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■オープニング本文 使用人、潤が現在の主人に仕え始めてから何度目かの冬がやってきた。 最初こそ礼儀だの作法だの、どうして自分が誰かにへこへこしなければいけないのだろうかと反発的だったが、今となっては慣れたもの。むしろ主人の器の大きさに感服し、一生この人に仕えようと思っているくらいである。 今回も主人は潤の期待を裏切らず、使用人に一斉に休みを与えた。普通ならばこの忙しい時期に使用人を一斉に休ませるなどあり得ないと彼は思っていたが、主人曰く「年末年始くらいは家族と過ごせ」と。もちろん休みの分の給料も出すと約束してのこと、何とも思いやりのある主人である。 貧乏人が多く、出稼ぎで家族から離れている使用人たちにとってはこの上なく素晴らしいことだった。 そんなわけで、年末も近づいてきたこの頃から使用人は家族のいない潤と、訳あって家に戻れない少女の二人となってしまった。 「で、この天気と‥‥」 こんな時に限って、神様は意地悪なのだと彼は思う。 目の前一面に広がる銀世界――大雪なのだ。 「今までこんなに降ったことなどないのに、なんだってこんなときに」 主人に仕え始めてからずっとこんな大雪は見たことがなかったのに、よりによって人手不足のときに庭がずっしりと重たい雪に覆われてしまっている。このままでは主人が出かけるときに困るだろう。 「‥‥雪かき、しますか」 彼はふんっと息を吐き、気合を入れた。 義務としてではなく主人を思って雪かきを始めた潤ではあったが、それが彼に襲い掛かる悲劇の始まりだった。 「にーちゃ、あそんでー!」 「え、ちょっ」 雪かきを始めてからしばらくしたころに、主人の息子である幼い少年がとびだしてきた。彼は勢いよく潤の足に向かって突進する。 「うわあっ!」 慌てて避けようとした潤はそのまま雪に足を取られ、盛大に転んで木にぶつかった。そしてその振動で木の上に積もった雪が彼の上に落ちてくる。 どさり、と雪に押しつぶされた潤はそのまま動けなくなってしまった。さらにその様子を、少年は腹を抱えて笑うのだった。 何とか雪の中から脱出した潤は気を取り直して、雪かきを再開する。 「あ、あの‥‥お手伝い、しましょうか?」 そこに現れたのは残ったもう一人の使用人である少女。 「ああ、本当かい?ぜひ頼むよ」 猫の手でも借りたいとばかりに潤は少女に雪かきに使う道具を渡した。 「こんなもの、必要ないですよ」 そんな彼に少女は二コリと笑って。 「一気にやってしまいましょう!」 そう言って桶にためた熱湯を雪にかけはじめたのだ。彼女のどこにそんな力があるのだろうかと思うほど大きな桶というよりたらいを思い切り傾ける。 「わ、わーー!」 潤は慌てて止めたが、時すでに遅し。 「ほら、きれいに融けましたよ」 水浸しになった地面を誇らしげに見ながら、彼女は微笑んだ。 もちろん翌日、そこはつるつるに凍り付いていたが。 ◆ 「まだ、聞きたいですか?」 開拓者ギルドに疲れ果てた顔で駆け込んだ潤は、依頼内容についていろいろ訪ねてきたギルド受付員に向かって力なく微笑んだ。 「いえ、なんというか‥‥お疲れ様です」 「神様は、僕には冷たいんだよね‥‥」 依頼の手続きを終えた彼は遠い目で吐き出したのだった。 |
■参加者一覧
氷那(ia5383)
22歳・女・シ
村雨 紫狼(ia9073)
27歳・男・サ
華表(ib3045)
10歳・男・巫
羽喰 琥珀(ib3263)
12歳・男・志
レティシア(ib4475)
13歳・女・吟
光河 神之介(ib5549)
17歳・男・サ
