奥様秘密倶楽部、えす。
マスター名:夢鳴 密
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや易
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/10/26 00:01



■オープニング本文

 地位や体面を重んじる武家や高貴なる家柄。中には贅も得てこの世の謳歌を暮らす向きもある。
 古きしきたりや夫や親族の求めに縛られ、必ずしも自由気ままに贅沢三昧という訳でもなく。
 華やかなる添え物の妻として、奥を仕切る大黒として、鬱憤や悩みを募らせる事には欠かず。
 誰が始めたのであろう。それを解消する為の会合がいつしか作られていた。

 初めは数人の茶会だったらしい。ごく普通の。
 ただ彼女達は同じ趣味を持っていた。加虐や被虐に喜びを見出す人には明かせぬ趣味。
 姿や身分を隠し、こっそりと趣味を満たすうちにその甘美さに捕らわれ。
 安心して遊べる場所を――。
 一人の未亡人が私財を投げ打って彼女達の為の場所を創った。

 奥様秘密倶楽部。
 正式な名称ではない。正式な名称など必要ない。
 秘密裏に集まる事ができ、ゆっくりと誰にも知られぬ時間を過ごせ、口の固い人材のみが仕える。
 紹介で人の輪は広がり、実際何人所属しているのかは元締め以外は誰も知らぬ。
 建物の場所も厳密に秘匿されていた。

 さる依頼で知り合った裏の筋の人物からの紹介である。幾人も通して話は渡ってきた。
 手を尽くし一通り試して、尚それでも物足りぬという上級者ご婦人達を満足させるべく。
 志体持ちと組んで、更なる恍惚の頂点を目指せないだろうか。
 だが不逞の輩ではいけない。契約をしかと守り秘密を決して口外しない者。
 密やかで綿密なる調査の末、君達が選ばれた。

「お上の法には触れぬが、決して公にはできぬ内容でござる。しかとお約束戴きたい」
 先方より指定された出逢い茶屋の奥間。約定通り誰にも秘密で其処に赴くと。
 深網笠で顔を隠した無紋の羽織の人物。武士風ではあるが正体も年齢も知れぬ。
 しかと先払いされた報酬の金子。用意された証文に血判。そこまで念を押し。
「場所も極秘故、貴殿らには薬で眠って戴く。志体持ちに確実を期して量を多くしておるが、健康への害はござらぬ」
 出された苦い湯冷まし。

 ――目を醒ますと。

●獲巣の間。
 眼を覚ますとまず飛び込んできたのは薄い灯。
 まだ朦朧とする頭を振ると、隣で蝋燭の灯がゆらりと揺れた。
 何だここはと首を傾げたアナタは、ふと自分の姿に視線を移す。
 いつの間に着替えさせられたのか、その姿は普段の姿とはかけ離れたものになっていた。
「あら、お目覚めねぇん」
 突如声が聞こえ、アナタは視線を動かした。
 ぼんやりとした光に映し出されたのは一つの影。聞こえた声は女性だが、どう見ても筋肉の城だ。
 だがその顔は目隠しされていて見えることはない。
「いいのよ、怖がらなくて。ここはアナタの欲望を満たす場所‥‥」
 ふふっと笑みを浮かべる女性――のような影。
 何気なく視線を下方に向けると、その下半身は木の馬のようなものに跨っているのが見えた。
 それが何であるかは、アナタの想像にお任せするとしよう。
「あらヒポポタマスさん、もう始めてらっしゃいますの?」
 今度は別方向から声。
 見ればまた別の筋肉の城が姿を見せる。
「おほほ、お先に失礼していますわジラフさん」
 ギシリギシリと木馬を揺らしながら答える影――ヒポポタマスというらしい。
 一方ジラフと呼ばれたもう一つの筋肉――こちらもどうやら女性らしい――は、近くに落ちてあった縄を手に取ると、瞬く間に自分自身を縛り上げてしまった。
「あはん、この食い込みがたまらないわぁ!」
 悶えるジラフ。
 と、その後ろから小さな影がひょこりと姿を見せた。
「あらぁ、新顔ちゃんかしらぁん?」
 一体どうやって察知したのか、そもそも見えているのか、ヒポポタマスが現れた影に声を掛ける。
「は、はい‥‥あの‥‥私、こういう所初めてで‥‥」
 小さな影はおどおどとした様子で呟くように言葉を紡ぐ。
「いいのよぉん。誰だって初めてはあるものよ?」
 縛られたまま転がるジラフがもぞもぞと動きながら言う。
「そうね、じゃあ貴女はラビットちゃんと呼ぶことにしましょう」
「あ、はい‥‥えっと、それで私はどうすれば‥‥」
「んふふ、それはそこの殿方に決めていただきましょう? 思う存分‥‥責められるといいわ♪」
 言葉と同時に部屋の一角にぼぅと灯が点る。
 そこに現れたのは不気味な机。
 その上には鞭に蝋燭に荒縄に目隠しなどの所謂拷問道具と言われる機材と、新鮮な野菜の数々が乗せられている。
「その中から好きな物を選んで頂戴。あ、勿論言葉だけとかも斬新でいいわよ?」
 ふふ、と笑みを浮かべるヒポポタマス。

