
 パープルスライム22が あたらしく あらわれた!


「ちょっとやだ! どんどん増えてるじゃない!」
「完全に囲まれたな……」
「くそ。こうなったら素手で行くぞ!」
「うん。それがいいと思う……」


 カイタクシャ1 のこうげき!
 パープルスライム2に 2014のダメージ!
 パープルスライム2 はたおれた!

 パープルスライム1の こうげき!
 カイタクシャ3に 0のダメージ!

 パープルスライム3は なかまを よんだ!
 パープルスライム23が あたらしく あらわれた!

 パープルスライム4は なかまを よんだ!
 パープルスライム24が あたらしく あらわれた!

 パープルスライム5は なかまを よんだ!
 パープルスライム25が あたらしく あらわれた!


「弱っ!」
「素手なら攻撃できるんだな……」
「ぎゃあああああ!! 気持ち悪ィ! こっち来るんじゃねええええ!!」
「……というか、私、避けられてる気がするんだけど……気のせい?」

 怒号と悲鳴が入り乱れる地獄の中、女性開拓者がぽつりと呟く。
 よくよく見ると、粘泥達には人間の笑顔のような模様があり、時折『ホモォ……』という鳴き声のようなものをあげている。

「これってもしかして……」
「もしかするわよね……」

 途端に目をキラキラと輝かせる女性開拓者達。
 自分達の推測が正しいとしたら……。
 これは、とっても美味しい状況かもしれない。主にカタケット的な意味で。

 残りの男性開拓者達は、女子達からの不穏な空気を察しつつ、この状況を必死で整理していた。

 このスライム、一体一体はさほど強くない。というか弱い。
 剣や鎧、洋服と言った装備品をことごとく溶かす。
 素手の攻撃は通る。
 とにかく仲間を呼ぶ。どんどん呼ぶ。
 男性にしか興味が無いらしく、女性は襲わない。
 攻撃されると舐め回されているようでとにかく気持ち悪い。
 そして……。

『ホモォ……』
『ホモォ……』
『ホモォ……』

「ちょっと紙持ってる!? ペンは!?」
「あああ! こんな機会が巡ってくるなんて……!」

 前方には不気味に鳴くパープルスライム。こうしている間もどんどん増え続けている。
 後方には目をギラギラさせて、ハァハァ言っている女性開拓者達――。

 物凄く分が悪い状況。
 さて、どうする?


■参加者一覧
相川・勝一(ia0675
12歳・男・サ
エルディン・バウアー(ib0066
28歳・男・魔
ワイズ・ナルター(ib0991
30歳・女・魔
蒔司(ib3233
33歳・男・シ
御影 紫苑(ib7984
21歳・男・志
日依朶 美織(ib8043
13歳・男・シ
ラグナ・グラウシード(ib8459
19歳・男・騎
三郷 幸久(ic1442
21歳・男・弓


