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■オープニング本文 ※このシナリオはIF世界を舞台としたマジカルハロウィンナイトシナリオです。 WTRPGの世界観には一切関係ありませんのでご注意ください。 ぱんぱかぱーん ぱんぱんぱんぱーーん 「おめでとう御座います! 君は百億人目の勇者に選ばれました〜♪ よって、これから魔王退治に旅立って貰いまーす」 そんな始まりだった気がする。貴方は勇者…そう言われても何もぴんとこなかった。 それはそうだ。ついさっきまで畑を耕したり、友達と話しをしたりしていたのだから…。 なのに、突然現れた妖精っぽいものは理不尽に重大でとても困った事を言い放つ。 「いいですかー? ここから見えるあのお屋敷。実はあれは魔王の別荘なんです。あそこに確実に今魔王はいます。今叩かないときっと世界は滅んでしまいます。だから、今すぐ行ってパパッと倒して、世界を救ったヒーローになってきて下さい! あの魔王の滞在時間は三日だけ。正面から向かうのは無謀だと思いますからこれを差し上げますねv じゃ、そういう事で頑張って!」 そうして手渡されたのは極普通のシャベルだった。けれど、妖精っぽいもの曰く「これは伝説のシャベルで、あっという間に魔王の屋敷へのトンネルが掘れる」らしい。試しにこつんと土を突いてみたら、一気に三メートル近い穴が出来てしまったからさっきから腰が抜けて動けない。 「どうしよう…僕が勇者だなんて…」 鎧もない、武器もない、レベルも多分1だろう。それで魔王を倒す? (「自分、さっきまで村人だったんですけども…(汗)」) けれど、このシャベルが本物という事はこのままだと世界は滅びる。それは困る。断じて困る。まだ好きな子に告白していない。いや、告白する相手にさえまだ出会っていない。それに美味しいものもまだまだある筈だ。そういえば、予約していた限定グッズは? このままではいけない。シャベルを握り直して、貴方は魔王の別荘を目指す。 そして、魔王宅の真下に来た時、再び妖精っぽいものが現れた。 「よくぞここまできました。もっと掛るかと思っていましたよ。そんな頑張り屋さんの貴方に朗報です! 魔王の弱点をお教えしましょう。ここの魔王、実は怖がりさんなのです。こんなお化け屋敷のような洋館をもってはいますが、これは先代の産物…今日ここに来たのはこの洋館の改装の為だったのです。明日、魔王さんはりふぉーむ業者に改装を手配しに一日出て行きます。そこで貴方にクエスチョン! さぁ、貴方ならどうしますか?」 魔王の弱点が怖がりさんという事は、つまり…。 「ひょっとして、僕がここをどうにかすれば…」 「そうでーーす! 貴方賢い!! あなたが万に一つ魔王を倒せるとするならば、それは魔王が怯んでもういやだーーってなっている時です。この際、この滅殺のトンカチもつけちゃいますからこれであの魔王を倒すのです。いいですか? 明日魔王が出て行ってから返ってくるまでにここをホラーハウスにしちゃうのですよ!!」 捲くし立てるように言ってくる妖精っぽいものに強引にトンカチを渡されて…もうこうなってはやるしかない。これも多分、シャベル同様スーパーパワーを秘めており作業効率は上がる筈だ。 「…や、やるしかない」 額から汗が零れる。 『あ…』 そこでふと声がして、そちらを振り返れば同じようなシャベルとトンカチを携えた者が僅か数名――なんとなく自分と同じ匂いがする。 「もしかして君も…」 「協力しよう」 皆、勇者のようだった。即席の突然、勝手に決められたばかりの初心者勇者。 村周辺から選抜されているようで、もしかしたら顔見知りもいるかもしれない。 ともあれ時間はない。魔王が外出するのを待って僕らは魔王脅かし討伐隊を編成するのだった。 |
