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■オープニング本文 「という訳で治馬(はるま)! 着替えなさい!」 ジルベリアの夏にきわどく涼しい風が吹いた。 治馬と言われた少年(赤袴を着ている彼はジルベリア人から見れば、少女と思われただろう)は、姉が突き出した、パレオ付きのセパレートに泣き顔を浮かべる。 「姉さん、天儀で観光経営に失敗したからって、ジルベリアでまで、同じ事を」 その姉と呼ばれた、少女を脱しかけている女『桜姫』は頷く。 「そう。同じ過ちは繰り返さない。天儀で天儀風の事をやったって、皆が同じ事をしているだけ。でも、このジルベリアで敢えて異国情緒な、泰風の占いを行って興味を引きまくる! 更に暑さにうだった客に冷たい水を提供する。しかもそのお酌がするのが男の子なら──加えて女性にしか見えない、という希少さを維持していれば! エキゾチックジリベリア、ハイルツァーリ!」 桜姫は借金と暑さのせいか脳味噌が逆回転しているらしい。 「でも、ぼくひとりで──」 女装する事をすっかり忘れたのか、治馬が懸命に抗議する。 「知っている? 志体持ちには美形が多いのよ。これは統計的に証明されているの。開拓者ギルドで調べたのよ」 本当かも知れないが、桜姫は単にその場その場で都合の良い事を言っているだけである。 「構わないわ! 美形に勝てるのは美形だけよ! しかも未成熟な肢体を微妙に晒した、カワイイ男の子、酒が三十万杯飲めるわ! もう、ギルドに依頼は出したし、宣伝も打った! ちょっと治馬の身柄を、その手の好事家に、8月中に借金を返せなければ引き渡す。で、私は長期拘束の漁に出る。そんな事をサインしただけよ──治馬‥‥こぼした酒は元に戻らないのよ」 「こぼした酒はもう一度汲めばいいよ〜」 と、言葉で抵抗しながらも、治馬は淡いピンクの水着姿に着替えさせられていた。 パレオが無ければ、どういう光景になっていたかは桜姫しか知らない。 ともあれ、微乳のけなげな少女にしか見えない(体を鍛えろよ‥‥)。 褌を奪回しようとするが、桜姫は無情にひったくる。 何にしても天儀脅威の技術力は体にフィットした水着を作れるのだ。技術的ディティール? 今はそんな事はどうでもいい! 「最初のひとりが完成ね。とりあえず、あと10人」 「‥‥しくしく」 「あのー」 出入りの業者から頼まれて荷物を搬入しに来た、華奢な影に桜姫は俊敏に反応する。 荷物を抱えていたのは茶色の三つ編みを腰まで伸ばし、小麦色の肌の中に眼鏡で茶色い目を隠し、すらりとした手足を暑いから、という理由でむき出しにした少年、風祭均(かざまつり・ひとし)であった。 これもタイプは違うが、女の子顔である。 大抵の任務は先に立って(というより、事件の現場に居合わせて)、仲間に『ピンチだよ〜』と伝えるのが、主な仕事である。 主でない仕事をしようとした結果がこれであるが。 当人にしてみれば宝珠の加工が本業である。宝珠が山のように取れる世界ではないので、中々仕事は回ってこないのであるが。 形容:不幸。 自分が無防備な事を実感していないのか、水場が近い所に行くので、袖なしに海水パンツである、一泳ぎでもして帰るのだろう、 荷物を置いた瞬間、桜姫はペンを取り出し、サインをする様に均に促す。 (受け取る方がサインをするんだよね、何かおかしくない?) 桜姫がサインを確認すると、アルカイックスマイルを浮かべた。 「ひとし、君ね。サインの通り、身柄は一週間、うちで引き受けるから」 「──は!?」 