人力車で大売出し!
マスター名:奈華 綾里
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 易しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/01/08 23:19



■オープニング本文

 北面、仁生――。
 ここは若き王が統べる志士の国。
 軍事的施設が多い事で有名であるが、もう一つ――この国には目玉となるものが存在する。
 それは楽市――貿易が盛んなこの国では毎月楽市が開催されているのだ。
 そんな商業都市で今年はある企画が持ち上がっていた。

『年末感謝祭 今年最後のビッグイベント
 人力車レース開催 激安商品をゲットせよ!』

町の瓦板に大きく張り出されたそれに、市民が集まる。

「人力車っていうと、あの人が引いて走る、あれだよなぁ」
「激安商品って一体何かしら?」
「感謝祭ってことはすげぇ〜もんが手に入るんだべか?」

 口々にその内容は様々だが、誰もが興味を示している事は間違いない。
 緑茂の戦いで痛手を受けたものも多いだろうと、少しでもモノを安く提供しようと、仁生の商人達が赤字覚悟で打ち出したのだ。それに、まだ人力車の知名度も高くない為、これを期に多くの人に身近に感じてもらい、ゆくゆくは一般的な乗り物として普及させたいが為に、わざわざ荷車でなく人力車を使う事にしたらしい。注目してもらわないとやる意味がない。

「さぁ〜このレースについて詳しい事を聞きたいやつぁ〜こっちだよっ」

 瓦板の横に立って解説するは今回の仕掛け人、チラシを片手に弁を奮う。
「ここに開催されるこのレース! ル―ルは至って簡単だ、仁生の商人チームと開拓者チームの物品販売タイマン勝負。一日の売り上げの高い方を当てるだけ! 当てたもんには無料で米が貰えるらしい…賭けの参加費はたった五十文、ただし一人一枚限りだ‥‥それにこの販売レースで売られる商品はとびきり安いときたもんだ! 賭けに参加しなくても、お買い得間違いなし! ぼぉ〜としてると損するぜ!」
 歯切れのよい言葉遣いで男が煽る。すると、ますます人々は引き込まれてゆく。
「でも、商人と開拓者じゃあ開拓者が不利なんじゃね〜かい?」
 誰かの疑問――確かに販売のプロである商人らは、客への対応に慣れているはず‥‥。
「おっ、いい所に気付きなすったね。そういうだろうと思ってちゃんと対策はされてらぁ〜商人チームは半刻遅れでスタート。それに販売は人力車‥‥売り歩かなきゃなんね〜から、体力が必要って訳だ」
「なるほど‥‥ならばわからないかもしれんな」
 仕掛け人の補足を聞いて、町人たちがおのおの納得するように頷いていた。

「そう言う訳で募集よろしゅうですわ」
 根っからの商人気質を持ち合わせた中年の男がギルドの窓口で依頼内容を告げる。
 職員も特に問題がない為、それを承認。
 かくて、年末企画の幕が開けるのだった。


■参加者一覧
紫夾院 麗羽(ia0290
19歳・女・サ
紙木城 遥平(ia0562
19歳・男・巫
巳斗(ia0966
14歳・男・志
暁 露蝶(ia1020
15歳・女・泰
巴 渓(ia1334
25歳・女・泰
神鷹 弦一郎(ia5349
24歳・男・弓
深凪 悠里(ia5376
19歳・男・シ
九条 乙女(ia6990
12歳・男・志


