【負炎】温泉に行こう
マスター名:奈華 綾里
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2009/11/24 16:08



■オープニング本文

 緑茂の里での戦いから早数週間――里の復興に人々は手を取り立ち上がっている。
 非難していた里の者達も徐々に戻り家の建て直しなどに尽力を注いでいる。そんな中でもひときわ元気なのは、子供たち。あんなに怯えていたはずなのに、事が済んだらいつもの調子を取り戻し、非難先のこの仮住居でも所狭しと駆け回り日々を過ごしている。

「あぁ〜そこは危ないからダメ」
「巽くん、まだ服来てないでしょ」
「ちょっ、何? ケンカ?」

 そんな子供たちに振り回されているのは、ここの担当の佳淋(かりん)だった。
 親たちが復興の手伝いに行っている間、子供たちの世話をするのが彼女の仕事――とはいっても、彼女はまだ二十歳過ぎ――子育て経験がある訳ではなく、ただ力仕事には向かないというだけでこっちに回されたに過ぎず、保育の知識は皆無といっていい。他にも同じような理由で集められた若者は元気過ぎる子供たちにほとほと手を焼いていた。さっきまで楽しげに笑っていたかと思うと、いきなり泣き出し、やれお腹が空いただのおもちゃがなくなっただの…一息つく暇さえ与えてはもらえないのだ。連日それが続くのだからたまったものではない。
「はぁ〜温泉入りたい」
 佳淋の切実な願い。緑茂の里の近くにはいくつかの温泉が存在する。
 この非難所からもそう遠くない場所にあると聞く。
(「行きたい…行きたいけど、あの子達をほっておく訳にもいかないし」)
 そう広くない柵付けした野外スペースに目をやれば、数人の子供たちが鬼ごっこを繰り広げている。可愛くない訳ではない。あの笑顔に癒されると感じたこともある。けれど、今の彼女の子供達から受ける癒され度は…残念な数字で表すことになるだろう。
 それにだ。戦いが終わったとはいえまだアヤカシがでないとも限らない。志体持ちでない彼女にとってそんな危険を犯してまで優先する事ではないはずだ。けれども、どうにも身体はそれを受け入れたくないらしい。
「困ったなぁ〜仕事は抜けられないし、でもこのままじゃ身体が持たないし…」
 ぐぅ―と腕を伸ばして、凝り固まった自身を解すように立ち上がる。
「おねぇ〜ちゃん、つかれてるのぉ?」
 すると、いつからいたのか一人の少女が声をかけてくる。
「ん〜〜ちょっとね。でも大丈夫だよ、おねぇ‥‥」
「ダメだおぅ! おねぇちゃん好きだもん。そうだ、おかあさんがいってたおぅ…つかれたらおんせんがいちばんだって」
 佳淋の言葉を遮る形で、少女が少し怒ったように言い放つ。
「う〜んそれはそうだけど‥‥」
「じゃあおんせんいこうよっ! おんせん! わたしもいきたい‥‥おねぇちゃんとおんせんはいりたいおぅ」
 自分の提案に同意を貰い、嬉しいのだろう。瞳を輝かせて、少女は大きな声で温泉を連呼する。
 すると、周りで遊んでいた子供達にもそれが伝染。
「なになに〜おんせんいくの?」
「おふろすき〜〜〜」
「おんせん! おんせん!」
 口々に飛び交う温泉コール――もう収集をつけることが出来ない。
(「どうしよう‥‥」)
 悩んだ挙句、佳淋は上に相談――その日のうちに回答をもらった佳淋は驚きを隠せなかった。なぜなら、『遠足』という名目で、温泉行きの許可が下りたからだ。ただし、子供達を連れていく為、危険の無い様くれぐれも注意することが最重要事項にしるされている。帰りに関しては、緑茂の里で作業している親達に子供を引き渡せばよいとのことだ。
(「片道だけだけど‥‥‥あの子達と外に‥‥‥」)
 念願の温泉行きが決定したのに、なぜだか喜べない佳淋であった。


■参加者一覧
滋藤 御門(ia0167
17歳・男・陰
劉 天藍(ia0293
20歳・男・陰
山本 建一(ia0819
18歳・男・陰
時任 一真(ia1316
41歳・男・サ
弖志峰 直羽(ia1884
23歳・男・巫
忠義(ia5430
29歳・男・サ
千麻(ia5704
17歳・女・巫
千羽夜(ia7831
17歳・女・シ