エラト(ib5623)
17歳・女・吟
玉響和(ib5703)
15歳・女・サ |
■リプレイ本文 数日間降り続いた大雪が止み、町に積もった雪が太陽の光を反射してきらきらと輝いていた。 「っしゃ!いやあ、一面銀色っつーか、雪だらけだな!」 まさに銀世界といった様子の町を眺め、村雨 紫狼(ia9073)は声高に叫んだ。無性にハイテンションになってしまうのも、雪の効果なのだろう。 「冬将軍ばんざい!」 そのすぐ隣、同じようにうれしそうに飛び上がったのは、レティシア(ib4475)である。 雪国育ちだという彼女は厚く降り積もった雪と刺すような冷たい空気を楽しんでいる様子、きらきらと目を輝かせていた。 「今度こそは‥‥!」 光河 神之介(ib5549)はどこか疲れた表情をしたが、せっかくの雪だ。子供と遊んで心を癒そうと決心する。 依頼を受けた開拓者たちがいるのは、依頼者潤の仕える屋敷の玄関前。立派な門を構えた、豪邸である。 その門を見上げ、羽喰 琥珀(ib3263)もまた期待を胸に、わくわくした気持ちを抑えきれない様子。 「きっと中も広いんだろーな」 雪だるまに雪合戦、かまくら作り‥‥これだけ広い敷地を持つ屋敷だ。きっと中は雪遊びに適した場所がたくさんあるだろう。 「エラトと申します。よろしくお願いいたします」 はしゃぐ4人とは一線を画し、落ち着いた雰囲気を漂わせているのはエラト(ib5623)である。自己紹介をして、ふわりと微笑んだ。 「ん?」 と、そこで彼女はどこからか注がれている熱い視線のようなものに首をかしげる。さらに言えば雪に大喜びのレティシアもまたしかり。 「ぐう‥‥!」 その視線の発生源、紫郎は何かをこらえるようにこぶしを握る。その間にも彼の脳内に絶え間なく、爆発しそうな何かが飛び交っていた。 「あああ!素数だ、素数を数えるんだああ!」 落ち着け俺、と突然爆発したように叫んだ彼に周り一同はびくっと体を震わせる。そのあとに付け足された「素数ってなんだっけ」という言葉に笑いをこらえる者、どこか寒い視線を投げかける者、反応は十人十色である。 「さて、そろそろですね」 エラトが時間を確認しながら、門へ向き直る。 それを受けて、ほかの4人もまた姿勢を正した。 そして。 「み、みなさん‥‥ようこ、うわあ!はあ、すみません。ようこそおいでくださいました」 現れた青年は足に幼い少年をまとわりつかせて、疲れ果てた表情を浮かべていた。 あいさつの途中で少年に妨害され、奇声を上げた彼に開拓者たちはいっせいに同情のまなざしを向ける。 「大丈夫ですよ。神様は潤さんのことを生暖かく見ていらっしゃいますから」 たぶん、と励ましになっていない言葉をかけ、エラトが苦笑する。 「よし、お兄さんたちと一緒に雪遊びをしよう」 いまだに潤の足にまとわりつき、困らせてその反応を楽しむ少年に神之介が声をかける。 少年は声をかけられて、めんどくさそうにちらりと彼を一瞥する。 「やだよ、おじさんたちとなんて」 「おじ‥‥っ」 それよりも僕は潤にーちゃんとがいい、と言う少年におじさん呼ばわりされた神之介が一瞬言葉を失う。そして一瞬にしてその形相を恐ろしいものへと変えて。 「俺はまだ17歳だ‥‥!!お兄さんって言え‥‥!!」 ぐわしっ!と音を立てるほどの勢いで少年の両肩をつかみ、目を凝視して言った。彼のあまりの恐ろしさに、「ひっ」と息をのんだ少年は顔を真っ青にして人形のようにこくこくと首を上下に振る。 「わかってくれればそれでいいんだ」 それを見て、神之介は少年を離してにっこりと微笑んだ。 その笑顔に少年がほっと息を吐き出し、神之介を頭の中に「怒らせると怖いお兄さん」と刻み込んだのは周りにいる人間ならだれでもわかりそうなことだった。 