|
■オープニング本文 ジルベリアで有名なのは機械であり、それ即ち鉄の加工技術であると言っても過言ではない。古来より鉄は力の象徴であり、また確かに力であった。鉄を握っている者は強いのだ。 鉄を力に変えるのに必要なのは技術であるが、技術だけあっても加工する物がなければ話は始まらない。 そういった訳であったのでジルベリアの各地では鉄を掘り出し、精錬する技術も発達していた。鉄鉱石から精錬されて真にインゴットとなった鉄は川付近の精錬所から各地へと運ばれてゆく。 ただベラリエース大陸は戦乱の国であり、近年ではアヤカシの活発化などもあり、街道は必ずしも安全とは言い切れなかった。 ベルンと呼ばれる鉄鉱山のふもとにある街、その街にあるそこそこ流行っている酒場のテーブルで、何名かの武装した人間達が酒盃を片手に話をしていた。商談、といった方が適切かもしれない。 「――という訳で、道中の護衛をお願いしたいのです」 動きやすそうな草色のベストを着込んだ金髪の少女が貴方達に向けて言った。ベストと同じ色の帽子をかぶり、土色のブーツをはき、手には白い手袋をしている。名前はルナというらしい。歳のころは十七、八といったところか。いかにも駆け出しの行商人、といった体である。 「今回の商路はこの街から片道で一週間ほどです。海岸沿いにある工房の街へと向かいます。ジルベリアの首都ジェレゾ、今回はそこまでの護衛をお願いしたいのです」 と金髪の女商人ルナは説明する。 「首都付近の街道に入ってしまえばカラドルフ大帝の威光のおかげでそれほど危険はないのですけど、そこに入る前に一つ峠を越えなくてはならなくて、最近そのベルン峠では山賊が良く出るんだそうです」 今回は思い切ってほぼ全財産をインゴットの購入に投入した為、絶対に奪われる訳にはいかないのだという。 「お願いします。どうか積荷を無事にジェレゾまで届けさせてください。どうかこの依頼、引き受けてくださいませんか?」 ルナはそこそこ可愛らしい、あどけない容貌の少女であったが、その青い瞳にはそれに似つかわしくない鬼気迫るような光が灯っていた。きっと、今回の交易に人生を賭けている。 行商人という人種のほとんどは皆、そんな感じなのだろう。 はたして若き行商の女は無事にジェレゾまで荷を運べるのか――それはまだ、この時点では誰にも解らなかった。 |
■参加者一覧
百舌鳥(ia0429)
26歳・男・サ
鬼島貫徹(ia0694)
45歳・男・サ
十河 茜火(ia0749)
18歳・女・陰
蘭 志狼(ia0805)
29歳・男・サ
玉櫛・静音(ia0872)
20歳・女・陰
尾鷲 アスマ(ia0892)
25歳・男・サ
氷海 威(ia1004)
23歳・男・陰
霧崎 灯華(ia1054)
18歳・女・陰
御堂 出(ia3072)
14歳・男・泰
海藤 篤(ia3561)
19歳・男・陰 |
■リプレイ本文 (「まるで合戦に向かう士の様な目だな‥‥」) 蘭 志狼(ia0805)は少女の瞳を見て胸中で呟いた。 (「商売に命を賭す‥‥価値観とは実に様々な物だ」) ふむ、と呟き杯を嘗める。この機会に商人の世界を覗いてみる、というのも悪くない、と思った。話を聞くにどうやら他のメンバーも全員受ける方向のようだ。 「任せておけ」 鬼島貫徹(ia0694)が力強くルナに頷いて言った。傲岸不羈の気を纏った壮年の男だ。中々の威圧感を引き連れている。 「俺達は荒事には慣れている。