「さぁ、楽しい宴の始まりよぉん!」

 ――時は始まる。



■参加者一覧
嵩山 薫(ia1747
33歳・女・泰
剣桜花(ia1851
18歳・女・泰
浅井 灰音(ia7439
20歳・女・志
朱麓(ia8390
23歳・女・泰
更紗・シルヴィス(ib0051
23歳・女・吟
八条 司(ib3124
14歳・男・泰
セシリア=L=モルゲン(ib5665
24歳・女・ジ
リリアーナ・ピサレット(ib5752
19歳・女・泰


■リプレイ本文

●泰拳士攻め。
 三角木馬を軋ませる筋肉の城――ヒポポタマスを前にした三人の猛者たち。
 どこか場違いにも思えるのは、彼らの服装が全員拳法着だからかもしれない。
「うー‥‥どうしてこうなったんでしょうか‥‥」
 さめざめと涙を流しながらもどことなく嫌いになれない雰囲気を堪能しているのは八条 司(ib3124)。自身の師匠である嵩山 薫(ia1747)に連れられて来たのはいいが、そこはとんでもない場所だったようだ。
 しかし連れてきた本人はというと。
「何でここにいるのかしらね。まぁいいわ。今日は司さんに闘う者としての極意を授けましょう」
 目の前にいる筋肉の城を横目に、司の肩にぽむと手を乗せた薫。
「お、お師様‥‥なんか微妙に乗り気、ですか‥‥?」
「気のせいです」
「え、でも‥‥」
「気のせいです」
 ミシリと肩口の骨が鳴る。どうやら禁句らしい。
「あぁん、何? 放置プレイなの?」
 木馬を軋ませるヒポポタマスに、剣桜花(ia1851)がそっと近付いた。
「行為を始める前にNGワードを設定します。奥様方はどうしても耐えられないと思ったら【STOP!】と叫んでください。その時点で責めを中断します。NGワードの関係上口を塞ぐ行為は私は行いませんがそのような――」
「もう、そんなのいいから早く始めて頂戴ぃん!」
 何かを考えていた桜花だったが、既に待機状態の奥様には無用のモノだったようだ。
「ではSIHAN、司、始める前に少し話が――」
「いい? まず戦いに於いて情けは無用だということ。こんな風に」
 言葉と同時、薫の拳が奥様の腹部にめり込む。
 桜花は言葉と同時に攻撃することを言いたかったのだが、その必要はないらしい。
「ふぐぅん!? 焦らして不意打ちなんて‥‥やるわねぇん」
 奇妙な声と同時に恍惚の言葉が漏れる。
「さぁ、やってごらんなさい」
「えっと‥‥こういうのはやったことがないんですけど‥‥」
 若干の躊躇を見せた司は、ふと足元に瓶が置かれていることに気付く。そういえば喉が乾いている。
 司は徐に瓶を掴むとこくこくと中身を飲み干した。
「ぷはぁ‥‥‥‥ひっく」
 酒が入った司は、自分の中のもう一人が目覚める感覚に包まれる。
「ひっく。なんだ、誰ですかこんな所にゴミ置いたの」
 しゃっくりしながら奥様に蹴りを見舞う司。
「あぁん! 言葉と蹴りのはーもにー!」
「五月蝿いなぁ‥‥ゴミがしゃべってるんじゃないよ」
 再び蹴り。ギシリと軋む木馬。
「あら、随分馴染んでるわね。そうよ、司さん筋は良いのに気が優しいところがあるのが欠点なのよ。これを機に目覚めてくれれば私も嬉しいわ」
 開放されつつある司の心に感心の声を上げる薫。と、桜花が薫の肩にそっと手を乗せる。
「SHIHAN、司もいますし合わせ技でもやりますか」
「あらそうね。せっかくだから奥様にも堪能していただかないとね」
 こくりと頷く薫と桜花は、一旦司を奥様から離れさせる。
「見ておきなさい。相手を叩き伏せるときは、全力を尽くすのよ」
 薫の言葉が終わるや否や桜花が一気に奥様の足元に移動。そのまま奥様を中空へ蹴り上げる。器用に木馬ごと宙を舞う筋肉。
 同時に薫が勢い良く地を蹴り、そのまま筋肉より上空へと舞い上がる。
 落ちる筋肉。その下から飛び上がった桜花が蹴り技で再び筋肉を押し上げる。一旦地に降りた桜花が再び地を蹴る。そして薫は重力の力で地面に向かって加速。
『絶破――昇竜脚!』
 二人の声が重なり、その身体が筋肉を中心に交錯。奥様の服が程好く破ける。
「あぁはぁーんv」
 恍惚の叫び。
 それでも木馬は壊れないまま、地面に落下する奥様。そしてその背中を司がむぎゅりと踏みつける。
「なんで喜ぶんですかね、僕みたいなのにこんな風にされて悔しくないんですか?」
 普段の彼からは想像できないような加虐的な笑みを浮かべ、司は足をぐりぐりと回す。
「あぁ‥‥あぁぁ‥‥!!」
「だから何で喜ぶんですか? 本当変態ですね、このまま踏まれ続けるのがいいんですか? ほらほら何か言ってみてくださいよほらほらほら」
 ぐりぐりぐり。
 容赦なく踵をめり込ませる司。その様子優しかった面影はない。
「あら、ちょっと目覚めさせすぎたかしら?」
「いいんじゃないですか? 楽しそうですし」
「ふむ。それもそうね」
「あははははは! ほらほらほらぁ!? もっと鳴けよ雌豚ぁ!」
「あぁぁんv もっと、もっとぉんvv」
 攻めはいつまでも続いた。