■リプレイ本文

 青い青い空の下――季節は冬だというのに、今日は少し暖かい。
 それもそのはず、今日は年末企画の大売出し。そして、人力車レースの開催日でもある。二分の一の確率で米が貰えるとあって、行き交う人々の手にはこのレースの掛札が握られている。
 商人チームなら青、開拓者チームなら赤――見る限り、やはり商人チームに賭けている者の方が多いようだった。参加する商人達はそれを見取って上機嫌である。
「ふっ、商人達め・・‥いい気でいられるのも今のうちだ」
 人力車の横で準備をしていた紫夾院麗羽(ia0290)が自信たっぷりに微笑する。彼女にはとっておきの作戦があるようだ。温かいといっても、冬である事に変わりはないのだが、彼女は布の密度の低い服を着込み、マフラーでしっかりと首元を防御している。
「さぁ、あたしも負けずに頑張らないとね」
 そこへやってきたのは、彼女とペアで酒を売ろうという暁露蝶(ia1020)だ。品のよい白の泰国の衣装が、赤い髪を引き立てて一際目を惹く。
「さぁ、それではいよいよ販売レース開始です!」
   ぐわぁんぐわぁんぐわぁんっ
 司会の男の声と共に、空には花火が打ち上がり、銅鑼の音が木霊する。客達がわっと歓声を上げる中、先陣を切って開拓者チームの力車が走り出した。


「どれどれ、お手並み拝見といきますか‥‥」
 半刻遅れでスタートする商人チームは勢いよく走り出した開拓者らの様子を観察する。販売開始は後になるものの、その間全く何も出来ない訳ではない。敵を知れば、自ずと対応策が見えてくるというものである。
 開拓者が商品を乗せて向かった先――そこは人の多く集まる広場のような場所。繁華街の近くに各車ある程度の距離を置いて、車を止めている。そして、車によって売っている物が違うようだ。酒、衣料品、武器に分けられているらしい。もう一台は、補充用といった所だろうか。その中で、いち早く準備を終えたのは衣料班の紙木城遥平(ia0562)と巳斗(ia0966)だった。車の上には、色鮮やかな単衣や装飾品が見やすく並べられている。
「さぁ、早速やりますか」
 遥平はいつもの袴ではなく、華やかな色合いの着物を身に纏い、さっと前に出る。行き交う人々の足をまずは止めること――その為には。

   ベベン

 遥平の合図を受けて、巳斗が持参していた三味線の弦を弾く。
 突然の演奏に、行き交う人々の視線は自然と二人に集まった。その気配を感じて遥平がゆっくりと動き出す。巫女である彼の優雅な動き――巳斗の三味線の音に合わせて、時に激しく、時に穏やかに‥‥まるで水の流れを思わせるその舞に、人々は魅了されてゆく。僅か五分程度のその舞が終わる頃には、立ち止まり魅入っている人々で大きな人集りが出来ていた。 
「沢山の拍手ありがとうございます。
 さて、お集まり頂いた皆様方、僕達開拓者が見立てた飾り物は如何でしょうか?
 陽を受けて煌くこの首飾り、依頼に出向く僕達が使う物と同等の品でございます」
 そう言って、自分の首に掛かっているものと商品を比較してみせる。確かに彼の首と耳には、商品と同じ琥珀の首飾りと真珠の耳飾りが装備されているようだ。
「琥珀には気を落ち着ける、身体の調子を整える効果があるとも聞いています。身に付けていれば肌も健やかになるそうですよ」
 穏やかな笑顔で、遥平が呼びかける。
「それに、こちらを身に着ければあなたの魅力も更に倍増間違いなしっ!
 単衣と首飾りセットであれば千四百五十文とお買い得ですよ。
 たった一日限りの夢企画。お財布も奥さんも大喜びときたもんだぁ〜」
 巳斗も遥平に負けじと、売り込んでいる。
「私の子供も、あなたのように可愛くなるかしら?」
 商品を前にして悩む婦人――隣りにはまだ小さい少女の姿がある。
「きっと可愛くなりますよ‥‥ボクなんかよりずっとねっ」
 女の子に間違えられている事に嫌な顔一つせず、にっこりと答える。
「あら、やだゴメンナサイ・・・私、間違えていたみたいで・・・」
「いえいえ、全然大丈夫ですよ」
「これ頂けるかしら?」
「はい。お買い上げありがとうございます!!」
 元気よく返事を返して、商品を包むと巳斗はポケットから小さな飴玉を取り出した。
「はい。可愛いあなたにおまけだよ」
 それを受け取って、少女もにっこり笑顔を返してくる。
「やっぱりいいよねぇ〜こういうの」
 周囲を見回せば、お客さんの皆が明るい表情を浮かべている。ふと気付けば、思ったよりセット売りの商品の売れていた。準備していた数があっという間に底を尽きかけている。そこで補充担当の深凪悠里(ia5376)の姿を見つけて、巳斗が声をかける。
「悠里さ〜〜ん! すいません、この分だとセット売りがなくなりそうなんで追加準備お願いします!!」
 ぱたぱたと手を振る己斗に、悠里はこくりと頷く。
 そして、力車に向かおうとしたその時だった。
 まだ若い娘達が悠里の方へ向かってくる。
「あの〜この真珠の耳飾りもう少し安くなりませんか?」
「このブーツのサイズ違いがほしいんですけどぉ〜」
「もっと派手な単衣はありますかぁ〜」
 まとめて聞かれて、悠里の頭に疑問符が浮かぶ。
「あの‥‥すいません、一人ずつお願いします」
 動揺を隠しながら、悠里がわたわた対応している。
「ふっ、なかなかやるじゃねーか」
 そんな光景を見つめながら、商人チームの一人が呟く。
 まだ勝負は始まったばかりなのだった。
 