有事に際しては誰でも良い、手近な者の指示を請い、それに従え。さすれば万事上手くゆく。荷も、御前も、無事に送り届けてみせよう」 「よろしくお願いします」 鬼島を見据えルナは頷く。将然とした男の言動に接してどうやら頼りになりそうだ、と判断したらしい。 「件の山賊、人死には出ているのだろうか?」 氷海 威(ia1004)が問いかけた。二十代半ばの若い男だ。袖まである手袋をはめ、肌の露出の無い衣服に身を包んでいる。 「ええ‥‥襲われた時に逆らった人間は、皆、頭を斧で割られ、谷底に投げ捨てられたそうです」 碧眼を伏せてルナは言った。聞けば結構な数が犠牲になっているらしい。 「そうか」 ならば手加減は無用か、と威は思った。 「‥‥ルナさんも積荷も、ボク等が必ず守りますっ」 愛らしい顔立ちをした少年が言った。歳の頃は十三、四といった所か。小柄だ。泰拳士の御堂 出(ia3072)である。 「女性を護るのは男の役目だと死んだ師匠に教わりましたから!」 ぐっと拳を握って少年は言う。 「‥‥有難うございます」 にこっと笑ってルナは答えた。 かくて十人の開拓者達は商人ルナから護衛の依頼を受け、ジェレゾへと旅立つ事となった。 ● よく晴れた秋の日、冷涼なる空は蒼く透き通っている。 (「ジルベリアの首都ジェレゾ‥‥さて、どんな街なのか」) 尾鷲 アスマ(ia0892)が空を見上げ胸中で呟いた。未だ知り得ぬ物は人であれ物であれ心をくすぐる。 (「良い旅になると良いのだがな」) 呟き、歩き出す。総勢十一人と一匹の一行はベルンの鉱山街からジェレゾへと向かって出発した。もふら様がもふもふと鳴き、所々荒れている道へと荷車がガラガラと音を立てながら乗り出す。 ルナは御者台に登って手綱を握っていた。その傍らを歩きながら鬼島が迎撃案を説明する。 「――予想される山賊の規模を考えると、護衛対象は分散させない方が守りやすいからな」 「では、襲撃があった時はあまり荷から離れない方が良いです?」 と小首を傾げてルナ。 「場合にもよるが基本的には、な」 壮年の男はそう答えた。一方で開拓者は自身達を大別して三つに分けていた。先行偵察、通常護衛、直衛の三段だ。 「それでは、先に行って様子を見てきますね」 海藤 篤(ia3561)が言った。穏やかな空気を持つ若き陰陽師の青年だ。ルナの覚悟を感じ取り、手助けをしないわけにはいかないだろうと思ったそうだ。 「山賊に遭遇して見つかった場合は合図を送りますので」 と篤は言って指を口に咥え音を鳴らしてみせる。なかなか器用だ。 篤の他三名、志狼、御堂、威が足を早めて道の先へと進んでゆく。彼等が先行偵察隊である。 直衛についたのは鬼島と玉櫛・静音(ia0872)だ。 「無茶はしないでくださいね」 銀髪赤眼の陰陽師の少女はルナへとそう言った。 「ええ、心得てます‥‥もっとも、荷物が危なくなったら、多少の無茶はやってしまうかも知れませんが」 ルナは苦笑いして頭を掻きながら言った。 「なーに、大丈夫よ。山賊が出てきたら血の雨降らせてやるわ」 荷台の方からキャハハと笑い声が聞こえた。霧崎 灯華(ia1054)だ。彼女は荷車に満載された小箱の上に乗っていた。山辺の道はあまり整備されておらず、硬質の小箱には雨砂よけの布が一枚かけられ縄で固定されていたが、ガタガタとした振動をほぼダイレクトに灯華へと伝える。見晴らしは効くが、なかなか素敵な座り心地だ。 「楽しい旅になればイイよねー」 十河 茜火(ia0749)が言った。