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■オープニング本文 「おい、みんな。管理人さんからお許しが出たぞー」 『わーい』 長屋のガキ大将こと牡丹が近所の仲間を集めて拳を上げる。 管理人さんとは長屋の管理人の事であり、山の方の土地も持っているらしく竹林の他、山も所有している地主でもある。 その管理人の山には今、大きな柿がなり始めている様だった。それを知って採っていいかとお願いという名の交渉を続けていた牡丹……そして今日やっとその許可が下りたらしい。子分達を連れて、早速山へ行こうと声をかける。 「おおっ、柿いっぱいあるの?」 「おうよ。でっかい木に沢山なってるぞ。それこそおまえが抱えきれない位にな」 踏ん反り返って牡丹がみっちゃんの家を訪ねて言う。 「そんなにもなってるのー? だったら、みっちゃんも行く―♪」 彼女はその言葉を聞いて目を輝かせた。どうやら彼女は柿が好きらしい。 丁度家を訪れていた太郎と巽にもその事を話し、二人も一緒にその山へと出発する。 だが、そこには先客がいて…、 「あー、とりさん。いっぱいなの…」 みっちゃんが柿の木の枝を見上げて言う。 「くそー、あれもあれもあれも……もう一杯突かれてるじゃんかよ!?」 牡丹は先手を取られたと思い悔しそうだ。急いで柿の木に足をかけ、幹を登って行こうとする。だが、 「うわぁぁぁ!」 ある程度まで登った時、鳥達の猛襲が始まって慌てて下へと降りてくる。 「大丈夫か?」 その様子に巽他仲間達が駆け寄る。 「くそぉ、これじゃあ柿全部食べられちまうぞ」 しかし、牡丹は諦めていない様だった。きっと実の方を見つめて、策を考える。そして、 「うりゃ、そりゃ!」 近くにあった小石を取って、遥か先の柿を落とそうと四苦八苦。けれど、それがうまくいく筈もなくて、 「うわっ」 投げた石が枝に当たって返ってくるから大変だ。仲間達が慌てて避ける。 「もう、牡丹ちゃ駄目だよ〜。これじゃあ、みんなにも鳥さんにも当たっちゃうし」 「どっちの心配してんだよ。このまま柿を食べられてもいいのかよぉ」 「それはやだけど…」 「だったら、やるしかないだろうがよぉ」 牡丹がそう言ってまた、石を手に取る。 「牡丹、やめとけよ。俺が行くから」 そこでそれを止めたのはなんと巽だった。彼は太郎より身軽であり、木登りもこの中では一番上手である。 牡丹に有無言わせず、彼は柿の木へ手を伸ばす。確かに彼は身軽だった。しかし、 「う…」 登ったまでは良かった。けれど、勢いに任せて登ったから高さを考えていなかった。正確に言えば鳥の妨害を避けつつ、慌てて登ったものだから高さをちゃんとは把握出来ていなかったのかもしれない。枝がもろいで知られる柿の木、所々登った際に折れたものもある。 そして、もう一つ――実は巽は以前大鷲に攫われた事がある。 その時の事が思い出されて、少し怖くなってきたらしい。 「巽ちゃ、大丈夫ー?」 みっちゃんの声が下から聞こえるが、下を向くのが怖い。助けに行こうにも巽より上へ登れる者はいない。 カァ カァ そのうち日が傾き始めた。これでは巽は木の上で一晩を過ごす事になりそうだ。 「……どうしよう。これじゃあ柿どころじゃないよね…」 太郎が呟く。牡丹も降りてこない巽に些か心配の目を向けている。 「ギルド、いこ。もうそれしかない」 みっちゃんが言う。夜は近い…急がなければ。 |
■参加者一覧
奈々月纏(ia0456)
17歳・女・志
フラウ・ノート(ib0009)
18歳・女・魔
明王院 未楡(ib0349)
34歳・女・サ
蓮 蒼馬(ib5707)
