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■オープニング本文 ●それは作品 紅――それはみるものを魅了する。 ある者はその色に脅え、そしてある者はその色に快楽さえ覚える。 生活に欠かせないその紅は‥‥時として人を襲う。 「すばらしい! もっと、もっとだ!!」 男は立ち上る煙の先、燃え盛る炎を見つめ微笑する。慌てふためく住人や火消しに奔走する人々など気にせずに、自己の完成された作品に陶酔していた。 「さて、次は何処にしようか」 見晴らしのよい部屋からその光景を眺めながら、酒を片手に男が呟く。 男の腕には艶やかな炎の翼をもつ鳥の刺青が彫りこまれていた。 ●希望の光 「これでもう何件目? 役所は何やってるのよ」 昨晩の火災の跡を遠目に誰かの非難する声が聞こえる。 確かにこれで九件目――ここ最近連続して起きている火災事件。 それはまさに一瞬の出来事。普通ならじわじわ燃え広がるはずの炎だが、今回の一連の事件では火がついた途端大きな爆発を起こし、家全体に燃え広がるのだと言う。一体何が原因なのか調べようにも、家全体が燃えてしまっている為、犯人はおろか手掛かりさえ掴めない。ただ一ついえるのは、この犯人は人を巻き込む事を避けているという事のみ。九件全ての火災において、空き家もしくは家主の不在を狙って行われており、隣りには決して火が移らないよう計算されているようなのだ。 「ちくしょ〜八方塞がりじゃねぇか」 しかし、だからと言ってこのまま野放しにはできない。この都の警備隊の一人である喜助がぼやく。 人の為に何かできればと折角この仕事についたというのに、これでは全く意味がない。無残に焼け落ちた家の残骸を見つめ、どうしたものかと首を捻る。ポケットから折りたたんだ地図を取り出して、もう一度見直してみる。地図には火災のあった場所に丸が書き込まれているようだ。点在するその印を目で追ったが、特に何かわかるはずもなく‥‥喜助は今日何度目かのため息をついた。 (「全くもってわからねぇ」) 警備隊とはいえ、結局は一般人で編成された集まりに変わりはない。開拓者のように特殊な力がない喜助にとって、この事件はあまりに証拠となるモノが少なすぎる。何をどうしていいのか皆目見当がつかないのだ。 「喜助〜隊長がついに決断したぜ〜」 半刻ほどその場で立ち尽くしていた喜助に聞き覚えのある声――声の方に振り向けば、そこには同じ隊に所属する将太の姿があった。 「何を決断したって?」 考えることに疲れて、ぼんやりとした頭で尋ねる。 「だから、開拓者の応援要請だよ。何寝呆けてんだ!」 「そうか‥‥開拓者の」 開拓者と聞きじわじわ解決への希望が沸いてくる。 「よっしゃ! 俺が依頼出してくらぁ〜」 喜助はそう言って一目散にキルドへと駆け出した。 |
■参加者一覧
天津疾也(ia0019)
20歳・男・志
劉 天藍(ia0293)
20歳・男・陰
弖志峰 直羽(ia1884)
23歳・男・巫
八嶋 双伍(ia2195)
23歳・男・陰
珠々(ia5322)
10歳・女・シ
藍 舞(ia6207)
13歳・女・吟
鷹澤 紅菜(ia6314)
17歳・女・弓
珠樹(ia8689)
18歳・女・シ |
