封印と決意 〜悩絵師〜
マスター名:奈華 綾里
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/09/04 00:13



■オープニング本文

 絵師はもう悩んではいなかった。
 調子を持ち直した彼は、毎日充実した日々を送っている。
 けれど、気にかかる事はあった。それはあの少女の事だ。
 
 仇討ちというのは性に合わない。

 しかし、あれでは少女が可哀相だと絵師・西賽は思う。
 幼くして命を失くした少女にどういう訳か瘴気が取り付いてアヤカシとなってしまった。ただ、アヤカシになっただけならまだいい。彼女は意識が残っていたのだ。人としての意識を残したまま、自分が何になったか気付くまでに時間を要し、父と再会しても死を選ぶしかなかった少女――原因は開拓者の持ち帰ったモノが手掛りとなり、粗方の推測が付いている。
「あの山には古くにアヤカシを封印した祠があったらしいのです」
 地図からも消えてしまった祠――唯一知っていたのは、もう百に近いご老人達のみ。
 ギルドも山に瘴気が立ち込め始めてから調査はしていたらしいのだが、なかなかそこへ辿り着けなかったようだ。
「この破片のようなものはそこにあった鳥居の欠片だと思われます。もうひとつのモノはやはり宝珠の欠片で間違いないでしょう。どうやら、時が立つにつれて封印の力が弱まったか‥‥誰かが封印を解いたのか。そこはわかりませんが、とにかく一刻も早く対処するほかないでしょう」
「鳥居って、この欠片は青いようですか?」
 普通なら魔除けの意味も込めて朱が主流である。不審に思った西賽が尋ねる。
「恐らく青に沈静の意味を込めたのか、はたまたある土地では魔力があるとされているのでその力を借りようとして青に染めたのか‥‥私にはわかりません」
 歴史を研究している学者なのだろう。今回の欠片を調べたらしい男が言う。
「後はギルドにお任せ下さい。残るはアヤカシの討伐のみ‥‥我々の仕事ですから」
 今まで少女の探索やら瘴気の調査やらで半ば強引に関わってきた西賽であるが、彼はあくまで一般の絵師。自分の問題は既に解消されている。これ以上関わっても意味がない。
「わかりました。お任せします‥‥無事を祈ります」
 彼はそう言って窓口を後にする。
 あそこは本当に綺麗な山だ。アヤカシが封印されていたとは思えないくらいの‥‥。
 開拓者らがうまくやり遂げて、安全になればもう一度あの山でスケッチをしよう。
 そして、手向けの花の代わりにその絵を捧げようと思う。彼女のおかげで、スランプという深い谷から脱出できたのだ。そして、彼はある事を決意している。彼女への恩返しになるかはわからないが、絵師としてやりたい事を見つけたのだ。
「その第一歩はやはりあの山でなければ」
 そう彼は呟いて‥‥帰り道。問題の山を見つめるのだった。


■参加者一覧
柊沢 霞澄(ia0067
17歳・女・巫
柚乃(ia0638
17歳・女・巫
雲母(ia6295
20歳・女・陰
ルエラ・ファールバルト(ia9645
20歳・女・志
ジークリンデ(ib0258
20歳・女・魔
トカキ=ウィンメルト(ib0323
20歳・男・シ
将門(ib1770
25歳・男・サ
蓮 蒼馬(ib5707
30歳・男・泰


■リプレイ本文

●想・任
 必要なモノは全て揃っていた。開拓者にとっては有り難い事である。何度も山に足を運んでいるおかげで粗方遭遇するであろうアヤカシの目星はついているし、その為の対策は万全といえる。そう、それが瘴気の充満した山でなければ――。
 けれど、彼等はそれを恐れてはいなかった。出来うるだけの対策は講じている。気休めかもしれないが、布をマスク代わりに口を覆い、瘴気に対して効果があると思われる素材の衣服を身に着ける。そして極めつけは前回同様に、巫女による加護結界が施す。

