愛で(めで)分求ム!
マスター名:長谷 宴
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: やや易
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2009/09/23 20:25



■オープニング本文

「あー、『愛で』分が足りない。パッションが湧いてこないーっ!」
「俺にどうしろって言うんだよそれを‥‥」
 久々に食事に誘われてみればこれである。俺、名乗るほどではないギルド係員(24歳 男)は、同席する幼馴染‥‥っつーか腐れ縁の女の言葉にため息を返すしかない。
「アンタ開拓者ギルドに務めてるんでしょ? 何か私が『愛でー!』ってなるようなコの話とか、そういうのしなさいよ! ついでにアタシんところに引っ張ってきなさい!」
「無茶言うなよ‥‥っていうか『愛で』って何だよ‥‥愛でるをそんな使いか足してる奴に会ったの初めてだよ‥‥」
「わっかんないかなー? 愛でよ愛で! 見た瞬間とか取った行動に思わず愛でー、と感じることぐらいあるでしょう? それよそれ」
 いや分かんねぇよだから聞き返してんだよってか安易に新しい言葉を作るな!
「相変わらず頭だけは固い奴ねーそこから下は全然駄目なくせに! 分かった、特別に実例で話してあげるわ! この前仕事でちっちゃなコにあったんだけどね」
「おい待てそれ危ない話じゃないよな? まさかお前やっちゃた? 略取しちゃった?!」
 さらっと危ないことをいうなってかそのせいで『そこから下』について問いただす機会逃したじゃねえかこんチクショウ!
「はぁ、何でそうなるわけ? 普通に本業よ本業。造形のね。それでなんだか凄く可愛くて幼い子がいて愛でメーター振り切れて辛抱たまらなくなったんでとりあえず抱きついたんだけど」
「お前とりあえずの意味分かってる?」
「わかってるわよとりあえずアンタ黙れ」
 お、本当だ。
「それでね、すっごく愛で愛でしたんでモデル、いや心に焼き付けるから貴女をアタシのモノにする許可頂戴って言ったんだけど」
「誰か、誰かここに危険人物がいまぐぼぉあふぉう!?」
 強制的に黙らされた! 平気で拳を使いやがった!
「断られちゃってねー、で、よく聞いてみたらそのコ絵描きで開拓者らしくて」
 ん、どっかで聞いた話だな。最近先輩の職員が話してたような。
「これは開拓者ブーム始まったなと」
「ごめん、さっぱり分からない! お前が何を求め何所へ向かいどうしたいのかがさっぱり伝わってこない!」
 人がお前の感覚と考え方分かってるって前提で話すんじゃねえよっていうかそこで怪訝な顔すんな! 俺か、理解できない俺が悪いのか!?
「あれよ、開拓者ってまずやってることも格好いいし年齢性別の制限が実質無いじゃない。しかも、考え方もアンタみたいな堅物じゃなくて柔軟な人も多いでしょ。だから開拓者の話聞けばパッション湧くと思うのよ。創作意欲と愛でに満たされることが出来ると思ってわざわざアンタに食事奢らせてあげてるの、分かった?」
 さっぱり分かりません、先生! 言ってることからお前が最近人気出てきた理由、そしていつのまにかこの食事が俺の奢りになっていること、全て綺麗さっぱり分からなくて開いた口が塞がりません!
「いや、うんまあ俺をわざわざ呼んだってのは分かったけど‥‥造形ってそんな開拓者モデルにして成り立つものだっけ?」
「まったく、幼馴染の仕事ぶりぐらいしっかりチェックしておきなさいよ! ほら、これ最近の作品。こっちが世の少女からご婦人に人気の美青年人形、こっちが男子諸君に人気の美女人形」
「うわっ、細かいなコレ‥‥よくこのサイズで造り込めるな‥‥っつーかよく見るとこれ独特なタッチ? 描き方? してんな‥‥目とか特徴的な部分を強調してるというか。男の方はキリっとしてるけど暑苦しくないし‥‥なんだろう麗しい?」
「だからそれが愛での結果よ愛での」
 間違いなくリアルではないが、抽象的というわけでもない。これがコイツの愛でフィルターとやらを通してみた結果なんだろうか。従来の『可愛い』や『好き』『愛している』とはまた違うものが込められているのは伝わってくる。
「そんで、こっちが趣味で作った美少女人形。超自信作! さっき話したランちゃんがモデル!」
「お前さっき断られたって言ったよね!?」
 さらに幼げな少女の人形が机の上に。なんだろう、強調とか簡素化されて実際の人間と違うのは分かっているんだけど、それでもこれを人形として所有することに背徳的な何かを感じてしまう。っていうか若い男女が食事処で顔つき合わせて何やってるのんだろうね? 本当に‥‥。最初、おう、いいカラダしてる上に肌の露出が多いねーちゃんがきたー! と歓喜を隠し切れなかった隣の机の人なんてもう全力で目を逸らしてるよ‥‥。



