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■オープニング本文 「ちょっ‥とだけでいいのよ」 朝日の中、ささやくような姉の声で、潤(じゅん)の目が覚めた。いつもの朝粥の匂いがしている、いつもと同じ朝。 だが、次の瞬間、寝ぼけた目が信じられないものを見た。 「も‥もふ‥」 いやいやをしてジリジリ後退する仔もふらに迫るのは、抜き身の小刀を持った姉。ふふふ、と笑みさえ浮かべてさぁ、と手を伸ばしている。 「なにすんだよ、ねぇちゃん!」 「あら、おはよう、潤」 「『おはよう』じゃなくて! もふ蔵になにすんだ!」 がばりと起き上がると、勢いよく子犬ほどの仔もふらを抱きかかえた。仔もふらは潤にへばりつくようにして、がたがたと震えている。 「大丈夫か、もふ蔵。由紀ねぇちゃん、なんの真似?!」 「よし!そのまま捕まえてて、潤」 潤の抗議など意に介さず、腕まくりをして、きゅと小刀を握りなおす。 「喰う気か?!」 びくん、と腕の中の仔もふらの背中が伸びた。小さいなりにも、言葉は理解している。 「はぁ?」 由紀(ゆき)は狙いを定めていたもふ蔵から目をやっとそらし、潤の質問に脱力したように手を下ろした。 「そんなわけないでしょ、罰当たりな。むしろ逆よ逆」 「逆って‥」 「もふら様の赤い毛をね、ちょっと貰いたいの。ほんの一房」 親指と人差し指で『ちょっと』の長さを作ってみる。 「毛‥?」 「もふ?」 仔もふらが鼻先を潤に向けた。潤がこの間拾ってきた「もふ蔵」は、もふら様として変わった色でもなく、標準的な赤と白の二色のふさふさした毛に覆われている。 まあ、買ったりしたわけではなく、先日裏路地ではぐれた仔もふらを確保して、そのまま姉と二人暮らしの家に迎えたのだが。 「本当は大もふさまが理想だけど、力強いし。競争率高いし。そしたらうちにはこの子がいるじゃない♪」 ―――なにがだなんでだ。 どこから聞いていいかわからない潤だったが、姉が大事そうに懐から出してきた紙に目を落とすと愕然とした。 ●恋が叶うちょこれいとの作り方 一、ちょこれいとの塊を買ってきて溶かす。 二、ちょこれいとにあなたが普段つけている香りの元を少し入れる。 三、好きな形に冷やして固める。 注意 もふらさまの赤い毛を入れるとさらに効果大! 「あとは好きな人に贈りましょう‥て、何これ!」 「最近はやりなのよ。なんだかじるべりあ、ってところからきた風習らしくてね」 うっとりとその効果を信じて疑わない瞳。 「こんなの迷信だろ!」 「あら、豆まきとどう違うって言うの」 「ぐ‥」 節分と同じレベルでこられて言葉をなくす潤。 というか、食べ物にいろいろ入っている時点でどうなのか。 「とにかく、もふ蔵。こっちいらっしゃい」 ぽむぽむと膝を叩いて、優しく呼ぶ姉。 「いいい、いやもふ‥」 なんだか毛だけといわれても怖くて仕方がないもふ蔵。 「やめとこうよ。食べ物に入れるなんて」 「大丈夫! ちゃんと洗って湯にかけるから」 「じゃなくて!」 貰ったほうも怖すぎるだろ、とはついぞ口に出せず、何を言っても通じない姉を振り切るようにして潤が家を飛び出した。 もちろん、もふ蔵をかかえて、である。 「ちょっと! 置いてきなさいよ!」 姉の制止を振り切って、逃げる潤ともふ蔵であった。 |
■参加者一覧
アーニャ・ベルマン(ia5465)
22歳・女・弓
琥龍 蒼羅(ib0214)
18歳・男・シ
繊月 朔(ib3416)
15歳・女・巫
郭 雪華(ib5506)