  ぱん ぱんっ
 商人チームの開始の花火――。
 その音を聞き、僅かに開拓者チームに緊張が走る。けれど、それを待ち侘びていた者もいるようだ。微笑を浮かべて、麗羽がマフラーを解き通りの方へ歩いていく。
「そこ行くお兄さ〜ん、私と一緒に呑まないか?」
 彼女の作戦――それは身体に自信のある彼女らしい色仕掛けというやつである。通りすがりの男性を見つけて、声を掛けては力車の方へ導いていく。試飲もしているとあって、こちらもなかなかに盛況である。
「は〜い、いらっしゃいませ。余ったお酒はお持ち帰り自由ですよ。古酒千文、天儀酒七百五十文、ヴォトカ六百文ですが、どれに致しますか?」
 立ち飲み風居酒屋のように車を構えて、露蝶が問う。
「ん? ちょっと待て、少し高くないか?」
 酒の値段を聞いて、目敏い男が聞き返した。
「えっと‥‥でも、これは」
「それは旦那ぁ〜正月前だよ。ちったぁ〜豪華な酒もいいんじゃないのかい? 味はとびきり、それは私が保証する。だから、騙されたと思って買ってみな。絶対損はさせないさ‥‥なぁ、露蝶?」
「えっ‥‥はい! 自信を持って提供します!」
 二人の言葉と表情に男が苦笑しつつも――折れた。
「あぁ、わかったよ。あんたら商売上手だねぇ〜天儀酒を頂こう」
「ありがとうございますっ!」
「赤髪のねーちゃん! こっちも頼むよ〜〜」
 その声に慌てて走る露蝶だった。


 一方、その頃‥‥武器班の巴渓(ia1334)と九条乙女(ia6990)、そしてもう一人の補充要員の神鷹弦一郎(ia5349)は困っていた。やはり一般人にはなかなか武器を売るのは難しいようだ。立ち止まってはくれるものの、お買い上げに持っていくのは至難の技である。
 そして、もう一つの原因は商人チームの価格にあった。
 商人チームは開始と同時に、各補給場所の近くに店を構え全ての商品を各力車に満遍なく乗せて、四割引にて販売を開始したのである。妨害に出ない代わりに、安さで対抗してきたと言う訳だ。

