【北伝】ぺけぺけ。
マスター名:夢鳴 密
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや易
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/02/04 07:14



■オープニング本文

 北面が首都、仁生。
 国としては貧しい部類に入るこの北面において、飛び地にある楼港に次いで商流の盛んな町。
 娯楽を主とする楼港とは違い、武具や鎧などの取引が盛んである。
 それは朝廷を護るという立場にいる北面の首都ならではなのかもしれない。
 だがそんな国の中心地にも、アヤカシは現れる。

「‥‥で、そいつが街中を走ってたってのかい?」
 背中に『粋』の文字を背負った半被姿の受付係は、煙管をプカリと吹かしながら目の前の依頼人の方へと視線を送る。ひょろりとした細身の身体に、いかにも気弱そうな仕草の青年。聞けば仁生の武器商人の所で働いているらしいのだが、商人としても余りにも貧弱な風貌である。
「えぇ‥‥確かにボクは見たんですよ‥‥」
 ガクガクと震えながらぼそりと呟いた青年。
 青年曰く、町中を疾走する巨大なアヤカシの姿を見たのだという。実際の被害報告はまだ出ていないが、青年の目撃情報を信じるならば三メートル程の大きさ。人を丸呑みぐらいできる大きさである。
「本当にいたんだろうな‥‥?」
「ま、間違いありません! そいつは一瞬だけ、ほんの一瞬だけこっちを見たんです! 見たのは私だけじゃないんです」
「‥‥疑うわけじゃねぇが、アヤカシってのは人を食い物にする化け物だ。それをただ目撃しただけでなく、眼が合って無傷ってなぁ‥‥ちょっと信じられねぇぜ?」
 受付係の言うことも尤もだ。元々アヤカシにとって人を襲うことは人間が野菜や肉を食らうのと同じぐらい普通のこと。見つけた餌を易々と逃がすとは思えない。
「そ、そんなこと言われても‥‥と、とにかく本当なんです! ヤツは確かにいたんです‥‥あの頬袋鼠は!」
 青年の悲痛な声がギルドの中に響き渡る。
 青年が見たというのは巨大な頬袋鼠―――ジルベリアでいう『ハムスター』だそうだ。
 そのアヤカシは移動する際に『ぺけ』という不思議な泣き声を上げるらしく、見た者の間でぺけぺけ様という名前がつけられているのだとか。
「ま、どちらにせよ調査の必要はあるってぇことか‥‥」
 嘆息交じりの受付係はそう呟くと、依頼書の作成に取り掛かった。

●依頼書
 仁生の町にて謎の巨大アヤカシ発見の報せ有。
 調査と共に発見次第退治するべし。


■参加者一覧
舞 冥華(ia0216
10歳・女・砲
真亡・雫(ia0432
16歳・男・志
相川・勝一(ia0675
12歳・男・サ
玲璃(ia1114
17歳・男・吟
水津(ia2177
17歳・女・ジ
ジョン・D(ia5360
53歳・男・弓
忍(ia8139
17歳・女・シ
山吹(ia8583
21歳・男・シ


