|
■オープニング本文 ※このシナリオは【混夢】IFシナリオです。 オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。 「俺が一番だ」 「いや、俺だよー」 子供の声がする。それは幼い時の記憶――。 「お、来た。やりぃ、これ超レアだぁ」 先に取った方の男の子が満面の笑み…もう一人がそれを羨んでいる。 よくある光景だった。けれど、その何気ない光景が彼の目には焼きついている。 ここは天儀にあって天儀でない場所。 ビル群に囲まれた大地に文明の力が世界にはびこる場所…その場所で今空前のブームが巻き起こっている。 それは、最強絵札対戦と呼ばれる絵札を使った対戦型カードゲームだった。 カードに描かれた戦士を操り、相手のライフを早く削った方が勝ち――。 単純明快だからこそ奥が深い。それにこのゲームにはもう一つ、魅力がある。それは絵札の多さと美麗なイラスト。そして、何より一つ一つのカードのキャラにはそれぞれの設定がされており、お気に入りのカードを見つけるのも楽しみの一つであるのだが……ここにいるのはただの狩人。 「はっ、その程度で私に勝とうとは片腹痛いわ…」 その男は吐き捨てるようにそう言うと、相手のカードを奪い取る。 そしてその中にお目当てのものがないと知ると、徐にびりびりと破り捨てていく。 「ひ、酷い…」 敗者はバラバラになったカードを拾い集め涙した。 けれど、男は振り向きもせず、そのまま歩き去っていく。 そんな残酷なプレイヤーの名は狩狂と言った。彼が欲するもの…それは強い力のみ。デッキには強力な戦士を揃えて、常に完膚なきまでに相手を打ちのめし勝利する。何が彼をそうさせているのかは判らないが、彼の力に対する執着は相当なものだ。 そして、幾度となく勝利を繰り返した彼はやっと手にする。 (「これであれからあのカードを…」) 時は満ちたようだった。彼は奪い取ったカードを手にある男の下へと向かう。 そこには彼より年上の男――仏頂面で眉間には皺が常に刻まれ、どこか近付きにくい。だが、狩狂は臆しはしなかった。 「私を忘れたとは言わせませんよ」 彼が男に向かって静かに言う。 「誰だ? おまえが…狩狂か?」 だが、男に彼の見覚えはないらしい。眉を顰める。 「ふふ、どこまでも腹の立つ男ですね、芹内…。だが、あの時の恨み晴らさせて貰う」 けれど、狩狂は引くつもりはない。大袈裟な動作でカードを取り出し、芹内に決闘を申し込む。 そんな彼の本気の目に芹内と呼ばれた男も何かを感じ取り、 「仕方がない、訳は後で聞こう。俺もおまえを探していた」 「そうですか、それなら丁度いい…」 狩狂は飲み込みのいい相手に微笑を浮かべて、カードを構えるのだった。 【ルール】 双方の1PC(以後カードのCで記載)ずつの対戦形式 ただし、特殊能力の関与がある場合は他のCからの支援は受ける事が出来る 双方PLは8000のライフポイントを持ち、順にCを使い対戦 ライフがなくなるか、少ない方が負けとなる 【判定方法】 PC様の現在のデータを元に算出します 数値が出来るだけ均等になるように考慮し、 物理系のキャラは攻撃・防御・抵抗・命中・回避を 非物理系のキャラは知覚・防御・抵抗・命中・受防の数値の十倍を使用 (微妙な場合は数値の大きい方を使用します) まずは当たり判定を『命中vs回避/受防』で算出 入ればダメージ量を『攻撃/知覚vs防御/抵抗』で決定し、差分をライフから削ります 双方の攻守が一回終ればその対戦が終了となり、次のC同士の対戦へと移ります なお、特殊能力とトラップカードに関しては一度ずつ使用可能です |
■参加者一覧