30歳・男・泰
アムルタート(ib6632)
16歳・女・ジ |
■リプレイ本文 ●兎に角急げ! 「御免下さーい。救出に必要で、お布団を借りたいんだけど」 フラウ・ノート(ib0009)が長屋の戸を叩いて回る。彼女が行動を開始したのはついさっきの事だ。 突然訪れた小さな依頼人達に彼女は見覚えがあった。少し前の事、好き嫌いを直して欲しいという親御さん達からの依頼で彼女達とも顔を合わせていたからだ。そして、その他にも顔見知りの者は多い。 「あらみっちゃん、ご無沙汰ですね」 先頭切って入ってきた実の姿を見つけて、明王院未楡(ib0349)が言う。彼女もまた幾度か子供達の依頼を受けてきた者の一人だ。 「ん、またトラブルか。一体何があった?」 苦笑交じりに蓮蒼馬(ib5707)が問う。彼などはもう常連さんと言ってもよく、子供達の性格をほぼ周知している。 「あのね、巽ちゃが降りれなくなったの。だから手を貸して欲しいの」 みっちゃんがもふらさまのぬいぐるみを抱えたまま状況説明。 彼女も随分成長した様で以前は大きく見えたもふらさまだが、今は些か小さく見える。 「なんやなんや、降りれなくなったってどこに上ったん?」 そこへ騒ぎを聞きつけて、奈々月纏(ia0456)が合流する。 「巽が柿を採る為に登った。けど、降りられなくなって…」 「それは一大事だね〜、けど任せて。私達が何とかするよ♪」 太郎の言葉に今度はアムルタート(ib6632)がひらひらした服の裾を翻しながら笑顔で答える。 「だけど、早くしないと日が暮れる…」 太郎の言葉だ。ギルドも状況を察して、即座に集まった開拓者に彼らを任せる事を決定。必要な物があればすぐに準備すると言ってくれたが、流石に布団はそう多くない。そこでフラウ他集まった者で手分けして救出に必要な物をかき集め事となる。 「この大八があれば問題ないだろう」 使い古された大八車を見つけて、蒼馬がそれを引く。 「ありがとー♪ もし土埃なんかで汚れたら、綺麗に返すわ」 そう言って今しがた借り受けた布団を台に乗せるのはフラウだ。 「うちも少しやけど、借りられたで」 纏もそう言い、その上へ。ふかふかとは言い難いが藁も用意しているから、万が一の時のクッションにはなるだろう。 「縄の準備もできました。それに帆布も借りられましたので、一つハンモックのようなものを作ってみたいと思います」 未楡がそう言い、子供達と共に手早く作業し始める。 「鳥がいるって言ってたよね。だったら、あれでおどかせるかなぁ?」 皆が奔走する中、アムルタートは田んぼに立つ人形を見つめ呟く。 放浪中ちょくちょく目にしており、あれが鳥よけに作られていると聞いた事がある。 「だったら、一つ目がいいと思う。鳥は大きい目、怖がるって聞いた」 それに太郎が助言する。 「成程…だったら、とびきり怖い一つ目で…うん、あれしかないよね♪」 彼女に名案が浮かんだ様だった。太郎の頭を撫でて、ふふっと含み笑みを浮かべる。 (「あれってなんだろう?」) 残された太郎はよく判らず首を傾げていた。 ●寒さと限界 秋の太陽はそれ程彼らを待ってはくれない。子供達がギルドにやって来たのが四時前だった事もあって、現場に辿り着いた頃にはすっかり辺りは底冷えする寒さとなっている。 「あうぅ〜」 15mもあるかというその柿の木のてっぺん近くで巽は必死に冷たい風と闘う。一応、柿の木とはいえ太い枝に身を委ねている為、動かなければ落ちる心配はないだろう。けれど、それでは何も解決はしないし、風の影響はもろに受ける。 「もう少しの我慢だ。もうすぐあいつが開拓者を…」 「巽ちゃー」 牡丹が下で励ます中、やっと聞こえた実の声に彼ははっと声の方に視線を向けた。