「へぇ、それがその顔の傷と今している仕事の理由なんですか、先輩」
「うん、何で俺奢らされた挙句アイツの依頼書までせっせと書いてるんだろうね‥‥すっごい大変なんだよ? アイツ『愛で要素大募集!』『愛でについて語れる心友大募集!』とだけ書いて俺に渡すんだもん‥‥」
 明くる日、ギルドにはせっせと仕事に打ち込む俺の姿が。理穴の方で不穏な動きの兆しが、という報告がある中ですっごく肩身が狭く、視線が痛い。何、俺のせい? 俺が悪いの? と卑屈になりそうな心を、後輩の受付ちゃんと話すことで何とか癒しながら保っているギリギリな状況。
「でも、楽しそうじゃないですか! 私も時々開拓者の皆さん見てると『愛でー』って感じますし!」
 ‥‥あれ?
「っていうか先輩、件の先生と幼馴染だなんて羨ましいなぁ。今度、私にも紹介してくださいよ。心友って別に開拓者限定じゃないんですよね? ってあれ? 先輩? せんぱーい?」


■参加者一覧
斎賀・東雲(ia0101
18歳・男・陰
雪ノ下 真沙羅(ia0224
18歳・女・志
虚空(ia0945
15歳・男・志
王禄丸(ia1236
34歳・男・シ
雷華 愛弓(ia1901
20歳・女・巫
水月(ia2566
10歳・女・吟
夏目・セレイ(ia4385
26歳・男・陰
水無月藍(ia4409
12歳・女・陰


■リプレイ本文

「ぎゃーかわいい! マジ『愛で』なんですけど!? ねえ、このまま持ち帰っていい? ――ってここ私の家だよ何処に持ち帰んのさ!?」
 尋ねた早々、これである。目に付くや否や水月(ia2566)と水無月藍(ia4409)を抱きしめる依頼人を見て、単純に面白そうだからとこの依頼を受けた斎賀・東雲(ia0101)はその選択の正解を確信する。一方、捕食されるような勢いで抱きつかれた二人。水月は流石に驚き、抱きしめられたその時は身体をびくっとさせたものの、その後乱暴に抱きしめるのでもなくぎゅっとされるのに警戒は解き、挨拶する機会を逃したことを気にしつつ身を委ねる。藍は、まあこれも楽しいと思いとりあえず依頼人の愛で行為を甘んじて受けることにした。
「あーマジ幸せ。ギルドに頼んでよかったぁ‥‥って他にも逸材ぞろいだった! っとこうしちゃいられないわね、ささ、上がって上がって」
 さて、このまま完結してしまいそうな依頼人に開拓者たちはどう声をかけたものか、と躊躇していたがふと目をやった依頼人は後ろに控える面子にも目を輝かせた。何か他にも琴線に引っかかるものがあったのだろう。意気揚々と開拓者を案内する――二人を抱えたままで。これが所謂愛で場の馬鹿力である。ここまでのやり取りを見て、虚空(ia0945)はギルドを出たとき、担当の係員とのやりとりを思い出していた。「‥‥お疲れ様です」といった時の彼の顔。戦闘依頼と並ぶほどの不穏当さを感じたのは、間違っていなかったようだ。