赤毛のやや長身な少女だ。欠伸を噛み殺しながら歩き、周囲へと視線を巡らせている。 彼女は、かるーく破壊を楽しむ気分で参加を決めていた。ついでに脆い人間の相手だけでは味気無いのでアヤカシなど道中で色々出て来ればイイな、などと不埒な事をこっそり考えていたりする。 道を幾分か進んでゆくと、彼女の期待に応えたか、小型のケモノやアヤカシなどが寄って来る事がままあった。 だが、 「小物だな」 二刀をだらりとさげて百舌鳥(ia0429)が言った。言葉の通り、それら小物のアヤカシは開拓者達の手によってあっさりと撃退された。 一行は順調に山野を行き、夕陽が落ちれば夜営し、朝陽が登ればまた出発し、三日目の昼にはベルンの峠へと入った。 ● ベルン峠の山道は山肌に沿って、崖の側面をくり抜くように削って作られている。コの字型に近い。 道の幅は四メートル程度で、山の面に沿って蛇行していた。道を右に外れれば、遥かな谷底へと真っ逆さまだ。落ちれば並みの人間ならばまず命はない。絶壁だ。 一行は蛇行する峠道を進んでゆく。アスマと灯華は対向車を警戒していたが、皆、凶悪な賊を警戒しているのか、それともその餌食にかかってしまったのか、峠に入ってからは対向車はおろか、徒歩の旅人とさえ出会わなかった。 「そろそろ問題の箇所に入るな」 威が言った。事前にルナの他にも街の行商人から話を聞き、峠の中でも特に人々がよく襲われる地点を聞き出していた。 (「相手は多勢‥‥不意打ちされる事だけは避けたい‥‥」) 胸中で呟き、威は符を空へと翳す。符は力を受けて羽虫へと変化し上空へと飛んでいった。 陰陽師の男は式の視覚と聴覚を自身のそれとリンクさせる。 二十メートル程空へと登って見下ろせば、岩山と谷が織り成す雄大な景色が広がっていた。 蛇行する道の先、黒い影が複数見えた。山賊達だろうか。急カーブする崖の陰に並んで待機している。道の角を曲がると、目の前にずらっと斧を構えた山賊が並んでいる、といった具合か。崖の上にも複数人いた。 「いるな。かなり先の方だが、道を曲がった所で待ち構えている。上にもいる」 「上にも、ですか」 御堂は上を見やる。岩の天井が見えた。崖をくり抜いた道だ。少年は首を捻る。徒手では下から登る事すらできないのに、敵はどうやって道の上へ降りて来るつもりなのだろうか。普通に崖を滑り降りれば、高い確率で谷底へと真っ逆さまとなる筈だが。 人魂の持続時間は三十秒、長くはもたない。やがて消えた。戦闘に回す分の練力を考えると連発はできないか。 「まだ気づかれてないのなら、後ろの皆さんと合流して、こちらから奇襲をかけましょう」 篤が言った。 「気づいているのか、気づいていないのか‥‥微妙だな」 と威。 ふむ、と顎に手をやって志狼が問いかける。 「騎馬は?」 「姿が見えなかった」 「‥‥嫌な感じだ」 銀髪の侍はそう呟いた。 ● 相談の末、開拓者達は直衛の鬼島と静音を荷車とルナの傍に残して後方に置き、残りの八人で先行して奇襲を試みる事にした。畢竟、前に進まねばならぬ。 「気づかれている可能性もある。反撃に注意を」 威が一同に注意を飛ばした。 八名は山賊が待ち構えている曲り道の手前まで前進すると、まず灯華、威、篤、茜火の飛び道具組の四人が角の向こうへと飛び込んだ。射撃で一撃を与えてから前衛組が突撃する予定だ。その方が効果が高いだろうし、何より順序が逆だと味方の背中に当たる。 