■リプレイ本文

 謎の鳴き声をあげる紫のスライム。
 気持ち悪いが、弱そうだし楽勝だろう……なんて気楽に考えていた開拓者達は予想外の状況に呆然としていた。
「グングニルが効果ない……というか溶かされたー!?」
 己の槍が、まるで飴のように溶けて無くなってしまった事に、わたわたと慌てる相川・勝一(ia0675)。
「……何なのですか、このアヤカシ」
 美しい顔に笑みを湛えたままつぶやく御影 紫苑(ib7984)。それに、ワイズ・ナルター(ib0991)がうーん、と考え込む。
「ホモォ属性のスライムというところかしらね」
「ホモォって、もしかしてアレですか……?」
 青ざめるエルディン・バウアー(ib0066)。
 その言葉は以前確かに聴いている。
 そう。夏と冬に開催される、開拓者の某お祭りで……!
「初回でこれか。これなんか」
 その横で果てしなく遠い目をしている三郷 幸久(ic1442)。
 里から出てきて初の依頼。
 それ故、手軽なのを選んだつもりだったのだが……色々とこう、悪い予感しかしない。
「恐ろしい敵……早く何とかしないとっ」
 ふるふると、子兎のように震える日依朶 美織(ib8043)。
 こうしている間も、勝一の槍がどんどん溶かされている。
 蒔司(ib3233)は鋭い目で紫の粘泥を睨むと、パキリパキリと指を鳴らす。
「武器は通用せんようやな。が、素手だろうと、攻撃が通るんやったら怖るるに足らん」
「そ、そうだな。ここは皆で力を合わせて……」
 珍しく真面目な事を言いかけたラグナ・グラウシード(ib8459)。
 ふと、スライムを見て――ばっちりと、目が合ってしまった。
「うわあああ! うさみたんうわあああ!!」
 途端に恐慌状態に陥るラグナ。大剣を無茶苦茶に振り回す。
「ラグナ! 落ち着け!」
「闇雲に動いては相手の思う壺です!」
「やめろおお! 来るなああ!!」
 蒔司と美織の制止も聞かず、ラグナはジタバタと暴れる。
 ラグナは先日、似たような顔を持ち、『ホモォ』と鳴くアヤカシに酷い目に遭わされており……スライムの顔を見た途端、恐るべき記憶が噴出したらしい。
 勝一は唯一その事情を知っていたのだが……襲われている真っ最中のため、説明のしようがなかった。
「滅しろホモォ!」
 空を切るラグナの剣。確かに憎き粘泥を両断したはず……なのだが。
「はうっ!?」
 ――ない。
 自慢の大剣の先がない。
 ふと足元を見ると、這い寄るあの笑顔が、自分のブーツをじわじわと溶かしていて――。
「ぎゃあああ!!!」
「誰かああ! 援護ぉおぉ! お願いしますうぅぁあぁ!」
 辺りに響くラグナと勝一の悲鳴。
「ヤバイ。装備がヤバイ」
「……これがあのアヤカシの能力なのですね。なるほど」
 我に返り、慌てて装備を脱ぎ始める幸久に一人頷く紫苑。
 紫苑は徐に近くの樹に登ろうとして、エルディンに引きずり降ろされる。
「ちょっと、どこに行くんですか」
「ほ、ほら。私、弓を専門に扱うので遠くから狙わないといけないじゃないですか」
「スライムに弓は効果ないみたいですよ?」
「いやいや、やってみないとわからないじゃないですか!」
 冷静に状況を指摘するエルディンに、必死にいい訳をしながら後ずさる紫苑。
「問答無用! 男なら! 正面からどーんと行けー!」
 言うや否や、紫苑を押し出したナルター。
 彼はすぐさま体勢を立て直そうとして……。
 ――ぶにゃり。
 ……何か、柔らかいモノを踏みましたね。
 引きつる紫苑の笑顔。