■参加者一覧
笹倉 靖(ib6125)
23歳・男・巫
ラグナ・グラウシード(ib8459)
19歳・男・騎
戸隠 菫(ib9794)
19歳・女・武
ルース・エリコット(ic0005)
11歳・女・吟
零式−黒耀 (ic1206)
26歳・女・シ
小苺(ic1287)
14歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●屋敷改造 (「……最悪だぁぁ」) 魔王は急いでいた。りふぉーむ会社と話をつけて、これでやっと穏やかに暮らせると思ったのに最後にこんな試練が待っているなんて。相談には時間がかかった。城に帰るには時間がなく、雨も降り出したから仕方がない。宿を取るにも魔王であるとばれたら、何をされるか…そこで彼に残された選択肢は唯一つ。あの別荘で一晩明かす――雷が辺りを照らす中彼は、 「うぇーーん」 とうとう泣き出した。しかし、誰も構ってはくれない。 別荘まであと少し。頑張れ自分と励ますが、道のりは遠く足は重い。 一方即席勇者達は思い思いに仕掛けを考えて、屋敷で待機中だった。 「魔王云々なければ、この道具使って大工に転職…ってよくないかね?」 入り口付近の装飾を終え、氷の柱を抱えて廊下に向かおうとした笹倉靖(ib6125)が地下担当の零式―黒耀(ic1206)に声をかける。 「そうですね。私はこの装備からしてダンジョンマスターのような気が…」 そう言ってぶんぶんシャベルを振り回す彼女はどこか楽しそうだ。一振りで三mものトンネルが掘れるのだから、地下を迷路化するのも案外楽勝っぽい。お決まりの落とし穴を複数作りながら、なんとなく自分もプレーヤーにと考える。 「あ〜もう、どうしてこうなったのよ! あたしが勇者? 焼き上がるのを楽しみにしていたパイがあったのに、これじゃあ黒焦げだよ。ってその前に99億と9999人はどうしたの!?」 その近くではぷんぷんと怒りを爆発させながら、戸隠董(ib9794)改めこの世界では『アーシュラ』と名乗っている彼女が、天井に細工しつつ不満を漏らす。 「あの…鳴り物なら、私も…手伝い、ます…」 そこへおどおどした様子でルース・エリコット(ic0005)がやって来た。 手には盥やヤカン等の金属製品が抱えられている。 「あ、それいいわね。貸して頂戴」 そこで二人は共同戦線を張る事に。元々音中心で策を練っていた二人であるから、気が合いやすい。それに実の所ルース自身は些かこの屋敷の雰囲気にビビッていたから丁度いい。仲間がいれば怖さも和らぎ、作業に集中出来るというものだ。 「ぬ、ぬう…ゆ、勇者とはこんなに気軽にやれてしまっていいのだろうか」 そんな中どうにも納得がいかないのはラグナ・グラウシード(ib8459)だった。なぁ、うさみたんと背中に背負った兎のぬいぐるみに話しかけながら、脚立に上り照明を弄る。 「シャオは旅立ちまで三分だったにゃ」 するとそこへは屋敷見取り図を作成中だった小苺(ic1287)が通りかかって平然と言い放つ。 「いや、しかしだな…臆病者をさらに脅かす、だと…うーん」 勇者としてはあるまじき行為ではないか? 例え自分がレベル1でも腑に落ちない。 「世界の為にゃ。それにレベル1で魔王退治したら、伝説級にゃ」 無邪気な笑顔で言った彼女にラグナははっとする。 (「確かに、伝説級か。それは……いいな」) 男なら――その言葉に魅かれるものはある。 「そ、そうだな…これも人助け。うさみたん、そうだよな!?」 自らうさみたんの首を動かして必死に自分に言い聞かせる。そこでかさりと床から黒い物が走ったが、ラグナは気付いていない。けれど小苺は違った。 「はにゃ! 待つにゃ。