アーニャ・ベルマン(ia5465)
22歳・女・弓
ピスケ(ib6123)
19歳・女・砲
黒嶄(ib6131)
26歳・女・砲
鴉乃宮 千理(ib9782)
21歳・女・武 |
■リプレイ本文 ●光の心と前半戦 カードも人も気持ちを持って接すれば答えてくれると芹内は思う。 仲間がいれば喜びや悲しみを共有できる。そして、カードも…少ない小遣いの中でやりくりするのは難しく、そういう時に友がいれば交換するという手段が選べるからだ。だから、今でも彼は皆に優しくする。人の為に…それはやがて自分に返ってくるからだ。だから、尚更あの男が自分を憎む理由が判らない。 俺は一体何をした? 自問が続く。 そこは倉庫の一角だった。町外れの使われなくなった場所にて二人は対峙する。 到着と同時に風が吹いた。それに浚われる様に一枚のカードが舞い上がる。そしてカードが光を宿して二人を包み込み、気付いた時には何もない場所にいた。 「我はカードの支配者もふ。このデュエル見届けさせて貰うもふ」 小さな犬のような毛玉の獣に導かれて… しかし、二人には不思議な力が働いているらしく自然と違和感を感じない。 「ここでは特別ルールでやってもらうもふ。カードはキャラ四枚、トラップ二枚の計六枚。ライフポイントは3000にするもふ」 言われるがままに二人はこくりと頷き、運命のデュエルが始まるのだった。 まずは第一ターン・狩狂。 「先行は私が頂きましょう」 手札を揃えて狩狂がくすりと笑う。 「まずはこのカードを…漆黒の砲術士・黒嶄(ib6131)をセットです」 カードを出すと同時に彼の絵札の絵が具現化し、彼らの前に出現した。 全てにおいて謎に包まれた長身筋肉質の黒嶄がマスケット構えたまま待つ。 それは普通ではあり得ないのだが、そこは毛玉の力なのだろう。二人は当然の如く振舞っている。 それを見取って芹内が選んだのは一人の執事だった。 「ジルベリアの陰陽師でありベルマン家の執事、アルセニーと申します。どうぞお見知りおきを」 寡黙な黒嶄に対して、あちらは礼儀正しく一礼して見せるあたりプレーヤーの性格が反映されたかのようだ。 はっ、あれで何が出来る? 人当たりのいい軟弱男にしか見えんな。 「構わん、やってしまえ」 「はい」 狩狂の一声に黒嶄が動き出した。 (「射程、照準ともに良好。いける!」) 彼女はそう判断しトリガーを引く。すると銃口から飛び出した弾丸は執事の肩を捕らえ、勢いをそのまま芹内のライフを削る。 「やりましたね、それでは私も遠慮しません!」 それに答えるように今度は執事のターン。素早く起き上がると、彼女を狙い護符の嵐。だが、 「トラップカード発動! 来なさい、破戒僧!!」 狩狂は惜しむことなく『寺育ちの友人Sさん』を発動し打ち消しにかかる。 「破ぁー!」 青白い精霊が黒嶄の前で声を発した。それと同時にダイス判定により命中か攻撃かの半減が決定される。 「さぁ、どっちでしょうか?」 狙うは命中…だが、 「ちっ」 出た目は偶数だった。護符の進路を多少妨害したのみだ。それでも通常ならポイント差は2390――半減していなかったらと息を呑む。 結果――残りライフは、狩狂2760、芹内2525…。 もしトラップがなかったら…やはり一筋縄ではいきませんか…。 狩狂はそう思いつつ、黒嶄をフィールドから下がらせた。 第二ターン・芹内。 さっきの戦闘を受けて、芹内は淡々と場にカードを出す。 運命の四枚…彼の引きはなかなかのものだったらしい。 手札に残るカードを見つめて芹内は嬉しく思う。 「ほう、天下の芹内様が真似のつもりか?」 だが、そんな奇跡を味わう暇さえ狩狂は与えてはくれないようだ。彼の言葉に視線を上げざる負えない。 