それと同時に自然に下方を見る事となった為、その高さに改めて肩を揺らす。 「もう大丈夫だ。すぐに助けてやるからな」 大八を引いて来た蒼馬が巽の位置を把握し、幹の強度を確認しつつ声をかける。 「うん、わかっ…くしゅん」 そう答えかけた巽のくしゃみ。その動作によって木に僅かな震動が伝わる。 バサバサバサッ それがきっかけでとまっていた鳥達が一斉に羽ばたいた。だが、暫くすると再び所定の枝へと戻ってくるから厄介だ。 「まずはあの鳥達をどうにかしないとね」 今の確認できた鳥の数はざっと数十――よくあの襲撃を掻い潜り登ったなと感心しつつフラウが言う。 「だったら、私の出番だね」 そこでずいっと前に出たのはアムルタートだった。すぅと滑らかな動きで手を上げ、意識を集中する。 「おねーちゃ、まさか鳥さんやっつけたりしないよね?」 がその様子から魔法でも放つと思ったか、みっちゃんが心配そうに尋ねる。 「あ、うん。大丈夫だよ〜。脅かすだけだから」 「みっちゃん、もしかして鳥さんが気になるの?」 柿を食べてしまう外敵であると思うが、やはり心配なのかもしれない。フラウが尋ねてみる。 「だって、鳥さんもお腹空いてるんでしょ。悪い事もしてないし、仲良くがいいのぉ」 その言葉に開拓者達は少しほっこりした。 アヤカシのいるこの世界であるが、それでも優しさを失くしてはならないと思う。 未来に向けて……こういう子がいてくれるのは嬉しいものだ。 ちらりと牡丹を見た実に気付いて、牡丹が目を逸らす。石を投げたのを思い出したらしい。 「そっか。そうだよね…でも安心して、あたし達は鳥さんを傷つけたりはしないから」 フラウはそう言うと、早速積んできた布団と藁を木の周りに敷き始めて、 「誰か寝るの?」 「いいや、違うで。クッションにするんよ」 実の問いに纏が答える。 本来であれば巽の下付近だけでもいいのだが、さっきのそれを聞きプラン変更。鳥達の事も考える彼女達である。 (落ちた鳥が怪我しちゃ悲しむモノね) 機転を利かせて手伝ってくれている纏達に感謝しつつ、フラウが心中で呟く。 その間にもアムルタートは術の構築を急いでいた。 (来る時に見た畑に立ってたあれを思い浮かべて…後は、そうあの目玉をそこに重ねて…) 脳裏でイメージするのは案山子だ。しかし、只の案山子ではない。一つ目の恐ろしい案山子――顔全体に大きな目玉のついたものであり、イメージモデルは闇目玉さんだったりもする。そうして、彼女のラ・オブリ・アビスによる不気味な案山子は完成した。 「うえぇ…鳥じゃ無くても逃げ出すかも…」 実際はアムルタートのそれでそう見えているだけであるが、子供達には彼女が変身でもした様に見えたかもしれない。 「ふふふっ、確かにですね」 その姿に思わず未楡が苦笑する。 「さーて、じゃあ行くよー。そっちの準備はいい?」 案山子となった彼女が蒼馬に声をかける。すると彼はこくりと頷く。 「それじゃあいくよー♪ わーい、怖い案山子だよー!! 逃げちゃえ逃げちゃえー♪」 アムルタートがナディエで通常より高く跳躍し、鳥達を牽制する。巽のいる木には触れない様に配慮しながら、右へ左へ。隣りの木などにも移動しつつ、鳥に接近すれば雀等の小さい鳥は一発で逃げてゆく。一方で烏の類いも粘ってはいたが、それでもアヤカシの顔を持つそれには本能が危険を感じたらしい。応戦を止めて、その場を離れていく。 (よし、今だな) 蒼馬は粗方の鳥が枝から離れてゆくのを見て、身軽に木を登り始めた。 彼は大人であるが、泰拳士のバランス感覚を武器に順調に進む。 