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■オープニング本文 ●天儀暦1036年 時の陰殻国王が「天荒黒蝕を討伐せよ」との号令を出し、天狗軍団との全面戦争に仕掛けてから、およそ二ヶ月が経過した。 悠久の時を退屈に過ごす天荒黒蝕にとっては久々の遊戯となったが、国王や四天王によって練りに練られた策略が次々に展開されると、その度に天狗らは窮地へと追い込まれる。奇襲や急襲による兵力の減少はもちろん、魔の森の焼き討ちまで仕掛けられ、あの天荒黒蝕でさえ満足に瘴気を吸うことすらできない。 そこへ東房国の王・時雨慈千糸が一軍を率いて、西進を開始。天荒黒蝕は東西から挟撃を受け、その命運は尽きたかのように思われた。 しかし、彼も黙ってはおらず、かつて護大派に楯突いた時の巨大な姿をあらわにし、両方の軍に多大な損害を与える。 一時は戦況がひっくり返るかとも思われたが、先に切り札を抜いた天荒黒蝕が有利になるはずもない。結局は敵にある程度の被害しか生むことができず、後攻めを請け負った東房国の援軍に兵の大半を叩かれ、自らも開拓者に傷つけられ、黒い嵐はついに元の姿へと戻った。 「くっ、フフフ……も、もはや、あの姿には戻れないよう、だね……」 天荒黒蝕は傷を押さえながらも腹心の硬磁らを引き連れ、安息の一時を求めて飛び回るが、陰殻のシノビが魔の森のあちこちに火をつけており、もはや逃げ場はないように思われた。 だが、まだ手の及ばぬ場所が残されている。天荒黒蝕はそこを目指し、ひたすらに飛んだ。その間、彼はずっと微笑んでいたという。 天狗らがその場所に降り立とうとしたその時、足元に矢が突き刺さった。 「わかってたよ、それくらい……君たちは酔狂だねぇ。そんなに僕の散り際が見たいのかい?」 アヤカシの目の前に、開拓者が立ち塞がる。そう、これこそが正真正銘……最後の一手。 「申し訳ないんだけど、今は本来の姿では相手できない。だけど、大人しく倒されるつもりもないんだ。君たちから恐怖の感情を吸い取って、最高の糧にすることしか考えてない」 天狗の首魁がそう語ると、突然として周囲に炎が立ち昇った。異形の森は熱に歪み、その風景を飲み込んでいく。 「天荒様、いかがなさいますか?」 硬磁の問いに、主は答えた。 「生意気な連中を生きたまま食らう。それだけだよ……フフフ」 炎に閉ざされたこの地で、天荒黒蝕との長き因縁は決着するのか。それともまた彼は逃げ延びるのか。 |
■参加者一覧
羅喉丸(ia0347)
22歳・男・泰
シュラハトリア・M(ia0352)
10歳・女・陰
柚乃(ia0638)
17歳・女・巫
フレイア(ib0257)
28歳・女・魔
フランヴェル・ギーベリ(ib5897)
20歳・女・サ
ルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)
10歳・女・砲
ケイウス=アルカーム(ib7387)
23歳・男・吟
星芒(ib9755)
17歳・女・武
麗空(ic0129)
12歳・男・志
結咲(ic0181)
12歳・女・武 |