20歳・女・砲
玉響和(ib5703)
15歳・女・サ
シェリル(ib5930)
14歳・女・弓 |
■リプレイ本文 ●子供達 「本当ならこんな手荒なことはしたくなかったんだけど‥」 ほぅ、とため息をつきつつ、白々しく由紀が言うと、後ろで仲間の少女達が四人、相槌を打つ。 「毛の入ったチョコなんて、いくらもふら好きでも‥」 もふらを愛してやまないアーニャ・ベルマン(ia5465)が膨れて抗議しようとすると、まぁまぁ、と繊月 朔(ib3416)が割ってはいる。 もふらへの愛が分からないでもないが、今は依頼の潤ともふ蔵を捜索しに出かけなければならない。由紀の説得の前に、ひとまず特徴を聞き出さなければなるまい。 「潤殿とやらはどのような様相なのだろう‥」 郭 雪華(ib5506)が淡々と喋る。由紀はややあって、質問だと気づいてニコリとした。 「右の頬に大きめのホクロがある、かな。12歳だし、さほど遠くまで行かないと思うわ。連れて行った『もふ蔵』は、まだ子供のもふらさまで、すっごくかわいいの! その毛ならご利益バッチリじゃない?!」 とってもいい考えのように、この上ない微笑みの姉である。 「事情は分かりましたが、やはり潤君たちに同情しますね」 こそりと朔がアーニャに耳打ちした。アーニャもそうでしょう?と頷く。 「――なにか?」 じとりと開拓者に向けられる女子達の視線。アヤカシのそれよりも粘度が高い気がする。 「あ、いえ‥みんなが幸せな結末に‥なんとかしてみますよっ!」 重くなってきた空気に朔がたじろぎ、アーニャと雪華を引っ張った。二人も引きつりながらぎこちなく笑う。 「助かったわ! これでこそ依頼した甲斐があるってものね!」 女子の威力にたじたじになりながら、依頼者たちである由紀を説得するという最初の目論見は持ち出す暇もなく儚く消えた。 期待に満ち満ちた彼女達に固い握手を交わされて、開拓者たちはさっさと捜索と毛狩りに送り出されたのである。 ●発見 「妙な迷信だが、どうやら随分と広まっているようだな」 琥龍 蒼羅(ib0214)は、最初信じられない光景を二度見したが、これだけ毛の刈られたもふらを見ているともう驚かなかった。首周りと頭の赤い毛だけがちょきんと切られている。白い毛が長いままなだけに珍妙な姿になっていた。 そんなもふらに、心なしかいつもの能天気さはない。‥嗚呼、合掌。 「いやはや、恋する乙女は恐ろしい‥」 自分も乙女ではあるが、シェリル(ib5930)がこわばった表情でそんなもふらを見送った。傍らで同じく軒並み被害にあっているもふらをみていると、玉響和(ib5703)も焦ってきた。 もしかして、潤ともふ蔵にもう被害があるのでは、と思い、ついに大声を張り上げる。 「もふ蔵さーん! 潤さーん! 怖いことはしませんよう! 出てきてくださーい!」 「なごみん、そんなので出てきたら‥」 シェリルが苦笑した、そのとき。 がさっ。 篭を背負ってこっちへ来ようとする少年の足がぴたりと止まる。 まさか、という思いで開拓者一行の足も止まる。 「‥‥‥もっふ蔵さーん」 アーニャがハート型チョコを取り出してみた。 ガサゴソッ。 たらりと少年が冷や汗をかいている。その背中の背負い篭にいれた麻袋が不気味にうごめいていた。 「潤君‥ですか?」 「もふ蔵さん、チョコだよ〜」 まさかと思い問いかける朔の後ろで、アーニャがチョコを振ってみた。 「も‥ぷぅ!」 麻袋からすぽんと鼻を突き出して抜け出たのは、豆しぼりをまかれた仔もふらの頭。チョコの匂いにうっとりしている。 