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■オープニング本文 ※このシナリオはパンプキンマジック・シナリオです。 オープニングは架空のものであり、DTSの世界観に一切影響を与えません。 これは現実であって現実でないお話。 ある所に一人の鍋蓋愛好家がいました。 きっかけは些細なものでしたが、今となっては独自の観点から鍋蓋を愛で、時に我が身を守る鎧としたり、時に我が身を助ける武器としたりと様々な工夫を施し、皆にもその素晴しさを教えたいと思っていたのです。 そんなある日、彼は山へと向かいます。 いわゆる芝刈りと言う事でしょう。午前の仕事を終えて、やれ一息。しかし、思いの他芝は生育し、その日だけでは終わりません。仕方がないので野宿を決行し、持参した鍋や畑の食材で料理を始めます。しかし、始めた場所が悪う御座いました。 「あ、しまったさね」 食材を鍋に入れ、後は鍋に蓋をし煮込むだけ。その時にうっかり鍋蓋を取り落としてしまいます。ころころころころ‥‥丸い蓋は緩やかな下りの山道を転がってゆきます。慌てて追いかける男でしたが、速さについていけません。 そして、鍋蓋はついに池にぽちゃんと落ちてしまいました。 「あぁ、あれは一番使い慣れた鍋蓋だったのに‥‥」 池の縁で男は落胆します。けれど、それを見ていたのでしょう。池からぶくぶく泡が立ち昇り、何かが顔を出しました。 「か、かぼちゃ‥‥さね?」 訳が判らない状況に男は動く事が出来ません。 「ふっふっふっ、我輩の季節到来と言う訳だな。男、お前は運がいい」 突如現れたのは南瓜のお化け。不気味なギザギサの口に怪しく光る目。ボロ布の身体に足はなく、浮遊しているようです。 「あ‥‥あんた、誰さね?」 男が尋ねます。 「我輩か。我輩は南瓜大王だ‥‥早速だが、男。お前が落としたのはこの金の鍋蓋か?」 名乗ると同時に布の下から白い手袋をした手を出し、輝く鍋蓋を差し出します。 「違うさね。俺が落としたのは普通の木の鍋蓋さぁ」 けれど、男は正直でした。 「ほほう、ではこの銀の鍋蓋か?」 すると、今度はもう片方の手から銀の鍋蓋を差し出します。男がはっきりと『木の鍋蓋』だと言っているというのに、大王は聞く耳を持ちません。 「だから、俺の鍋蓋は木のやつさね。そんな重くて湯気を吸わない鍋蓋はいらないさぁ」 男も男で――自分の理論があるらしく、全く興味を持ちません。あくまであの鍋蓋がいいようです。 「ふむふむ、なかなか正直な奴だな。では、これを返して進ぜよう。ついでにこの二枚も差し上げよう」 何処からともなく三本目の手を出し、落とした筈の鍋蓋を男に返します。 「ありがとさねっ」 男は自然にそれを受け取って、大王は少し拍子抜け。普通なら三本目の腕を見て、驚き慌てふためくのを楽しみにしていたからです。 「おまえ、我輩が怖くないのか?」 すいーと近付き男に尋ねます。 「鍋蓋拾ってくれた親切な人さね。あっ、けどこの二つは返すさぁ。これは残念ながら使い物にならないさね」 「なんだと?」 折角授けた二枚の鍋蓋――どう考えても高価で価値のある鍋蓋なのに、それを使い物にならないと言われては、プライドの高い大王の怒りが込み上げます。 「そんな板より値打ちはあるぞ」 しかし、必死でそれを押し留めて紳士的に振舞う彼。けれど、 「価値はあっても鍋蓋としては欠陥品さぁ。蒸気を吸い、呼吸できてこその鍋蓋さぁ」 ぱきり‥‥欠陥品の言葉に再び大王の心にひびが入ります。それに追い討ちをかけたのは次の誘い。 「そうさぁ。今、南瓜の煮物作ってるさね! 食べていくさぁ?」 それは何気ない一言でした。しかし、相手は南瓜大王でございます。この提案はまさに共食いの勧誘――けれど、男はその失態に気付いておりません。みるみる大王の顔色に陰が落ちます。 「どうかしたさね?」 