■リプレイ本文 ●小さな被害者 「現場はここで最後でさぁ」 喜助に案内されて、現場に足を運んだのは志士の天津疾也(ia0019)、陰陽師の劉天藍(ia0293)、シノビの珠々(ia5322)、そして弓術師の鷹澤紅菜(ia6314)の四名。 他の四名は、今回の事件の犯人の材料調達の経路から怪しい人物はいなかったかを調査する為、将太と共に都の火薬や油を扱う店を中心に聞き込みに回っている。 次の事件がいつ起こるのか――それがわからない以上、ゆっくりしてはいられない。 依頼を受けた開拓者らはその日のうちに打ち合わせ、行動を開始していた。 「しっかし、みごとなやけっぷりやなぁ〜」 九件目の事件現場を前に、疾也が感想を述べる。どの家も中は真っ黒に焼けており外装はおろか、残っているものといえば大黒柱と、基礎となる柱が数本のみ。家具なども壊れてしまっている為、お手上げ状態だ。 「くそぉ〜‥‥なんでだよぉ〜〜、俺の隠れ家が‥‥なんで、なんで‥‥」 「ん?」 焼け跡から声の方に視線を移して見れば、そこには今にも泣き出しそうな表情を浮かべた少年がこちらを向いて立っている。 (「今、隠れ家とかいってたような?」) 少年の言葉が耳にひっかかり、天藍が少年に近付いてゆく。 「あぁ〜〜ちょっといいか、ボウズ??」 「げっ! なに、兄ちゃん‥‥」 「どうしたの? 天藍君?」 それに気付いた紅菜が天藍に駆け寄る。頭を使うと甘いものが食べたくなるとかで、腕に抱えられている紙袋にはどっさりとお菓子が詰め込まれているようだ。 「いやっ、ちょっとな。なぁボウズ、さっき『俺の隠れ家が』っていってたよな。それってここのことか?」 「えっえぇ〜オレ、そんなこと言ってないけどぉ〜」 「いや、言った。俺はちゃんと聞いてたんだ。何か知ってるんなら教えてほしい」 少年を恐れさせないようできるだけ優しい声音で聞いてみたのだが、何を隠しているのか、なかなか口を開こうとしない。 「もしかしたら犯人逮捕の手掛かりになるかもしれないんだ。もしそうなったらおまえ、一躍有名人になれるぞ」 「えっ! 有名人!!」 少年の瞳がきらりと輝く。 「有名になれば母ちゃん怒ったりしないかな‥‥」 「しない、しない〜♪」 紅菜の言葉に後押しされて、少年が話し出す。 「実はここ、オレの隠れ家だったんだ。もうずっと人も住んでなくて、屋根も囲炉裏も竈も全部そのまま残ってたからいい感じでさ。入っちゃいけないって言われてたんだけど、大事なもんとかここに隠してた訳。けど、こないだきたら中に変な細工がされててさ、入れなくなってたんだ」 「入れなくなってただと?」 「うん、戸が開かなくなってた。オレいつも二回ここに来るんだけど‥‥一回目来た時は入れたのに、二回目来た時はもう駄目だった。窓から覗こうとしたけど、窓もきっちり閉まってて‥‥床下も駄目だった。後、なんか焦げ臭かったかな」 「そうか、良く調べたな‥‥で、その二回来た時の時間は何時頃だったかわかるか?」 「う〜んとね‥‥朝ごはん食べてすぐと、おやつの後」 真剣に聞いてくれている事が嬉しいのか、少年は笑顔で答えている。 「ありがとう、参考になったよ」 天藍が少年の頭を撫でながら言う。 「えへへ〜どういたしまして。早く犯人捕まえてくれよなっ‥‥でないと」 「でないと何だ?」 「オレの玩具‥‥弁償してもらうから」 焼け跡に視線を移して、少年の表情にふっと影が差す。 「そっか‥‥焼けちゃったんだよね、玩具」 「‥‥うん」 「あわわっ、元気出してよ。絶対捕まえるから。そうだ、コレあげるね」 紅菜が慌てて、手にしていた菓子袋からいくつか取り出し少年に渡す。 「ありがとっ、おねーちゃん」 少年は涙を堪えて笑い、それを受け取る。 「大丈夫だ。おまえの玩具の敵は取ってやる。約束だ」 天藍がそう言って、手を差し出すと、少年は涙を拭って手を握り返す。 