■リプレイ本文

●心を開け
「みんな〜集まって下さぁ〜〜い」
 温泉行き当日――。
 佳淋の一声で子供達が集まり出す。佳淋の横には本日同行することになった開拓者達――手には『湯けむり御一行様』の旗が握られている。赤・青・黄の三色の布で出来た旗は子供にわかり易い様にしているようだ。
「太郎君は赤、みっちゃんは黄、巽君は私と同じ青班だからね」
 佳淋が子供達を割り振り、各自自分の班に分かれさせるとまずは自己紹介――今日一日だけとはいえ、子供達の初めて会う人との接し方はさまざまである。
「みっちゃんさんみっちゃんさん、俺は忠義(ia5430)です、タダヨシ」
 みっちゃんと視線を合わせるように、しゃがんでから挨拶したのは忠義だった。しかし、みっちゃんは手にしたもふら人形をぎゅっと抱き寄せるのみ。執事兼教育係の経験のある彼であるが、極度の人見知りっ子のみっちゃんが相手ではなかなか難しいようだ。少し強面である忠義を明らかに警戒している。
「みっちゃん、大丈夫だよ〜俺が守ってあげる」
 ――と、横から入ってきたのは同じく黄班の弓志峰直羽(ia1884)。にっこりと優しく笑ってみっちゃんを抱きしめる。
「俺の事は直羽、って呼んでな! 温泉まで、みっちゃんは俺のお姫様だ。お姫様を守るのは従者の役目だから、頑張るし、あんな顔してるけど忠っちだって優しいんだぞ〜〜。なっ、千羽やん?」
「そうよ、だから仲良くしてあげてね。直羽さんはいつも笑顔の優しいお兄さんだし、忠義さんは言葉遣いが少し乱暴だけど面倒見のいいお兄さんよ。それに、怖いのが来たらやっつけるから大丈夫。」
 千羽夜(ia7831)の笑顔も加わって、やっとみっちゃんが笑う。まだぎこちない気もするが、とりあえず第一段階クリアといった所だろうか。
 今回の遠足での大きな課題。十五人中要注意な人物が約三名。怖がりのみっちゃんに、迷子癖の太郎君、元気過ぎてよく転ぶ暑がりの巽君――その三名をしっかり面倒見ることが、安全に進む為の重要事項といえる。開拓者達はその為、この三班制を先に提示したのだ。各班、班長がいてしっかり警戒をかける。しかし、相手は子供である。そううまくいくはずがない。事件はすぐに起きた。