呑気にも男がそう尋ねて‥‥大王の心は火山の如く爆発しました。 「我輩の好意を尽く跳ね返す愚か者よ! 我輩を怒らせた事を後悔するがいい!!」 そう言って大王は男に魔法をかけました。触れるもの全てが黄金に変わる魔法を‥‥。 そして、いつの間にか姿を消してしまいます。残された男は困惑しました。手にしていた鍋蓋は見る見る金へと形を替えてしまったからです。その後も食べ物を掴めば、形をそのままに金へと変わり‥‥料理はおろか趣味の鍋蓋磨きも出来ません。そして、自分に触れれば、触れた場所がみるみる金へと変貌してします。 「一体何がいけなかったさぁ〜」 男は固まってしまった頬を鏡で確認しながら立ち尽くすのでした。 |
■参加者一覧
鈴木 透子(ia5664)
13歳・女・陰
壬護 蒼樹(ib0423)
29歳・男・志
蓮 神音(ib2662)
14歳・女・泰
リーゼロッテ・ヴェルト(ib5386)
14歳・女・陰
和亜伊(ib7459)
36歳・男・砲 |
■リプレイ本文 ●訪問 南瓜大王の怒りを買った男は新海と言いました。 彼はなんとか家に戻るものの、それから先が思いつきません。ただただ困惑するばかりです。そんな噂を聞きつけて、ある男が尋ねて来ました。彼の名は壬護蒼樹(ib0423)――長身銀髪の巨漢ではありますが、根はとても優しい男です。 「よく来てくれたさぁ」 そんな彼の訪問に新海はほっと胸を撫で下ろします。 しかし、彼を待っていたのは‥‥ 「見損ないましたよ、新海さん!! これは正義の鉄槌です!!」 どごぉぉぉぉん 入るが早いか小走りで彼に近寄ると、拳固のパンチが新海を襲います。 「うわぁぁぁさねぇ〜〜」 動揺の悲鳴と共に新海は一瞬にして竈に吹っ飛び、近くに積んでいた薪ががらがら崩れて彼を襲います。その中のひとつが彼の手に当たって‥‥みるみる内にそれは金へと変貌を遂げました。 「成程。やっぱり噂は本当なのね」 それを横目に続いて入ってきたリーゼロッテ・ヴェルト(ib5386)が呟きます。 「おう、初めまして。俺は和亜伊(ib7459)、砲術士だ! なんか変な呪いかけられたようだな」 そしてもう一人――兎獣人が彼の家を訪ねます。 「や、俺は‥‥よく判らないさね‥‥親切な人がいきなり怒り出して」 「ふむ。嘘つきばかりのこの世の中に珍しいもんだが‥‥聞いた限りじゃああんたに非があるぜ」 「俺にさぁ?」 竈に足を突っ込み薪に埋もれたまま、彼は繰り返します。 「そうです! 新海さん、とりあえずそこに直りなさい!!」 すると再び蒼樹が近付いて、そこから引き抜き土間に座らせ説教が始まります。 「いいですか‥‥僕は以前の一件で新海さんを感心していたんです。そりゃ、少しナイスバティーの怪盗に言い寄られるなんて羨ましいなとか思い、駄目な人にしてやろうと思ったこともありました。しかしです! それはもう過去の事‥‥親切にして頂いた方に‥‥そう、親切でとても高級な鍋蓋をくれた鍋蓋隠れファンかもしれない人の厚意を無碍にするなんて‥‥あぁあぁ、なんて事でしょう」 そこまで捲くし立てる様に言い切って、大袈裟にがっかりした表情を浮かべます。 「そうだな。あんた鍋蓋愛してるんだろう? 金と銀の鍋蓋は欠陥品とどうしていい切れる?」 そこに今回の新海の非を教えるが如く、亜伊も口を挟みます。 「だって鍋蓋は蒸気を吸ってこそ‥‥」 「しゃーーらっぷです!」 いつの間に異国の言葉を覚えたのかは判りませんが、兎も角その意見に意義ありとばかりに蒼樹が声を上げ、思い切り新海を平手で打ちました。 「‥‥蒼樹‥‥変わったさね」 その態度に思わず感想を零す新海です。けれど、これは愛の鞭――いえ、新海が南瓜大王にこの呪いを解いて貰う為に大事な事であり、彼は手を抜きません。 「情けない‥‥そもそも、鍋蓋は木でないと使えないとなんていう固定観念、鍋蓋武器の第一人者である新海さんが口にするなんて‥‥」 再び落胆の表情を見せて彼は語り始めます。 