■リプレイ本文

●ヤツを探せ!
 北面の首都、仁生。突如現れたアヤカシに警戒しているのか、それともただ単に話題なのかヤツについて口を開く者は多かった。
「近隣の方々はぺけぺけ様などと呼んでいるようですが、さて、アヤカシに愛称というのはなかなか風変わりな話です」
 そう呟いたのはジョン・D(ia5360)である。彼の口調に込められているのはただならぬ興味。
「そうですね、敬称をつけるのも何か意味があるのでしょうか?」
 玲璃(ia1114)も頷きつつ歩を進める。
「ほら、また‥‥ぺけぺけ様があらわれたってサ」
 怖いねぇと相槌を打つ女性は不意に視線を移し、口を開いた。
「あの‥‥その話、詳しく聞かせて、いただけますか?」
 話し込む女性たちに問いかけたのは忍(ia8139)である‥‥やや俯き加減なのは自信のなさの表れか?しかし彼女もまた、ぺけぺけ様を倒す為に現れた開拓者である。
「巫女の玲璃と申します。よろしくお願いいたします」
 アヤカシを退治する為に参りましたと口々に話せば、知っている事は特にないと言いながらも押し合い圧し合い口を開く。
「武器商人の兄ちゃんが見たってサ、寝込んじゃって仕事にならないって話だよ」
「アタシの予想によるとあれはショックが大きかったんだ、アタシが開拓者だったらこの大根で一突き、なのにねぇ」
 大根を振り上げながら勇ましく叫ぶ女性、その横では‥‥
「大根で一突き、と」
 シッカリ手帳に書き込む玲璃、流石に無理なのではないだろうかと思いつつ忍は大根に視線を奪われる。
 そんな二人の様子を見ながら、まあまあと言いたげにジョンは微笑んだ。
「でも‥‥ぺけぺけ走るからぺけぺけ様、アヤカシとは言え可愛らしいですね」
 とにかく、女性をなだめつつ口にする―――とたんに女性たちは黙り込む。
「毛皮とか、肉が取れたらいいんだけどねぇ」
 あまりに残念そうに呟く女性たち、シリアスな展開を想像していた忍は思わずあいまいな表情を浮かべた。
「目があっても襲われなかったって、奇怪な話だねぇ」
 一方、簡易な地図を片手に路地裏や場所を探しつつ、火のついていない煙草を咥えながら山吹(ia8583)が肩をすくめた。
 真亡・雫(ia0432)が同じく頷いてはもう片方の通りを見て回る。
「ぺけぺけ様ですか。とっとこ走ったり仲間がいたりとか‥‥あ、いえ」
 失礼と口元を押さえた真亡、どうやら3mのハムた‥‥もとい、ぺけぺけ様が大量に出没し口々にぺけぺけと言いながら襲来する様子を思い浮かべたらしい。
「まあ、自分達のすることは変わらないけれど‥‥と、屋根から見てくるよ」
「では僕はこの辺りで聞き込みを続けます、また、夜に」
 屋根に飛び移った山吹を見送り、地図に視線を落とす。
 そこで、視線を感じて彼は振り向いた―――まさか!
「‥‥すみません、僕たちはぺけぺけ様を退治する為に来た開拓者です。調査の一環として高所からの調査をさせていただいています」
 屋根からヒラヒラと手を振る山吹を見、そして自分達に白い目を向けている住民に説明しつつ情報収集は欠かさない。
 仁生の住人に迷惑をかけるわけにはいかないのである。
 少し離れた場所、囮班である舞 冥華(ia0216)が首をかしげていた。
「ん、ぺけぺけははむすたー?むむ、はむすたーってなに?」
「頬袋鼠、ハムスターとはジルベリアの動物みたいですね。すごく可愛らしいようです、もふもふで」
 水津(ia2177)が書物の情報を思い出しつつ、眼鏡の奥で可愛らしい『ハムスター』に思い馳せる。
「むむ、じるべりあって3めーとるもある動物がいっぱい?‥‥じるべりあのどうぶつ、おそろし」
「でも、もふもふし放題ですよ、大きいですし」
 可愛いもの愛‥‥その情熱の炎が水津の瞳に揺らいでいる、気がする。
「もふもふはいいとして、どうにかなりませんか?」
 水津と舞に両端を挟まれた相川・勝一(ia0675)が苦笑気味に呟いた。
 仮面をつけると性格の変わる彼、いつもはとても繊細な少年である。
『雫さん、それじゃあこれお願いしますね。仮面は丁寧に『丁寧に』扱ってくださいね。とっても大事なものなのでっ!』
「(―――後にすればよかった)」
 ガクンと項垂れる相川、両手に華とは非常に羨まし‥‥もとい、嬉しい状況ではあるが少々刺激が強かったようだ。
「私は盾役ですし‥‥動く要塞『鋼の乙女』は伊達じゃありません」
 水津が微笑みと共に言いきった―――だぶるでーとのようで楽しいですね、なんて言わない。
 そしてゆくゆくは小説の活力に、とも言わない。
「冥華はー、勝一より、大きいからかちー」
 大きな瞳をきょろきょろさせ、冥華が言い切った。
「冥華ちゃんよりは大きいと思ってたのに‥‥」
 舞の言葉がグサリと心に刺さったのか、手と膝を地面について崩れ落ちる相川。
 女性はいつの時代でも強いものなのです。

