ゆけ年!こい年!
マスター名:みずきのぞみ
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: やや易
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/01/05 17:58



■オープニング本文

 木枯らし吹きすさぶ中。
じゃりと地面を踏みしめて仁王立ちする複数の影。
「おう。響を呼んできな」
 地面に枯れ枝で絵を書いて遊んでいた子供達が太い声に驚いたように立ち上がると、井戸端まで走って逃げた。
 井戸端から、一人の女性がゆっくりと立ち上がる。響(きょう)と呼ばれる長屋のアネキ分である。
「今年もそんな時期だねぇ‥望むところよ」
 こちらもニヤリと不敵な笑みを浮かべて、男達の影に歩み寄った。腕組みして立っている初老の男に挑みかかるようなまなざし。
「まず先に言っておく。おとなしく払えば‥」
「今年もやるに決まってるだろ」
 男の言葉を遮って、響が言い放つ。
「‥いい度胸だ。なら今年も大晦日にやろうじゃないか」
「ああ。勝ったらその大福帳にあるツケはチャラ」
 男の腰にぶら下げている帳面をあごでさしながら、響がすました顔。
「負けたら、利息も含めて全て払って、来年の半年分も先に収めてもらう」
 男も負けじと不遜な態度である。
「横暴な大家だこと」
「一筋縄じゃいかない店子をもっているとな」
 お互いが面白そうに呟く。
 年末に、家賃や味噌代などのツケの払いをかけての戦い。長屋には響をはじめ、合計十の店子がいる。それぞれが年末の支払いに追い回されるのであるが、いつからかツケをかけての大家と店子の戦いがこの村の名物となっていた。
「去年同様、勝たせてもらうわよ」
「そうそう楽しく年はこさせないぜ」
 にらみ合う二人。
「じゃあ、今年も近所の除夜の鐘がなり始めてから、108つ鳴り止むまでだな」
「あたしの頭に巻いた最中を取ったらあんたの勝ち。鐘がおわるまであたしが逃げ切ったらここの長屋の皆のツケはなし」
「いいだろう。ああ、今年はこいつらも参加させてもらうよ。あらかじめ言っとけば卑怯でもないだろう?」
 大家の周りに静かに立つ三人の男達。ただならぬ気配をもっている。足音もさせないところからして、シノビだろうか。
 長屋の住人たちと響では到底太刀打ちできそうにない。
「‥こっちだって助っ人を用意していいのね」
「ああ、かまわんさ。ただし‥」
「死人はご法度、ね」
 腰に手を当ててわかったという風に言う響に大家が頷く。
「じゃあ、せいぜい年末までに金をかき集めておくことだな」
 大家が笑いながら響たちの村を後にした。


「さて、負けるわけには行かないわね‥」
 長屋から心配そうに顔を出している店子たちに振り返って。
 大家だって楽しんでいる。
 粋なはからい同士の毎年の恒例行事。
 見物人までやってくる始末だ。無様な姿はさらしたくない。
「ヤロウども! やるからには、勝つわよ!」
 おお、と店子たちは声を上げた。



■参加者一覧
水鏡 絵梨乃(ia0191
20歳・女・泰
村雨 紫狼(ia9073
27歳・男・サ
エグム・マキナ(ia9693
27歳・男・弓
羽喰 琥珀(ib3263
12歳・男・志
玉響和(ib5703
15歳・女・サ
ライ・ネック(ib5781
27歳・女・シ


■リプレイ本文

●用意!
「待たせたな」
 まさに暮れ押し迫る夕闇の中、年を越したきゃツケを払えと長屋にやってきたのは、大家と六人の男達。大家以外はいずれも若い衆であり、体力には自信がありそうだ。
 中でも先日紹介された三人は余裕たっぷりで腕組みをしている。
「待ちくたびれたよ。‥まぁ、鐘が鳴り出せばこっちのもんさね」
 響が立ち上がると、狭い長屋の奥に控えていた六つの影も立ち上がる。
「こっちも紹介しとかないとね‥少々値は張ったけど出し惜しみしても仕方ない」
 響はすぃ、と体をずらして六人を見せる。六人のいでたちを見た瞬間、大家は驚いたが、改めてまじまじと見回すとフン、と鼻を鳴らした。
「男二人はいいとして‥女子供が相手だと手加減するとでも思ったか」
「甘く見ないことね‥」
「これは鐘の方には見張りの一人も要らぬかも知れんな!」
 がはは、と背を反らして大家が笑った。
「じゃ、鐘が鳴ったら始めるとするか。響、最中を隠すなよ」
「そんな卑怯な真似しやしないよ。しっかと頭に巻いて待っててやるよ!」
 軽口を叩きあいながら、長屋を出る二人。
 がやがやと初詣にかこつけて集まる見物人の中、毎年恒例の闘いの幕が上がるのであった。



「しっかし、こんだけ見物人から見料集めたら売り上げガッポリじゃん」
 露店が立ちそうなくらいの人ごみをみて村雨 紫狼(ia9073)が感心していた。長屋の通りと鐘撞堂への道には誰が引いたのか、綺麗に縄が張られ、見物人と区切られていた。
「たぶんシノビはこないと思いますが、シノビがきた場合対応します」
 ライ・ネック(ib5781)は同じシノビとして、鐘の数だけ用意された豆をごまかされないよう豆の守りをかって出た。
「あ、あの。家賃も払えない方がいるとは知らなくて‥でも精一杯がんばります」
 やや緊張の面持ちで、賑やかさにのまれまいとして玉響和(ib5703)が声を上げた。裕福な家の生まれなのだが、長屋の暮らしには興味津々である。
「じゃあ、数えに行くか‥地味に重要だよな。長屋のガキンチョも連れて派手にいくか」
 寝ずに遊んでいた子供達を村雨が集めにいった。心なしかかわいらしい女児が多いのは気のせい‥ではないかもしれないが。