●ささいな一言
「わぁ〜〜〜〜〜ん」
それは出発してすぐのこと。 和気藹々に進んでいたはずの一行にざわめきが走る。
泣き声の主は、みっちゃんだった。
「どうした? みっちゃんさん?」
 素早く異変に気付いた忠義が尋ねる。
「やだ‥‥わたし‥えっぐっ‥‥かえるぅ‥‥‥」
 途切れ途切れの訴え。
「う〜んと、みっちゃんさんは何で帰りたいんスか?」
「だってだって‥‥さっきいってたもん‥‥ここおにでる‥‥んでしょ?」
「むっ? 鬼でスか?」
「えっと、なんでここに鬼が出ると思うのかな?」
 目を点にする忠義に代って今度は直羽が尋ねると、みっちゃんがゆっくりと前を指差す‥‥その指の先には、太郎を連れて振り返っている巫女の千麻(ia5704)がいた。
「千麻さん、あなたそんなこと言ったの?」
「えっ‥‥あたしは‥‥」
 困惑する千麻の様子を見取って、他の二人に視線を移してみる。すると、隣りを歩いていた山本 建一(ia0819)が少し考え――。
「そういえばさっき鬼がどうとか‥‥」
「あぁ。確か『我侭いう子のところには鬼婆がやってきて食べられちゃうのよ?』とかなんとか‥‥」
 思い出したように、滋籐御門(ia0167)――けれどその言葉は、本来赤班の子供に向けて言ったもの。出発早々足が疲れたから式神に乗せてほしいだの、山の木を御菓子に変えてだの無理難題を持ち出し、赤班子守役らを困らせていたのである。それをどうにかする為に、やむなく出した奥の手――それがこの一言だった。
「みっちゃん、こんなだから‥‥ぜったいたべられちゃう。ぜったいぜったいたべられちゃうよぉ〜」
 さっきよりも盛大に、そして本格的に泣き出したみっちゃんを目にして、それが他の子供達に伝染するまでにあまり時間はかからなかった。動揺が広がり、明るく差し込んでいたはずの木漏れ日が暗く見えてくる。
「やだっ、どうしよう? 私そういうつもりじゃあ‥‥」
 子守の経験のない千麻にとって、自分の親を手本に注意した一言が、こんな形で裏目に出るとは思わず、焦りを隠せない。
「あぁ〜〜みっちゃん。大丈夫、大丈夫よ」
 黄班の三人が宥めに入るものの、一度泣き出した彼女はなかなか泣き止みそうにもない。
「とりあえず休憩ってことで」
 最後尾で巽の面倒をみていた今回の最年長者である時任一真(ia1316)が提案する。
「そうですね。このままってのもアレですし、少し休むしかないかと‥‥」
 佳淋も問題のみっちゃんの様子を見て、同意する。
「本当にごめんね。別にお姉ちゃんはそういうつもりでいったんじゃなくて」
 みっちゃんの前にしゃがみ込んで、両手を合わせ謝る千麻。
「あの千麻さん?」
 それを目にし、佳淋が固まる。
「あの、太郎君が」
「太郎君は‥‥えっ、ええ!!」
 はっとした時には時すでに遅し。
 みっちゃんに気をとられていた一行に、新たな問題が浮上するのであった。

●休憩
 みっちゃんを抱える形で、近くの丘へと移動した一行は休憩に入った。みっちゃんの方は泣きつかれ直羽の膝でぐっすりと眠っている。
 その他のメンバーもこの場を離れてはまた次の迷子者が出ないとも限らない。そこで、陰陽師の面々が人魂を飛ばし、太郎の捜索にあたっている。
「本当にすいません」
 がっくりと肩を落して、千麻が言う。
「大丈夫。すぐに見つかるさ」
 青班の劉天藍(ia0293)も人魂を飛ばし捜索しながら、ぽんっと千麻の頭に手を乗せ励ます。無愛想な彼であるが、割と面倒見がいいようで、巽他、彼の元を離れない子がいるようだ。
「おじさん、何これ?」
 そのすぐ横では一真を父のように慕ってか子供達が集まっていた。そんな子供の前で一真が花札を広げてみせている。
「ん〜これはなぁ、花札っていうんだぞ。きれーだろ」
「うん、きれい。でもこのえは? おはなのってないよぉ?」
子供が持ち上げた一枚。その札には中央に半円の緑が描かれている。
「あぁ、それはぼうずっていってな‥‥山の」
   ていっ
 説明しかけた一真の前で札が飛んだ。それを間一髪で避けると、その先にいた建一に当ったようだ。頭を押さえながら振り返る。
「しゅりけん、しゅりけん♪」
 それに面白みを覚えたのか、他の子供達も次々と札を投げ始める。
「あぁ〜〜〜〜〜と、まぁいいか」
 元気な子供達を見てふっと笑顔が零れる。花札の一枚や二枚なくなったとて別に構わない。のんびりとした時間が過ぎていく。視線を少し先に飛ばせば、そこには千羽夜が馬役をかってでているようだ。
「見つかりましたよ」
 ――と、御門の人魂が太郎を発見、千麻他心配していた子守役の三人に告げる。それを聞き、肩車をしてやっていた忠義が先行し、場所を確認に向かう。
 そして、戻って来た忠義の表情はなんともいえないものだった。
「どうかしたのか?」
 その表情を見取って、一真が尋ねる。
「太郎は無事だが、なんというか…もふらがいる」
「ええっ、もふらさまが!!」
 思わず声を上げてしまった佳淋の言葉を子供達は聞き逃さなかった。