「有難う。助かるわ‥‥今回で終りにしましょう」

 柊沢霞澄(ia0067)のそれを受けて、ルエラ・ファールバルト(ia9645)が言葉した。その声に穏やかな笑顔で願うように頷く霞澄――それもその筈、彼女はこの一件にずっと付き添い、見守ってきた唯一の開拓者である。その他にも、この件に関わっている者は多い。全編とはいかないまでも、要所で手を貸した者はその結末を知りたいと思ったのか再び顔を合わせている。蓮蒼馬(ib5707)もその一人だった。

「こんな身体ですまない」

 別の依頼で負傷したのだろう彼の身体には痛々しい程の包帯が巻かれ、万全の体制には程遠い。しかし、彼は思う。前回アヤカシと化した少女をみとった者として、決着は付けねばならないのだと――。それを承知しているから、仲間も何もいいはしなかった。ただ一言。

「無理はしないで下さい」

 と前回同行した柚乃(ia0638)が言葉する。どんなに精神が強くても身体が何処まで追いつくかは判らない。ましてや相手はアヤカシのみならず、瘴気との戦いでもある。自分の管理は自分でしなければ足手纏いになり兼ねない。

「人の想いってのは重苦しいねぇ‥‥大事にしなきゃいけないけど、背負い過ぎるのもまた重苦しいものよ」

 それを遠目にぽつりと呟くのはいつもと違う雰囲気の雲母(ia6295)だった。覇王を名乗る彼女らしからぬどこかしんみりした様子で、立ち上る煙管の煙が一掃そんな空気を醸し出している。

「暫くの間に随分状況は変わったのですね」
「ああ、貴公の立ち会った時とは違うんだろうな」

 そんな朝靄の中、山の入り口ではジークリンデ(ib0258)と将門(ib1770)が地図で道を確認し始めていた。ギルドから渡された地図には、祠までの道筋が書き込まれている。その中で最短ルートを探して、迅速に封印を成そうというのだ。敵の動きがわからない以上、用心に越した事はない。打ち合わせにも熱が入る。

(「正直内容には何も感じない。しいて言えば瘴気の山に入るのは少し不安ですが、仕事ですしね‥‥普段通り勤めるだけです」)

 そう心中で呟いてトカキ=ウィンメルト(ib0323)は辺りを警戒する。

「皆さん、それでは参りましょう‥‥」

 皆に加護結界をかけ終えて、一行は早々と行動を開始するのだった。


●探・到
 まずは皆で祠を目指す。少女の探索時と違って、場所が判っている分動きやすい。
 霞澄の瘴索結界とルエラの心眼『集』をうまく使って、敵との遭遇をなるべく避ける。見つけたとしてもこちらに気付かれない限りは、交戦はしない。それが彼らの立てた作戦だった。なぜなら、原因である祠から手を打たなければ始まらないと考えたからだ。
 叢や木の陰に隠れて進み、徘徊するアヤカシの種類を確認しておく。
「よくもまあ、これだけ沸いて出たもんだな」
 軽い振動を立てながら川縁を歩く石人形を見つけ、雲母が言う。
「柚乃、粘泥はすごく苦手なんです‥‥」
 ――とその横では辺りにそれがいないか常に気を配り歩いている柚乃の姿があった。
「すごくってどれくらいだ?」
 問う将門に、彼女は彼女らしからぬ陰を落とした表情を返す。その表情が全てを物語っていた。どうしても相容れないし、我慢ならない。見るだけでも嫌なのだろう。手にしていた管狐の宝珠をぐっと握って堪えてはいるが、見つければ容赦はしない筈だ。
「着きました、しかしあれは‥‥」
 洞穴の入口、そこを塞ぐ形で例のあれが屯していた。