開拓者が一般人に手を挙げては──という、精神的間隙を突かれ、気がつくと、タンクトップを剥がされ、胸回りを覆う生地があった。 最初から履いていた、水着は敢えて残されている。緑を基調とした、様々な色が喧噪を繰り広げている柄であり、かなり面積は狭い。 10歳の均にしてもちょっと派手かなぁと冒険して買った品であった。 羞恥心をどう表現して良いか判らず、右往左往している。 そこを治馬が肩を優しく叩いた。人生の先輩であり、この姉の傍若無人な存在を知るが故のジェスチャー。 「簡単に捕まったわ、後──8人」 何か妙に具体的な数字を上げて、勝ち誇った桜姫が均の持ってきた箱を蹴飛ばすと、無数の水着の包みが出てくる。 あとは6枚一セットの銀の皿が多数。 筮竹で八卦を占うのが面倒なので、六枚の皿を順番に投げて、その表と裏の出方で、吉凶を占う。 結局、2の6乗=64通りの結果を平均的に出せる訳だ。まあ、開拓者が本気で投げれば、曲がってしまうが、そんな未来の事は気にしない。 「さて、後は龍とかと一緒に入れる、体の火照りが取れる泉もあるし、着替える所だけ男女に分けて──」 正月とやっている事はまるで変わらない。 「あらどっきりのハプニングッ!」 その桜姫の笑顔は、地獄の底から蘇る、悪魔の化身、毒の花であった。 「後は暑がった開拓者が来るのを待つだけね。太陽よ照れ、湿気よ滾れ! 私は今、確実に美しーい!」 最早、借金と博打的事業でテンションが上がりまくった桜姫が巫女姿で絶叫する! 「見せてやるよ巫女の本領を! 来い開拓者ー!」 |
■参加者一覧 / 鬼啼里 鎮璃(ia0871) / 礼野 真夢紀(ia1144) / 深凪 悠里(ia5376) / 九条 乙女(ia6990) / 御陰 桜(ib0271) / 醍(ib3739) / 暇人最高(ib3754) |
■リプレイ本文 夏のジルベリア、渚を陽光が砕けて走る──。 「捕まえちゃうぞ☆ こいつ!」 「くすくす、だーめ☆」 という会話を鬼啼里鎮璃のペットであるウサギの林檎と、猫又の結珠がしているかは定かではないが、ジルベリアでも『夏』である。あまり家族を放置しないように(笑)。 適当に日陰を作って、そこで自分の体調に合わせて体温調節をさせる。 ともあれ、鎮璃が岸辺からこませを蒔いておき、獲物が寄ってくるまでの間を活かして、周囲の聞き込みをしつつ、行方不明となった均君の消息を追ったのだが、出入りの商人が彼を最後に見たという旅館の前に立っていた。 『卜占致します』と、あちこちの地方、国土の言語で書いてある。墨痕鮮やか、ただし勢いだけで読みづらいが。 「お帰りなさいご主人様」 と、思春期を迎えるか迎えないかの水着姿の女の子達が出迎える。その手の趣味の人なら、たまらんかもしれないが、とりあえず鎮璃はそこで探し人を発見した。 茶髪を太い三つ編みにして、縁の厚めの眼鏡をかけた、小麦色の肌の影に視線を向けた。その姿は。 「風祭さん!?」 「──」 均君は微妙な視線を向ける。そう、彼女の名は風祭均! 「‥‥その恰好は一体?」 「聞かないでください──三万文の違約金を支払うか、3年間のお勤めを果たさないと、帰れないんです」 食事や何やらのためとして、契約書を書かされ、気がつくとこうなっていたらしい。 どこぞの傭兵部隊か、悪徳金融だろうか? 「いらっしゃいませ、どうぞおくつろぎになってください。ひょっとして、うちの娘が何か無礼を?」 奥から出てくるのは桜姫。 「いや、知り合いの男の子がね、ここら辺で行方不明と聞いて──でも、会えたからいいけど」 すがりつく均君の視線。まるで救い主、いな完璧に救い主を見る表情である。 