 ――ホモォ。

 下から聞こえて来る声。見たくない。足元を見たくない。
 そんな事をしている間も、粘泥達はどんどん増え、仲間達を取り囲んでいた。


「はぅ、ふ、服がーー!」
 響く勝一の短い悲鳴。
 何故かトラの着ぐるみ姿で参戦していた彼。
 鮮やかな黄色と黒のしましまが穴だらけになり、そこから粘泥が潜り込もうとぷるぷると身体を震わせ……ずるり、と太ももの辺りの着ぐるみが溶け落ちる。
 最初はなるべく距離を取るようにしていたが、何しろ数が多いし効果も薄い。
 仕方がないと自ら近づいたが……彼の頭をよぎるのは『後悔』の二文字。
 ずるずるという音と、足を撫で回されるような感覚を我慢しつつ、勝一は腕を振るい――。
「あああ! 脇腹はいやあああ!」
「ああ! 女の子のような愛らしい顔が恐怖に歪む様……最高だわ!」
「勝一殿ー! 今助けますーー!」
 勝一が徐々に這い上がって来るスライムと格闘する様を、目をギラギラさせて見つめているナルター。
 ものすごい勢いでペンを走らせる彼女の横を、エルディンが走り抜けようとして……粘泥達に足を取られる。
「ナルター殿! 勝一殿を助けますから援護して下さい!」
「はいはーい」
 エルディンの叫びに、紙から顔を上げずに返事をした彼女。
 次の瞬間、聞こえたべしょりという音。
 背中に、何だか嫌な感触がして……恐る恐る後ろを見ると、粘泥の笑顔がそこに張り付いていて、エルディンは戦慄する。
「なんという事でしょう、私の教会礼装が! って、あ、ちょっとやめっ……」
 色鮮やかな教会礼服が溶けて行く。
 それをあざ笑うかのように、背中を這いずるスライム。
 嘗め回すような感触に慣れる間もなく、前から横から、次々と粘泥が飛び掛って来る。
「ああっ、ウンシュルトがぁぁー!! これにどんだけお金かかってるのか分かってるんですか!?」
 杖や服……装備をここまで育てるのに、幾多の星を落とした。
 大事な装備が一瞬にしてくず鉄になる恐怖。
 それ怯えながら、繰り返し行った強化。
 それが、こんな変な粘泥に一瞬で溶かされるとは……!
「エルディンさんの絶望に満ちた表情も色っぽいわねえ……」
 うふふ、と満足気に頷くナルター。
 彼の背中にスライムを投げつけたのは自分だなんて、口が裂けても言えない。
「手ごたえは薄い。弱い、のじゃろうが……これだけ多いと厄介じゃな」
「手裏剣も溶かすだなんて……!」
 お互いの背を庇うように、背中合わせに立つ蒔司と美織。
 蒔司と美織は、シノビの俊敏さを生かして敵を蹴散らし、確実に数を減らして行く。
 しかし、打ち込む度に、手足を嘗め回されるような……この、未だかつてないこの何とも言い難い這い寄る悪寒は何なのだろう。
 しかも倒す度に飛び散る粘泥が、少しづつ纏っている装束に穴を空けていく。
 倒しても倒さなくても身に纏っているものを奪うとは。パープルスライム恐るべし……!
「やめろおおお! 来るなあああ!!」
 一方のラグナはと言うと、喚き散らしながら、うさぎのぬいぐるみを天高く掲げた状態で立ち尽くしていた。
 スライムは装備や服を溶かす、という事は、布で出来ているぬいぐるみも溶かすという事だ。
 命より大事なうさみたんを、溶かされる訳にはいかない。
 一応自分も騎士だし、敵に背を向けて逃げると言う選択も出来ない。
 自分はどうなろうとも、うさみたんは守らなければ……!
 ちなみに、この状況。粘泥達にやられ放題なんですけどね?
 ラグナは、苦境を乗り切る事が出来るのか……!?
「ちょっと、私なんて狙ってもいい事ないですよ……!」
「あー。……俺、初めてなんで優しくして貰えないものかな」
「え!? 初めてなの!?」
 ――ホモォ!!
 己をぐいぐいと前面に押し出す紫苑に、ジト目を向けた幸久。
 その台詞に、ナルターとスライム達大歓喜。
「初めてってそういう意味じゃないでしょう!」
「いや、そっちも初めてだけどさ……」
「イヤッホー! 大丈夫! 優しくするから!」
 ――ホモォ!!

 紫苑のツッコミと幸久のつぶやき! 腐女子とパープルスライム達の やる気があがった!