■リプレイ本文 ● 天荒黒蝕の前に、共に平地で混乱を起こす際の誘いを待っていた女性が立ち塞がる。 21年の時を経てもなお、あの時の姿を保ったシュラハトリア・M(ia0352)だ。あの日の彼女は、八咫烏の上に立っていた。 「えへへぇ、天荒おにぃちゃぁん♪ お約束ぅ、守ってくれなかったからぁ……来ちゃった♪」 あの日から今へ飛び越えたかのような姿を見て、天荒は呆れ顔で「キミ、人間だよね?」と呟いた。 「ならば、俺を覚えているか。天荒黒蝕」 今も修練の宿る体で馳せ参じたのは、泰拳士の羅喉丸(ia0347)。老いへの抗いか、それとも執念か。怨敵の前に立つのは彼一人。 「まさかキミひとりで、この僕の相手をするのかい?」 「かつても今も、この距離は変わらない。ただ申し訳ないが、年のせいで全盛期の力では相手できない。だが、大人しく倒されるつもりもない。修練の成果を示し、因縁に決着をつけることしか考えていない」 ふたりの顔を見て「魅入られてるね」と笑みを浮かべると、天荒は素手で構えを取った。黒翼は出ていない。 「さぁ、楽しんでみるかい?」 まるで「油断すれば死ぬよ?」とでも言いたげな表情で、敵は開拓者の仕掛けを待った。 ● それを合図に、硬磁率いる天狗が宙を舞い、前へと出る。 とはいえ、主君に挑む羅喉丸は無視し、奥に陣取る邪魔者の排除を狙った。後衛の前に立つフランヴェル・ギーベリ(ib5897)に対し、天狗どもは棒術を仕掛ける。 「子猫ちゃんたちを悲しませるわけにはいかないからね」 二天を駆使して殲刀を片手で持ち、盾で攻撃を往なす。もし命中しても全身鎧が身を守るという寸法だ。理に叶った戦術といえよう。 その背後では、万が一の事態に備え、柚乃(ia0638)が護衆空滅輪を展開。外見は変わらずとも、落ち着き払うその姿が印象的だ。 そんな彼女を守るべく、かつての美貌を誇るフレイア(ib0257)、相変わらずの妖精ぶりを発揮するルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)が自慢の獲物を振りかざす。 「部下が空を自在に舞うとは、皮肉ですね」 フランを狙った勢いを殺さず方向転換し、後衛の面々を狙わんとする天狗に向かい、フレイアはデリタ・バウ=ラングルを行使。天狗らに精霊魔法のカウンターを浴びせて消し去る。 「やはり開拓者、侮れぬ……散開せよ!」 硬磁の指示を聞いたルゥミは、マスケット銃を構えて最強モードを発動。容赦も遠慮もできない状況で、まずはもっとも手元から遠い敵を撃ち抜いてみせる。 「あたい、今でも毎日練習してるんだから!」 大アヤカシの討伐に自信を滲ませる少女の姿は、実に心強い。発動の間はとにかく銃撃を繰り返し、散開の判断がミスだと勘違いさせるほどの猛威を振るった。 そんな大嵐の中で、ケイウス=アルカーム(ib7387)は、軽快に竪琴をかき鳴らす。曲目は「泥まみれの聖人達」だが、今の状況はその曲調よりもド派手な展開だ。 それでも彼は天狗の動きに注意を払う。敵は集団戦闘を信条とする以上、一瞬の判断が命取りになりかねない。 「こう見えても、気は長くなったんだ。最後まで付き合うよ」 しかしルゥミの銃撃が鳴り止んだ瞬間、残った天狗は後衛を取り囲むように一斉攻撃を仕掛ける。 「今だ、かかれ! それぞれに狙いを定めるのだ!」 硬磁の指示に従える天狗はもはや半数だが、フレイアやルゥミ、柚乃にケイウスをも攻撃に巻き込めるのは脅威である。居合わせた味方は手傷を負わされた。 しかし、開拓者はこの瞬間を逃さない。狙うは、天狗が足を止めるか背を向けるかした一呼吸。この時間を得るための我慢が、今まさに実を結ぶ。 フランは2匹を視界に収め、轟嵐牙を放つ。練力を帯びた刃は敵を切り刻み、塵芥へと帰した。 「う、が! な、なんと?!」 