●ヤツの全てを理解しろ!
 昼過ぎ、開拓者達は集めた情報をもとに一旦集合していた。
「ぺけぺけ様の出没時間、出没場所はどうやらバラバラのようです―――敢えて言うなら、人の多いところでしょうか」
 ビッシリ書き込まれた手帳を見ながら玲璃が口を開く。
 音もなく地面に降り立った忍、ギリギリまで情報を集めて来たらしい。
「ぺけぺけと言う鳴き声を聞いた方は多いのですが、目撃は全て昼のようです」
「確か、目撃情報も昼でしたね」
 水津が首を傾げつつ呟き、真亡が口を開いた。
「頬袋はどうでした?」
「よくは見えなかったそうですが、膨らんでいたようです。とは言え、普通のハムスターしか見たことがないとの事」
 ジョンが言っては、そちらの首尾はどうかと問いかける。
「罠を仕掛ける場所の見当はついたよ、その他諸々含めて抜かりないねぇ」
 山吹が大きく頷いて地図を示す。
 そこには罠をしかける場所が詳しく書かれていた。何やら赤いマークもある。
 その他諸々は非常に気になるところであるが、気にしてはいけないと思いつつ相川が提案した。
「では、夜までもう一度調査に出かけましょうか?」
「冥華はーほかのばしょ、行きたいのー」
 舞が呟いて地図を覗き込む。
「もう少しで、夜ですし‥‥見回りにいきましょうか」
 忍が自分の調べてきた場所を指でなぞり、他のルートを示す。
 それに頷き、開拓者達はさらなる情報を求めて散った。

●噂のヤツ
「すっごく、おそくなっちゃったー」
 きっちりと戸じまりをしている民家を見ながら舞が呟く。
「ええ、ですが今からが正念場です」
 そう言って水津は指をわきわきさせる‥‥可愛いものには目がない。
 だが、倒す。
「そうですね、上手く僕達を狙ってくれるといいのですが」
 一方、待機班。玲璃が瘴索結界を紡いでは小さく息をついた。
「遠いですね、何かが来るような予感はするのですが」
 巫女としての鋭い勘が彼に告げる、何かが起こると。
 その横顔を見ながら山吹は少し首を傾げ呟いた。
「とにかく、伝えてこようか?」
「いえ‥‥囮班の皆様の近くでもう一度、瘴索結界を使ってみます、罠を頼みました」
 巫女袴を翻して囮の方へと向かった玲璃を見送りつつ、山吹は罠の具合を確かめるのだった。
「来ませんね‥‥」
 真亡が呟いては、地図を確認しつつジョンの方を振り向き、目を見開いた。
「いかがなさいましたか、真亡様?」
「いえ‥‥噂をすれば」
 背後に現れる巨大な影。
 ジョンも振り向き、その巨体を見止める。
「噂をすれば影、天儀の言葉はなかなか趣があります」
 屋根から囮班を見守っていた忍、その巨体がムクリと郊外から現れるのを見届けていた。
 ぺけ‥‥
 ぺけ‥‥‥‥
「(―――来た!)」
 囮班、そして
『ぺけぇっ!』
「あ、可愛いです‥‥」
 水津の眼がキラキラと光る。ぺけぺけ様は彼女のお眼鏡に適ったらしい。
「これが噂のアヤカシ、見た目は可愛いらしいのに!」
「加護結界なのー」
 グッと拳を握りしめて叫んだのは相川、続いて舞が目の前に立つ。ぺけぺけ様は開拓者達を一飲みにしようと顔を近付けてきた。
「ですが、退治するしか‥‥って、戦ってはいけないんだった。あう」
「ですが、好機ですっ!」
 ダッ、と地面を蹴って滑り込んだのは水津だった―――小柄な体をさらに小さくかがめ、必殺前歯の隙間から中へ入り込み頬袋を発見する。
 体躯を駆使した動きにぺけぺけ様の前歯は彼女の巫女袴を食んだだけに留まった。
「早っ‥‥負けていられません!」
 相川も迫って来たぺけぺけ様の顔へダイブ、舞が後に続く。

