【PM】WHDB収穫祭
マスター名:奈華 綾里
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 4人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/11/22 00:29



■オープニング本文

※このシナリオはパンプキンマジック・シナリオです。
 オープニングは架空のものであり、DTSの世界観に一切影響を与えません。

●南瓜、煮詰る

 間に合わなかった。
 不覚にも彼の日は過ぎてしまったのだが、南瓜大王はまだ諦めてはいなかった。
「悪戯するまでは消える訳にはいかん‥‥」
 そして、種の詰まった頭で必死に案を搾り出す。
 しかし、出てくるのは種くらいのものでいい案は一向に芽を出さない。
「むむ? そう言えば最近人間共が騒がしくしているな」
 それにふと気が付いて、何処からともなく街を除き見る。
 すると、そこでは収穫祭なるものが行われている。


「今年のメインイベントは何たって秋の味覚採り放題の収穫大会だ! 好きなものを好きなだけ取りまくって、一番の奴には豪華商品も付いてくるってんだから参加しなきゃ損だぜ!」
 威勢のいい声で呼び込んで、成程。畑には確かに南瓜に芋に柿の木まで栽培され、売りに出しているものの他にもまだまだ沢山実ったまま放置されているようだ。
「ほほう、収穫大会か。ただ、採られるだけでは我同胞らも悲しいだけであろう‥‥ひとつこれで遊んでみるか」
 そう言葉するとニヤリと笑い、早速準備に取り掛かる。
「折角やるのであれば、本気を出さねばつまらぬからな」
 そして、ふわりと宙に浮くと眼下を見下ろし目ぼしい人間を探し始める。
「我輩のパーティーに相応しい人間を集めねばな。あの時のお礼も兼ねて‥‥」
 いつまで根に持っているのか。開拓者との一悶着の記憶を思い出し言う。
「ふむ、あの青年使えそうだな」
 くくっと笑って、大王はその青年の元に向かうのだった。


●本気の悪戯の為に

「俺に依頼?」
 立ち寄った街で声をかけられ、罠師・キサイが振り替える。
 するとそこには何処か異国の雰囲気を纏った一人の男が立っていた。
「で、何をすればいい?」
 特に仕事がある訳ではない。見聞と修練の為の旅だ。道草は醍醐味でもある。
 キサイはそう思い、その男の言葉に耳を傾ければ――彼の畑でも収穫祭が行うとかで、ちょっとした罠も作りたいらしく手伝って欲しいのだという。
「相手は一般人なんだろう? プロが立ち入るべきじゃない。他当たってくれ」
 イベントとはいえ手は抜きたくない。ともすれば、自ずと本気のトラップを仕掛けてしまい、怪我をさせてしまうかもしれない。そんな事になっては、自分の名は元より里の名にも傷が付く。ここは関わらないのが一番である。
 しかし、男の次の言葉にぴくりとキサイの肩が揺れる。
「一般人なんて生温い‥‥ターゲットは開拓者なんですよ。だから、遠慮は入らない。好きなだけ仕掛けてやって下さい」
 言葉のトーンを一つ下げて、何処か不気味に男が言う。
「それは‥‥どういうことだ? 遊びじゃないのかよ」
 その言葉に何か冷たいものを感じてキサイが問い返す。そう言えば、この男――会ってから帽子を深く被ったまま顔を見せようとはしない。雰囲気もさる事ながら、本当に人間なのか疑いを持ち始める。
「遊びですよ‥‥楽しい悪戯です。しかしながら、やるからには本気が礼儀」
「それはそうかもしれないけども‥‥やっぱり駄目だ。断る」
 不審者に関わるべきではない。そう彼の心が警鐘を鳴らしている。
 けれど、それはもう遅かった。
「‥‥ほほう、我輩がここまで頭を低くして頼んでも聞いてはもらえぬのか。ならば力付くで」
 黒いマントを翻し、深く被った帽子の下――ちらりと見えた顔にキサイはぎょっとする。その顔は人のモノではなかった。オレンジ色のごつごつした顔にギザギザの口、無機質な目が彼をじっと見据えている。
「あ‥‥あああ‥‥」
 こんなアヤカシ見た事がない。慌ててその場を離脱しようと煙幕玉を地面に叩きつける。しかし、
「効かぬな、人間!」
 すいーと煙の中を通り抜け、南瓜大王リアル頭身バージョンはキサイに襲い掛かる。
「くっ!」
 払い除けようとしたが、無理だった。もともと実体を持たぬ存在なのか手は空を切る。
「我輩にその身体と知識を預けるがいい。あの日が過ぎてしまった手前、実体がなくては奴らにも我輩が見えないのでな」
 その後には、とり憑かれていたのだろう紳士が倒れ、暫くの後意識を取り戻し何事もなかったように帰って行くのだった。