「喜ばせてどうするんですか!」
「そんなつもりはない! っていうか、ナルターさんはどっちの味方なんだあああ!!」
「腐女子の味方よ! ハイル! ホモォ!」
 ――ホモォ!
 紫苑と幸久の叫びに、ビシィっとポーズを決めたナルターとスライム。
 ホモォホモォと囁くように鳴くスライムに、彼女は激しく頷く。
「え? 男の娘おいしいです? うん、そうよね。勝一さんも美織さんもイイわよね」
 ――ホモォ。
「うん。そうね。蒔司さんの弾ける筋肉も素敵よね。全身にある傷もいい味だしてるし」
 ――ホモォ。
「エルディンさんは攻めか受けか? そうねえ。わたくし的には……」
 和気藹々と語り合うナルターとスライム。
 というか、ナルターさん、スライムの言ってる事分かるんですか!?
「うん。何となく通じ合ってる気がする」
 何と……! 腐女子恐るべし。
「と言う訳だから、遠慮なく剥かれちゃいなさーい!」
 ころころと笑うナルター。容赦なくフローズで男性陣の動きを鈍らせる。
 あちこちから響く悲鳴と怒号。
 紫苑と幸久の抗議も空しく、スライム達が襲いかかる……!
「くぅ……! やめなさい……! やめ……!」
「やめて。婿入り前なの。やめてーー!!」
 逃れようともがく度に、乱れる紫苑の艶やかな黒髪。スライムが動くたびに覗く、中世的な顔からは想像もつかないような、逞しい身体。
 そして幸久の、細身だがしっかり筋肉がついた均整の取れた身体がだんだんと露になる。
「た、大変……! ああっ」
 スライムに飲み込まれた二人に気を取られ、隙を突かれた美織。
 かろうじて身体にしがみついていた千早が、はらりと地に落ちる。
 そこにあるのは、肉付きの薄い、中性的な肢体。
 白く滑らかな肌。あちこちに散る、虫に刺された様な赤い跡。そして、手足には縄の跡がくっきりと……。
「ち、違うんです! これは季節外れの蚊! 蚊です! 夕べ旦那様がハッスルしたからじゃありません! 縄の跡は縄抜けの修業で! 旦那様がたまにはこういうのもいいね、と言って私を強引に押さえ付けて……ああ、もう旦那様ったら。思い出すだけで体が火照……いえ違います! そういうんじゃないですから!」
「それからそれから!? どんどん教えて!?」
 続いた盛大な自爆に歓喜するナルター。
 仲間達の絶対零度的な冷たい目線に反して、興奮状態になった粘泥達は、美織の美しい身体に一斉に飛び掛る。
 ――ホモォ!!
 ――ホモォオオォオ!!
「ああっ。ダメッ! ダメですそこは……! 旦那様に叱られちゃううう!!」
「ぎゃああああ! やめてえええ! うさみたんたすけてえええ!!」
 そして聞こえてくるラグナの悲鳴。
 結局棒立ちのまま、スライムに襲われたらしい。
 普段は重たい鎧に隠された身体。それは意外にも、しっかりと筋肉がつき、男らしさに溢れている。
 顔も優男風だし、黙っていればモテそうなものを……。
 行動がアレなのが非常に残念です!
「み、美織さん……! ラグナさん……!」
 目の前に繰り広げられる地獄絵図に、勝一は己の力不足を感じていた。
 今やとらの着ぐるみは溶けてなくなり、褌一丁。
 ほっそりとした、少年らしい身体つきが日の下に晒されて、恥ずかしさで思うように動けない。
 そんな勝一を弄ぶかのように、身体を這いずり、嘗め回す粘泥。
 その横で、勝一を助けに来たはずエルディンが粘泥まみれになっていた。
「聖職者の肌を晒すわけにはいかないのです……っ」
 このような状況でも諦めずに抵抗を見せる彼。
 粘泥の海から逃れようと、何かを掴んで――。
 むんず。はらり。
「きゃああああああ!!」
 途端にあがる悲鳴。エルディンが掴んだのは、勝一の褌だったらしい。
 最後の一枚を失って、彼は更に慌てふためく。
「いやあああ! 丸見えじゃないですかあああ!」
「ああ、大丈夫! 立派ですよ!」
「そういう問題じゃないでしょ!!」
 目線を下にずらしたエルディンは、イイ笑顔でサムズアップ。
 カオスな状況に終止符を打つべく、蒔司が飛び込んで行く。
「しっかりしろ、今助けに行くきに……!」
「蒔司さああん!」
 勝一は、黒い獅子の耳を持つ逞しい救世主に手を伸ばし……。
 ずるり。
「な……!」
 珍しく動揺する蒔司。
 嫌な音と共に、彼の最後の砦が引き摺り下ろされ……黒い艶やかな尻尾がするりとこぼれ落ちる。
 溺れる者は藁をも掴む。
 勝一には、それが藁に見えたのかもしれない。迷わずその黒い紐を掴む。
「ちょ、尻尾はやめ……!」
 下着を下ろされた上に尻尾を掴まれて硬直する蒔司。
 彼は既に粘泥達の猛攻を受けていた為、服は殆ど残っておらず、漆黒の肌に無数の傷を残す均整の取れた身体を晒している状態だった。
 そこに、新たに現れた尻尾。スライム達は嬉々としてそこを集中攻撃し始める。
「く……! わざとやっちょるんかこいつら……絶対に、許さ……っ」
「蒔司さん、助けてー」
「わかっちょる! 助けるから、尻尾を離せ……!」
 膝をつきそうになるのを必死で堪える蒔司。縋りつく勝一ともみ合いになる。
「あー。流石、蒔司さんもエルディンさんも良い身体してるなぁ。というか、美織さんが男子だったとは……! 俺の経験も知識も甘かった……」
 遠い目をしながらぶつぶつと呟く幸久。
 大丈夫ですか? 壊れてませんか?
 そんな混沌とした状況の中、エルディンは修羅場を迎えていた。
「いけません、ああっ……ダメですってば!」
 止まぬ攻撃に、抵抗する彼。
 粘泥達は手を緩めず、彼の臀部をしつこく狙い、優しく撫で回し……。
「こら! どこ触ってるんですかやめ……アッーーーー!!」