「開拓者御用達の万商店の価格から二割引! セットはなんと三割引ですぞ!!」

 小柄な乙女が懸命に呼びかけるも、人は安さに惹かれて商人チームの方に流れてゆき、いまいちの集客率である。実は彼、男だと思っているが女である。けれど、本人はそう思っていない訳で、今回は客引きの為に女装をしているようだ。
「仕方ねぇ〜、こっちも実演を派手にやって客の目を惹こう‥‥弦一郎、販売の方頼む」
 渓はそういうと、持ってきていた飛手を装備する。そして、口上を開始した。

「アヤカシの暗躍、合戦の被害、各国の街を荒らす怪人、怪盗・・・
 荒れ放題のこの世の中、ぼやぼやしてたら後ろからばっさりだ!
 一家に一本、備えあれば憂いなし! 今からそれを実演するぜ!!
 暇な奴も、そうでない奴もちょいと見てって損はなしだ!!」

 腹の底から声を出し、肩を回しながら準備運動。視線で、乙女に相手をするよう促せば、打ち合わせていたのだろう‥‥乙女が、商品である木刀を手に取り前へ進む。

「さぁさ、これより某有名泰拳士と合戦経験志士の実演演武開始ですぞ!」

 二人の呼びかけに、少しずつ見物客が集まってゆく。ある程度の数になったのを見て、二人は向かい合わせに距離を取り、対峙する。

「それではっ、開始!」

 弦一郎の一声に二人は動いた。見た目では圧倒的に、渓の方が上である。体格にしても、レベルにしても断然上――見ている客達もそう思っていた。僅か百六十センチの少年志士(今は少女志士であるが)に勝ち目などないと‥‥だが。
「いざっ、参る」
 掛け声一発、乙女が炎魂縛武を発動させ木刀を強化。迫り来る渓の飛手を受け止める。そして、小回りの利く利点を生かし、飛手を弾くと股下に滑り込み、背後に抜けて反転。
 渓も即座に振り返ったが、間に合わない。辛うじて、直撃は免れたものの、体制を立て直して踏み込まれた一撃は肩口を見事突いている。
(「やばっ、まさか入るなんて・・・」)
 心の中で動揺しつつも、顔には出せず間合いを取る形で渓の様子を見る。すると、そこには俯いたまま痛みに耐える渓がいた。どうも、当たり所が悪かったらしい‥‥少し身体が痺れているようだ。
(「ここは、早く終わらせて休んでもらわねば‥‥」)
「ていっ!」
 そう判断して、乙女が打ち込む。――が、渓も男の意地があるのだろう。その一撃をひらり交わす。対峙して顔を確認すれば、目頭に光るものが見える。そして、こめかみに微妙な青筋――乙女を見据える渓の視線は冷たい。

(「やばい、なんか‥‥絶対やばい・・・」)

 その形相に、思わずたじろいで――乙女は逃げ出した。
 とにかく渓の攻撃を逃げ交わす乙女と、捕らえんとする渓のどたばた劇。それを見ていた観客から、どっと笑いが生まれる。その笑いに助けれらて、二人は我に返ったようだ。そこへ割って入る声。
「さぁ、皆さんご覧の通りこちらの木刀は丈夫で長持ちいたします。お子様の練習用にも防犯にもきっと重宝いたします。ですから一本、如何でしょうか?」
 弦一郎なりに言葉を選び、なるべく無愛想にならないよう勤めて並べられた武器の数々を紹介していく。その後ろに、乙女と渓は非難していた。
「本当に大丈夫ですかな?」
 まだ若干焦りながら、乙女が問う。
「あぁ〜やられたぜ、全く。実演販売とはいえ油断した」
「あの・・・すまぬ」
「ん? なんで謝るんだ?」
 自分の傷を生命派動で直しながら、渓が問う。
「それは‥‥」
「いいんだよ、本気でやってくれなきゃ意味がねぇ。見てるお客さんだって、手抜き演武じゃあ楽しめねぇ〜ってもんだ。けど、まぁお客相手の試し打ちの時は手加減してやれよ」
 爽やかな笑顔を返して、渓が立ち上がる。
「勿論それは心得ておる」
 乙女もそれに合わせてとびきりの笑顔を返すのだった。