 そして大王はキサイの身体を借りて、
「来るがいい、開拓者共よ。我輩の狂宴に付き合う勇気があるのならな‥‥くはははは」
 月をバックに挑発的な笑みを浮かべ、地道に土を掘る大王‥‥もといキサイの姿があるのだった。


■参加者一覧
ペケ(ia5365
18歳・女・シ
ガルフ・ガルグウォード(ia5417
20歳・男・シ
蓮 神音(ib2662
14歳・女・泰
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔


■リプレイ本文

●開幕
 それは唐突訪れた。
 開始早々の珍事件――いや、彼女にとってはそうでもない。
 日常茶判事に起こる事だが、今回は仕掛け人がいる。それは――。


 たった四人でも南瓜大王は気にしなかった。青空の下、心地よい風を受け思うままに事を進めにかかる。
 お化けというのは普通太陽を嫌うというが、憑依していればいいという事だろうか?
 額に汗して参加者を出迎え大王キサイは彼らを歓迎する。

「我‥‥いや、俺の主催する収穫祭によく来たな。精々もがき苦‥‥いや、楽しんでいけ」

 参加者の目の前に広がるは広大な畑――南瓜を始め、端の方には何処か季節外れの西瓜が顔を出し、少し先には大地から芋の蔓が伸びている。そして、更に奥には柿と栗。そのまた先の林には松茸もあるようだ。

「キサイおにーさん、お久し振りなんだよー!」

 ――とそこへ元気よく声をかけたのはおさげ泰拳士の石動神音(ib2662)だった。

「うおぉぉ!! おまえは我輩の隠れファン!!」
「え? どういうこと?」

 とっさに口に出た言葉に彼女が目を丸くする。確かに彼女とキサイは一度依頼を共にしているが、その時は別段そういう素振りは見せていない。ただ、大王であれば話は別だ。少し前に彼女とは顔を合わせている。その時熱烈な歓迎を受けた為、勝手にそう思い込んでしまっているようだ。

「ねぇ、キサイおにーさん? 随分と口調が変わったんだね」

 その言葉遣いに俄かに不審を抱いて、彼女はじぃーーとキサイを見つめる。

「さっさぁな。わ‥‥いや、俺はシノビだぜ? あの時は自分を偽っていたとかも考えられるだろうが」
「えーー、ホントかな〜?」

 慌てて取り繕う彼に益々不審を募らせる。

「確かに何処か様子がおかしいみたいですが、早く始めましょう! 松茸は私が根こそぎいただきですよー」

 そこへ闘志剥き出しでやってきたのはセクシーシノビのペケ(ia5365)である。
 秋空には少し‥‥いやかなり寒い衣装で登場し拳を強く握り締める。

「おお! 今度はあの狂戦士か!! 久しいぞ」

 するとまたまた大王の記憶がぽろりと洩れた。ペケも大王とは顔を合わせており、その折大暴れしていたという印象が残っているようだ。

「狂戦士ですか? 私は初対面だと思うのですが‥‥」

 よく判らず首を傾げる彼女に慌てて視線を逸らす。

「神音だって、絶対負けないんだよ!」

 その言葉にうまく救われた大王だった。そして、自然に視線を向けた先には何やら不満を漏らす人影がある。

「誰だ‥‥西瓜を腐らせたのは‥‥貴重な西瓜を‥‥グルルゥ」

 そこにいたのは今回唯一の男参加者――シノビのガルフ・ガルグウォード(ia5417)だった。
 故郷が陰殻らしく、どこか西瓜には思い入れがあるらしい。腐った西瓜を見取り目が血走っている。

「おおー! 秋の収穫祭だね! 頑張って優勝‥‥って思ったら、あたし以外身軽な人ばっかり!」

 そして最後に目に入ったのは、こちらもセクシー衣装の魔術師・リィムナ・ピサレット(ib5201)。
 シノビ二人と泰拳士一人を相手にどう戦うか。なかなか見ものである。