「い、い、いやぁ〜〜」

 その量に柚乃が思わず声を上げる。そして、透かさず精霊砲の準備に入る。

「駄目だっ!」

 だが、ここは入口前――そこに向かって精霊砲等ぶっ放せば、入口を塞いでしまいかねないし、最悪祠にも何らかの影響があるかもしれない。
「柚乃さん、落ち着いて‥‥っ!」
 それに気付いた仲間が彼女を止めに入る。

「早く奴らを!」
「ああ、判った」

 蒼馬と霞澄が宥めに入っている間に将門とルエラが前に――粘泥を一掃にかかる。数は八匹程度。大きさは熊程度とかなり大きい。しかし、

「私にまかせて」

 その言葉と同時にそこ一帯に冷気が吹き荒れた。すると一瞬のうちに粘泥達が冷やされ、個体の動きは鈍る。それに加えて再び吹く冷気――その先を見れば、トカキも同様の術を発動したようだ。更に鈍らせ合体を防ぐ。そこへ前衛が辿り着き、大事に至る事無くその場の粘泥は一掃される。
「相当嫌いなんだな」
 落ち着いた柚乃を見つめ、皆が苦笑した。彼女は少し恥ずかしがりながらも、俯いてぼそりと謝罪の言葉を述べる。

 そして、一行は順調に中に歩を進めた。外で待つと言ったトカキだったが、一人は危ないと中に入る事となる。シノビに転職した雲母が暗視を行使しようとしたのだが、今までの癖が残っていたらしい。うっかり活性化を忘れていた事に気付いて、場を譲る。ジークリンデの南瓜提灯と蒼馬の松明の灯りを頼りに祠へと向かう。途中足元に注意を払い、警戒は常に怠らない。確かに所々に持ち帰られたものに似た木の破片が落ちている。
「粘泥が出て行く際について出たものかねぇ」
 誰に言うともなく雲母が言葉する。流石に奥に進むにつれ瘴気は濃度を増し、森にいた時よりも影響は強くなっていた。今までは大した事がなかったのだが、祠に近付くにつれ耳鳴りが彼らを襲い始める。

「うまく集中できない‥‥」
「私もよ」

 常時結界を発動していた霞澄、そして時折辺りを確認していたルエラだったが、その耳鳴りのせいでうまく術が行使出来ない。しかし、そんな折光が見えて彼等は安堵した。
 祠到着である。資料の通り、天井の高い洞窟‥‥そこに小さな社が建てられていたようだが、今はそれも残っていない。朽ちて壊れたようだ。人による故意的な外傷は見当たらず、残骸となって散乱している。その中に祭壇はあった。硬い金属で補強され錆てはいるもののまだ使えそうだ。そのすぐ下には小さな穴があり、そこから黒い瘴気らしきものがゆらゆらと立ち昇っている。

「これを封印していた?」

 学者はアヤカシと言っていたが、封印対象はどうやらこの穴のようだ。瘴気の発生源‥‥この穴は魔の森にでも続いているのだろうか。
「これを」
 将門が背負っていた宝珠を下し、セットを促す。
「封印‥‥」
 それを受け取り乗せようと時、異変は起こった。


●襲・新
 耳鳴りがひどかったせいもある。瘴索結界は基本的に瘴気を見るもの。近付けば近付く程に濃さを増し、雑魚の瘴気とそれとを区別するのは難しい。それ故に気付けなかった。鳥居は既に壊れて機能していない。この祠にアヤカシが出ない保障はない。注意していた筈だったのだが、彼らも人間である。
 それは蛞蝓のようだった。本当に小さい蛞蝓。天井の隙間に潜伏していたらしい。それが一斉に彼らに襲い掛かる。ぼとぼととまるで雨の様に‥‥数は数千を超えているかもしれない。