 その後、両者の攻防は続く。
 開拓者チームは、ある程度稼ぐと位置を少しずつ移動して、一箇所に留まらず客を入れ替えて商品を売り歩いていく。商人チームの激安価格に当初の設定金額から下げざる終えない立場にはなっていたが、それでも場所を移す事によって下げ過ぎを最小限に留めている。それに比べて、商人チームはあまり場所を移動せず安い品物を得意の話術で沢山売っていく作戦のようだ。どちらも、真っ向からの販売勝負。自分達の力を信じて‥‥着実に売り上げを伸ばしている。

 終了まで、後一刻‥‥それはもう戦場であった。買い残したものはないかと一度は去ったお客まで再び姿を現している。そんな中での品物の補充は至難の業だった。悠里と弦一郎はそれぞれ補充品を求めて人ごみを掻き分ける。お客に傷を負わす訳にはいかないと、急ぎながらも慎重に人力車を走らせている。
「そっちの方は如何ですか?」
 一台の力車を二人で引きながら、悠里が尋ねる。
「そうですね、なかなかに武器は難しいようですが‥‥まぁまずまずなのではないかと」
「そうですか。こっちなんてもう大変ですよ。予想外に人が多くって‥‥嬉しい事なんですけどね。なんていうか、お客さんへの対応がおっつかなくて」
「俺も似たようなもんだ。ま、後少し頑張ろう」
 そう言って弦一郎が珍しくはにかんだ。
 そして――夕日が沈みかけた頃、終了の銅鑼が仁生を包み、長かった勝負に決着が着いたのだった。


「皆、大変お疲れ様でしたぞ」
 レースを終えて、乙女が皆の前で声をかける。
 勝敗は‥‥販売個数では圧倒的に商人チームが勝っていたのだが、問題は売り上げ。
 トータル金額を計算した結果――約三千文差で開拓者チームが勝っていたらしい。序盤からの手堅い売り込みが功を奏し、みごと開拓者チームが勝利したのである。多くの客が驚きを隠せないといった表情で、彼らに拍手を送っていた。
 そして、開拓者に賭けた者達は嬉々として賞品の米を受け取り、喜びの声を上げていたのだった。その熱気が覚めやらぬ中開拓者達は主催者に招かれて、打ち上げの席に呼ばれているのだ。さっきの敵は、今の友。敵だった商人達も、気安く彼らに声を掛けている。
「しっかし、まさか安売り勝負だって銘打ってるのに、高額で設定してくるとは思わなかったぜ!」
 露蝶の横で、酒を片手に商人が言う。
「えっと、それはあたしの案ではないんです‥‥あたしはただ言われた通りに販売しただけで、価格を設定したのは麗羽さんですし」
「ほほぉ、あのねぇちゃんがねぇ〜身体だけでなく、頭もいいとは」
 感心するように、男が腕を組み何度も相槌をついている。
「ふふっ、私がどうかしたのか?」
 そこへ話題の主役である麗羽がほろ酔いなのか、少し顔を赤くしてやってくる。
「いやぁねぇ〜、あんたはすごいっていってたところですよ」
「ほう、そうか。すごいか‥‥そうだろうとも、私はやる時はやる女だよ」
 銚子を片手に、どっかと胡座をかきその場に座り込む。
「あぁ〜麗羽さん、ちょっとは恥じらいを持ちましょうよ」
 その様子を見て、慌てて彼女の膝元にタオルをかけた。
「まままっ、今夜は無礼講だ! 好きなだけ飲んでくれっ」
 主催者が初めに紡いだ言葉――。
 視線を走らせれば、他の仲間達もおのおのいい具合に出来上がっている。あっという間に終わった販売レース‥‥お客の笑顔がまだ脳裏に新しい。
 (「やっぱり平和が一番ね」)
 露蝶はそう心で呟きながら、まだ終わらぬ宴を仲間と共に楽しむのだった。