ひょっとして、大アヤカシの前にいる子供が、開拓者を見た時の表情に近いかも知れない。絶対的な信用。 このジルベリアが広しと言え、見がたい光景である。 「罰則と言っても酷いですよ。ちゃんと下も履き替えさせてあげないと──とか、言ったら悪鬼ですけど、雑貨屋のくろがね屋さんが受領証を確認できないと困るというので、配達に来た均君を捜したのですが」 「受領証ならここに。やっぱり下も?」 「自分はどうかと」 「まあ、想像力がかき立てられないものね」 均ちゃんは10歳である。 さらりと、桜姫はたもとから無数の書類を出す──何故、準備していたのか? 問うなかれ! 書類の文面からして、自分の求めた雑貨屋などへの受領書と悟る。 「ああ、これこれ。書類は確保しました。それはそれとして、磯で何か釣れたらさばいてくださいね」 うなずく鎮璃の耳元にさわやかな声が響く。 「お待ちください。氷菓子召し上がりませんか? 今ならサービスです」 と、果汁に溢れた、清涼感あふれる甘味を盆に載せた治馬を従えて、礼野真夢紀が顕れた。 「テイクアウトしたら、溶けそうだし──結珠も林檎も食べたら、お腹を壊しそうだからな、お勧めある?」 真夢紀は匂い立つような笑みを浮かべると、治馬に合図する。 「味だけのお勧めなら、こちらです。でも、甘味を適当に取るというのでしたら──」 「両方貰おっかな? 晩も来るしサービスだもんね」 「じゃあダブルで! 悠里くん追加ね」 銀髪を複雑に結い上げられ、落ち着いた雰囲気の女性が出てくる。 無論、水着である。白いワンピースで清涼感を目指したのだろう。パレオが微妙なアクセントになっている。 深凪悠里である。当人は浴衣で──という意向だったのだが、桜姫はにっこり微笑んで、水着を押しつけた。ワンピースでなければ悠理としても、色々と考証の余地はあっただろう。これが桜姫が策士なのか、天然なのかは分からない。 ただ、男性である悠里にパレオの着用を認めたのは十代半ばになると色々と支障があるからである。 20近くに見えるが、それでも実年齢は十代半ば。 見た目で微妙なギャップがある 中には『だが、それがいい』という客もいたかもしれない。 さすがにジルベリアとはいえ、いや、この桜姫でさえ、ここは浮かれ宿ではないので、直接的な行為をそこまで認めるつもりは多分無い。 じゃあ、そこまでって具体的に何か? 問うなかれ! ほっとした空気が漂う。 「頼もう!」 まだ声変わり前の子供の声が響く。一応、女性も思春期になると声が若干変わるが、まあそんな性差は感じさせない声であった。 もちろん、声の主もそれに似つかわしい天儀人である。 「怪しい巫女を捜していたら──ぶはぁっ!」 盛大に鼻血を吹き出して、卒倒するのは単衣姿の九条乙女。 乙女視点で端から見れば、水着美人の集団である。人間の可能性は無限大とはよく言ったものだ。 後に乙女が語る所によると、均の水着は布地で覆った面積は男性としては、異様に丈が短く、かなりけしからん所まで肌をあらわにしており、乙女なりの自然な生理反応として、鼻血が起きただけだそうだ。 均自身も丈は任せるけど、派手で色が喧騒しているやつというオーダーで(男性水着として)選んでいる。 ちょっとオトナっぽいかな、という程度の実感である。 よく見ると、みな唇に微妙な輝きがあるが、それに関してはここでは言及しない、分かるときもあるだろう。 しかし、鼻血程度で意識を失っていては、開拓者は勤まらない。 「アヤカシではないようだが、尋常ではない様子。この耳でしかと聞いた! 勝負! 勝負! 勝負! 