●野生のもふらさま
 休憩を終えて、再び一行は動き出す。赤班を残して、黄・青が先行しようかと考えたのだが子供達がそれを許してはくれなかった。もふらの言葉に、子供達ははしゃぎ出し、見てみたいと言い出したのだ。
 辿り着いたその先には、太郎と巨大な白い塊――。
 太郎は巨大なもふらのお腹付近で一緒になって眠っている。
『おぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』
 それを見て子供達が歓声を上げる。
「大きいですがあれももふらさまに変わりはないんですよね‥‥」
 普通のもふらよりも三倍はあろうかという大きさに、佳淋が尋ねる。
「えぇ、多分」
 それに答えたのは、以前もふら絡みの依頼を受けた事のある千羽夜である。そんな彼女でさえ、その大きさに驚きを隠せないようだ。
「太郎君は?? あっいた!」
 千麻がそれを見つけ、駆け出す。
「いいなぁ〜おれももふもふしたい」
「ふわふわ。もふもふ〜〜」
 それを見て子供達も後を追うように走り出す。
「ちょっとおまえら、危ないかもしんねぇーーーぞ」
「ストップ、ストッ――プ」
 開拓者らが声をかけたが、もう誰も聞いていないようだった。一目散にでかもふらの下に駆け寄り、抱きついたりもふもふしたりしている。
「俺も行くぅ〜〜〜〜〜、天ちゃんはなしてっ」
 ――と、今までずっと天藍に手を繋がれていた巽が、ついに動いた。手を振り解き服を脱ぎ捨て走り出す。そして、手前で派手に転ぶ。
「ぷっ‥くっははははは」
 それを見た天藍が笑う。地面は幸い草が生えている為傷に至る心配はない。巽はそれでもすぐ立ち上がり、でかもふらにダイブした。その衝撃に巨大もふらは目を覚ましたようだが、別段気にしていないようだ。野生とはいえ、このでかもふらは温厚な性格のようだ。
「さっき人魂で捜索した際にアヤカシの方も探索しておきましたが、特に反応ありませんでした。この地域には今のところアヤカシはいないようです」
「そうですか、よかった」
 目の前の光景を見守りつつ、ほっと一行は胸をなで下ろす。こんな無防備な所を狙われでもしたら、たとえ開拓者といえども守りきるのは至難の技ではあるが、その心配はなさそうである。
「ダメじゃない! 離れないでねっていったでしょ!」
 涙を浮かべながら、ぎゅっと強く抱きしめる。その拍子でやっと目を覚ました太郎はまだ状況が飲み込めていないようだ。
「あれ? おねえちゃん? それにみんな?? なんでなんでいんの??」
「きみをさがしにきたんだよ〜。なに、ねぼけてんのよぉ〜〜」
「おねぇちゃん、なに、ないてんの? なかないでよ…ほらっ、このもふらさまやさしいんだよ。ふかふかだし、おねえちゃんもふもふすればげんきでるよっ」
 返された笑顔に、もう何も言えなかった。
 純粋に何かを追う瞳――子供達の瞳は輝きに満ちている。
(「これじゃあ、もう怒れないじゃない‥‥」)
 子供達の様子を見て、そう思う大人組の面々であった。