「マレシートだ。そこの彼女とはまた違う」 ちらりと黒嶄を見取って彼は言う。彼が出したカード…それは真っ黒の井出達の女銃士だった。 確かに黒を好む点では黒嶄に似ているかもしれない。しかし彼女は黒の皮鎧に狩人の外套で身を固めて、シルエットはまるで十字架の様にも見える細身だ。例え似ていたとしても性格はまるで違う。 「ふふふ、まぁいいでしょう。貴方がそのつもりなら私にも考えがある」 にやりと笑って狩狂が出したのは一人の弓術師。 「アーニャ様っ!!」 その姿を見取って、芹内のアルセニーが言葉した。 「いけてるスナイパー、アーニャ・ベルマン(ia5465)参上! あなたの全てを射抜きます♪」 ぱちりとウインクをして見せてポーズを決める彼女は、何を隠そう彼が仕える家のお嬢様に当たる設定なのだ。 「やほー、タナカさん。私こっちなんで」 手をぶんぶん振って能天気に答える彼女に頭を抱える執事。 「無駄口不要だ」 そんな彼女を狩狂が注意する。 「ちっ、困ったわね…これでは不利よ」 そんな中でマレシートが小さく呟く。 ポイント差は圧倒的――これでは彼女の攻撃は通らない。 「案ずるな、俺を信じろ」 だが、芹内の言葉を受けて彼女が攻撃に入る。 「当たらない…って、ええ!!」 そういいかけたアーニャだったが、気付けば足元には冷気が迫り、そしていきなり彼女の足を凍結させる。 「トラップ・ジルベリアの永久凍土発動! おまえの能力下げさせて貰う」 魔槍砲充填のその間に芹内が彼女の助太刀に入ったらしい。相手の回避を半減させる。 「ヤダー、ちょっとまずいって」 縋るように狩狂を見るが、彼は動かない。 「暑い夏にちょうどいいじゃありませんか。少し涼んではいかがですか?」 執事からそんな言葉を貰いつつ、魔槍砲の攻撃を受ける羽目となる。 「ムキー、タナカさん! 覚えてなさいです! お父様に報告しちゃいますからね」 「…はっ、旦那様へ報告!? しかしこれも勝負でありまして…」 どーんと派手な音を立てて…出身がベルマン家でありジルベリアになる為、減少は三割に留まったが回避には至らない。 閃光がアーニャをかすり、再びダメージが加算される。 「へぇ、じゃじゃ馬さんは逃げるのがお上手ね」 ふうと息を吐き出しマレシートが呟いた。それにアーニャが過剰反応する。 「むむむ…だから何ですか? じゃじゃ馬だから結婚出来ないとでも…? 実年齢=彼氏いない暦で何が悪いんですかー!」 と半ばどうしてそうなった状態で逆切れし弓を乱射。それにはマレシートも小さな悲鳴を上げて――ターンエンド。 お互いがトラップカード一枚を消費し、現在…狩狂2105、芹内1960…。 ●後半戦と動き出した時間 第三ターン・狩狂。 彼は再び砲術士で挑む。 「いきなさい、ピスケ(ib6123)」 黒嶄と対になっているかのような白スーツの眼鏡銃士。彼女は大事そうに相棒である魔槍砲『アクケルテ』を抱えている。 私のカードは攻撃力3770の破壊力、命中率も2000オーバー…彼女が止められる事などありえない。 確信に満ちた表情でピスケと共にも相手の出方を待つ。 それに対抗し芹内が出したのは銃を手にした戦士の黄霖だった。 鷹の羽を用いて作られた白色の皮鎧に毛皮の外套を纏っている。 「もう手詰まりですか?」 その能力を見取って狩狂は嘲笑うようにいい、攻撃を開始させる。それを二人は受けるしかなかった。 「きゃあああ!!」 黄霖の悲鳴と共にライフを1720削られる芹内。 「もがく事も出来ないとは哀れですねぇ」 それでいい、もっとこの男に屈辱を…あの頃味わったそれをと心が語りかける。 「まだだ。俺の…いや、黄霖の攻撃が残っている。