勝利の暁にはその女性陣を解放。負けたときは、煮るなり、焼くなり、好きにするがよい」 桜姫の瞳に不穏な輝きが煌めいた。 「ならば勝負の手段は!」 「スイカ割りでござる!」 「スイカ割り!? あのねボク──」 「坊やではない、乙女と呼ぶでござる!」 「乙女、あのねスイカってね、ジルベリアというか、こんな田舎には売ってないわよ──元々高いし!」 「物価を逆手に取るとは卑怯でござろう! もののふの心はないのでござるか!」 「ない!!」 「断言して恥ずかしくないのでござるか!」 「あのスイカじゃなくて、何でも割れればいいのなら──」 控えめに真夢紀が氷の固まりを作ったのを差し出す。 「この程度のもの、九条乙女がジルベリアの大地毎一刀両断してくれるわ。正拳だろうと頭突きだろうが、ぶちこわす!!」 乙女が胸を張る。 「ふ、面白い! ならば勝負を受けて立とう」 「勝負の立会人は、このジジ! 負けた時の約束、しかと覚えておくでござる」 猫又のジジと乙女の間のアイコンタクト。 「‥‥──」 ジジは尻尾でVサインを出した。流石猫又、普通の猫に出来ない事をやってのける。 「じゃあ、目隠しして」 夕日が沈む海に、鎮璃が竿で獲物をたぐるかけ声をバックに、数回回し、方向感覚を喪失させる。 木刀を上段に振りかぶった体勢のまま、乙女が自分とジジの絆を信じて歩を進める。 端から見れば、明後日の方向に迷走している。 ジジはにやりと笑い、尻尾で砂浜を叩き、僅かな音を出す。 周囲は沈黙を守っているのみ。 波しぶきが砕けて散った。 「破邪顕正! 燃えるでござる我が志体!! 限界まで高まれ!」 木刀に炎が点った、夕日の陽炎と合わさって、異様な力を感じさせる。 盛大に砂をぶちまける。しかし、乙女の木刀は氷の固まりにかすりもしない。 というか、50メートルは離れている。 あぐらを掻いて、どっかと砂浜に座り込む乙女。 「不覚──約束は約束、さあ好きにするでござる」 「契約完了! テイクアウト!」 桜姫が、襟を引きずって宿屋に入れる。 「ええい、武士は約束を違えぬ──」 着替えの間に乙女を放り込むと、適当な柄、オレンジに黄色に水色の面積が色々と問題のありそうな、水着をも放ると、桜姫は微笑んだ。 「では、ミスター武士道、いえミス武士道、五分だけ待ちます──それを過ぎたら、ご覚悟を。着付けが分からなければ──」 「見れば分かる、御免!」 そして、3分の時が流れた。誰が計った訳ではない、例え絶対的な主観があったとしても、その3分という時間は幾人もの観測者には無限大にも、無限小にも感じられた。 「まあ、まるで女の子!」 乙女は微妙に体の丸みが出ていて、違和感が出にくい。 「武士は約束を──」 「うんうん乙女ちゃん。武士だもの」 ジジは深々と頷いた。 「ジジ──何で導いてくれなかったのでござるか!」 「にゃー(人生とはままならないもの、だが、いかなる時もあきらめはいかんぞ)」 「さて、最初の仕事。まず、泉にこの盆を運んでいって、治馬、ついて行きなさいよ、新人教育も仕事の内」 二人が深淵の底へとあるいていく。その湯気の底に龍がいた。主の名は御陰桜──朋友の名は桃。 冬ならば心臓を凍てつかせる冷水かも知れないが、夏の今はほてった肉体を心地よく冷やす泉。 「桜さん、お食事お持ちしました。後、新人の紹介を──」 「お、乙女でござる」 桜は上半身をタオルに包んだまま起こすと、様々な海の珍味や、良く判らないものに箸を延ばし、相方の桃へと取り分ける。 如何にも女性らしい。 そんな彼女に鼻血を出す間もなく、乙女はおとがいに指先を当てられ、真っ正面から向き合う。 