手伝って欲しいにゃ」 そう言って、さっきの生物を追いかける。 「おい、おまえ台所に蒟蒻はあっただろうか?」 そんな彼女にラグナが問えば、 「にゃ。ん〜…なかったらシャベルで蒟蒻屋の下にゴーにゃ」 「……」 それは駄目だろ。心の中で呟く彼だった。 ●涙の海 「だれ…」 別荘の門を潜って、初めに見つけたのは窓の人影――。 庭の木々の近くにもなんだかよく判らない物体が立っている様なのだが、怖過ぎて確認にいけない。ただありえないと思った。鍵はかけてきたのに…人影が雷鳴に照らされてはっきりと見えたのだ。 「も、もしかして泥棒?」 お化け等考えたくもない。確かに先代は多くの人を恐怖のどん底に送ったと聞いているが、この別荘ではない。しかし、侵入者がいるなら自分は主として戦わねば……気持ちはそうであるが、本音はもう帰りたい。いや、ここが一応家の一つではあるのだけれど…。 キィ… それでも意を決して、魔王が扉を開くと軋んだ音が屋敷全体に木霊した。 何度来ても慣れない内装…時折雷鳴に照らされる先代の肖像画が途轍もなく怖い。何かで読んだ悪魔の館、それが丁度こんな感じだった気がする。悪魔と魔王の何が違うのかと言われればそうなのだが、兎に角彼にとっては不気味なのだ。 (「そいじゃ、まずは…」) そんな魔王の到着を知ってまず先制パンチを繰り出したのは靖だった。くいっとひもを引くと同時に玄関の扉が派手な音をたてて閉まり跳び上がる魔王。慌てて扉を開けようともがくがそうはいかない。暫くその場に座り込んで、落ち着くとはっと今度は屋敷の照明スイッチの元へと走る。だがスイッチを入れるや否や水がとび出すラグナの仕掛けに腰を抜かす。 「どうして…どうしてなのぉ…ここ、蛇口じゃないのにぃ〜」 混乱した頭で魔王がふらふら立ち上がる。 そして、何を思ったか次は台所に向かい出す。 「ふふふ、これはチャンスにゃ」 そこで小苺がにやりと笑った。台所には彼女の『すってんころりんで顔ぺちょり作戦』なる罠が待っている。 「ひっ!」 そんな事とは露知らず、台所に入った彼がまず目にしたのは浮かぶ蝋燭。ぴちゃんぴちゃんと水音までする。 (「あ〜、あれ絶対に解けてんなぁ」) その音に靖が一人ごちた。ちなみにあれの正体は氷像である――庭のもそう。 証拠隠滅の為と氷を人型に削って演出してみたのだが、雨までは予想していなかった。があれはあれでよしだと思う。 「浮いてる…蝋燭、浮いてる…」 魔王の呟き――辺りが暗くて本体が見えていないらしい。恐怖を掻き消すように無駄な解説を自分の鎮静剤にしながら、一歩一歩確かめつつ進む。 「早くブレーカー上げて。明かり、つけて…それからそれから」 (「魔法使えば…ってそれどころじゃないわね」) アーシュラが魔王の失念にツッコミつつ、次なる仕掛けを発動させる。 ガタガタガタガタッ それは、家鳴りだ。 「うえぇっ!!」 大袈裟に揺れる家具に再び床にへたり込む魔王。つくづく情けない。 治まらないそれから逃げる様に彼はブレーカーに走るが災難は続く。 「くらうにゃ!」 びよーーーん 「ふぐぅ!?」 小苺が仕掛けたひもに足を捕られてすっ転んだ先には糸蒟蒻。顔が気持ち悪いと起き上がればぷつんと糸が切れて…だばだば雑巾爆弾の雨霰。使い古した雑巾だから匂いが堪らない。 「やったー、大成功にゃー♪」 その見事な掛りっぷりに小苺がはしゃぐ。 だが、ここにまだ迷う者がいた。ラグナだ。 (「俺は本当にこれでいいのだろうか…」) 仕掛けてしまっているから止め様がないのだが、さすがに心が痛い。 照明をチカチカさせつつも、もやもやが残る。 「臭いの、顔洗うのー」 一方魔王は雑巾を振り払い流し台へ。洗い桶にははかった様に水が張ってある。 それに手をつけて洗おうとした時、 がっしゃーーん 「ぎょぴぃ〜〜〜!!」 