「あー、びっくりさせちゃった? ゴメンねー」
 奥に通された開拓者達は、依頼人の仕事場――人形制作の場で思わず視線があちこちに引かれてしまう。あちこちにある今まで見たことの無い傾向の人形に、制作途中のものや、あまり馴染みの無い道具に目移りしてしまう。もっとも、依頼人もそんな様子を特に気にするわけでもなかったが。あまり人を招くことが無い場所であるからこういった反応も楽しみだったのかもしれないし、膝の上で水月をなでなでしているからかもしれない。ちなみに水月の頭には何故か猫耳が装備されていたりして、元々猫っぽい彼女はなおさらその要素を増している。依頼人も満足気で、その装備の選択が間違っていなかった様子に、王禄丸(ia1236)へアイコンタクトを取りお礼。どうやら牛面という異装の出で立ちの彼の助言が背景にあるようだ。いい仕事である。
「いやーちょっと驚きましたけど構いまへんって。むしろ感動しました、師匠と呼んでもええですか!?」
「おう、いきなりなご要望だね! ちゃんと私をそう呼ぶだけの愛でへのこだわりはあるのかな、弟子よ?」
 そんな様子の依頼人が期待通りだったのか、早速弟子入り? を申し出る東雲に、気さくに応じる依頼人。これが口火になり、自己紹介もそこそこに愛で論議が始まるのであった。


●愛で論議〜定義編〜
「師匠、『愛で』と『萌え』に違いはあるんですやろか? 能動的かどうかによるっていう話もあるみたいやけど」
「あー、そういう表現を使う人、私のお客さんにもいるねー。まあ、自分の中で生じた感情と言葉とが結びついていると感じるならそれでいいと思うわよー? 私は愛で以外は使わないから差異は意識したこと無いし、自分の行動はめでによるものだって納得してるしねー」
 東雲の質問に、笑って答える依頼人。自分が愛でだと感じたんだから愛で、という至極単純明快な理由らしい。そういう意味では
「うーん、なるほど。やっぱり臆せず自分の感じたままのパッソン(意味:情熱)に従うのが大事なんやなぁ、感動した!」
 と、東雲の感想も間違っていないし、藍も、
「うむ、その気持ちなら大いに分るのじゃ。わしも可愛い少年なぞを見るとつい撫でくり回したくなるものじゃ」
 と同意する。
「ふうむ、なるほど。そう定義で使ってらっしゃるのですか。――しかし私は、敢えてここで自分の愛でについて語らせてもらいます。調和とギャップにこそ、愛ではあるのではないか、と」
 そんなやりとりに、今度は夏目・セレイ(ia4385)が加わった。その言葉にニヤリ、と笑い依頼人は。
「おぅ、いーわねー。そーゆーの待ってたのよ、ささ、個人的なものまで語って語って!」
 そう、楽しそうに、待ちきれ無そうに、嬉しそうに促した。


●愛で論議〜好み編〜
「――つまり、外見とそこからにじみ出る性格が調和、もしくはギャップを生み出した時に、そこに愛でが生まれるのではないかと。ギャップは、大仰な、時代がかった喋り方をする幼女であったり、子供のままのような大人であったりと、外見から受ける印象を性格――言動がいい意味で覆してくれる意外性。逆に調和は、期待通りの、予想を裏切らないありのままの魅力。勿論、異論反論はありましょうが」
 そう、セレイは自分の考えを説明し、その上で俺は幼児体型のおっとり系で家庭的な子が好み、異論反論は受け付けません! と締め括った。彼の考え方で言えば調和とギャップの複合系でも言うところだろうか? 
「ううん、なるほどね、ギャップって言うのは特に良く分かるわよ。アタシも前に会った開拓者の子はちっこいけれど難しい喋り方考え方するし、その癖子供っぽいところも十分に残ってたし。あと、異形の仮面をとればイケメンだった――みたいなのもそうかしらね?」
 そういって依頼人が視線を向ける先には一人の開拓者。その視線には何か気体の色が混じっている気がしないでもなかったが、気にしていない、気付いていない様子で牛面の異装でいる大男、王禄丸は大きく頷いた。
「ギャップと調和、確かにそれは愛でには重要な要素であることは間違いない。だが、私にとってのそれとはイコールでは無いな。私にとっての愛で要素、それは『ホラー』と『クリーチャー』。ちょっとしたホラー要素を混ぜれば魅力が増すのは当然のこと、全面クリーチャーだと最早どこをとっても愛で要素しかない」
「え、えっと‥‥ほらーとくりーちゃー‥‥?」
 殆どの人間が怪訝な表情を示す中、特に愛でについて語るのでなく教えてもらおうと思っていた側、雪ノ下 真沙羅(ia0224)などの当惑は特に深い。
「鉤爪、素晴らしい。外骨格、最高だ。人間、誰だって怪光線を口から出したいものだ。古人も歌ったではないか、『翼をください』と。古来より人がクリーチャーに憧れる証左だ」
 そうかあ‥‥? と今一腑に落ちない開拓者たちだが、依頼人はそうでもなかったようだ。共感はしていないが納得はしている、という風情。
「あー、確かに、同業者にも結構ホラーというかクリーチャー気味の造形で人気を博してる人もいるわね。――まあ、自分でそういう要素のものを愛でるかどうかともかく、鉤爪とかの異形に憧れるのは分からないでも無いわね」
 そう、考え込むように、思いをめぐらせるようしながら王禄丸の愛での感想を語った。無論、いまだその膝の上には「‥‥これでちゃんとお仕事になってるのかな?」と健気な心配をしつつ、その快い抱かれ心地に満足している水月がいるのは言うまでも無い。