「あ、あの!潤さんっ」 遊びの準備をしようと動き始めた一同の背後から、突然少女がひょっこりと現れる。そして、もちろんその手には巨大な桶。 「ちょ、ちょっと待って!また撒くんですか!?」 「あら?雪が融けてちょうどいいじゃないですか」 真っ青になった潤に少女がのんびりと微笑む。 「何度言ってもわかってくれない‥‥ああ‥‥」 あまりにも天然な少女に潤が途方に暮れる。 「おう、おまえがあの噂のドジっ娘か!」 「ど、ドジ!?」 固まってしまった潤の代わりに紫郎が笑いながら言うと、少女がびっくりしたように目を見開く。 「ここで潤ってのにうまい料理差し入れたらさ、いい具合にフラグ立つぜ?」 潤に聞こえないよう、こっそりと少女に耳打ちをし、にやりと笑う。 その言葉に少女は瞬時に表情を変えた。 「わ、わかりました!任せてください!」 もっと粘るかと思いきや、潤に喜ばれるとわかり態度を180度変えた彼女に集まった開拓者たちは思わず笑みを漏らした。――なんというか、態度があからさますぎる。 「さーってと、何からしよーか」 そそくさと去って行った少女の後姿を見ながら、琥珀が明るく言う。 「その前に、防寒具などありませんか?」 エラトが潤に尋ねる。このままでは風邪をひきかねないからだ。 「そうですね、ご案内します」 暴れまわる少年の手を琥珀がつかみ、その後ろから神之介が押しながら一同は防寒具を手に入れるべく潤の後を追った。 ◆ そして、しばらくして。 「わあ!!」 それぞれ防寒具を着用し、風邪をひかないように寒さ対策をしてから案内された場所は屋敷の通路。大きな屋敷であるだけに通路も広く、一人で雪かきなど明らかに困難であったが、雪遊びをするという観点からすれば素晴らしい場所だった。 厚く積もった雪は平らで滑らか。まるで綿菓子のように真っ白なそこに大はしゃぎのレティシアが飛び込む。そして仰向けに寝転がり、思うままに雪に跡をつけた。 「おい、ちゃんと襟巻も巻かないと!」 潤から引き離され、しばらくご機嫌斜めの少年も雪を見るなり元気になって走り回ったので巻いていた襟巻が取れてしまった。それを拾った琥珀が弟の面倒を見る兄のように、動き回る少年を捕まえてしっかりと首に巻きつけた。 「私はこちらでいろいろと準備をしていますね」 これから必要になるであろう物の準備を申し出たエラトが、例のドジな使用人少女に案内され、屋敷をあちこち歩き回っている。 「どーだガキンチョ!俺のスペシャルな雪かきに勝てるかな?」 足跡一つつけられていない銀世界の向こうを指さしながら、紫郎が言った。「勝負だ!」と少年に言うなり、彼は駆け出す。 「あ!」 その言葉に一瞬きょとんとした顔をした少年も、次の瞬間には闘志に火が付いたかのように紫郎を追いかけた。 「私も私もっ」 盛り上がる男性陣にレティシア潤が雪かきでためた雪を運び始めた。 「ふふ、盛り上がってますね」 きゃっきゃっと楽しげな声が聞こえる通路の先で、一通りの用具の場所を教えてもらいさっそく薪割りの作業に入ったエラトが、盛り上がる5人を遠くから眺めながら微笑んだ。 「私も仕事に専念するとしましょうか」 彼女はこの後遊び疲れて汗ぐっしょりになるだろう5人が風邪をひかないよう、温まるための風呂の準備をしていた。 時々近くの台所から少女が潤の様子を気にするように顔をのぞかせたが、あいにく潤は遠すぎてよく見えない。彼女はエラトが薪割りに精を出している姿を見ては我に返ったようにあわてて台所へ戻っていった。 ◆ 雪玉転がしの勝負をしていたためか、邪魔にならない通路の脇に雪合戦のための障壁がすぐに完成した。