「絶対だかんなっ!」 「あぁ、わかった」 二人の手の上に紅菜も手を乗せ、決意する。そんなやりとりが展開されていた一方で、一人夢中で焼け跡観察に勤しんでいた珠々が何かを発見。真っ黒の煤の中から僅かに光るそれを手に取って見る。 「ん? なんやそれ?」 それに気付いて疾也が、声をかける。 「これ‥‥くない‥‥だと思う」 珠々がぽつりと呟いた。 ●すれ違う影 一方その頃、聞き込み班はというと――行き詰っていた。 火薬に関して関係していそうな店を徹底的にあたっては見たものの、多くの客で賑わう油問屋や酒屋はいちいち客の顔など覚えてはいない。特に目立った特長や行動をした者でもない限り、印象には残らないのは尤もな事で、返ってくる返答はどれも至って普通。 花火師に話を通して、意見を求めた所『よっぽどの知識がない限りそんな芸当無理だ』と言われ、派手に見せるのが商売の花火師はそんなちまちました仕事はしないだろうと言うことだった。 「全く困りましたねぇ〜」 予想以上に手掛かりになるものが得られず、陰陽師の八嶋双伍(ia2195)がため息混じりに愚痴を溢す。 「それでも、なんとかしないと」 すると、シノビの一人――藍舞(ia6207)がきり返す。 「けれどねぇ〜〜」 双伍はそう言いつつ、密かに放った人魂の様子を確認する。 式の視線を通して、その映像が双伍の元に伝達される。そこには同じく聞き込みを行っている巫女の弓志峰直羽(ia1884)と、シノビの珠樹(ia8689)の姿があった。 「ねぇ〜本当にいなかったぁ。ちょっといっちゃってそうな人?」 店員の女性に気安く声をかけているのは直羽である。その後ろで店の様子に探りを入れているのは珠樹だ。店全体に目を配り、怪しい人物を探している。 どんっ ――と、珠樹の背に軽い衝撃。振り返ってみれば、そこには笠を深く被った女性がいた。女にしては少し背が高く、あまり似つかわしくない刺青が腕に描かれている。 「ごめんなさいね‥‥シノビのお嬢ちゃん」 「えっ?」 その言葉にはっとして、再び振り返った珠樹だったがすでに女の姿はない。 「どしたの? 珠っち」 固まっていた珠樹を見つけ、直羽が問う。 「いた‥‥」 「え?」 「さっきの女、足音が‥‥気配がしなかった」 (「あいつが犯人?」) 珠樹の言葉を聞き、双伍の人魂が女を追う。 路地に入って、その女は男に変わっていた。後方から距離を置いていたのではっきりとはわからない。けれど、確かに追尾していた女が一瞬で男に成り代わったのだ。 (「アヤカシ‥‥いや、違う、これは‥‥」) 女の腕にあったのと同じ刺青を発見し、双伍の中である仮説が浮上した。 ●闇に紛れて 「火の用心‥‥」 拍子木の音を聞きながら、舞他シノビの三人は、犯人のいると思しき部屋の壁に張り付いていた。集まった情報から、導き出された答え――それを元に突き止めた犯人の潜伏場所。それは、全ての火災現場からある一定の距離内にある。そこは、周りの家より少し高い宿屋――。空き家を狙う事から怨恨ではない。それに狙われた家は裕福な家ばかりではないので金目当てでもない。となると、この犯人は何の目的で火事を起こしているのか? それは、燃やすことあるいは炎を見ることが目的――そう考えた開拓者らは、見晴らしのいい場所に犯人がいると推理。 そして、その条件にあった場所は――この場所のみ。 「ふふふ‥‥やっとお出ましか」 中の男の笑い声――男は、気付いていた。窓の外に人の気配を感じ取っている。 