フレッドくん開拓日誌2
マスター名:成瀬丈二
シナリオ形態: シリーズ
相棒
難易度: 不明
参加人数: 5人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2009/10/28 21:10



■オープニング本文

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 俺の名はフレッド・バナー。名前から察する事が出来る様に、ジルベリア生まれのジルベリア育ちだ。
 今回も開拓団の一員として開拓者の記録係を務める。
 どうやら、次回の探索は上手くいっていない、と自分は判断した。
 森の中をコンパスを片手に歩いて街道に適したルートを探す。
 尚かつ、鉱物探査、植物の採取、水質の調査をそれぞれのペースで行おう、というのは問題があるだろう。
 例えば、ひとりが専従してサンプルを集めるというのと、街道候補を実際に確認するというのは両立しない。
 街道筋に富が埋まっている可能性は否定しない。
 だからといって、街道筋以外に富が埋まっていない可能性も考えるべきだ。
 勿論、志体持ちは様々な才能がある為、ロスは少ない。
 だからといって、可能性があれば調べる、では行って返る事を前提にするにはロスが少なくない。
 未開の森、しかも少なくとも熊がいる、でキャンプを張り、翌朝から元気一杯活躍できるというのは、ひとりでやるのは回復手段を持っている、あるいは開拓者の中でも隔絶した才能を持っている者に限られる。
 ルーク団長はとりあえず塩鉱があるのではないか、という情報の確認。森を迂回して踏破、森を突っ切る川の上流の街で塩鉱が無いかを確認するつもりらしい。
 もし、川の塩気が森の向こうにある塩鉱だとすれば、塩しか発見されていない、森の価値が意味を無くすからだ。
 有り体に言って、前回の開拓の収穫がなくなるからだ。ルーク団長は一応、夜逃げはしないだろう。
 勘の範疇だ。
 ともあれ、団長からは塩鉱を優先で確認してくれ、と通達があるそうだ。
 何がいるかどころか、どこに位置するかも判らない。
 川の近くだろう。多分、塩分で樹木の生長を阻害されている可能性があるんじゃないかな? というのが自分の結論。
 雪が降りそうな空だ、きっと白いものが天から舞うのだろう。
 さて、開拓記十一幕の幕開けだ。


■参加者一覧
天津疾也(ia0019
20歳・男・志
玲璃(ia1114
17歳・男・吟
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
アリア・レイアロー(ia5608
17歳・女・弓
加茂丹(ia7968
10歳・男・シ


■リプレイ本文

 俺はフレッド・バナー。専ら愛と平和の事を考えている。
 愛にも平和にもお金が必要な事には変わりない。という事で、辺境まで来て、色々と仕事をしている。今の仕事は開拓の記録係。
 先日、森を流れる塩分が普通ではない。という開拓者ならではの五感の鋭さ。さすがというべきだろう。
 ちなみに自分も特殊能力を持っている。投げたコインの出目を50%の確率で予知できる。
 先に記述したとおり、ルーク団長は森を迂回して、森を抜けた川上に塩鉱があるなど、塩分が『森』の特産ではないというケースを想定して動く。
 人の出入りも大きくなった。しかし、全員(俺も含めて)が、十代にしか見えないのは気のせいだろうか──別に実力を過小評価している訳ではない、多分。きっと、若さに見合った思考の柔軟さを持っているのだろう。
 最初に目についた新人は加茂丹だ。何しろ上から下まで、拵えも合わせて白で統一している。しかし、のぞく肌は褐色だ。アンバランスさが何とも言えない。それは付加的な要素で目を惹く要素が大きいのはその身長だ。
 自分より頭ひとつは確実に小さい。
 シノビだというから、巨躯は体捌きに不利な事もあるというのだろう。
 何となく身長に関しては言ってはいけない気がする──女の子だから‥‥と、ここまで書いて、名簿を見直したら男性だそうだ、男の子、と言った方が正解か? 年も自分より上らしい。
 もうひとりはルオウ。年相応の身長? かな。赤毛に金目という非常に人目をひく。肌の色はジルベリア人ではないが、ハーフという話だ。丹が陰なら、こちらは陽といった趣か。とはいえ、関わった事件の数はかなり多い。
「俺はサムライのルオウ。よろしくな!」
「うん、俺は魔法使いのフレッド。前は任せた」
「魔法使い? そんな職業あったけか?」
「ギルドの書式に従えば陰陽師。個人的にこちらの呼び方の方が好きなんだ」
「ジルベリアの本場の奴は違うな。ここにいる面々が森を調べに──ああ、あと血塗れの狼とか何とかいう、恥ずかしい名前の人がいるんだっけ? 挨拶しこねたな」
「まあ、しょうがないよ。志体持ちじゃないと、いきなり未開の森に入れないだろうか」
 そこへ丹が言葉をはさむ。
「先達は立てておけばいいかな?」
「まあ、良く判らないが、そう言う事だ。いくぜぃ!」
 そこへにこやかな笑みを浮かべたアリア・レイアローさんが幾本かの木の枝をぶら下げている。
「フレッドさん、あとおふたりもよろしくお願いしますね」
 微笑を浮かべている。
「保存食が悪いとは思わないけど、目先を変えるのもいいかな? って」
 どうやら、釣りをしようという事らしい。
 まあ、自分は残って、記録を取るだけだし、時間が空いている事も多いか。
「釣った魚は燻製にしましょう」
 天津疾也だ。起き抜けらしい。
 いぶすのも多分自分という事だろう。
「何や? 騒がしいやんけ。所で眼鏡しらへん?」
 額に眼鏡をあげたまま問うのはぼけだろうか? 突っ込むべきところか?
 さりげなく疾也の額に手を伸ばした玲璃が、額の眼鏡を鼻に引っかける。
「そないな時は、ジェスチャーが足りない。芸人──もとい開拓者ならぼけとつっこみが両方出来て当たり前や」
「巫女の玲璃です。新しいおふたりも、前から残ったお三方もよろしくお願いします」
 このたおやかな外見に騙されてはいけない。玲璃も男性なのだ。開拓者はどうも、異性に間違えられるタイプの顔立ちの人が多く感じる──まあ、自分もそうだけど。髭が伸びてきたら一生剃らないでおこう。
「川沿いに進むか相談したいのです」
「俺は基本的に川沿いに進むつもりやったけどな」
 玲璃と疾也の会話が微妙にかみ合っていない。
 ルオウはお任せモード、丹も同じようだ。
 アリアさんも案を出す。
「先日の探索地点から、川上に向かって移動を。植物の生息を観察しつつ、塩分の度合いを見計らって、進みます。
 獣道も見極めて、途中で狼や熊などにあわない様、あっても回避する方針で、キャンプを張って。食物調達は先に進むと、安心して食べられるかどうか判らないものもあるでしょうから、そのタイムロスを考えておきます」
 アリアさんの意見は基本的には、とか相談とかいう余地はなく、玲璃も疾也も納得したみたいだ。
「フレッドさんもやってみてくださいね? 意外と面白いんですよ」
 確か、泰では釣り竿で天下を釣ったり、股を潜らされたりするような話を聞くな──なんか、ゴチャマゼになっている気もしないでもないけど。