「そうか‥‥やっぱりみんな有機物に、愛で、か」
 愛でについて喧々諤々の議論が交わされている横で、虚空は許可を取って依頼人の仕事場で作品を眺めていた。彼にとっての愛では細かなモノ。小さく精緻な細工物、といったところだろうか。何となく、大きなモノは気が引けてしまうといった理由もある。
 しかし実際の生物などへの愛でには縁遠い虚空だが、あちらの談義に興味が無いというわけではなかった。そちらにも意識は向けていた。自分で無い考え方は、興味深いから。ついでに言えば、依頼の本筋から離れて動いているのも、依頼への興味が薄いのではなく、そちらは十分間に合うだろうとの判断の上。それにこの後、依頼人に職人としての仕事への想いを尋ねたことが彼女には思わぬいい影響として出たりすることとなったりと、決して悪くは無い行動となっているのだった。


●愛で論議〜実戦編〜
「え、えっと、皆さんの愛で論議、とても勉強になりました‥‥それで、一つお尋ねしたいことが‥‥あるのですけど」
 議論が落ち着いたのを見計らって、おずおずと切り出したのは真沙羅。
「何でも、知人曰く、私のような者にも‥‥その、愛でを感じうるかも‥‥と、言われたので‥‥その辺を、確かめて‥‥皆さんに判断していただきたいので‥‥わ、私のような者で宜しければ‥‥な、何でも御協力致しますので、宜しくお願い致しますっ!」
 そう言って、勢い良くお辞儀した拍子に、何かが、紐のようなものが切れる音――ぶちっ、と。
「‥‥え、えっ?」
 それは、真沙羅の着物の襟元を留めていたもの、だった。ただでさえ目立つその、豊かな、見る者を惹き付ける、溢れんばかりのその胸が抑えつけるものを一つ無くし、より自己主張を強くする。それは真沙羅が、狼狽し、取り乱すのに十分な出来事だったが、しかし彼女がそのためだけに混乱することは無かった。そのゆれる双丘、無垢なる麗丘を押さえつける手が背後から伸ばされたからだ。
「雪ノ下さんは、私の解釈に寄ればとても愛でですよ♪ ‥‥おお、こ、これは」
 雷華 愛弓(ia1901)だった。揉んでおきながら、その予想以上の感触に、続ける言葉を知らないようだ。最も、真沙羅は突然の事態に言葉を発せ無いようだが。まあ、突然じゃなくてもあまり変わらないだろうが。
「こ、これは何と脅威の愛で戦闘力! 感触、表情共に一級です、さ、早くこちらへ」
 そう言って、依頼人を誘導する愛弓だった。この後の推移については、満足気な依頼人と愛弓、息を切らせ胸元を抱え込むようにして座り込む真沙羅の姿が残った、とだけ記しておこう。まあ、真沙羅の疑問も解消されたし良い結果といえるのではないか、多分‥‥。
 また、この後水月が愛弓のターゲットになり彼女言うところの「だきゅすり」が、行われた。とりあえず彼女の持ち帰りは未然に防がれたし、水月も乱暴に扱われなければ抱かれたり撫でられたりするのは好きなので、こちらも問題には、発展せず。