「フフ、ボクも範囲攻撃要員だったのさ♪」 硬磁が唇を噛み、自らの愚かさを痛感したが、時すでに遅し。後衛の陣形に生真面目に付き合ったのは、明らかな失策である。柔軟な思考が目立つ天荒なら見抜いたろうが、今回は硬磁の武人気質が災いした。 残る敵は3匹だが、最強モードなしのルゥミが1匹の頭を吹き飛ばして霧散させると、硬磁の傍から数人の伏兵が現れる。 偉丈夫に成長した麗空(ic0129)と、穏やかな大人の雰囲気を得た結咲(ic0181)。そして、壮年の域に入らんとするシノビの兄弟コンビ「流刃の騎馬」こと、草崎流騎(iz0180)と草崎刃馬(iz0181)だ。 「懐かしのカラス退治といこうか。なぁ、結咲?」 「クサザキさん……がんばろう、ね」 かつての面影をかすかに残すふたりとの再会を喜ぶ暇もなく戦場に駆り出された流騎は、そっと結咲の肩に手を置く。彼女は簪「桔梗に蝙蝠」を付け直し、おもむろに獲物を構えた。 「あんまり無茶はするなよ。もはや性分だろうから、あまり強くは言わないが」 そして刃馬も名刀を抜きながら、麗空に「やってやれ、善行三操少年!」と奮起を促した。 「昔を知ってる人は、ずっとあのイメージか。参ったな」 そう言いながらも、麗空は巌流を活性化させ、手元に迫り来る敵にまっすぐに伸ばした絡踊三操で突きを見舞う。この上を天狗駆で結咲が伝い走り、二刀で天狗の胸を切り裂く。刃馬も見覚えのある、かつてのふたりの連携だ。 「後は任せろ! ふたりは硬磁へ!」 流騎が素早く前転し、背後の刃馬を行かせると同時に手裏剣を投擲。それが刺さるのと同じタイミングで刃馬が袈裟斬りで最後の天狗を叩き落すと、シュラハが氷龍で始末をつけた。 ● 羅喉丸と天荒の手合わせは、今もまだ続いている。 どちらも本気であったが、気持ちのどこかで楽しんでもいた。互いの手の内は読めており、それを確かめるかのような攻撃と防御に終始している。たまに命中することはあれど、それも想像の範疇だ。 行動の基礎から、敵を出し抜く術に至るまで、何もかもがあまり変わっていない。 「お互いに相容れないとはいえ、嫌いではなかった」 「僕もね、長く生きるのは退屈だと思ってさ。こういう遊び道具を残しておきたかったのさ」 儀が墜落するという時には護大派に反旗を翻し、ついには地上世界の地平線をも見たアヤカシの気まぐれは、今にして思えば途方もないスケールであったといえよう。今の人類が、天荒黒蝕の魅力やカリスマを語ることはないが、彼を知る幾人かは「奇妙な縁」を感じていたのかもしれない。この闘技は、まさにその証明とも言える瞬間となった。 ここで天荒は奥の手である黒翼をはためかす。そしていよいよ宙を自在に舞わんとした。 「僕もかつての姿には戻れない……しかし、これの姿は元々のものだ」 瘴気が根源の翼、それを見たフレイヤがとっさにデリタ・バウ=ラングルを正面から仕掛ける。狙いは翼……と思いきや、ただの障壁突破であった。羅喉丸はとっさの判断で瞬脚を用い、木を蹴って天荒を地面へと叩き落す。 「ぐあっ!」 「その手には乗らん。あいにく俺には仲間がいる」 フレイアが羅喉丸に微笑みを向けると、後衛の者たちがゆっくりと天荒を囲み始めた。 ● 硬磁との戦いは麗空が前衛を受け持ち、結咲がその隙間を埋めていく。さらにシュラハが隙を突いての氷龍や斬撃符で、行動を制限していく。もはや多勢に無勢であるが、それ以上に開拓者の執念が強い。 「今回は逃げないのか? カラスさんよぉ」 「主を守るが、我が宿命!」 