 一同が戻ってきたのは翌々日の、昼間だった。
 俺が燻製の火加減を確かめている頃合いに戻ってきた。
 ルオウが背中の背嚢からはみ出す程の量の、白っぽい岩塊を詰めている。さすがに熟練したサムライだけあって、体力は一同の中でも桁が違うようだ。
 岩塩だけで大人ひとり分は優にありそうだ。それに加えて掘削用具とか持って歩いているのか?
 丹はやや不満気味の表情に見える。何て言うか、最悪の事態を想定していったのに、最悪の事態が事前の策で全て、出会わなかったとか、そんな感じだ。
 まあ、ここはアリアさんのセンス勝ちだろう。経験とかそんなものをひっくるめて。
「ええか、フレッド、ここに地図がある。オリジナルは報告書に添付するから、しっかりと描き移すんやで」
 疾也さんに渡された地図を見ると、予想以上に岩塩までは距離があったようだ。帰りのペース配分を考えて、余裕を持って返るにはぎりぎりのタイミングだったようだ。
「前回見つけたのは岩塩の可能性や。しかし、今度は誰の手も入っていない塩鉱や。アリアの姉さんは人の手が入っているやろうかと心配しとったが、そんな事はなかったのや。、悪くない。ルオウみたいな化け物投入せんでも軽く十年は採掘できるやろう。その根拠は報告書に書いてある。塩は生活の必需品や。で、ここは内陸。安定して売れるやろうから、開発の火種にはちょうどいいやろ?」
 思ったより広範囲に地図が広がっている。どうやら、丹が四方八方に飛び回り、周囲の環境を確認したようだ。
 引き上げようとした時、ルークさんが駿馬に乗ってやってきた。貴族らしい人物も一緒だ。
 その貴族は岩塩を見ると、表情を変えた。
 そこで取引として、貴族は森の中の岩塩の採掘権を10年の分割で買う。しかし、それ以外の森の開拓の権利はルークさんとその関係者が保持するという事らしい。
「新顔もあるが、今回はかなりの儲けだ。手付け金をスポンサーと俺達で頭割りして、そこから君たちへの取り分が決まる」
 そう言って、ルークさんは革袋を一同に放っていく。ルオウも一瞬、バランスを崩す程の重量だ。紐を解いて中を見ている。
「すっげー金貨だ!」
 え? 銀貨じゃないの? ルオウを信じない訳じゃないけど、金貨でこれだけの量は──。
「悪くない仕事だった。特にルオウだったな、お前の持ってきた岩塩はインパクトが凄かった。うまいぞ。あと、丹と玲璃とで作った地図も色を付けるのに効果があった。実際、鉱場があると判っていても、周囲にあるものが判らないと、二の足を踏むからな。最後になるがアリアの狩人としての才能で危険を未然に防いだのは大きい」
「あ、俺は。俺かて木に登ったりして、上から木の生え具合を確認して、塩鉱へと導いたんやで」
「あ、忘れた」
 スパパーんと旗で、疾也はルークの頭に小気味いい音を立てさせる。
 貴族は契約を確認すると、そそくさと戻っていった。
「まあ、冗談として。最年長として良く現場を仕切ってくれた。で、次回の開拓の方針だ──がまず、さっきの貴族に恩を売る。有り体に言えば、塩鉱周囲の脅威を排除して、それを盾に収入を得る」
「熊か─」
 ルオウが遠い目をして呟く。
「熊鍋も悪くないよな」
 彼のつぶやきに丹は答えた。
「今度は絶対簡易料理具じゃなくて、土鍋持ってくる」
 どうやら、丹は神楽の方で言う所の鍋奉行という質らしい。
 アリアさんは今回は回避の為に使った職能を、今度は有利な立ち位置を持って行くという逆の発想に持っていく事で少し苦笑いを浮かべたようだった。
 これが俺の二度目の開拓の顛末だ。
 開拓記第11幕閉幕。