「ばっ‥もふ蔵!」 「チョコもふ?」 「そのチョコの材料に狙われてるんだってばぁ!」 踵を返して潤が駆け出した。開拓者たちはその少年の右頬にホクロがあるのを見逃さない。彼が潤であり、あの袋入りの顔だけ出している仔もふらが『もふ蔵』で間違いないだろう。 彼が篭を背負ったまま走り出したので、仔もふらがガクンガクンと篭のなかで踊っている。 「も‥もも、もふふふ?!」 「怖いことはしませんよう! 本当ですっ!」 「ちょっと待って、話だけでも!」 「やだぁあ!」 いきなり六人の開拓者達に追われるとは思って見なかった潤は混乱した。もふ蔵を背負って一目散に来た道を戻る。 ●捕獲 しかし、早いとはいっても所詮子供の足。開拓者たちに追われて逃げ切れるはずもなかった。 ぜぇはぁ、と裏路地に逃げ込んだが、袋小路になっている木板に手をついてへたり込む。 「少しいいかな‥話をさせてもらっても‥」 全くちっとも息のあがっていない雪華が捕まえた、とばかりにぽんと潤の肩に手を置いた。ぎゃあ、と潤が叫ぶ。 これだけ追い回されてお話、もないのだが。 「な、なななんだよ! 姉ちゃんたちも、もふ蔵を狙ってるのかよ!」 「潤君ともふ蔵君にはほんとにすみませんが、少しでいいので毛を分けてください」 お願い、とばかりに朔が膝を折って手を合わせた。 「もふ? よんだもふ?」 事情がわからず、麻袋からもそもそと出てくるもふ蔵。 「あっ、こら!」 「はう〜〜可愛すぎです〜〜、お持ち帰りしたい〜〜」 アーニャのまるごともふらの服装に安心したのか(?)篭から持ち上げられてすりすりされても、きゅるんとした瞳を瞬かせているもふ蔵である。 「だめだかんな!」 もふ蔵を取られると思ったのか、慌てて潤がもふ蔵を奪取する。 「とはいえ、ここまで噂が蔓延していれば、無事に帰るのも大変だと思うがな」 蒼羅が冷静に腕組みをしながら足元にいるもふらを眺めている。潤だけでは町中の女子の手から守れそうもないだろう。 逆に自分達開拓者達に見つかったほうが幸運だったかもしれない。 「すこーし毛を刈るだけなんですよ」 シェリルが落ち着かせるように潤に優しく語りかける。ぎゅっともふらを抱えている潤の手に自分の手を重ねて、大丈夫、落ち着いてと呟いた。 「だって‥‥」 「僕たちは由紀さんから捜索やらを依頼された開拓者だが‥」 「姉ちゃん?!」 雪華から出た姉の名前に潤がぎくりと身じろぎした。 「数人分が必要になったしな」 「なんで増えてる?! 本当か、兄ちゃん?」 蒼羅の補足にすがるような目で潤が見た。同じ男ならこの不条理わかるよね、な哀しみを込めた視線である。 「まぁ、『それ』が入ったチョコを渡した結果どうなるか、はまた別の話だろう」 ‥‥依頼のその先に興味はなかった。 がくりとうなだれる潤。 「お姉ちゃんは私が説得するので、目立たないくらいでいいですから」 何度も何度も誠意を込めて頼み込む朔。みんなを丸く収めて、被害を最小限にするためには、どうしても少しはもふ蔵の毛が必要なのだ。 むくれて口をへの字にしている潤が、そんな朔をちらりと見る。わからず屋になりたいわけではなく、もふ蔵が怖がるのが嫌なのだった。 「これは‥もふらの毛で出来ている‥。だから毛を刈るのは‥一種の大人になるための儀式のような物‥」 雪華が自分のもってきた『もふんどし』を潤に見せた。 「なぜに『もふんどし』‥」 小さな驚きを表す蒼羅と、きゃあ、と頬に手をあてて照れるシェリルと和。もふんどしにはもふらの赤い毛が織り込まれており、隅にはもふらの刺繍がしてあるのだ。 