「あ、あそこにいるのはペケさんじゃん。うしし、じゃあまずはコテ調べに‥‥」

 そう呟いて何やら不審な行動。そう、この時点ですでに戦いの火蓋は切って落とされていた。


 そして、今――その仕掛けが発動した。
 はらりと‥‥腰で結んでいた筈の褌の紐が解け、艶やかな肌が日の元にさらされる。
 辛うじてまだ大事な部分は見えてはいないが、それも時間の問題だ。

「や〜ん、またですかぁー!!」
「うえっ! ちょっやばくね!」
「ペケおねーさんっ、大丈夫ー!!」

 思わぬハプニングにガルフと神音も慌てて助けに入る。

「うっし、まずはスタートダッシュ成功だね!」

 それを遠目にきししと笑って、次に手にしたのは熟した柿。それを振り被って、

「そこの金髪ツンツン髪のお兄さん、こっち向いてー!」
「えっ! 俺?‥‥ってうわぁぁぁ!!」

 振り返ったガルフに向けて、柿を投げつけ早速妨害に入る。

「がはは、成程。面白いガキだな。あの小娘‥‥悪戯の素質がある」

 そんな様子を高所から見物し大王キサイが笑う。

「ありがとですよー、でも隙ありですー!!」
「あぁ!! ずるーい! 神音の南瓜〜」

 その一方では、助けに駆け寄った神音の所持していた南瓜を奪い取り自分のものにしてしまうペケの姿があったり。

「さて、我輩も動き出さなくてはなぁ」

 くくっと笑ってそう呟くと、彼自身も動き始めるのだった。



●素敵なお誘い
 リィムナの妨害を掻い潜り、ガルフは罠解除に勤しんでいた。
 開幕早々あんな事があったから用心には用心を重ねて、畑を一歩一歩確認しつつ前進する。
 もはや、収穫というよりも解除の作業の方が多い位だ。
「急がば回れ。えらい人は言っていたもんな‥‥お、美味そうな芋だな。ちょっと休憩にしよう」
 前屈みの体勢に疲れが出始め、適当に芋を引っこ抜くと丸々とした薩摩芋が顔を出す。

「ひゃっほー! これをこうしてこうやってと‥‥後は待つだけ〜」

 そして、手早く調理を始めれば辺りにいい香りが漂い始める。

「神音もお料理するんだよー」

 それにつられて南瓜を取り上げ、持参の調理器具で料理を始める神音。
 その間も遠くでは今度は仕掛けなしに褌落下を披露してしまっているペケが居たり、木に登りひたすら柿を掻き集めているリィムナの姿があったのだが、こちらは何処吹く風である。

「できたぜ! 野菜の天麩羅いっちょあがりだー!」

 でーんと誰に見せるともなく掲げて見せて、嬉しげに頬張るガルフ。

「ほこほこで甘くて‥‥やっぱ採り立てはうまい! そうだ! これキサイにもどうかな?」

 きょろきょろと辺りを見渡して主催者を探す。すると、彼は畑の端辺りで芋の蔓をしきりに引っ張っていた。

「なあなあ、一体なにやってるんだ?」
「っ!!!」

 天麩羅片手に現れたガルフに大王キサイが動揺する。

「なぜおまえがココにいる。収穫はどうした‥‥油を売っていては勝負にならんぞ」

 青年らしからぬ口調でこれはキサイ。

「これ。揚げたてだから食わないかと思って‥‥キサイ、誕生日だったんだろ?」
「え‥‥」

 思いも寄らぬ言葉に一旦彼の呼吸は停止した。

「そうか、こやつの」
「どうかしたのか? 熱い内に食べてくれな」

 そう言って強引に皿を手渡すと再び収穫に戻っていく。余りにも純真な目をしていた彼に、手にしていた蔓を引っ張るのを躊躇する。

「神音もできたー! キサイおにーさん、食べない?」

 するともう一方からも声がかかり視線を向ければ、そこでは南瓜の煮物を手にした神音が手を振っている。

「南瓜の煮物‥‥だと。いい度胸だ、我輩のファンともあろう者が!!」

   プチッ

 それに大王が激怒した。実際はただの勘違いである。
 彼女はファンでも何でもないし、勿論南瓜大王が乗り移っている事など知る由もない。
 しかし大王はその事を失念している。というか南瓜の中は意外と空洞である。