●人形編
・対水無月藍
「最近噂で聞く『きゃすとおふ』とやらを仕込んでも構わんぞ?」
「あー、さしもの私も、モデルにしてる女の子に言われるとコレまでの自分の行いを省みずにはいられないわねー‥‥」
 一人前にポーズをとる藍の発した言葉に、依頼人も苦笑を隠しきれないようだ。だが、藍はさほど気にした様子もなく続ける。
「そうか、気にすることの程でも無いと思うぞ? 作品を見た男たちの反応を想像するのもまた楽しいし‥‥の」
「これが外見と発言のギャップというやつね‥‥」

・対王禄丸
「その面の下は無し?」
「ああ、素顔を晒すの無しだ。下にあるなら覆面ならいいぞ」
「期待して外した人には衝撃の展開ね。オチがついていいけど」
「下をもっと恐ろしいものにするという方法もあるだろう。恐怖の要素は魅力を感じさせ、人を惹きつけ、愛させるのだよ」
「別の名義でなら試みたいわね、それ?」
 依頼人の愛での守備範囲には、今一ひっかからなかったが、一職人、一商売人としてためになる話ではあったようだ。

・対斎賀・東雲
「‥‥やはり、これしかあらへんな」
「思いつめた顔してどうしたの、新弟子ー?」
「やはりこれだけ個性溢れる面子の中で俺が愛で対象になるには、脱ぐしかあらへんかなー、と」
「その決意にいたる思考回路は師匠として評価するけどそこから先は依頼人として止めておくわー」
 東雲、未遂に終わる。

・対虚空
「せぇるすぽいんと、あるかな? というか、俺、わざわざ必要かな?」
「そうでもないわねー、結構あるわよ、貴方のいいところ。ただ、その魅力は静にあるだけにむしろアタシの方にかかってくるわねー」
「ふぅん? ‥‥例えば?」
「んー、人形に表すには難しいその雰囲気というか、言動?」
 動かないものだけに、動きでの表現に依ってしまうらしい。

・対雪ノ下 真沙羅
「うーん、あの弾力はどうやって、何を使えば‥‥」
「わ、忘れてください‥‥」
 あの直後、モデルやれというには微妙に酷な状況である。依頼人は依頼人で感触を思い出すように何度も揉んだ時の動作繰り返すし。

・対水月
「‥‥‥‥‥‥」
 静かな寝息を立てる水月。微笑ましく見守る依頼人。
「あー、記憶がこの光景だけで埋まっちゃいそ。愛で死ぬ」
 まあ、分からんでも無い。依頼人は、この光景を心に深く刻み込んだ!

・対夏目・セレイ
「‥‥いいでしょう、俺に愛でを見出すことができるかどうかはわかりませんが、精一杯協力することを約束いたしましょう。どんなポーズでも、しぐさでも、叫びでも」 
「‥‥これ、ハードル上げられたのは実はアタシか!?」

・対雷華 愛弓
「んー、やはり人形制作は奥が深い、人形師愛弓の名を天下に轟かせるのはまだまだ先になりそうですねー。でも何時の日か素敵な愛で人形を作りますよ♪ 目指せギルドでの愛で人形販売!」
「依頼料を払って商売敵を生んでしまったのね、アタシは!? ‥‥ま、世に愛でるモノが増えて困るわけもなし、期待してるわね」


 簡単に報告すれば、こんな具合だ。もしかしたら、今回のモデル中から好評を博す人形が生み出されるかもしれないが、それはまた別の話である。ついでにいうと、愛弓の手帳に真沙羅の‥‥そのなんだ、一つの魅力について重点的に記された項ができたのかもしれないが、それも今回言及する話では無い‥‥と信じたいなぁ。
 そんなわけで、駄弁系とも討論系とも言えるこの珍しい依頼、依頼人も開拓者もそれぞれ程度の差こそあれ満足し、一先ず閉幕である。