●野菜攻め。
 おどおどとした様子のラビットを後ろ手で縛り上げ、取り囲む三人の女性。
「さぁ可愛い兎ちゃんは一体どんな芸を見せてくれるのかしら‥‥うふふ♪」
 どこかサーカスの団長を思わせる姿の朱麓(ia8390)は、鞭をピシリと鳴らすとラビットの顎をついと持ち上げる。
「ふふ、どう躾けてあげましょうかね」
 露出度の高い黒メイド服に身を包んだリリアーナ・ピサレット(ib5752)が、愛用の伊達眼鏡をくいと持ち上げる。
「義妹、そっちの準備はどうだい?」
「もう少し待って下さい‥‥ふふふ」
 朱麓の問い掛けに不気味な笑みを浮かべて答えたのは浅井 灰音(ia7439)。臍だし生足の黒いぴっちりとした衣装に身を包んだ灰音の手元には物凄い勢いで摩り下ろされていく山芋が桶に入れられている。どうやらこれを使うようだ。
 摩り下ろす灰音の笑みが、どことなく恐怖を掻きたてる。
 だがまだ準備中らしい。
「では準備が出来る間貴女にはコレをやってもらいましょう」
 そう言ってリリアーナは手に取った茄子をラビットの頭上に乗せる。
「このまま野菜を落とさずに歩きなさい。そう‥‥落としたらダメよ」
 慎重に運ぶラビットの脇腹を、朱麓が羽でくすぐる。小さな悲鳴と共に茄子を落とすラビット。
 慌てて拾いに行くラビットの手を、リリアーナが踏みつける。
「こんなことも出来ないのですか? 野菜が落ちたではないですか! さぁ、綺麗になさい!」
 怒声と共に茄子を強引にラビットの口に捻じ込む。
 涙を浮かべるラビットは、助けを求めんと仁王立ち状態の朱麓の裾を掴む。
 朱麓はにこりと微笑むと、すっとラビットの傍に屈みこむ。
「大丈夫?」
 ほっとした表情を浮かべるラビット。しかし――
「何て優しい言葉を掛けてくれると思ったか!?」
 びしっと鞭を振るう朱麓。小さな悲鳴が木霊する。
「ふふ、お姉様、準備出来ました」
 そこにおろしたての山芋を桶に入れた灰音が。
 さめざめと泣き崩れるラビットの髪を無理矢理掴んで顔を上げさせると、にやりと笑みを浮かべて山芋をラビットの太ももに垂らし始める。
 少しして。当然痒みの回ってきたラビットは悶えだす。
「痒いかい? でも我慢しないとダメだよ?」
 悶えるラビットを笑顔で見詰める灰音。
 何とか耐えるラビット。しかしついに口から茄子を吐き出してしまう。
 それを見たリリアーナが激怒。
「何をしているのですか貴女は!?」
 大声で怒鳴るリリアーナは、ラビットの尻を持ち上げると、その白い肌を露出させる。そして――
 ばしーん。
「あぁっ!?」
 肌を打つ音と悲鳴が響く。
「出来の悪い子はこうです」
 再び音が響く。
「ほら、ごめんなさいは!?」
「ふぐっ‥‥ご、ごめんなさいぃ‥‥」
 泣き崩れながら謝るラビット。それを聞いたリリアーナは、そっとラビットの頭を抱きかかえる。
「よく頑張りましたね」
 優しい言葉に、心の底から安堵の表情を浮かべたラビット。だが――
「ふふ、さぁ顔をお上げ?」
 優しい声色の灰音に、何の疑問も抱かずに顔を上げるラビットに、灰音はにこりと微笑む。
「今からご褒美をあげるから、何があっても目を瞑っちゃダメだよ? 瞑ったら今度は山芋顔にかけるからね?」
 激しく頷くラビットに、灰音は何かをそっと彼女の顔の上に持ってきて、握りつぶした。
 その顔にぼたぼたと零れ落ちる紅い液体――トマトの絞り汁だ。
 口の中に溢れるトマトの味。必死で耐えるラビットに、灰音はその首筋をつっと指で撫でる。
 びくりと身を震わせたラビットは思わず絞り汁を飲み込み、その際に目を閉じてしまった。
 喉を潤す感覚に、言いつけを破ったラビットは思わず身を固くする。
「あぁ、目を瞑らないように言ったのに」
 と、残ったトマトをラビットの口の中に放り込む。
「でも私は優しいからこれで許してあげる」
 微笑む灰音。そしてトマトを租借するラビット。
「ああ、醜い‥‥その面も啼き声も全て……何であんたはそんなに醜いんだろうねぇ」
 追い討ちを掛けるが如く朱麓の言葉の矢がラビットに襲い掛かる。
 漸く終わった一連の攻めに、力なく崩れたラビット。その身体をリリアーナが強引に持ち上げた。
「何を休んでいるのです。次にいきますよ」
「ほらほら、ボーっとしてないでとっととおし! 全く‥‥あんたよりも蟻の方がもっと早く動けるよ!?」
 びしっと鞭を振るう朱麓。
 その横では新鮮な野菜を手に、不気味な笑みを浮かべる灰音の姿があった。