●ヤツの外、ヤツの中
 見届けた忍、駆けてきた玲璃を見つけて静かに下りる。
「玲璃様‥‥えっと」
「遅かったようですね」
 疑問符を浮かべる忍に簡潔に来た訳を説明する玲璃。
 ならば罠のところまで誘導するのがいいのか‥‥しかし、時は思考を許さない。
 開拓者達という獲物を頬袋に収めたぺけぺけ様は次の贄を欲していた。
 頑丈に閉ざされた扉には見向きもせず、近くにいる開拓者。そう、玲璃と忍の方へと注意を向ける。
 重なる視線―――ペケ、と鳴いた。
 そして、ドッドコと走り出すぺけぺけ様、その瞳に映るのは開拓者。
 逃げる開拓者、その先には予め仕掛けた罠。
「お先に失礼します!」
「はい‥‥え、ちょっと待ってください?!」
 早駆で去っていく忍、あっけにとられたのは一瞬。玲璃は後ろを確認しつつ、走る速度を速める。
「来ましたね―――」
 真亡が呟いてジョンに視線を向けた。ジョンが頷き、二人はぺけぺけ様の追跡を開始する。
 前を走っていく玲璃に二人は心の中で応援しては静かに後をつけるのだった。
 忍が早駆で罠の場所へとたどり着く。山吹は笑みを浮かべ手を挙げると準備完了を示した。丁度足首にかかるあたりに設置された荒縄の罠‥‥。
 準備はできた―――さあ、来い、ぺけぺけ様!
 一方、頬袋内部。
「う、うぅ‥‥べとべとしますよぅ‥‥」
 水津が呟いてゆっくり立ち上がる。ぺけぺけ様口内は唾液の風呂状態、嬉しくない。
「ふと思いました。このアヤカシ‥‥服とか溶かさないですよね?や、褌さえ残ればなんとかっ。それだけは守らないとっ!」
 思わず服を抑える相川、服が溶けてセクシーショット‥‥お婿に行けない身体になったらぺけぺけ様に婿に貰っていただきましょう。
「ヴぉとかヴぉとか」
 そう言って舞がとり出したのはヴォトカ、言っておくが消毒薬用。
「せぇの!」
 舞が栓を開けたヴォトカの入れ物をぺけぺけ様の奥歯に叩きつける。
「うわぁ、痛そうですね‥‥」
 思わず呟いた相川。確かに痛そうだが、ぺけぺけ様はアヤカシ、全く動じてない―――が?
『べけぇっ!』
 轟く鳴き声と共に囮役の開拓者の立つ地面、もとい口の中が揺れる。
「追撃班が戦闘を始めたんでしょうか。僕もそろそろ暴れようかな」
「脱出」
 相川が短刀二本を器用に手の中で回す、舞は脇差を構え、せぇの!という掛け声とともに柔らかな口内へ突き刺した。
 外でも戦いが繰り広げられていた。ピンと張った荒縄にぺけぺけ様の短足が引っ掛かり、地響きを立てる。それを満足そうに見つめる開拓者達。
「かかったねぇ」
「‥‥お仕事は非情にが忍です」
 山吹と忍が手際よくぺけぺけ様の胴体に荒縄を巻きつけていく。
「今更ですが、転倒の際頬に入れられた人、大丈夫でしょうか?」
 本当に今更な事を言いつつ、真亡が背後から刀で攻撃を加えた。
 その横では援護とばかりに玲璃が穏やかな舞を舞う―――神楽舞・防
 ジョンが礼を述べつつ、ぺけぺけ様の背後から矢を装填し放つ‥‥一寸の迷いもないその矢はぺけぺけ様の足の裏を射止める。
『ぺ‥‥ぺけぇぇえっ!』
 ブチリ、と言う音と共に立ち上がるぺけぺけ様‥‥堪忍袋の緒ではなく厳重に縛った荒縄が切れた音。