「出てこい、雑魚が」 言葉が終わると同時に、男は素早く何かを投げ放つ。 壁に突き刺さったのは四方が尖った一般的な手裏剣――。三人の隠れている位置の壁に見事突き刺さっている。 (「やはり同業者だったのね」) 一番窓に近い場所にいた舞は確信した。 夕方の報告で二班の情報を総合して出した犯人像――それはシノビの可能性。 白昼堂々人に見つからず、仕掛けを施す事の出来る人物で、火薬に精通。誰も犯人らしき人物に出くわさないのはその人物が変装できる、もしくはよほどの素早さか隠密行動を得意とする人物に特定される。珠樹と双伍が見た人物がそれを物語っていた。そして、現場にあったクナイ――。 場所を見抜かれていては仕方がない。舞は観念したように、ゆっくりと男の前に姿を見せる。男の部屋の窓越しに、二人は対峙していた。残りの二人も、いつでも攻撃に移れるよう待機。珠樹は下で待っている喜助に合図を送る。 「はん、なんだ子供か。俺を探しているのはこんなのばかりとはな‥‥昼のガキといい‥‥俺も甘くみられたものだ」 男は立ち上がり大げさに肩を落とす。 「誰がガキよ。あんたの方がガキじゃない‥‥火遊びなら自分の家でやりなさい」 「家? 俺の帰る場所なんてないさっ」 「あなた、まさか‥‥」 「さぁ、おしゃべりは終わりだ。そろそろショータイムといこう」 言葉が終わると同時に男は駆け出した。それを察し、舞も進路を妨害すべく前へ。 カンッ カンッ 彼女の飛手が男の手甲に受け止められ弾かれる。男の動きは、思いの他速かった。外で待ち構えていた珠樹も手裏剣で加勢するが、怪我を負わすに至らない。それどころか、隙を見せれば接近戦に持ち込まれ的確な打撃が待ち受けている。木葉隠で必死にかわすものの、それも長くはもたなかった。 「つまらんな」 余裕を残して、男は屋根から屋根へと跳躍する。 「させないっ!!」 ――と、珠々が動いた。今までは捕縛を目的としていた為あえて峰打ちに徹していた彼女であったが、ここで捕り逃がす訳にはいかない。意を決して強行策に出る。男に向かって‥‥文字通り体当たりを仕掛けたのだ。まさか捨て身でくるとは思っていなかったのだろう。男の動きは僅かに遅れ珠々を身体で受け止める形となる。 ガラガラガラ 弾かれて、屋根の瓦に身体を打ちつけ男が僅かに顔を顰める。 『珠々!!』 珠々もすぐに飛び退いたものの、ダメージがない訳ではない。庇うように二人が駆け寄る。 「全く、下品な戦い方をする‥‥付き合ってられん」 男はふらつく足取りで懐から火薬玉を取り出し三人の下へと投げ付けると、その場を後にするのだった。 「きたね、これは」 直羽の表情がいつになく真剣になる。目星をつけた次の犯行現場になりうる箇所を徹底的に見回った喜助達警備隊のおかげで、細工済みの家を発見。残りの開拓者らは、男を現行犯逮捕すべく現場で身を潜めていた。 居場所がわかっても、証拠がなければ捕縛はできない。それを踏まえて油断を誘う為シノビ班に先行して貰ったのだ。そんな事も知らず、男は敵を撒いたと判断、現場にやってきたようだ。 漆黒に包まれたその場所で、浮かび上がる紅――屋根の上らしい‥‥男の手元を照らし出す。 「ふふふ〜させないんだからっ!」 それを見て、紅菜の弓が唸る。 男の手元目掛けて矢が空気を切り裂き一直線に男の下へ向かってゆく。 ひゅんっ ――が、しかしそこはプロ。間一髪で避けたものの‥‥。 「甘い!」 追い討ちを駆ける様に追ってきた珠樹他シノビ班の手裏剣の雨が男に注がれる。 「俺らの事も忘れんなや!」 疾也も下より弓で応戦。