「くらえっ! 我輩の鉄槌を!!」
「ええっ! どういうってきゃあああ!!」

 突然暴走を始めたキサイに思わず悲鳴が上がる。キサイは手にした蔓を引っ張ると、そこ一帯の芋が勢いよく引っこ抜け辺りに雨の如く土と芋が降り注ぐ。

「何々どういうこと!」

 それに戸惑うリィムナ。折角集めた柿や栗が芋の雨に背負っていた籠が壊ればらばらと地面に転がり出す。

「敵は参加者のみにあらず‥‥ということですか! いいでしょう!! 私もそれなら!」

 その状況にも動じずペケは対抗策に打って出た。
 一度しか使えないとっておきの策、それを今見せる時とばかりに大きく跳躍し、狙うは皆のいる辺り――。

「ペケケケ、喰らうがいいのです! 必殺・焙烙玉Lv,3!!」

   どかぁぁぁぁぁん

 轟音と共に辺り一帯を燃やすと、掘り返された芋達も一気に焼き尽くしてゆく。

「あ、これおいしー。焼き芋だ」
「焼き南瓜も出来てるねー♪」

 ――が出来てみればなんだか変な結果に終わってしまい、心底悔しがるペケ。再び神音の収穫物を奪いにかかる。

「むー、またどろぼーさんするのー!! それずるいってばー!!」
「勝つ為には手段を選ばないのですよー! ただ、松茸じゃないのが残念です!」

 軽く跳躍し持ち去る彼女であるが、やはりここでもはらりっ。どこまでも緩い褌である。
 けれど、前半戦は地道な収穫を続ける神音がトップを独走。
 妨害中心のリィムナは思うように数を稼げない。大量に収穫し持ち帰る作戦なのだろうが、持って戻るタイミングが掴めない。そして、彼は――。

「あ、ああ‥‥西瓜が‥‥大事な西瓜が‥‥」

 腐っているだけでも心を痛めていたのに、丸焦げになり跡形もなくなったのを目の当たりにして、ガルフはただただ立ち尽くす。しかも血涙を流して――いつ装備したのか陰陽覆『呪』が顔を覆い、沈黙を保っている。

『おまえの気持ち受け取ったぞ‥‥我輩が力を貸して進ぜよう』
「ちか、ら?」

 心に直接呼びかける声にガルフが言葉を繰り返す。

『そうだ。我輩はあの男の永遠のライバル』
「あの男‥‥?」
『いいから、その身預けよ!』


   ごぉぉぉぉぉぉーーー

 その言葉と共にガルフの周囲に風が巻き起こり、彼も再びこの地に舞い降りる。
 姿はガルフそのままであるが、何処か雰囲気が違う。
 彼の名は西瓜大王――去年の主役であった。