ご丁寧にも隣には余りの雪玉で大きな雪だるまが並んでいる。 「アハハー、それ投げろーっ」 琥珀の投げた雪玉が少年の後頭部に見事に命中する。 「むうっ」 それに頬を膨らませ、少年もまた反撃すべく雪をかき集めた。 「今じゃなかなか出来ねぇからな‥‥思う存分遊ばせてもらうぜ!」 雪玉作りに必死になる少年の横で、神之介が好戦的に笑った。 「おらよっと!」 その間にも今度は紫郎が雪玉を投げつける。 「ぼ、僕もっ」 頑張って投げたものの小さな手で作った、かわいらしい雪玉は残念ながらそのまま地面に墜落。それを見た少年は大きな目を不満そうに細める。 「もーいい!つまんないしっ」 そしてくるり、と踵を返して大好きな潤のもとへ――と思ったところで首の後ろの襟をつかまれ、猫のようにひょいと持ち上げられた。 「抜けるんならひとこと言ってから抜けるもんだぞ‥‥!」 神之介の低い声で言った言葉に、再び少年が顔を青くする。 「そうですよ、潤さんは今忙しいんだから。こちらで一緒に遊びましょう」 潤の邪魔をしに行こうとした少年にレティシアも「わがままはいけません」と咎め、最後ににっこりと笑った。 「投げ方が良くないんですよ。ほらこうして‥‥」 どうしてもうまくいかない少年の前で実際に雪玉を取り、きれいなフォームで投げる。 「腕の力だけで投げてしまうと痛めてしまうので、こうして膝にぐぐっと力を入れて」 いつの間にか少年だけでなく、雪に慣れていない者全員のための講義になってしまったが、レティシアは実際に自分がやって見せながら説明した。 「腰をひねる感じですよっ」 そういって投げた雪玉は簡単に遠くまできれいな軌跡を描いて飛んでいく。 「こ、こう?」 それを見た少年がおずおずと彼女のまねをする。 「そうそう。上手ですよ」 だんだん上手に雪玉を投げられるようになってきた少年にレティシアも笑みを浮かべる。 「よし!続きだ!」 琥珀の掛け声により、通路に再び雪玉が飛び交った。 「私は雪玉を」 一仕事終えた、といった表情のレティシアは障壁のそばの雪だるまの後ろにしゃがみ、チームの仲間のために雪玉作りに専念するのだった。 ◆ 雪合戦を始めてからどれくらい時間がたっただろうか。 「あー疲れた!」 存分に暴れまわった5人はぐったりと雪の上に座り込んだ。 「そろそろやめにして、かまくらでも作らねーか?」 琥珀が提案する。 「そうだな!この辺の雪をかき集めればいいのができそうだぜ」 紫郎も同意した。 もともと雪合戦の障壁は後でかまくらに利用できるように配置したものである。後はもう少し雪をため、通路に残った雪を使って完全に障壁をつなげればいい。 大きなそりを使い、雪かきや雪玉、さらに通路に残る雪を一か所に集めたあと、琥珀は用意してもらった大きな板を荒縄で四角く囲った。 「ちょっと中に入ってもらえねーか?」 そういって紫郎と神之介に中に入ってもらい、雪を踏み固めるよう指示する。 「新しい雪来ましたよー」 レティシアが追加の雪をそりからどさりと落としながら言った。 「あ、ちょっと手伝ってくれ!」 手持無沙汰の少年が暇そうにしていたのを見逃さず、琥珀が彼を呼び寄せる。 「こっちに飾りの雪うさぎを作ってくれねーか?」 そういいながら、雪を丸め、葉をつけてうさぎを少年の目の前で作って、やり方を教える。 「こっちはいいぜ!」 「了解!」 雪を踏み固めたと紫郎から合図が入り、琥珀はまたせわしなくかまくらの中へ戻っていく。 「崩れねーよーに、しっかりつくらねーとなー」 言いながら、下から雪を投げ入れさらに踏み固める。 