「あー‥‥うざったい」

 そう言ったトカキであるが、内心動揺しつつローブについたそれを振り払う。
 しかし、キリがなかった。さすがに経験を積んだ彼女らでも、この襲撃は勝手が違って戸惑いを隠せない。スキルを使おうにも相手が小さ過ぎるのだ。石壁を出現させ時間を稼ぐ者、弓を放つ者、刀を振り回す者、衝撃破で跳ね除ける者‥‥それぞれが対処に苦戦する。そこでルエラが動いた。手にしていたベイルを掲げ、巫女二人を庇いに入る。

「ここは、早くセットして出た方がよさそうね。できるかしら?」

 宝珠を抱えていた柚乃を促し設置を促進。祭壇に置けば宝珠は輝き、下の穴を塞ぐ形で固定されたようだ。

「皆セット完了! 早々に離脱しましょう!」
『了解!!』

 周りを余り確認する余裕はなかったが、それでも当初の目的は忘れない。彼等はこの後二手に分かれて入り口を封印する手筈となっている。前衛同士、魔術師・巫女同士が被らないように目視で確認し、各々洞穴へと駆け出てゆく。

(「ふん、感傷に浸る時間もないのか!」)

 心中で雲母が毒付く。

『後で落ちおう!』

 仲間の言葉が祠内に木霊した。



「これで一安心かしら‥‥ってキャッ!」
 来た道に戻って――即座に道を石壁で塞いだジークリンデであるが、蛞蝓アヤカシの群れに襲われあちこちが気持ち悪い。髪の隙間から顔を出した一匹に思わず悲鳴を上げる。それを蒼馬が握り潰せば、感触だけが残り消えていく。
「ひどい目に合ったわね」
 苦笑しつつ、ルエラも盾に着いたそれを一つずつ処理していく。
「念の為、回復を‥‥」
 そう言ったのは霞澄。手を合わせ、皆に閃癒をかける。
「ともかく出口に注連縄を。問題はそれからだ」
 しかし、まだ封印は完全ではない。彼等は急いで出口に向かい注連縄を掛ける。
「あちらは灯りもないのに大丈夫だろうか?」
 蒼馬がぽつりと呟いた。


 一方、その四人は――ひたすら暗がりを駆けていた。
 灯りがないなら、光を目指すしかない。サンダーを使えば一瞬光るが、洞窟自体が危ない為使えない。ともすれば、

「くそっ、まさかこんな使い方をする羽目になるとはなっ!」

 唯一灯りを出せたのは将門の焔陰のみ――。これも一瞬しか出せないが、それでも辺りの確認は出来る。最後尾で敵が来ないか確認しつつ兎に角走る。そして光が見えた。だが、そこには不運にもごつごつした人影が見える。

「まさか、あれはっ!」

 そう言いかけた仲間を押しのけて、雲母の矢を敵を捕らえた。

「邪魔だ! 雑魚がっ!!」

 障害物無視の破天荒な技・月涙――それがその影に突き進む。それに加えて、トカキの術も完成。

「アイシスケイラル」

 あくまでクールに射程に入って呟けば、冷気の刃が敵を切り裂く。

   どごぉぉぉん

 不意打ちとあって、相手は一溜まりもなかった。
「石人形をこんなにあっさりと‥‥」
 外に出た柚乃が息を呑む。
「奴らが寄ってこないうちに、注連縄を」
 その言葉に従って、こちらも早々に封印を施すのだった。


●掃・光
 その後は、両班の一掃作業が開始された。各々地図は持参してあったし、落ち合う場所も予め決めている。後は、その場所に向かいつつ、可能な限りアヤカシを殲滅して回るだけである。とは言っても、そう楽なものではなかった。山に瘴気が渦巻き出してからおよそ数ヶ月――アヤカシが形を成すスピードはどれくらいかわからないが、あの祠から瘴気は出続けていたと考えると、その間に生み出されたアヤカシの数は結構なものだったのではと推測される。
 それに加えて蓄積した瘴気感染の症状も彼らを悩ませていた。多少ではあるが、身体が重い。それをなんとか気力で持ち堪えながら、仲間の下を目指す。
「またよりにもよって、山の端と端とは‥‥」
 祠に繋がる入口の位置にぼやきながら、彼等は視界に入った敵を見据えるのだった。