もふらの毛なくしては出来ない加工品であることを強調したかったのであり‥‥もちろん新品であり‥‥他意はないはずである。 ―――まじまじと『もふんどし』ともふ蔵を眺める潤。 なんだか、同じ毛でもチョコにいれられる方がもふ蔵にとって幸せな気がしてくるから不思議である。 それに、大人になる儀式という単語が少年の心をくすぐる。 「‥‥そんなに、刈らない?」 不承不承口を開くと、朔の表情がぱぁ、と晴れた。 「ええ!」 嬉しそうにぴょんと跳ねると約束します!と付け足した。 ●決意 「じゃあ、‥ちょっとだけ、なら‥‥」 おずおずと抱えていたもふ蔵に向き直る。 「もっふ?」 「もふ蔵、大人になるんだ」 「大人もふ?」 「『大もふ』さまみたいに立派になるために、ここはちょっと痛いかもしれないけど‥」 「イ、イタイもふっ?!」 「痛くないですないです!」 感極まってきた潤に、慌ててシェリルが訂正する。 「そ、そっか。―――痛くないんだって。もふ蔵、頑張れるよな?」 「‥ジュンのためもふ?」 愛くるしく首を傾げて尋ねるもふら。潤の目がうるんできた。潤が、はらりともふ蔵の豆しぼりをほどく。艶々と流れる赤い髪。 もふ蔵も‥潤を見つめてうるうると涙を浮かばせる。 「今生の別れじゃないんだけどね‥」 雪華がぽつりとつっこんでみた。 「はぅ。いいじゃない。きゅんとくるわぁ〜〜かわいい〜〜」 先ほどの抱いた感触を思い出して、アーニャがとろんとした顔になる。 「今後のためにも怖がらせずに刈ったほうがいいか」 「ええ、私たちで刈ったほうがいいですね」 蒼羅の提案にシェリルも同意する。 潤に切らせるのは酷だろうし、ここは開拓者たちの一閃でちょっぴりいただくことに全員で決めた。 「もふ蔵さん、おいで〜」 チョコレートに誘われて、もふ蔵がアーニャの腕の中に納まる。 問題は誰が刈るか、だが。 「大丈夫ですよ♪ なごみはサムライですから、刈るのは得意ですっ」 愛用の薙刀を構えて、少し下がって間合いをとる和。 「あ、だめです! なごみん!」 「大丈夫♪ 刃物の扱いは慣れてるから‥‥ナギにまかせろ」 「‥‥‥!!」 薙刀を型に構えたと思ったら、語尾が乱暴になり、急に目つきが変わった。 ―――アーニャの顔色も変わる。 「ちょ、ちょっと?!」 「ちょいといただくだけだ、首ごともらうドジはふまないぜ」 「も、もふゅ‥?!」 機嫌よくチョコレートを食べていたもふ蔵が、寒気にも似た温度の変化を感じて振り向いた。 ぽろり。 見上げた口からチョコレートが落ちる。 「覚悟ォ―――!!」 「もふぞぉぉおぉ―――!!」 「もっふうううぅぅぅ―――ッ?!」 静かだった裏路地に三つの大声がこだました。 ●おまじない 「間違えて首を刈るほどなごみはドジっ子ではないのですよ。優しく微笑んでたでしょう‥‥‥あれ、何故もふ蔵さんは萎縮しているのです?」 結果、無事にちょっぴりの赤い毛を刈ることができたのだが、家に戻ってきてからというもの、もふ蔵がぴったりと潤にくっついている。 「なごみん‥」 「どしたの? シェリーちゃん。皆も?」 痛ましそうに見るシェリルに、やだ!たまたまだよ、と和がわけのわからない謙遜をして照れている。 「もう大丈夫だからな。もふ蔵‥」 「もふぅ‥チョコはもうイヤもふぅ‥」 涙目になって潤にすりすりして甘えている。 ‥‥なんだかもふ蔵はチョコレートに嫌な思い出が練りこまれたようである。 苦労して無事に手に入れた仔もふらの赤い毛を由紀に渡すと、依頼人である由紀と少女は大はしゃぎで喜んだが、その分量にはたと気がついた。 