●熱々常套攻め。
 一人既に緊縛された状態の筋肉――ジラフを、更に縛り上げて宙からぶら下げたメイド服姿の更紗・シルヴィス(ib0051)は、ぶら下がる筋肉を前に優雅に一礼する。
「奥様、本日は私がお相手をさせていただきます」
「あぁん、貴女メイドじゃない!? 大丈夫なのかしらぁん?」
「メイドたる者、どのようなご要望であっても、完璧をもってお応えするのが務めでございます」
 そう言った更紗はぶら下がったジラフをくるくると回し始める。
 回るたびに縄が軋み、その身体を締め上げていく。
「あはぁん!? 何コレぇぇん!」
 恍惚の表情を浮かべるジラフ。
 そしてその隣には巨大な胸を揺らすセシリア=L=モルゲン(ib5665)の姿。
 普段より露出度の高い服装をしている彼女は、今日も変わらずの服装に身を包んでいる。
「ンッフフ‥‥面白そうねェ。たっぷり遊んであげるわよォ‥‥ンフフッ!!」
 独特な笑い方のセシリアは、にやりと笑みを浮かべると、くるくると回るジラフに自分の身体を押し当てる。
 既に人智を越えたようなセシリアの身体は、それだけでも十分な凶器となる。
「ほらほら、どうかしらァン? いいでしょオ? ワタシのカ・ラ・ダ。ンフ。」
「ふごふごふごーっ!?」
 圧死――そんな言葉を連想させる攻めである。
 それを見ながらどことなく自身の身体を見下ろして溜息をついた更紗。挟まれるジラフの耳元でそっと囁く。
「背中に重石を乗せれば、駿河問いになりますが、どうなさいますか?」
「ふごふごふごーっ」
「え? 聞こえませんね。じゃあ追加しておきますね」
「ふごーっ!?」
 問答無用で重石を乗せる更紗。無表情故に、恐ろしい。
「さて、私は次の準備に入ります。セシリア様、後はお任せいたします」
「ンフフ、わかったわよォ」
 静かに頭を下げる更紗に妖艶な笑みで答えるセシリア。
「さぁ‥‥楽しむわよォ! 準備はいいかしらァん、シラフ君!」
 言うと同時に鞭を撓らせるセシリア。
 ぶら下がったジラフを鞭で叩き上げる。
「あぁん!」
「ほらほらァ! こんなのはどうかしらァん!?」
「はうぅん!」
「もっと、もっとよォ!」
「アハァァァン!!」
 絶え間なく続く鞭の音と喘ぎ。
 やがてひとしきり攻め終えたセシリアが、天井からジラフを下ろし、履いたハイヒールでぎゅむりと踏みつける。
「ンフフ、今度は更紗君の番よォ」
「はい、お待たせしました」
 笑みを浮かべたままのセシリアの言葉にゆっくりと現れた更紗の手には、ぐつぐつと煮立った鍋。
「あはぁん、それはまさかお約束の‥‥」
「せっかくご用意していただいたお野菜ですから、奥様方には美味しく頂いていただきませんと」
 ぐつぐつと泡を放つ鍋の中身はおでんだ。
 更紗はそのうちの一つ、よく染み込んだはんぺんを取り出すと、ゆっくりとジラフに近付ける。
「はい、どうぞ」
 当然、その箸はジラフの口から外れ、首筋に押し付けられる。
「あはぁぁぁぁぁっ!?」
 悶えるジラフ。しかしセシリアにしっかりと踏みつけられているため、逃げられない。
「おや、外してしまいましたね。あ、そう言えばこれを忘れておりました」
 そう言って取り出したのは更紗特製の激辛からし。それをこれでもかというほど塗りたくると、それをジラフの口へと運ぶ。
「はい、どうぞ」
「待って、そんなベタベタな攻撃は――あはぁぁぁぁぁん!?」
 辺りに悲鳴が木霊した。