 ブチィッ!
 ゴゴゴゴゴゴゴゴ。

「あー。これどこかで見た展開ですよ。使いまわしとか手抜きですねえ……」
 紫苑さんお黙りなさい。
 聖職者としても一般男子としても色々不味いところを弄られ続けたエルディンは、限界を超えたらしい。
「てめえこのやろう! 俺の体を好き勝手しやがって! 全員ぶち殺すぞ!!」
 青い目が殺気で赤く変わり、どす黒いオーラを放った彼は、怯えるパープルスライムを物凄い勢いで蹴散らして行く。
「うあああん! 汚されてしまったお!」
「もう、おムコに行けない……!」
 そして、うさみたんを抱きしめ、壊れたように泣きじゃくるラグナと、がっくり膝をつく勝一。
 そんな二人の肩にそっと手を置いて、美織が微笑む。
「大丈夫です。私のようにお嫁に行くという手があります……!」
「……それって大丈夫って言うのか?」
 幸久の突っ込みに、黙って首を振る蒔司。
「あーっはははは! 皆、素敵よー!」
 そして、腐女子ナルターの笑いが、いつまでも響いて――。


「……はっ!」
 ガバッと起き上がった蒔司。
 仲間達と新年会をしていたら、いつの間にか眠っていたらしい。額の汗を拭う。
 身を起こし、ぼんやりと頭を振る紫苑と幸久。
 美織は起きるなり弁解を始めるし、ナルターは原稿! とかいいながら何やら必死に描き始めるし、エルディンは寝ながら暴れているし、ラグナと勝一はさめざめと泣いているが、大丈夫だろうか……?
 まあ、いいや。とりあえず、寝直そう。きっと次はいい夢のはずだ。
 開拓者達は頷き合うと、ごろりと横になった。