「参りましたね、もう少し動きを封じてみましょう」
 全く参っていない口調で言いながらジョンが即射で矢を装填、更に足を狙う。
 穏やかな笑みを浮かべているが、彼の眼は笑っていない。
「不意打ちは忍の極意です」
 忍が呟いては手裏剣を放つ、退路を絶つように動いた真亡が刀でグサリ。
 中から外から、攻撃されたぺけぺけ様―――ゴフリ。
 唾液まみれで吐き出された三名の開拓者。受け身の態勢で着地をしては必殺前歯をキラーンと光らせるぺけぺけ様を見据えた。
「脱出!雫さん、武器と仮面を!」
 相川の差し出した長巻、そして仮面を装着。気合は十分。
「ふ、ここからが俺の本気モードだ!アヤカシ覚悟するのだな!」
 彼は身の丈以上の長巻を手の中で上手く操り、ぺけぺけ様に叩きつけた。
 水津の紡いだ術、閃癒が他の開拓者達の傷を癒す。
「ふふ‥‥良くも私をこんな目に合わせてくれましたね‥‥燃え上がるです‥‥」
 ユラリと立ち上がった水津が呟いて浄炎を放つ。うふふ、ファイヤーパーティーですと副音声で聞こえるのは気のせいだろうか。
 負けてはいられないとばかりにジョンが足を狙った攻撃から強射「朔月」を目に向かって射る。
 容赦なく、射る。
 忍が手裏剣を放ち、山吹は短刀を閃かせる。
 そんな中。
「ふれーふれー」
 舞がみったんじゅーすを飲みながら応援する。酒の臭いで少々頭がくらくらするものの、彼女はみったんじゅーす片手に舞う、神楽舞・防。
 ぺけぺけ様も負けてはいない。四足歩行で必殺前歯を開拓者達に向ける。
「丁度いいよ!」
 山吹が呟いて、前歯をものともせず鼻を踏み台に。掠った前歯が抉ったのか血が暗闇に飛び散るが臆することない彼女は短刀でぺけぺけ様の眼を貫く。
「もうひと押しです!」
 玲璃が神風恩寵で山吹の傷を治す。
「はい、もふらせていただきます!」
 忍が呟いては手裏剣をぺけぺけ様のもう片方の目へと放つ。
『ぺけぇぇっ!』
 響く断末魔、倒れる巨体を確認し開拓者達は息をついた。
「短い旅の終焉といった趣ですね」
 ジョンがぺけぺけ様の腹部に刺さった矢を見ながら呟いた。
「正義は必ず勝つ!この世に悪の栄えた試しなし、だ」
 満足げに相川が呟いて仮面を外す。
「‥‥ところで服と身体を拭くもの誰かもってませんか?」
 変わり身は一瞬。それに頷き、山吹はバッと地図の赤いマークを指さした。
「温泉に行くよ!」
「その前に‥‥舞を舞ってもよろしいですか?」
 玲璃の言葉に開拓者達は頷いた。舞いを穏やかな気持ちで見ながら、ジョンが呟く。
「あの頬、どれだけ伸びるのでしょう」
「広かった、ぺけぺけの口」
 舞が呟いてみったんじゅーすを飲み干す。
その様子を見ながら忍がボソリと呟いた。
「ぺけぺけ様が食べたって事は、皆様は美味しいのでしょうか‥‥?」
思わずフリーズする開拓者達。各々視線を合わせる。
「わ、私は美味しくないですよぅ!」
水津が慌てて手を振った。
「では、食事をとりましょうか‥‥と、その前に確認だけしましょうか」
真亡が言ってはぺけぺけ様出没地区の地図を示す。
後日、保存食品としてぺけぺけ様にさらわれた人々が風呂に入る開拓者の元へ押しかけたのは別の話。

(代筆:白銀 紅夜)