「そう、モノが違えばそれにしか出来ない事があるはずです。鍋と蓋は夫婦同然‥‥鍋もそれ相応のものを見つければいい」 いつもはおっとりしている蒼樹ですが、ここは正念場とばかりに語りを強めます。その演説ともいえる説教は‥‥南瓜大王に向けられたものでした。きっと彼の動向を見ている筈の大王に向けて――。 新海の元を訪れた彼らはこう考えます。 非は明らかに新海にあり。よって新海を改心させて謝らせれば、きっと南瓜大王の怒りも静まるだろうと――。 「ふふふ、なかなか面白い事になっておるようだな」 そんな思惑通り、大王は彼らを見ていました。 それも新海宅の床下から――汚れるのも構わず、にやにや笑いを零します。 「ふふふふふ〜、みーつけた」 それを見つけて声を上げる者が居たのですが、彼はまだ気付きません。 赤髪のツインおさげな元気娘――少なからず面識のあるその少女・石動神音(ib2662)の存在に――。 一方、新海の家を訪れた者達とは別になにやら画策している少女もおります。 彼女の名は鈴木透子(ia5664)。神音と同じような髪型ですが、性格はまるで違います。神音は泰拳士であり動と現すならば、彼女は静。陰陽師であり、動くよりも知略を巡らせるのが得意です。そこで、彼女は考えました。 「なんというか‥‥とりっく おあ とりーと なのでしょうか?」 異国の文化の知識もあるようで南瓜大王の話を知っているようです。ともすれば、『放っておいてもハロウィンが終われば解けるのでは?』と思わなくもないのですが、それでは余りにも‥‥と言う事で。 「あれが悪戯とするならば、きっとその成果は見たいはずです」 そう思い、近所の子供達に声をかけて回ります。 「お菓子あげますからちょっと手伝って欲しいのです」 そう声を張り上げて、集まってくるのはなかなかやんちゃそうな子供達。 「ねぇねぇ、何すればいいの?」 「あめちゃんちょうだい」 続々と――さすがにお菓子の効果は凄いよう。彼女自身もまだまだ子供ではありますが、そこはそれ。彼女も一応開拓者。術を見せたりして凄さをアピールし、統率を取る事も忘れません。 (「きっとあたしがしなくとも、ほっておいたらこうなる運命だと思います。新海さんには申し訳ないですが‥‥呪い解除の為、致し方ありません」) そう心に言い聞かせて‥‥彼女は集まった子供達と共に、何故だか小石を手に新海の家へと向かいます。 「いざ、黄金人間を追い出しに!」 『おーー!』 何が何やら‥‥不穏な空気が流れておりました。 ●呪いの活用法 「わかりましたか? つまりは金の蓋は圧力鍋っぽいものになるのです!」 延々と続く蒼樹の演説に――さすがの新海も疲れを見せ始めます。 「後はあれだ。南瓜人間に南瓜をすすめるのは共食い強要だ」 その隣でもう一つの非である共食いの件について亜伊が説き伏せます。 「圧力鍋ってなにさね? それとあの人に南瓜は駄目だったさぁ?」 それに答えて右へ左へ首を忙しなく動かす彼。 「まあまあ、二人共落ち着いて」 そこへ何処からともなくお握りを運んでリーゼロッテが休憩を提案します。 「やったさね。俺腹ペコさぁ」 その言葉に一番に食いついたのは新海でした。 食材に触れられない手前、水と草しか食していないらしくさっきから新海のお腹が悲鳴を上げていたのです。 「仕方ありません。我々もお昼にしましょう」 蒼樹はそういうと二人は料理を始めます。何か振舞うつもりでしょうか。 「ありがとうさねぇ。助かったさぁ」 そういう新海に彼女はにっこりと笑顔を見せまして――。 「だったら一つ、頼みたい事があるんだけれど」 と、後ろの二人には聞こえないように小さな声で交渉を持ちかけます。 「何さね? 俺で出来る事なら‥‥」 「勿論出来るわ。いえ、今のあなたでないと出来ない事よ」 そう言うと後ろの二人の目を盗んで新海を外へと連れ出します。