目の前の窓が弾けとび、外から烏の人形が飛び込み脅かす。 (「ふわぁ! や、やっぱ…り、私に…は諸刃の…剣でし、たぁ……」) 魔王と同時に仕掛人・ルースも何故だか涙目だ。 しかし、魔王の方はもっとヒドイ。その場にひっくり返るとそこには氷像が。氷の冷気が身体に纏わり付き、人型と知ると彼はあれと勘違い。 「で、でたーーーゆーれいだーーーーーー!!!」 こうなるともう死に物狂いで立ち上がって、そこでぴかりと光った雷鳴ではたと気付く。 己の手が…真っ赤だった。何が起こっているか把握ができず、しかし真っ赤な手だけは本物で…。 「あぅ、あぅ、あうぅ〜〜〜ばたん」 それが彼の限界だった。 なぜ手が赤に染まっていたのかと言えば答えは簡単。さっきの洗い桶に細工がされていたのだ。 顔をぐしょぐしょにして倒れた彼に近くの別の部屋から生温かい風が流れてくる。しかし、彼は動けない。そこへひらひらと血文字の紙吹雪が舞い降りて――そこで彼は意識を手放すのだった。 ●成敗 「い、今のうちです…私が、鉄槌を…」 気絶したのをいい事にルースが滅殺のトンカチを振り上げる。 今しかない。今ここで決めなくては全てが台無しになってしまう。ここにいるのは魔王…平和を乱す悪い奴だ。しかし、さっきのあれを見ているとどうにも自分を見ている様でなかなか手を下しにくい。それに魔王とはいえ相手は無防備なのだ。 「やるにゃ。やっちまうにゃ。きっと今レベルは50にゃ」 隣にいる小苺が言う。だが、そこへ思わぬ刺客が登場した。 かさ かさかさかさ 「わひゃあ!?」 ルースの前に飛び出した黒い塊に思わず彼女が魔王に飛びついて、魔王も意識を取り戻す。 そして、 『ギャーーーーーー!!』 二人の声がハモった。だがよくよく見れば、 「あれは雌のカブトムシにゃ」 そう言って小苺があっさりとそれを捕まえる。 それにほっとして、はたと両者の立場を再認識――ルースと魔王は慌てて距離を取る。 「お、お、おまえがドロボーか!?」 そこで魔王はなけなしの勇気を振り絞り短い杖を掲げて、彼女達に問う。 「ど、どろぼーじゃありませんが、て、敵です。そして、ここ、が貴方…の墓場、です」 一方ルースは魔王相手に震える身体を必死で抑えて涙を拭い言い放つ。 「そうにゃ! ここがまーちゃんの年貢の納め時なのにゃ!」 その横では魔王に愛称をつけて、小苺が楽しげに続ける。 だが、そういわれてあっさり納得する魔王ではない。 「えと、それはつまり僕を倒しに来たって事かな……やだやだ、僕まだ何もしてないのに!!」 誰でも死ぬのは嫌なもの…呪文を唱えようと魔王が杖を振り被って、 「悪いけど、僕を甘く見ないでってひょおぉぉぉΣ」 詠唱を始めようとした魔王の口に小苺が唐辛子を放り込む。 それに大きく後退すると――またもや仕掛けられた仕掛けがあって…。 ばゆーーーん 床がしなり曲線を描いたのは豪華な壷。中には某所で調達してきたアレが入っている。 それがものの見事に魔王の頭上に飛来して、 「うわーーん! 何これ、気持ちわるーーい!!」 顔についたのはただの蒟蒻だった。けれど、それさえも今の魔王には判断する事が出来ない。 「やだやだ、剥がして〜でないと僕〜〜〜」 あわあわ慌てふためいて、その場を駆け回り破れたカーテンに絡まる。 そんな彼を床下迷宮の製作者、黒耀は床下から静かに見つめていた。 (「やっと私の出番でしょうか? いや、まだ機ではない?」) ここロビーにも落とし穴は設置済みだ。がその前にルースの罠――丁度いい地点に来たのを察してスイッチオン。すると盥が頭上から降ってくるのはお約束。いい音を立てて魔王転倒。 (「ふふ、ふふふ……今がチャンス」) そこで黒耀が動いた。 「うらめしやぁ〜〜…う、うらめしぃ〜〜」 「え、え…??」 