「ねえねえ、ちょっと顔寄せて。?──焼けているけど、健康そうね。そこで、ちょっとこのプラスα」 と、言って乙女の唇に隠し持った薄めの口紅を薄く塗る。 「!!????」 「やっぱり女の子らしくしたほうが可愛いし」 「〜〜ござる?」 治馬もやられたよなーと回想する。口には出さないが、皆が同じ体験を繰り返していた。 乙女は何が女の子らしいのか理解できず、目を白黒させている。 だが、そこへ上の方、ひいては海岸の方が騒がしくなった。 「面白そうね」 自分の業務の時間が終わった所で、涼しげな浴衣姿になった悠里に黒い忍犬の双葉が身を寄せる。 よっつの視線の先には鎮璃が、心配げな林檎と結珠に見守られながら、悲鳴のようなきしみ声を上げる釣り竿と格闘している。 「タイを狙ったが、大物だな! 鯨でもひっかけたか!」 「精霊のご加護がありますように」 愛龍の鈴麗の上から放たれる優しい力に、真優夢の言葉と共に負担が少し軽くなる。 「助太刀いたす」 乙女も力を加える。 怪力と怪力の均衡は短く、開拓者が自らの領域に犠牲者を引きずり出した。 巨大な軟体類、異形の巨体は龍達の助力がなければ釣り竿は砕けていただろう。 凶暴で、知性のない軟体類。 しかし、美味しいものにまるで目のない真夢紀にとって、食べられる部位のきわめて少ないとされる、自分では初めての食材を調理する。 それはひとつの開拓と言っていいとすら言える大事業である。 先人は道を切り開いたが、実際に進むのは彼女なのである。 もし、この巨体を自在に動かせる、体力に長けた仲間がいなければ。どれだけの災いになっていただろうか。 もちろん桜姫はこんなものを見たのは初めてである。周囲の人間に少し変わった動物だという説明して、場に安堵を覚えたものの、この罰ゲーム的外見の食材は出来るならば一生逢いたくは無かった。 治馬ちゃんにとっては食べられようが、なんだろうが、絶対に目にしたくはない存在。アヤカシと変わらない存在である。 食材のオーソリティーである真夢紀は、この食材にアプローチを考える。正確には特定の部位以外は、常識を越えた後味の悪さであるらしい。毒ではないが、酒精で口をすすぎたくなる事請け合い。 「大きいですけど、皆で食べられる程度の量しかありません。まずは!」 真夢紀が皆の音頭を取った。 巨大な包丁では対処しきれない、鉈なども持ち込まれ、柔らかい外皮を切り裂く鈍い音が響いた。 「さて、宴は始まったばかりですよ!」 タンパク質が炎であぶられ、匂いが周囲を支配した。 宴は朝まで続いた。 「おかしい、タイを釣るつもりだけだったのに‥‥」 みんなをエキサイトさせた原因の鎮璃は茫洋とした表情で呟いた。 しかし、足並みは迷わない。懐には託された均ちゃんの各種書類を所持し、くろがね屋へと急いでいく。 彼の中では、すでに均ちゃんの存在は消え失せていた。 それからしばらくしてから契約が解除され。均ちゃんは均君へと無事戻れた。 ランニングに緑の半ズボンというスタイルは、別の意味で乙女に鼻血を吹かせた。 均君にしてみれば、子供らしい動きやすいスタイルを選んだだけ、であるが、人が何に鼻血を吹くか、それは永久の研究課題になる。 「乙女さんも着ます? 夏場は暑いから、まあジルベリアだけど」 「ジルベリアの夏にもののふは屈せぬのでござる」 皆が去りゆく中、桜姫は占いが出来なかった事に対して理不尽な不満を覚えたが、それは別の話──こんどはタロットでもやるのだろう。 結局、ひとりと一匹しか客が来なかった旅館の経営状態がどうなったか──それは後に語られる物語であろう。 |