手のひらに載せると親指ほどの長さしかないし、量は一房分しかない。 「足りないわ‥」 五人でわけると、とても一人分が少なくなる。 「これじゃあ、依頼は失敗ではなくて?」 「もうちょっと刈ってきてよ」 「沢山作るんだから!」 鬼のような少女達の言葉に、開拓者たちは一瞬言葉を失ったが、こほんと咳をして、朔が前に出ると、物知り顔に語り始める。 「チョコに入れるもふらさまの毛は、相手に気づかれてはいけないのですよ。入れるならほんの少しッ!―――これ、恋が成就した子の秘訣なのです」 「‥‥ほんと?」 「これでも巫女ですよ?」 イタズラっぽく笑って朔は口元に手を当てた。 「ジルベリアでは、相手の髪の毛と自分の髪の毛を一本ずつ結びつけて、ピンクの紙の上に乗せて流すと恋が叶うんだって」 アーニャが対抗するようにジルベリアの恋のおまじないを披露する。異国のおまじないに由紀たちの頬が上気する。 「あら、そうなんですか。チョコはジルベリアの風習と聞きましたが」 「うーん、バレンタインはそうだけど。ここの地域限定なんじゃないかな、もふらさまの毛のおまじないは。ジルベリアでは、もふらさまいないしね」 「ええっ?! そうなの?!」 朔とアーニャの情報交換に、思わず身を乗り出してくる乙女達である。 それに対して、これ見よがしに、朔が思い出すように目を細めてみる。 「‥あと、鏡に香油を塗って好きな人の名前を呟くと恋が成就する、とか、枕に蝶の刺繍をして、寝る前に三回叩くと好きな人の夢が見られるらしいですよ」 「ええええ?! ねぇ、もっと教えて!!」 「いいですが、もう潤くんとも約束しましたし、いじめないであげてくださいね?」 「――わかった! 潤ともふ蔵のことは約束するわ!」 即決の由紀に迷いは微塵もなかった。 潤がそれを聞いてほっと天井を仰いだ。ちょっぴりもふ蔵の襟の赤い毛が切られてしまったが、さほど目立たない。 もふ蔵が大きくなったら、今度はもふんどしのために刈る!とか由紀が言い出しそうだったので、ひとまずは安心だ。 由紀はといえば、もふ蔵の毛ももちろん今回のチョコに使うが、それと共に他のおまじないも試したくてしょうがない。より多くのおまじないをかけておけば、安心も増すというものだ。 効果の程は、もちろん定かではないのだが。 「先にそういう話はしてもらえないかな‥」 町の香油や刺繍糸が売切れるなら、それを仕入れない手はないし、その手の噂は広めるに越したことはない、と考えてしまう雪華である。 「呪術に近いというか‥ほぼ呪いだな」 彼女達から熱い想いを寄せられている男たちに、蒼羅はひそかに同情するのであった。 「本当はおまじないじゃなくて、自分からアピールしないとね」 ねー!とアーニャがもふ蔵の頭を撫でてやると、気持ちよさそうに目を細める。もふらにとって将来毛を刈ることは多いので、潤にもよく安全な刈り方を教えておかないといけない。 和の顔を見るもふ蔵はというと、落ち着いたものの、さっきと全く違う雰囲気に戸惑っているようだが‥。 きらきらの瞳をした乙女達に囲まれた朔が、彼女達を諌めて大きな声で言う。 「皆さんの恋愛が成就するよう、私も祈らせてもらいます。これはサービスです♪」 巫女の祈りに、少女達が心酔したように両手を合わせて頭を垂れる。 その横で、日常を取り戻した仔もふらがあくびをする。 ―――神も精霊も。アヤカシさえ凌駕しそうな乙女達の想いに、力を貸し給へ。 君と幸せな日々が送れますように、もふ。 |