黄霖にマレシートの特殊技を発動し攻撃だ」 よろけた黄霖を支えて彼が言う。だが、 「それは出来ません、芹内。ここにはあの方がいない」 そう彼女の技には大きな欠点があった。それはあるカードが場に存在していないと発動しないのだ。 「仕方ない…黄霖単独でアタックする」 上乗せはできないが、彼女の射撃は正確だった。鳥銃『遠雷』から放たれる弾を受け、ライフは狩狂915、芹内240の痛み訳な結果となる。 いけるか、このカードで…狩狂は手に残ったカードを見つめ、そう呟いた。 最終ターン・芹内。 最後に残しておいたのは間違いだったか? 芹内の脳裏にそんな言葉が過ったが、彼はそれを振り払う。 「やはり持っていましたか…」 そして出したのは紅き美貌の女剣士・フレイだった。 カードはきっと答えてくれる…大事にすればするほど…絆が生まれるもの。 芹内はそう信じてここまでやってきたのだ。 「ベルマン家長女、フレイ・ベルマンよ。さあ、ダンスの相手は誰かしら?」 凛とした中にも優雅な振る舞いで自称『大輪の紅き薔薇』が大剣を構える。 「いでよ、鴉乃宮千理(ib9782)」 そこで狩狂が呼び出したのはなんと旅好き烏獣人の破戒僧だった。 カードだというのに口には何か入っている様でころころと転がしている動作が見受けられる。 「ふざけないで欲しいわね」 フレイの言葉――しかし、千理は聞く耳を持たない。菓子があれば満足と言った雰囲気を漂わせている。 そこでフレイが先に動いた。自身の身長を越える剣を握り、大振りで暴風のような攻撃を繰り出し千理に迫る。 「ピスケの特殊技を発動! 命に代えても食い止めろ」 ピスケの火炎放射で狩狂はフレイの攻撃力を削ぐつもりだ。 「判定成功、よし燃えなさい!!」 フィールドからは光の玉が飛び出して、眩い光と共に轟音を轟かせフレイを襲う。剣を振り翳して、消そうとする彼女であるがそれも追いつかない。 「ふふ、くわばらくわばら」 そう言って千理はピスケの後ろに回り込む。だが、 「はぁぁぁぁぁ!!」 消すのが無理と悟ったフレイが跳躍し、彼女に向かって剣を振り下ろして――そこで芹内のターンは終了した。 「…っ、届かなかったか」 狩狂のライフは残り115。ここで決めたかったが仕方がない。 そして、狩狂のラストターン。千理の攻撃――だが、ポイント差は明らかだ。 普通に考えれば問題なく凌げる筈だ。だが、相手が狩狂である為油断は出来ない。 「くく、くしくも姉妹対決とはな。いけ、私の勝利の為に…特殊技・消える魔矢発動!」 狩狂がアーニャに攻撃を命ずる。 「たとえお姉でも、避けられるものなら避けてみなさいよ…です」 少し弱腰ではあるが、彼女が矢を放つ。実はこの技・初期設定では相手の回避・防受を無効化する効果だったのだが、ゲームバランスの調整で三割減に抑えられてしまった過去を持っている。 「いいわ、かかってらっしゃい!」 「ダイス判定成功! いっけー!」 アーニャの言葉に一瞬空気が揺れ、矢の存在が消失した。 「ならばこちらも」 「フレイ様を傷付けることは私が許しません!」 コールする前にアルセニーが動く。 「アルセニーの特殊技・忠誠を誓う壁を発動…判定」 だが、天は彼らを見放した。守りは届かず、ざくりと刺さる矢にアレセニーの顔に狂気が宿る。 しかし、狩狂サイドの攻撃は続かなかった。ポイントを落としても千理の能力では届かなかったのだ。 「旅が一番、菓子も一番…」 錫杖でてしてし叩くがまるでフレイに効果はない。 そこでデュエルは決着した。芹内のライフは変動なしの240。狩狂ががくりと膝をつく。 「おや、喧嘩はいかんな諸君。ちゃんと仲直りするのだよ?」 ――とカード内では何やら説得らしきものが始まっている。 