「それにしてもでかいな‥‥こんな大きさは初めてだ」 手を休めた神之介が感動したように言った。 そうしている間に、板が外され、外がなだらかな円形状に整えられたかまくらはみるみるうちに完成に近づいていく。 「よし、あとは掘るだけだ」 ある程度の厚さを残し、きれいに中をくりぬくようにして掘ればかまくらは完成。みんなでやればあっという間だった。仕上げに少年が作った雪うさぎを飾り付ける。 「こたつ、持ってきましたよ」 ちょうどいいタイミングで、エラトがこたつを運び込む。 「ちょっとおとなしくしててね」 好奇心旺盛な少年に声をかけつつ、準備を整えていく。 そして。 「準備完了だ!」 紫郎がほくほく顔で叫んだ。 「お風呂、沸いてますよ。風邪をひいたら大変」 エラトがそう言って微笑む。 「わあ、ありがとうございます!」 レティシアがずっと一人で作業をしていたエラトに礼を言い、少年を風呂に入れると申し出たエラトに彼を託した。 「お風呂、入りましょうか」 やさしく微笑んだエラトに、少年もまたおとなしくついて行ったのだった。 ◆ 温まったら今までの疲れが出てきたのだろうか、風呂から上がった少年が眠そうに目をこすったりあくびをしたりしている。それを見たレティシアが彼の手を取った。 「お昼寝、しましょうね。起きたらまたたくさん遊びましょう」 「眠り次第、私が子守を引き受けます」 建物内に少年を連れて行ったあと、鍋の準備を終えたという少女を呼んで子守唄を教えてもらうレティシアに、エラトが申し出た。 子守唄の効果は抜群。疲れていた少年はあっという間に眠りにつき、ついでに添い寝をしていた少女までがすうすうと気持ちよさそうな寝息をたてていた。 そして、一人残されたエラトは二人に布団を掛け直し、雪かきを手伝うべく立ち上がった。 ◆ 「いやあ、本当に助かりました!」 夕暮れ。 ようやく雪かきを終えた一同はこたつに入り、鍋を囲んだ。 昼寝から目を覚ました少年は再び元気に走り回っていたが、神之介がそれをつかんでこたつに放り込む。 「遅くなってしまって悪かったな」 「とんでもない!」 少年が寝てから遅れて雪かきを始めたことを詫びた彼だったが、潤があわてて否定する。 「さすがですね‥‥あっという間に終わってしまった」 潤は雪かき中の神之介の力を思い出しながら感心する。サムライの力は伊達ではない。 「疲れた後のお鍋は格別ですねえ‥‥」 椀を両手で包み込みながらレティシアがほうっと息を吐き出した。 「あーうまかったー。おかわり!」 一杯食べ終わった琥珀が笑顔で椀を差し出す。それを少女が嬉しそうに受け取った。 「野菜と肉はバランスよく食べねぇとダメだぞ」 肉ばかりを狙う少年の手から椀を取り、バランスよく盛っていくのは神之介。 「本当においしいですね‥‥お料理、本当に上手なんですね」 エラトもまた微笑みながら少女に言った。 いろいろと準備をしていたエラトは、彼女のドジっぷりを嫌というほど見た。 たとえば、こたつを出すとき。 こたつのありかを聞いたのに、なぜか倉とまったく違う方向に連れて行かれ、彼女にとっては慣れているはずの屋敷で迷ってしまった。水汲みをしていたら、台所から盛大な音がしたので駆けつけたら少女が大量の鍋の下敷きになっていた。 いろいろあったが、それでも不思議に料理だけは絶品。 「ありがとうな、すごくうまいよ」 少女がちらちらと気にしていたのに気付いた潤がやさしく微笑んだ。少女の顔がみるみるうちに明るくなった。 「明日、筋肉痛になったらつらいですからマッサージ、しますね!」 鍋を終えた皆に、レティシアが言った。 「もちろん、あなたは潤さんにですよ!」 彼女の言葉に、少女は顔を茹蛸のようにしたのだった。 |