床下から聞こえてくるのは何かを叩くような金属音と幽霊恒例のあの言葉。このままでは何かに連れて行かれそうで慌てて魔王は立ち上がる。が、そこへ空かさず飛び出す血糊付き物干し竿――床を突き破って、勿論これも黒耀の仕掛けだ。 「はにゅあ〜〜〜!!」 訳が判らず魔王が跳び上がり、うっかり杖を落とすが彼はそれ所ではなく、 「あ゛あ゛ア゛ア゛ア゛ア゛!?!?」 床下からの唸り声が怨霊の断末魔に聞こえたのか魔王は泣き出した。 床にアヒル座りで、子供のように盛大な声を上げて…それを見たラグナがぱちりと電気を入れる。 そして、へたり込んだ魔王の方に静かに近付いて、 「なんか…ごめんだお」 うさみたんを間に交えてぎゅっと彼を抱きしめる。 そこで気付く魔王の小ささに困惑した。確かに魔王であるのだろうが、何かがおかしい。そういえば歳までは聞いていなかった。魔王とて幼少時代というものはあるだろう。するとこの魔王はもしかして……。 「おまえ、何歳だ?」 それに気付きぽそりと聞いてみる。 「僕、六百歳…だけど、人の年齢に換算すると六、さい」 「なにぃーーーー!! 聞いたか、仲間達よ!」 途中から可哀相になっていたラグナであるが、これでは本当に弱い者虐めになってしまう。 「あんの妖精!! 諸悪の根源はきっとあれよ! 私達をけしかけたのもあれじゃない!!」 ぷんぷんと頬を膨らませて、アーシュラが言う。 「え、妖精って?」 「正確にはぽいものよ。はっきり妖精だとは言ってなかったし…」 「私達をここへ導いた生物だな」 何やら状況が変わってきたという事で仕掛け人=即席勇者達が続々と姿を現す。 「それじゃあ、貴方達は?」 「あんたが悪さしないないなら俺達があんたをやる意味はないさ。問題は妖精の方だよねぇ?」 煙管を片手に皆を見つつ靖が言う。 「あの、あのあの…その前にあれを」 そのルースの声に仲間も振り向いて、 『ギャーーーーー!!!!』 彼らの背後には本物の黒光りする奴らが接近していた。 「さて、そろそろかなー♪」 その頃妖精っぽいものは頃合を見計らっていた。 「あのお屋敷、丁度いい場所にあるのよね〜、魔王に住まわせるのは勿体無いんだから」 一枚二枚と札束を数えつつ、彼女が呟く。そこへ本日特大の悲鳴が聞こえて、にやりと笑う彼女。 「ふふ、これであの土地は私のもの。うまくいきそうね、あそこにホテルを建てて…うふふふふv」 笑いが止まらない。調べによればあの付近は温泉も出ると噂である。 「後はご褒美をあげて、終了終了。私ってば頭いい♪」 厄介者を追い出す為の作戦――妖精っぽいものはもう済んだと思い込み、意気揚々と屋敷に向かう。そして、扉を開いて彼女を待っていたのは――。 べちょ べちょちょちょちょ 弾力のある衝撃とぬるっとした感触の洗礼…そう、勿論彼女を待っていたのは即席勇者達の罠である。 「今のはパイの分…そして次は魔王君の分だよ!!」 アーシェラがそう言って蒟蒻を振り被り、彼女に投げつける。 「俺らを利用して何考えてたのか話し貰おうかねぇ」 とこれは靖だ。 「でないと私の作った地下迷宮に放り込みます。楽しくなって彫りまくったんで、規模は相当なものですから」 どこが不気味に黒耀が牽制をかける。 「魔王とはいえまだ子供ではないか! それをあんな方法で…俺はおまえを見損なったぞ。なぁ、うさみたん」 「さぁ、まーちゃんも言って。やられたら倍返しにゃ!」 「倍返し、です!!」 魔王より先に、何故だかルースが言って扉を閉める。 「もう逃がさないから…覚悟してぇ〜」 即席勇者達の顔が怖い。 この後、妖精っぽいものが一体どうなったか知る者はいないが、怖がり魔王が暴れる事はなく世界が安定していたままであったのは言うまでもない。 |