麗空は「時間稼ぎか」と手の内を読むと、あらぬ方向へ絡踊三操を振り上げる。しかもそれは空中でバラけ、何の意味も成さぬように見えた。しかしその先をどこからか現れた刃馬が持っており、麗空もまた片方を手放していない。 「また見た目で判断したな、硬磁!」 敵は刃馬の言葉にハッとするも、もう遅い。麗空は自らの体を四節目として扱い、その身を硬磁に預けた。バランスを崩してよろめき、青年を押し退けようとしたところを、今度は元に戻した三操で瞬風波を放ち、敵の体勢を崩す。一方、麗空の姿勢は流騎が支えた。 「悪い奴はてんばーつ、ってな!!」 硬磁も聞き覚えがあったのか、その言葉に嫌な予感を得た。そして顔を上げれば、すぐそこに結咲の姿が迫る。 「……さよなら、悪い子」 反撃を狙う硬磁だが、正直当たるかどうかは関係ない。結咲も攻撃をその身に食らい、脚下照顧を活性化させて反撃。二刀は深々と心の臓を抉り、そこから黒霧が吹き上がった。 「麗空が……逃がさないって、いったよね。だから、絶対に逃がさない」 「見事だ、小娘……ぐおおぉぉ……」 天狗の将、硬磁の瘴気は炎に吸い込まれるかのごとく漂い、そのまま消えた。 ● かくして、ここに天荒包囲網が出来上がった。麗空と結咲も合流し、いよいよ決戦の様相となる。 まず、ケイウスが「魂よ原初に還れ」を奏でて先制。そこに瘴気弾が打ち込まれると、暈影反響奏でカウンターする器用さを見せた。 「どうだ、驚いたかい?」 「へぇ、やるじゃないか。この僕が直々に褒めてあげよう」 天荒がそういうと、続いて麗空が登場。紅椿を載せた攻撃を何度も見舞うが、障壁に阻まれて攻撃が通りにくい。 「さて、この手品の種を明かしてくれるかな?」 「やっぱりバレた? でも手品じゃねぇよ。真打の登場って奴だぜ」 ここで迫るは、息を潜めて好機を狙っていた星芒(ib9755)。彼女もまた天荒との因縁がある。女性らしさがボリュームアップした星芒は、思い切って錫杖「ゴールデングローリー」を振りかざす。 「死中に活路、見っけ☆」 彼女は無縁塚を使い続け、どんどん攻撃を重ねていく。ケイウスが弾いた瘴気弾は祓魔霊盾で何とか防御し、傷を受けても無縁塚を使って猛然と殴る。 「瘴気の黒翼が浄滅するのが先か、あたしの練力が尽きるのが先か! いざ勝負!」 「そういう趣向だったわけか……フフフ、なるほどねぇ」 不意に天荒がそう笑うと、彼は突然として黒翼をはためかせる。それを彼女に向けて攻撃に使うのではなく、あえて包み込むように用いた。そう、武僧である星芒を瘴気漬けにしようというのだ。 「堕ちてみるかい?」 その隙を待ってましたと言わんばかりに、フレイアは今度は死角からララド=メ・デリタを2連発、左右それぞれの翼に当てる。さらにシュラハが背中に向かって白狐を2連発。 「あれぇ、おにぃちゃんに当たったよぉ」 「くっ、小賢しい真似を……!」 さらにダメ押しの一撃は、ルゥミの最強モード発動。参式強弾撃・又鬼からクイックカーブを駆使し、わずかに残った瘴気の翼さえも消し去る。さらにモード継続中は、防御に差し向ける障壁さえも徹底的に撃ち抜く。 「頭は最後にしてあげるわ!」 「小癪な……!」 天荒は全周囲に瘴気弾を撒き、開拓者を圧倒せんと動くが、これを柚乃が精霊の唄で最前列以外の仲間を回復してしまう。 「そうか、なるほど……」 翼を失った天荒が地面を見ると、フランが待ち構えていた。彼女は放たんとするは天歌流星斬、しかもそれを二度成す位置に立っている。 