男に隙を与えない。 「タマちゃん、よく頑張ったね。その傷見せて」 「舞さんもお疲れ様です、私が治しますからこちらへ」 その間に負傷しているらしい二人を見つけて、直羽・双伍が回復に入る。 「はっ、次から次へと雑魚共がっ!」 奇襲に近いその攻撃に苛立ちを隠せずに、再び懐に手を入れかけた男だったが――。 「いいかげん諦めろっ!」 それより早く天藍の呪縛符が男の手を捉えていた。腕を封じられ、奥歯を噛み締める男。その隙を見逃す疾也ではない。疾也の弓が男の腱を貫く。 「くっ!!」 男は、足の踏ん張りを失くし、呻きながら膝をつく。 「よいしょっと」 そこへ、紅菜が屋根を上り接近――もう動けないと悟ったのか、一本の矢を構えることなく、携えたままでそろりそろりと近付いてくる。 「くそっ! なめやがって!!」 男はそれでも抵抗した。渾身の力を振り絞り足首から血が流れるのも構わず、前へ駆け込んでゆく。さっきあれほど罵っていた体当りをしかけて――しかしそれすら叶わない。紅菜が先に踏み込んで、男の首に矢尻を突きつけている。 「人を巻き込まなくても恨みを買うには十分なんだよ‥‥一回死んでみる?」 紅菜の裏の顔――いつものそれとは違い凍るような冷たい微笑が浮かんでいる。 (「この娘‥‥何者だ‥‥」) ぞくりと過ぎる悪寒、けれどそれは一瞬だった。 「無茶すんなや〜紅菜。なんかあったら困るやろ?」 慌てて屋根に登ってきた疾也に気付き、紅菜はいつもの表情で振り返る。 「えへへ〜ゴメンね、疾也君」 紅菜の顔に、先程の影は微塵も残っていなかった。 ●終幕 かくて、放火犯の捕り物劇は幕を閉じた。 取調べの結果、男の異常なのまでの火への執着は子供の頃形成されたらしいことがわかった。それがわかったからと言って、何かがかわる訳ではない。しかし、男は更なる事件を起こしていた。自分の事を認めない里を焼き払っていたのだ。そんな男をほっておく訳がない。男が捕まったという情報を聞きつけ、生き残った里の者が処罰を与えるということになり、男は里のシノビに引き渡されたようだ。 「なんか複雑だわ」 同業者だった事が少し引っかかるのか、舞が呟く。 「あそこまでの技術がありながら、勿体無いといえば勿体無いですが仕方ないですよ。あの人は危険すぎる」 それを聞き、双伍が続ける。着火の仕掛けについても、一般人には考え付かない手口。昼仕掛けをしたのは室内の空気を変化させる為だったとか。詳しい事はわからないが、室内でじわじわと火を燃やし外の空気を遮断しておくと、空気がガスに変化して次新鮮な空気を取り入れた時、大きな爆発と共に周りのものにも引火しやすくなるのだそうだ。僅かな火薬でも全焼に導く事が出来る、魔法のような仕掛け。 「いやはや、本当にありがとうごぜぇやす。色々学ばせていただきやした」 喜助がそう言って深々と一礼する。 「別に俺らは大したことしていない。真の貢献者はあの少年かも。礼ならあいつにいってくれ」 「わかってますとも。いやはや、子供って意外とすごいんですねぇ」 喜助が感心しながら、視線を珠々の方へ向ける。 「何ですか? まさか、私が子供だと‥‥」 「まさかじゃなくて、ずばりそういう事でしょ。ねっ、タマちゃん」 直羽がにやりと笑って、珠々の頭に手を乗せる。 「タマちゃんいうなぁ〜〜〜」 それが気に入らないようで、珠々が直羽の背をぽこぽこ叩いている。 他の開拓者らもそれを見て、ふっと笑みを浮かべる。 「火の用心‥‥」 今夜もまた、この都では拍子木の音と共に注意を呼びかける声が響き渡るのであった。 |