「あれが最後であってほしいな」
 人の気配を察知して、ずんずん巨体を揺らしやってくる石人形。一方、逆サイドからは個体では立ち打ち出来ないと見たのか巨大に膨れ上がった粘泥の姿がある。

「今度は存分に放っていいぞ」

 そういう将門にこくりと頷くと、早速精霊砲の準備にかかる。その間に、石人形の足止めをと将門が前へ、それを雲母が援護する。トカキはサンダーで粘泥を牽制し、動きを遅らせている。けれど、更に新手――。はっと振り向けば、そこには鳥。推測するに、木の枝留まって様子を見ていたようだ。眼突鴉であるが間が悪い。

「ちっ」

 咄嗟に鎌の柄でトカキが抑えに入る。
 しかし、彼は魔術師――じりじり押され始める。そんな折だった。

「後は俺が!」

 風のように駆けてきた主によって、杖は払われ同時に重い一撃が奴を襲う。それは蒼馬の空気撃だった。そして粘泥の方へと弾き飛ばせば、後は柚乃の精霊砲がそれを巻き込み粘泥諸共撃破していく。

「無事でしたか‥‥?」

 何時間振りかの再会――両班共にくたびれてはいたが、幸い重傷な者はいなかった。

 その後、掃討を終えて山を下りる途中彼等は光を目にする。
 封印した事により徐々に雲は晴れ切れ間から顔を出した夕日が彼らに差込み、思わず振り向いた先には夕日に輝く都の姿があった。その絶景といったら‥‥彼らの疲れを癒していく。そこで柚乃が鎮魂の枇杷を奏でて、彼等は一時想いを馳せるのだった。



 そして後日――ギルドからも残党の調査が行われ、はれて山は解禁となり住民は数ヶ月振りの帰宅となる。その中に混じって、西賽はあの場所を訪れて二枚の絵を完成させていた。
「今回は本当に有難う御座いました」
 少女の父・木道が帰るようで西賽と関わった開拓者に礼を述べる。
「いや、俺は責任を果たしたまでだ。それに今回は余り役に立てていない」
 それに蒼馬が言葉した。そして、そっとポケットから御守りを取り出すと、二人に開いて見せる。
 それは『絆』と言う名の御守りだった。
 そこには『心と心のつながりは、けして消えることはない』と書き付けられている。

「これは?」

 問う木道に、

「見ての通りだ。あの子はもういない。だがあんた達の心は確かに繋がっていたはずだ。その思いは決して消えん。忘れないでいてやってくれ。あの子の事を」

 その言葉に思わず木道が涙した。大の大人でもコレほどまでに声を上げて泣いてしまうのかと言う位に――。そんな彼に西賽は一枚の絵を手渡す。それは始まりの一枚‥‥少女に見せたスケッチの完成品。少女も少しだけ筆をが入れたものだから、形見になりうるものだ。それを受け取り、木道は再び深々と頭を下げる。それと同時に見えた絵に開拓者達ははっとした。あの時見た都の景色がそのまま描かれていたからだ。偶然なのかはたまた引き寄せられたのか、不思議なものである。

 そして、その後売り出された西賽のもう一枚が話題を呼んだ。
 今までとは違う画風で、彼は風景画を出したのだ。自分の描きたいものを描く。勿論一枚目はあの場所だ。あの出会いを思い出し描き上げられた絵は、小さな少女の振り返る笑顔とその奥に広がる真っ青な空に都の町並み。そのどれもが彼独自の視点で描き上げられており、見る者にどこか懐かしさと元気を与えたようだ。

『世界が輝いていると彼女は言った。
 ならば、その世界を紙に残そう。彼女が見れなかった全てを』

 その後出された西賽の旅絵巻には、何故だか必ず彼女の姿が描き込まれていたのだという。