「流星斬!」 そのまま地面を蹴り上げると凄まじい推進力で天荒の元へ。まずは逆袈裟で切りつけて障壁を砕き、すぐさま二度目の発動で刀を据えつけて地面へと落ちる。天荒黒蝕は抗う術を持たず、そのまま灼熱の揺らめく大地へと括りつけられた。 「ぐはっ!!」 「あとはお任せしますよ」 ケイウスは気力を振り絞って、渾身の力で「泥まみれの聖人達」を演奏。最後を羅喉丸に託した。 「かたじけない。そして……覚悟せよ、天荒黒蝕!」 小細工なしの超必殺・詩経黄天麟を発動させたのを見て、天狗もすかさず本性の右手を繰り出す。これが最後まで隠し持っていた奥の手だが、もはや瘴気というエネルギーを放ちすぎた天荒の動きに精細さはない。いや、これまでの開拓者の攻めが、最後の最後で大アヤカシを制したのだ。これまでが今に繋がり、ここから先へと繋がる。 羅喉丸は鈍重とも言える攻撃を避けると、奥義・真武両儀拳で結界を打ち破った。いや、最後の一撃はすでに敵の腹を突いていたが。そこから気力を振り絞って追撃の9連撃を見舞う。その身に宿る気が体内の一点で交差するように攻撃することで共鳴増幅を狙い、少しでも威力の底上げを狙う念の入れようだ。 「今のうちだよ、今すぐ離れないと……僕は大口を開けてキミを食いちぎる」 「その隙を仲間が突く。俺にとっては願ったりだ……!」 「キミが担うべきは、僕に止めを刺すことじゃないのかな? キミが倒れたら、誰が僕を止めれるんだい?」 「……もう、わかっているはずだ! 天荒黒蝕!!」 最後の一撃は魔剣を地面に叩き付けんかの威力で放ち……天荒黒蝕もまた紅蓮の滲む大地へと倒れこんだ。 ● 大アヤカシ・天荒黒蝕の死に化粧は、その身を包む黒き闇のごとき瘴気の粒。今にこのすべてが風となり、空へと昇る。 「フ……フフフ……ついに、こ、この時が……」 羅喉丸は何も言わず、ただその場に佇んでいた。天荒はそれを見て、力なく笑ってみせる。もう、言葉はいらなかった。なぜならすぐに、羅喉丸はその場に倒れこんだからだ。詩経黄天麟の反動であった。 それを見守ったシュラハが、天荒黒蝕の元へやってくる。 「楽しかったよぉ、ありがとねぇ♪」 お別れのキスと共に、彼女は惜別の言葉を口にした。 フレイアも「До свидания」と呟き、星芒は「バイバイ、あたしが空に還ったらまたね」と声をかけた。 「もういいよね。じゃ、楽にしてあげるわよ!」 「キ、キミの、名前は……?」 「ルゥミよ!」 そう言って銃を発射し、残った全てを塵にする。そして、その場に残った護大の欠片を拾い上げたのだった。 柚乃は筆を取り、天荒黒蝕の消滅した時を記した。それを草崎兄弟にも手渡す。 「忘れ得ない時になりそうですね」 「ああ、ここに至るまで、大変な労力と犠牲を払ってきた。今を生きる者は、誰も忘れない」 流騎はそれを受け取り、懐へと収めた。ケイウスは傷を擦りながら「娘が心配するかな」と呟くと、刃馬が「傷が治るまで、どっか遊びに行くか?」と冗談を飛ばした。 麗空と結咲は、しばし火に包まれる魔の森を見つめる。ここが天狗の首魁・天荒黒蝕を追い詰めた場所だ。 「年を取ったらカラス退治、若い頃はナメクジ退治か。大変だなー」 「今になって思ったけど、諏訪のシノビって面倒だわ」 刃馬がそういって笑うと、麗空もつられて笑った。 結咲は業火の舞い上がる空を見て、いずれこんなことも少なくなるのかなと感じた。そして天荒黒蝕の記憶もいずれ、この魔の森と同じく消えてしまうのかと…… |