そして、 「その呪いにとっても興味があるのよね。だから、色々試させてもらっていいかしら?」 再び笑って見せてお握りを食べさせてやりながら尋ねます。新海は軽い昼食を戴くと、すぐに手を貸すのでした。まずは小石から――そっと握るだけで、みるみるうちに黄金へと早変わり。 「何かわかりそうさぁ?」 そう尋ねる彼に彼女はあからさまに首を捻ります。 「そうね‥‥けど一回では無理ね。もっとどんどんやって見せて頂戴‥‥」 「わかったさぁ」 そんな言葉に乗せられて、新海は次から次へと小石を黄金に変え始めます。 (「フフフッ、これは丸儲けだわ」) 内心でそうほくそ笑む彼女でした。しかし、ズルはいけません。小山が出来始めた時、 「見つけたぞー! あいつだぁ!!」 「目標発見! 投擲ぃーー!!」 新海に向かって徐に投げつけられたのは豆粒程度の小石です。 「きたわね」 彼女はこの意図を透子から聞いていましたので慌てて彼から離れます。しかし、彼は知る由もなく、 「わ、痛さねっ! 何するさねぁ〜!!」 子供達の猛攻に動揺を隠せません。 『何事だ!』 それに続いて騒ぎを知って駆け出してきた蒼樹と亜伊です。そこには大勢の子供達に石を投げつけられる新海の姿がありました。 ●成功? 「耐えて下さい! 新海さん。これも呪いを解く為です」 さっと鍋蓋を盾代わりに駆け寄って小声で告げる透子さん。どうやら彼女の作戦はこれだったようで――けれど、新海自身は意味が判らず、ただただ石から逃げ惑います。 「はははは、愉快愉快!」 ――とそこに聞き慣れない声がして、一同が振り返った先に問題の大王が腹を抱えて笑っていました。そこへ近付く透子です。 「悪戯がしたかったのでしょう? 悪戯は成功しました。このままではかわいそうだと思いませんか?」 作戦とはいえ彼女が仕向けたものではありますが、それでも内は明かさずに大王の心に訴えかけます。 「そうだよ。もう十分だと思うけど」 するとそこへ神音も現れて、大王の背後から解除のお願いを申し出ます。 「お、おおお、おまえはいつぞやの凶器娘!!」 それにかなり驚いて大きく後退する大王でした。 「ひどいなぁ、凶器娘ってどういうこと〜。あれは大王さんが悪いんだからね」 実は彼女、以前彼と出会った時に相対し、スイカに撒菱をコーティングした即席西瓜モーニングスターで彼をぼこった経験があるのです。それは大王にとってトラウマになるほどの出来事でした。 「な、ななな、何しに来たのだ」 顔に水分を噴出させて大王が問いつめます。 「まぁまぁ、久し振り。今日は戦いに来たんじゃないんだよ。はい、これ」 そう言って隠し持っていた薔薇の花束を差し出します。すると、まんざらでもない様子で彼はそれを受け取りました。 「神音やっとわかったんだ。ずーーと見てたから。さっき床下に居たでしょう?」 満面の笑みで言う彼女に大王は再び吃驚顔。 「ど、どこから見ていたのだ?」 汗を拭き拭き、何か気まずげです。 「ずっとだよ。床下で笑った後、外に出てるんるん気分で鼻歌歌ってたでしょ? そしたら犬に噛まれそうになって‥‥んでリーゼロッテおねーさんと新海さんが出てきて、小石を金に変え出したから舌打ちと一緒に種巻いた所とか‥‥」 「わわわ、そんなところまで見ておったのか!!」 「うん。で思ったの。西瓜より南瓜の方がいいなぁ〜って」 恥ずかしい一面を見られていた事に慌てていた大王でしたが、その後の言葉に徐々に機嫌を取り戻します。 「あの魔法も大王さんがかけたんでしょう。凄いよねー、よっ野菜界のプリンス! 天儀酒をご馳走するから、そろそろ戻してあげてくれないかなぁ。あ、それとも肥料がいい?」 そして、煽てつつも新海の魔法の解除を促します。 「私もお願いするわ。どうやればあんな天才的な魔法をかけられるのか知りたいもの」 それに続いて参戦したのはリーゼロッテ。