弓矢を引き絞って通路に躍り出た灯華は、山賊達が道の奥に並び、そして弓手三人が矢を引き絞ってこちらへと狙いをつけているのに気付いた。読まれてる。 攻撃の瞬間は同時だった。山賊の三人の弓手が引き絞った長弓から矢を放った。灯華の構える長弓からも矢が放たれ、威が翳した符が鴉に変化して飛んだ。篤もまた掲げる符を焼失させると同時に雷を放つ式を飛ばす。茜火は仄かに銀に明滅する鬼火を飛ばした。 矢と鴉と雷と火炎が交錯して飛び、威が小盾を掲げて弓矢を受け止め、身を捻った篤の肩を矢が掠め、茜火が腕で矢を受け止めた。 二羽の鴉と矢が弓手の一人を打ち倒し、二連の雷撃が二人目の弓手もまた打ち倒した。鬼火は長柄斧を構えて並んでいた盗賊の一人を呑みこんで火炎に包みこんで倒した。 「脆いなぁ、そこらのアヤカシ位には歯応え見せてねっ!」 茜火が腕から矢を引き抜いて圧し折り、キャッキャと笑いながら倒れた盗賊達へと言う。 その間にも御堂、志狼、百舌鳥、アスマの四人が武器を構え、飛び道具組の間を抜けて前進し、四メートル程度の崖道一杯に並ぶ、長柄を構えた盗賊達も体勢低く突進をかけてきている。 「このクソ魔女が――殺せぇッ!!」 笑う茜火を睨み後方に構えていたスキンヘッドの大男が吠えた。五人、五人の二段の列に構えた盗賊達が津波のように雄叫びをあげながら一斉に加速する。弓手の生き残りの兵は腰から手斧を取りだした。 「こっから先、危険につき通行止めだぜぇ?」 百舌鳥が双刃を無造作にだらりとさげ、咆哮をあげて突っ込んだ。 「抜かせッ!!」 山賊達が百舌鳥に殺到する。先頭の一人が、長柄戦斧を振り上げて飛び込んでくる。 川の水が岩を避けるように、雲が霊峰を掠めるように、包帯を巻いた男は、振り下ろされる戦斧をするりとかわす。瞬間、ひゅっ、と鋭い音がして光が一筋、山賊の喉の前を通り抜けて行った。山賊の喉から真っ赤な血が霧のように噴出する。山賊が斧を落とし喉を抑えながら倒れた。先頭に続いて飛び込んできた山賊も薙ぎ払った斧をゆらりとかわされた瞬間に血飛沫を噴き上げて倒れる。 「こいつッ‥‥!」 「妙な動きを‥‥ッ!」 包帯を巻いた男は血に濡れた刀を両手にだらりとさげて盗賊達を見据える。 「金が欲しけりゃ奪う、単純だが至極当然だわな。だけど今回ばかりは俺も全力で邪魔させてもらうよ」 その一連の攻防の間に御堂は酔拳と千鳥足の独特の歩法で斧刃を掻い潜って間合いを詰め、山賊の腹部へと肘を入れて身を折らせてから後方へ宙返るように踵を敵の顎へと叩きこんで打倒していた。志狼もまた槍構えを発動させつつ、長槍で盗賊を迎撃していた。長柄同士の差し合い。武器が長く、長身な者、リーチの長い方が有利。志狼は一歩踏み込むと突っ込んできた敵の間合いの外からその胴を一突きして押し返す。アスマは、相手の方がリーチが長い。だが、盾がある。左のガードを翳しながら高速で突っ込んだ。慌てて山賊が振り下ろしてきた斧は目測が狂っていた。アスマは頭部を逸らして掻い潜り振り降ろされた柄を革鎧の肩当てで受けると、そのまま突進の勢いを乗せて盾で体当たりした。勢いよく激突し、衝撃に敵がよろめく。間髪入れずに至近から装甲の隙間へと刀を差しこんだ。敵の腕の付け根を業物の日本刀が貫く。アスマは突き刺した刀へと体重を乗せ、そのまま下方へ引き斬った。半ばから断裂された腕の付け根から鮮血が滝のように吹き出す。 一方、ルナ達の元へは道の後方から三騎の騎兵が土煙をあげて突撃してきていた。 「陰に回って、積荷を見ておけ」 鬼島はルナにそう言い残すと、刀と盾を携えて突進してくる三騎の騎馬の前に立ちはだかった。 