「蒼馬〜…」 巽の近くまで登って来た彼の姿を見て、巽がゆっくりと手を伸ばす。 「あ、待て。まだ動かない方が…」 「わっ!?」 『危ない!』 下の者からの悲鳴――手を放した事によって重心が変わったらしく、ぐるんと体が枝下へ反転する。とっさに蒼馬は手を伸ばして彼の背を下から支えたが、間一髪である。 「はぁ〜、はらはらやねぇ」 下で未楡とハンモック状の布を広げていた纏が息を吐く。最悪の準備をしているとはいえ、気が気ではない。 「おーい、巽君。ここに飛び込んでこれるかしらぁ〜?」 怠け者の様なぶら下がり体勢になってしまった彼。こうなるといっその事、帆布に飛び降りた方が早いとフラウは思う。けれど、 「無、無理ぃ〜」 「だよねぇ…」 巽の回答に頬をかく。やはり結構な高さであり、下方が見えずとも不安は拭えないらしい。そこで彼女は蒼馬をちらりと見て、彼もそこで理解した様で、 「巽、今行く。だからしっかり掴まってろよ」 彼が一旦支えていた手を離し、巽の方へ移動する。そして巽に覆い被さる様にして片手で彼を抱きとめる。 「蒼馬…」 巽は彼に抱き締められるとほっとした様に身を委ねた。それと同時に手足は捕まっていた枝から放して、 「よく頑張ったな。けど、もう無茶するなよ」 冷たい身体…体力もだいぶ奪われていると見える。が、まだ気が抜けなかった。ここからが慎重にいかなくては。しかし、あまり時間をかけてはいられない。鳥は静かになるとまた戻ってくる恐れがあるし、日が沈めば足元が見え辛くなる。 (どうするか…) 思案しかけた彼であったが、すぐに答えを迫られる事態となる。 ピキ ピキピキピキッ 流石に二人分の体重を支えるにはその枝は限界だったらしい。枝が悲鳴を上げ始めたのだ。 「すまん、このまま落ちてもいいか?」 彼が下に問う。 「大丈夫です」 「どうぞぉ」 「ばっちり受けて止めてあげるわ」 そこで蒼馬は巽を抱えたまま落ちる事を選択した。未楡のハンモックは帆布だけに丈夫だ。例え大人が一人落ちたとしても問題ないだろう。ならば、この際巽を抱えたまま落下した方が世話がない。彼は巽を胸にしっかりと抱えて自分の背を下に落下する。 ばさりと音がし、布が撓った。重力で重みが増した様に感じられたが、それでも三人が踏ん張る。 (絶対に怪我等させませんよ) 未楡が鬼腕を発動し支える。地面に敷いた布団と藁のお蔭もあって、二人は無傷で地上への生還を果たす。 「巽ちゃ、よかったのぉ」 再び無事戻って来た巽をぎゅっとして実が言う。 「その、無理させて悪かったぜ」 とこれは牡丹だ。まさかこんな事になるとは思っていなかったらしいが、それでもちゃんと悪かったとは感じていたらしい。 「はぁ、なにはともあれ無事でよかったわぁ」 へなへなと纏がその場に座り込み息を吐く。 「ねぇねぇ、柿狩りはどうするの? するんだったら私の術で」 『って、うわぁぁぁ!!?』 一件落着だと思った所に案山子姿のままのアムルタートが現れ、一同思わず声を上げる。 「あはは、ごめんごめん。でどうするの〜♪」 そこで彼女はくるりと回って術を解いて、再度皆に尋ねる。 「もう、日没も近いしそれは明日にしない? みんなも疲れているでしょうし」 「ですね…冷たい風に当たって風邪を引いたらいけないわ」 フラウと未楡の言葉――その提案に誰も異存はなくて…彼らは長屋へと帰還する。 ●皆で柿パ 翌朝、開拓者は子供達と共に柿狩りを楽しむ為、もう一度山へと向かう。 が日が変われば降り出しへ。鳥達も生活が懸かっている。朝早く出たというのに、根性のあるものは戻ってきている様だ。 「もう一回、アレする?」 アムルタートが問う。しかし、ここは別の策を持ってきている者がいる。 