さすが魔術師とあって魔法自体にも興味があるようです。その間も、未だに小石から逃げ続ける新海でした。いつもの癖でまた一つ鍋蓋を盾にしようと掴んでしまった様で、愛用の鍋蓋が金へと変わり涙目です。そんな中で、透子は止めの合図を見計らっておりました。 「そうだな。我輩の偉大さが判ったというなら許してやらなくもないぞ。ただし、謝ったらな」 「それは勿論だよ。ねぇ、新海さん」 ばたばたしている彼を見つめて彼女が声をかけます。 「えぇ、何ていったさぁ?」 「だから、謝るの‥‥新海さん、そこに座りなさい!!」 大声一発――びしぃぃと指差した神音の迫力に気圧されて‥‥新海はおろか子供達も動きをぴたりと止めます。 「よろしい。じゃあ、謝ってね。大王さんもゴメンね‥‥この人悪気はなかったんだよ〜」 大王の前で正座した新海を見つめて彼女が言います。 「あの件では悪かったさね。みんなから聞いてわかったさぁ。もう一度鍋蓋について考えてみるさね」 ぺこりと頭を下げて、なんだか奉行所の役人と罪人を見ているような光景です。 「ふむ、判ればよいのだ‥‥しかし、我輩が謝ってほしいのは」 「煮物さね? 南瓜嫌いとは知らなかったさぁ…あんたてっきり南瓜被ってるから、好きだと思ったさね」 『えっ‥‥』 恥ずかしそうにそういう新海に一同の目が固まります。 被っているから‥‥彼は大王の事を人だと思っているようです。 「言ってくれればよかったさね。俺、全然知らなかったさぁ〜みんながあんたの事知ってるって事は有名人さぁ? 顔見せて欲しいさぁ」 そう言って新海が大王に近付いて、 ピキピキピキピキッ あっと言う間の出来事でした。彼は大王が被り物をした人間だと思い込んでいたようです。 素顔を見たかったのでしょう。頭の部分に手をかけて――まだ呪いは解かれてはおりません。 「あーーーー……俺、しらねぇぜ」 「私もこうなってしまっては手の施しようがないかもね」 彼らの前に出来てしまった金の像。それを見つめて、居心地悪げに新海から視線を外します。 「ど、ど、どうしてこうなるさぁ!! 俺はこれからどうしたらいいさぁ?!」 それに慌ててみせる新海ですが、これはもはや自業自得。仲間に縋り付いてもどうにもなりません。 「大王は南瓜だから、物扱いでこうなった‥‥って事かなぁ?」 意外と冷静に神音が推理します。 「ま、まぁ‥‥きっとハロウィンが終わると解けるはずですよ。えぇえぇきっと‥‥そういうものです‥‥多分」 もう手に負えない。透子はそう内心思いつつ、とりあえず子供達を解散させてゆきます。 「御免なさい、明朝。私、用事を思い出したから」 「俺もそろそろ帰るな。達者で暮らせ」 「そっ、そんな‥‥俺はどうしたたらいいさねーーー!」 次々と解散していく仲間に唖然とする新海です。 「乙女のキスで目覚めたりとかしないかなぁ?」 そう言って神音が軽く口付けてると、ぼむんと変な音がするのでした。そして、 「いやいやなんと侮りがたし。やっぱりおまえは只者ではないなっ! 私のファンとして認めてやろう」 などと大袈裟に言葉を述べて、ふわふわ空へと消えてゆきます。 大王最大の悪戯――さっきのそれがそうだったようです。 トリック オア トリート‥‥いい年した大王は悪戯好き。 「フッフッフッ、我輩のドッキリ大成功だな。あの者、なかなか面白かったし」 まだ新海には告げられてはいませんが、実は魔法はすでに解除してあります。 しかし、彼はまだ気付いておらず‥‥天に舞い上がった大王を地上で見上げている様子。大王はしてやったりです。 「これだからやめられん」 大王は満足げに笑うと、最後の仕上げを施します。 「そう簡単に大金持ちにはさせられんからな。まあ、少しばかりの謝礼は授けよう‥‥また一人、驚く顔が見れるのだから悪くない」 フフフと笑みを浮かべて、大王の悪戯はまだ続くようでした。 |