壮年の男は練力を全開にして力を溜め、騎兵達を見据え、待ち構える。斧を振り上げて突っ込んでくる騎兵が、二十メートル程度まで近寄ると最上段へと刀を振り上げ、渾身の踏み込みと共に全霊を乗せて振り下ろした。刀が空間を断ちきり、次の瞬間、猛烈な衝撃波が巻き起こった。衝撃波は大地を破砕し削りながら一直線に騎馬の元へと伸びて行く。馬の体躯が表面から弾け飛ぶようにして避けた。馬は鮮血を噴き出し、バランスを崩して横倒しに倒れ、投げ出された騎兵が谷底へと悲鳴をあげながら転がり落ちて行く。 静音もまた符を虚空へと翳し、焼失させると共に二連の真空波を別の騎兵へと放っていた。二連のカマイタチに斬り刻まれた騎兵は鮮血を吹き上げながら落馬し、大地に身を激しく打ち付けて動かなくなる。最後尾だった騎兵はその様に足を止めた。馬が激しく嘶いて棹立ちになる。 「フン、どれだけ大金を手に入れたところで地獄では使えんぞ!」 剣の切っ先を騎兵へと向け鬼島が気迫を叩きつけた。騎兵は壮年の男の眼光に呑まれたか、舌打ちすると馬首を巡らせた。拍車を入れて逆走してゆく。逃げた。 「とりあえずは、こちらは凌げたみたいですね‥‥」 静音は呟き、ルナへと視線をやった。 「‥‥ルナさん?」 「え、えぇ‥‥」 何故かルナは気まずそうに苦笑していた。 ● 崖上から盗賊が四名、ロープで崖面を蹴り、振り子のようにして開拓者達の後方へと降り立った。背から長柄の戦斧を引き抜く。 慌てず騒がず、灯華と篤が雷閃を二連打してそれぞれ一名づつ吹き飛ばした。上から来そうだという情報は掴んでいる。後方に現れた敵に対し茜火はこれみよがしに銀の巨大針鼠の式を設置した。威は鴉の式を飛ばして生き残りの弓手を攻撃している。 御堂がひらひらと斧撃をかわしつつ、大地を蹴り付けて踏み込んで拳を当て盗賊の一人を打ち倒した。 志狼は突っ込んできたスキンヘッドの巨漢と激しく打ち合っていた。伊達で首領をやっている訳ではないらしく、志狼をしてもやや押され気味の豪腕を誇っていた。 「‥‥貴様、志体持ちか? しかし追剥ぎとは‥‥その頭、光るのみで中身は無いと見える」 「じゃかぁしいわぁッ!!」 スキンヘッドが斧を竜巻のように振るう。志狼は気力を解放し防御を固め、鉄槍の柄で斧を受け流して直撃を避けた。 百舌鳥は意を決して突っ込んできた盗賊二人をやはり後の先を取って斬り倒し、アスマもまた賊の一人を斬り倒した。 後背の兵、灯華と篤の雷閃が唸り、残りの二名も一掃された。首領へは茜火の砕魂符が飛んだ。スキンヘッドの大男は後方へ後退して回避する。 「ココで退くか全員グッチャグチャにされるか。早く選ばないとアタシらが決めちゃうよー?」 茜火が次の符を構えて言う。 「ちっ‥‥覚えてやがれ! 野郎どもずらかるぞッ!!」 形勢不利にあると見たか、大男は言って、生き残りの手下を引き連れ退却していったのだった。 かくてベルンの山賊を退けた一行は、数日の後にジェレゾの街へと辿り着いた。海辺にある工房の街だ。ジルベリア帝国の首都として栄えている。 「‥‥商い前の度胸試しはどうだった」 アスマが問いかけた。 「色々、勉強になりました」 ルナはそう答えた。 一同はルナから感謝の言葉と共に報酬を受け取ると街の広場で別れた。 「ご商運を、お祈り申し上げる」 威がルナに言った。少女は微笑すると「有難うございます」と言って荷車と共に街の雑踏へと消えて行った。 |