●憑依暴走

「一体どうなってるんですかー! 収穫祭にこんなの聞いてないですー!」

 訳が判らない展開に、ポロリしかけた胸の布を押さえてペケが言う。

「あたしもよくわかんないよー! けど、とりあえずアレをとめるのが先じゃない?」

 獣染みた声を上げ、やたらと無闇に強襲を仕掛けてくるガルフを指差し言う。

「――スイ゛、瓜゛ヲ、‥‥腐゛ラ゛セ゛タ゛ノ゛ハ‥‥オ゛マ゛エ゛カ‥‥?」
「ちっ、違うよ!! 落ち着いてガルフおにーさんっ!!」

 それに収穫を中断し神音が必死に説得を試みる。

「不味い事になったが、これもまた一興だ。おまえらなんとかしろ」

 その責任を押し付けて、大王キサイは傍観体勢。彼らと距離をおいている。

「男なのにかっこ悪いよー」
「主催者ならちゃんと責任持つべきです」

 そういう二人の文句も馬耳東風。二人は仕方なく行動を開始する。

「神音、助太刀するよー」
「松茸パーティーの邪魔はさせないのです!」

 そんな二人に助けられ、一旦下がる神音。

「そういえばさっき西瓜がどうとか言ってたなぁ? それにキサイおにーさんも突然怒リ出して‥‥あれ、煮物のせい? え、この話どっかで聞いた気が‥‥」

 不自然な行動の訳を思案し彼女が首を傾げる。その間にも攻防は続いていた。
 ペケがガルフを引き付けて時間を稼ぎ、リィムナが術を完成させる。

「今だ! ウインドカッター!!」

 するとその刃はガルフの後ろの木に命中し激しく枝を揺らして、生っている毬栗を彼の元へと落としていく。

「ててっ、ちくちくする!」

 それに巻き込まれたのは大王キサイだった。いつの間にそっちに行ったのか判らないが、そこでガルフと目が合って――。

「見つけたぞ、南瓜大王!」

 発せられた言葉に皆目を丸くした。
 

●正体と勝敗の行方

「ちっ、ばれては仕方ない。我輩は南瓜大王であーる! 崇め奉れ!」

 頭に毬栗が刺さった状態で大王キサイが言う。

「えっ、ちょっ‥‥どういう事! あれはキサイおにーさんじゃあ」

 突然の発言に思わず声を上げる。

「違う。あれは南瓜大王‥‥あの者に取り付いているのだ! 姿は違っても中身は南瓜だ!」

 ビシィとキサイを指差してガルフが言う。

「えっと‥‥じゃあ、あんたは誰?」

 それに続いてさっきと違う物言いに今度はリィムナが問う。

「我輩は西瓜大王! この者の意識が我輩を呼び出したのだ!! 南瓜の奴、我同胞を腐らせおって‥‥ただでは済まさん!!」
「ほ〜、西瓜に南瓜ですか。お久し振りなのですー」

 それを知って冷静に答えたのはペケだ。

「うむむ、でしゃばってきおって‥‥お前の出番はない筈だぞ!」

 そう憤慨するのは勿論南瓜。この二人犬猿の仲であり、どうしても顔を合わすとこれである。

「いいか、皆の者。あの者を助けたくば南瓜を投げよ! そしてあの者にぶち当てるのだ!!」

 そう言って西瓜大王ガルフが指示を出す。

「おのれおのれ! そうはいかんわ!! 参加者達よっ、あの者に腐った西瓜を当てよ! さすればポイントは十倍だ!!」

 まだ戻りたくはないのだろう。負けじと指示を出し応戦にかかる。
 ガルフとキサイの意志は蚊帳の外――好き勝手する大王二人である。

「え〜っとどっちの味方をすればいいのかな?」
「さぁ、どちらでもいい気がするけど」
「私には関係ないのですー」

 残された三人は各々困惑の色を浮かべて。そして出した結論は――二人共ぼこる。
 それに落ち着いて、 

   どんっ 

 後はあっさりとしたものだった。
 二人にリィムナがアムルリープをかけて眠らせ、ペケがガルフを。神音がキサイを殴ればそこで終了。取り付いていた大王がぴょこんと頭からはじき出され、掌サイズの大王ズが現れる。


『えっ‥‥俺、どうなってたんだ?』

 それと同時に二人は意識を取り戻して、確認するように辺りを見回す。

「良かったー! 元に戻ったね!」

 それにほっと息を吐き喜ぶ神音。残りの二人も各々ほっとしたようだ。

「さぁ、じゃあ再開で」

 そう言いかけたペケだったが、落ちゆく太陽に烏の声。
 夕暮れが近いとあっては続行は難しく‥‥ここで時間切れのようだった。


 そして、結果は地道に集めていた神音の圧勝だった。
 バランスよく集めて回り群を抜いている。ちなみにうまく持ち帰れていればリィムナにも勝機はあったが、取っただけで終わってしまったらしく、悔しい結果である。

「まぁいいです。松茸食べ放題ですから」
「そうだね。家計の足しにもなるし一石二鳥だよ」

 そう喜ぶ参加者に衝撃の事実を西瓜がお見舞いする。

『言っておくがこれは全部こいつの幻だ。持ち帰りは出来んぞ』――と。

 その言葉が和やかなムードを一変させた。全てが幻と言う事はつまりくたびれ損と言う訳だ。

「あ、あの‥‥おまえら目が怖いぞ」

 その痛い空気と視線を感じて、ミニマム南瓜が後ずさる。

「意地でも持って帰るからね」
「松茸パーティーなのですよー!」
「消したらどうなるかわかるよね?」
「西瓜‥‥腐らせたのはお前だったんだな! 覚悟しろ!」
「俺の身体を使った代償、判ってるんだろうな?」

 じわりと詰め寄られて脅える南瓜。

「自業自得だ。南瓜よ、また会おう」

 そんな中、一足先に西瓜は消えて――その後には南瓜の断末魔が響き、少し反省したのか参加者の下には、翌朝心ばかりの粗品が届けられているのだった。