「俺の勝ちだな、話を聞かせてもらおう」 芹内もそれを見取り、狩狂に近付く。 「もういらぬ…こんな役立たずどもなど…」 だが、彼の様子は明らかにおかしかった。 引き裂くつもりだった。けれど、どうしても力が入れられない。 「やめろ!!」 そこへ芹内が割って入り、カードを奪い取っていく。 「大事なカードをそんな風に扱うもんじゃない!」 その言葉が頭に響いた。わかっている…だからこそ腹が立つのだ。 何も知らないで全てを持っているおまえから、そんな言葉は許さない。 「…おまえのその口で言うと虫唾が走る!」 感情を露にし、狩狂は芹内を睨み返す。そこで芹内のカードがはらりと落ちた。そのカードを目に狩狂ははっとする。同じだった…自分が手にしているカードと同様に使い込まれ、年季が入っていたのだ。 「聞いていいだろうか? なぜおまえは俺を恨むのかを」 そう聞かれて、狩狂は我に返るとぼそりぼそりとと呟くように話し始める。 「あの時、おまえが先にあの店で買わなければ俺はあのレアカードを手に出来たんだ」 「は?」 彼の言葉に芹内が首を傾げる。 「忘れたとは言わさん。小学三年の夏の暑い日だった。貧乏だった俺がやっとの思いで小遣いを集めて駄菓子屋に行ったんだ。そして、アイスを我慢してまで買おうと思っていた最後のカードパックをおまえは横からねこばばしたんだ。しかも最後の二袋全部…おかげで俺はあの後一ヶ月も入荷待ちをさせられた挙句、新しいバージョンにはそのカードが入っていなくなった事を知った…わかるか、このくやしさを。おまえは裕福だったようだが俺は違う。どれだけ楽しみにしていたと思う…そう、あのカード…最強破壊神モフ・ラーのカードを」 そう捲くし立てる様に言った彼に芹内は呆気にとられているようだ。 あぁあぁ、そうだろうとも。こいつにとってはその程度の事なのだろう。 止まってしまった彼をさておき、狩狂はさっきの毛玉な獣を思い出す。 「そういえば、さっきのあいつは?」 あの毛玉生物……あれは確かモフ・ラーの進化前の姿ではなかったか? その事を思い出して辺りに視線を向けるが、もうそれもカードの戦士達の姿はなく、静まり返った倉庫だけが広がっている。 「狩狂、あのカードが欲しいのならもう一度ちゃんとデュエルしないか?」 そこへ芹内がが笑いかけた。気持ち悪いほど爽やかな笑顔に狩狂は思わず警戒する。 「な、なんのつもりだ。俺は他にも山ほどおまえには言いたい事があるんだ。おまえは気付いていなかったと思うが、ずーーーと同じ学校の同じクラスだった。そしてある時は最後の焼きそばパンを取られ、またある時は最後のメロンパンを…」 「同じクラス?」 彼がその言葉を反芻する。やっぱりこいつは俺の事を覚えていなかったらしい。だが、暫くすると思い当たる節を見つけたようで、 「まさかおまえ、本名はや…」 「あぁぁぁ、言うな! 俺はもうその名前は捨てたんだ!!」 突然の言葉に狩狂は慌てて大声を出した。 しかし、嬉しくも思う。影が薄かったのは認める。だから覚えていないとばかり思っていた。そして、カードについても…あれを見ればくやしいが、奴がどのようなデュエルを繰り返していたのかがわかる。 「なんだ、そんなに縁があったのか。ならばこれからは友達として付き合っていこう」 「んなっ!?」 友達だと――これまでにそんなものを作った覚えはない狩狂は対処に困る。 子供のようにわたわたして、これではかなり情けない。 「なぜ俺がおまえなんかと付き合わなければならないんだ! 訳が判らん!!」 動揺してそういう彼だったが、心のどこかのわだかまりが解けて――何かが変わっていくようなそんな予感が広がっていた。 |