●おまちかね
「さぁ、じゃんじゃん入れてくから中よろしくねぇ〜」
 あの後は、特に目立った事件もなくスムーズに進んで、湯けむり御一行様は無事温泉に辿り着き、今まさに第二の戦場が繰り広げられていた。本日は運がいいことに、温泉は貸し切り状態。子供達が多少暴れても他に客はいないのだから心配ない。
「おわぁ〜〜と」
 湯船手前で転びかけたのはやはり巽君である。それを寸での所で受け止めたのはずっと面倒を見てきていた天藍だった。
「ここはもふらの体のうえとは違う、気をつけろよ」
 そういって体を起こしてやると、巽はにっと笑顔を返す。
「にーちゃん、ありがと。けどな、キズはおとこのくんしょうなんだぜ」
 拳を作って、そういうと再びまた滑りやすい浴室を走り出す。
「あぁ〜全く」
 それを見て、苦笑するものの子供とは元来そういうもの――。
 注意を怠らないようにして、周りに気を配る。
「やっぱり子供って可愛いですよね」
 それを見ていた、御門が言う。
「天ちゃん、隙ありっ☆ くらえー!」
 ――と、子供達と一緒になって、水鉄砲をお見舞いしたのは直羽その人である。班が違ったが為に、あまり絡めなかったがこの二人、親友だったりするのだ。やっと絡めるとばかりに、直羽がしかけたようだ。
「あの兄ちゃんを狙えよ。さっ、いけーーーーー!!」
 湯船に浸かっていた子供に命令を出し、直羽は実に楽しそうだ。子供に混じってはしゃいでいた直羽だったか、湯船の端にいたみっちゃんを発見しそちらに移動する。
「ん〜? どうしたの、俺のお姫様?」
 浴室までもふら人形を放さないで持ってきているみっちゃんに優しく問いかける。
「別になんでもないもん」
 ぷいっとそっぽを向いて、湯船に顔を埋めるみっちゃんを見て直羽は思い返す。
「う〜ん、嫌われたかな?」
 首を傾げながら、頬を指で軽く掻いているとそこにびしょ濡れの男が現れた。
「よくもやってくれたな」
「んっ、あぁ天ちゃん」
「天ちゃんじゃない。俺がなんでこんな‥‥」
「なぁなぁ、俺なんかみっちゃんに嫌われるようなことしてたかな?」
 天藍の言葉を聞き流して、自分の疑問をぶつけてみる。
「そんなこと知るか‥‥」
「僕、わかりますよ」
 再び御門が現れ、にこりと笑う。
「えっ、マジ。何が悪かったのかな?」
「悪い? 冗談‥‥その逆ですよ、逆」
 湯まみれになった天藍の横でみっちゃんの様子を見ながら御門が告げる。
「逆?」
「にぶい人ですねぇ。みっちゃんはあなたの事が好きになったんですよ。いわゆる恋というやつでしょうか??」
「えっ」
 思わず声を出してしまった直羽を照れながら見つめていたみっちゃんだったが、好きの言葉に更に湯船に顔を隠すように沈んでいく。
「まいったなぁ〜」
 直羽は苦笑するしかなかった。

 一方、洗い場の方では建一と一真が順番に子供達を洗ってやっていた。暴れる子供をうまくあしらうのは、やはり一真の方がうまいようだ。建一はまごつき苦労している。石鹸を取り落としたりとおぼつかない。
 女性陣と忠義、そして子守役の三人は脱衣所を担当しているようだ。
 上がってきた子供達の対応でてんてこ舞いである。
「本当にガキはどこからこのパワーが出てくるのか不思議っス」
 手早く身体を拭いてやりながら、呟く。
「そうですね。でもまぁそこがいい所でもありますから」
 佳淋がそれを聞いて答える。
「千麻さん、そっち行ったよ〜〜〜」
 その近くでは着替えを終えた子供達に対応に追われる千羽夜と千麻――。
 行きより更にパワーがアップしたと思われるお子様達に手が追いつかない。
(『確かにこれはハードだわ』)
 ここに来て二人の気持ちが一致した瞬間だった。

●お疲れの乾杯
 空には満月――。
 湯船にお盆を浮かべて、開拓者と子守のメンバーは男女に分かれて温泉を楽しむ。竹壁を隔てての露天風呂。ほろ酔い気分で月を眺める。静まり返ったこの場で、みんな今日一日の疲れを癒す。お盆の上にはお猪口とお銚子がのっているようだ。
「何はともあれ、お疲れ様でした」
 御門が改まって皆に言う。
「え〜〜まだ最後の仕事が残ってるよ、みかどん」
「えっと、なんでしょう?」
「それはもちろん男の浪漫! の・ぞ‥‥」
「そこーーーーーー!!! 聞こえてるよ!!」
 直羽が言いかけた言葉を打ち消すように女湯から声が飛ぶ。
「あっ、聞こえた? 冗談だよ、冗談」
「本当かしら」
 返答を鵜呑みにせず、千羽夜も警戒しているようだ。
「もぉ、信用ないなぁ」
「では、俺が制裁を‥‥そりゃ」
 直羽目掛けて、天藍が水鉄砲が飛んだ。
「若いっていいねぇ〜」
 同じ湯船にいながら、まったりとしているのは一真と忠義、建一の三名だ。
「全くっスね。俺も後十若けりゃまじるんスけど‥‥なんて」
 とりとめのないの会話を楽しみながら、夜はゆっくりと更けていった。

  完