●全てを終えて。
 一頻りの遊戯を堪能した奥様三人と開拓者たち。
 その不思議かつ危険な時間は、終わりを告げようとしていた。
「貴方たち‥‥最高だったわぁんv」
 今だ興奮冷めやらぬといったヒポポタマスが、薫にすっと手を差し出す。
「喜んでいただけたのなら何よりですわ」
 にこりと微笑む薫。その隣では何やら頭を抱える司。
「何だか酷いことをしていたようなでもとてもすっきりしたような‥‥いやいやいや」
 ぶつぶつと呟く司を見て桜花が肩を竦める。
「こういうのって実はすっごい難しいんですよね」
 どこか達観しているようだ。
「あの‥‥ありがとうございました‥‥何だか、とってもすっきりしました」
 もじもじと言葉を紡ぐラビットに、灰音がにこりと笑みを浮かべる。
「新しい自分を見つけたんだね。おめでとう」
「ははっ! 攻められたくなったらいつでも言いな!」
 豪快に笑う朱麓に、ラビットは満面の笑みを浮かべる。
 と、今度はリリアーナが前に出る。やがてリリアーナはラビットに向けて優しい笑みを浮かべる。
「素直になれましたね、ラビット‥‥」
「はい先生‥‥!」
 ひしと抱き合うラビットとリリアーナの二人。どうやら何か絆が築かれたらしい。
「ンフフ。私たちも楽しませてもらったわ」
「お役に立てたようなら何よりです」
 そう言って胸を揺らすセシリアと、ぺこりと頭を下げる更紗。
「あはぁん、アタシも基本に立ち直らせてもらったわぁん! 変り種もいいけれど、やはり基本がいいわねぇん」
 言いながら身体をくねらせるジラフ。
 何事においても基本は大事ということなのか。
 思い思いの言葉を交わした奥様と開拓者たち。
「皆さん、本当に有り難うねぇん。でもわかってるとは思うけれど、ここの事は――」
 言葉を止めたヒポポタマスは、その人差し指を口元に当てる。
「ナ・イ・ショ・よぉんv」
 ヒポポタマスの言葉と同時に一行を強烈な眠気が襲った。
 次々と意識を手放す開拓者たち。

 次に一行が目を覚ました時には、最初の出会い茶屋の一室だったとか。
 奥様秘密倶楽部――その実態は、未だ表に出ることはない。

 〜了〜