「今度は私が致しましょう」 穏やかな面持ちで収穫用の籠を下ろして、未楡が鳥達を見つめる。そして、 「子供達に意地悪をしては、め〜ですよ」 彼女が笑顔で注意した。ただそれだけであったが、何故だかその言葉の後にこっちを見ていた鳥の一部は飛び立ち、残ったものは微妙に視線を逸らす。 「未楡、何したの?」 「ふふ、少し牽制しただけですよ。さぁ、柿狩りをしましょう」 が彼女がにこりと笑顔を返す。 (あれ、きっと剣気だ…) それに気付いていたのはきっと開拓者達だけだろう。 「鳥さんが離れた事だし、私は高い所にある柿を落としたげるよー♪」 そこでアムルタートは鞭を手に取った。そして高い場所の枝に絡めると、すいすいと木を登っていく。がそこへ黒い影が気迫で迫って、 「少し眠っててね」 彼女に向かった一匹にフラウの一声。すると後少しまで来ていた烏が動きを止めて、 「うえっ、落ちてきた」 牡丹の元に落下したそれを思わず避ける。がよく見ると烏は眠っているだけでみっちゃんはほっとする。それに地面には布団を引いたまま。カバーをかけて雨と汚れの対策していたから落ちても問題ない。 「さあ、沢山とろう」 蒼馬がすっかり元気になった巽を肩車して言う。 「ずるいぞー! 俺もやってよー!」 そんな声が上がるから彼は順番に担ぐ事になったり。棍にナイフを括り付けて高枝鋏のようなものを作り貸し出しているが、やはり肩車には敵わない。 一方落ちてきた柿を拾っては早速剥かれたものを食べ始める子もいる。 「あれ、これうさぎさんだぁ♪」 「そうやで、林檎の兎さんみたいにしてみたわ♪」 今日は実の他にも女の子がいる為か、纏の兎柿に人気だ。 そして拾い疲れた子達にはフラウの特製フローズ柿が好評。 程よく冷やされた柿はシャリシャリしていて乾いた喉を潤してくれる。 「あー、これ齧られたやつだぁ」 上で柿を落としているアムルタートであるが、万能ではない。見えない部分が齧られているものを落としてしまう事もある。それを拾って、一人の男の子は残念そうに柿をぽいしようと構える。 「あら、ちょっと待って。その位なら持って帰ってお菓子に出来ますよ」 そんな彼を見つけて止めに入ったのは未楡だった。 「お菓子! 本当に出来るの!」 食べられないとは思わないだろうが、齧られたものだ。やはり普通は余り食べたいとは思わない。けれど、その部分が僅かであれば削ぎ落して使えば十分に加工調理する事は可能だ。 「ええ、勿論。プリンに練り羊羹、マフィン何かもできますよ」 手早く柿の皮を剥きながら彼女が言う。 「やったー。だったら一杯作ってー。美味しいやつ〜」 「ええ、帰ってからね」 彼はそう言うと齧られた柿を彼女に渡した。それを受け取り、しっかりと籠に収める。 そうして、お昼になる頃には彼らが持参した籠は一杯になった。それだけ収穫してもまだ柿の木には実が残っている。 「後は鳥さん達の分だよぉ」 みっちゃんはそう言い、その場を後にする。 「仕方ねぇぜ。おまえらにも分けてやらぁ」 とこれは牡丹だ。彼の家の柿の木ではないが…鳥達のお食事を許してくれるらしい。 「分けると言えば、管理人さんの所にも持って行って差し上げましょうね」 未楡が言う。そもそもこの柿の木は彼のものだ。お礼を兼ねて…と提案する。 「それ、いい考え。お菓子にしたやつ、持っていく」 『さんせー』 太郎の言葉を皮切りに、子供達はそれに同意。帰り道は歌を歌いながらの帰路となる。 そうして彼女らが帰った後には新たなお客さん。親子だろうか、羽を休めついでに甘い柿を啄む。 その後も次第に鳥達が戻ってきて…人も鳥も美味しいものには目がない様だった。 |