「ふむ‥踏み倒しは好みませんが、望みと代償が揃っているならば話は別。なにより――心構えが気に入りました」
 一番目の鐘を待つ大家に歩み寄ったのはエグム・マキナ(ia9693)である。その風貌は穏やかであるがどこか含みがある微笑みをたたえている。
「なんだ? お前さんは」
「私たちと余興をしませんか? もし受けてくださるのであれば――そうですね、その勝敗で響さんを追い詰める時間に差をつけましょう」
「ふふん。おもしろいじゃないか。なんだ、その余興とやら」
「私と遠当てを競うか――謎かけに答えるか。どちらにします?」
「うーむ。みたところ、お前さん頭はよさそうだな。‥その手にはのらないぜ。遠当てにしようじゃねぇか」
「では、先に的からはずしたほうが負けですよ」
 エグムと大家は弓を構え、村の入り口の門に炭で描いた丸を的代わりに見立てた。エグムの矢は見事的中したが、大家はかろうじて二本まで一番外の枠を掠めていたものの、三本目は力尽きて的の前に落ちた。
「むぅ‥」
「これでも弓術師ですので。射で負けるわけには参りません」
「‥?!」
 エグムが何事もないように全ての矢を中央に当てた。瞬速の矢を発動し、一本目の矢を裂くようにして重ねて突き刺さった三本目。観客が大いに沸いて手を打ち鳴らした。これで鐘五つ分、大家は動かない罰則だ。
「なんだと、開拓者だと?!」
 大家が顔色をなくした。それで響がおとなしく言われるままだったのかと合点がいった。心してかからないと、負けてしまう。
「白水、白雲! お前達二人は鐘撞堂へ行け!」
 大家は他の三名も開拓者だと気づき、シノビの二人に鐘の方へ行くように指示を出した。

ゴォォン

「‥始まったわね」
「五つ分はじっとしてるんだよ?」
 水鏡 絵梨乃(ia0191)が大家に面白そうにいうと、響をかばうようにして連れ立ち、長屋の一角へ姿を消した。
 ぐぎぎ、と言わんばかりの歯噛みをして、五つ過ぎるのを待つ大家たちである。ある意味律儀なのかもしれない。
「よし鳴った! 行くぞ!」
 呪縛をとかれたように、大家と四人の男達が長屋に入っていった。響の家はもちろん空っぽで、どこかの家に潜んでいるに違いない。
「ここか!」
 大家が勢い込むと、店子がたすきと鉢巻をかけた姿で出迎えた。
「毎回追って追われてじゃあ芸がねーだろ? 今年はちょいと趣向を凝らしだんだ。のるかい、大家のじーさん?」
 中央にひょっこり出てきたのは羽喰 琥珀(ib3263)である。
「む、お前も開拓者だな」
「そうだけど? なんだ聞いた話だと祭り好きで気風の良い大家ってきいてたんだけどなー」
 つまんないなー。と聞こえよがしに羽喰がため息をつく。すっかり先ほどの遠当てで痛い目を見たのではあるが、開拓者がすべからく大喰らいではないだろうし、ここまでいわれると――単に癪な大家であった。
「ええい! なんだなんだ!」
「さっすがー! これだけ蕎麦を用意したんだけどな。これを食べきったら響の場所教えちゃおっかなー」
「ぬぅぅ、よし! 喰えばいいんだな!」
 大家の言葉に男達も目を丸くしたが、雇い主の言うことには逆らえない。仕方なく大家と共に胡坐をかいて、山と積んである椀子蕎麦と格闘し始めた。

ゴォォーン

「早く食べないと鐘終わっちゃうよ?」
 店子たちがそれ、それ、と小気味よく蕎麦を椀に流し込んでいく。鐘の音にあせりながら冬だというのに汗をかき、ひたすらかきこむ大家達であった。



●今いくつ?
「三十にー!」
 数本の縄を僧達が持つと、撞木を数度鐘に近づけてから勢いよく引いて鐘を撞く。

ゴォォーン。

「三十さーん!」
 子供達が指折り数える。さっさと鐘を鳴らし終えて欲しい気もするが、正々堂々を名乗るなら、僧たちをせかしてはいけないのだろう。彼らは別に年末のツケと家賃をかけての闘いのために鐘を鳴らしているのではない。
「楽勝。豆で数えっからダメなんじゃん!」
「ええと。まだしばらくは大丈夫そうですけど‥‥いつくるかは分かりませんから。あの。気を抜いちゃ駄目ですよね? ねぇ聞いてますか?」
 子供達と大声で数えている村雨に心配そうに聞く玉響である。三方に盛った豆を僧たちが一つ鐘を撞いてはもう一つの三方に移し変えていく。
 しかし、心配どおり二人のシノビ、白水と白雲が現れた。足音を消して着地すると豆の盛ってある三方を狙って手を伸ばす。
 すかさず、間に割って入ったライが白水の手を捕まえた。
「聞くところによりますと、この競争は店子さん達だけではなく大家さん達も楽しんでおられるとか。でしたら、勝負はあくまで楽しく公正にいきませんか?」
「ええい離せ!」
 白水が腕を振りほどく。豆の数をごまかされないように見張りにつくよりも、豆の数を減らした方が早く決着がつくというものである。
「残りの豆、貰い受ける!」
 雇い主が遠当てなど策略にのり、人がよく付き合っているのをみると、さっさと片付け
たくなるというものだろう。白雲と白水の二人は苦無を取り出した。
 流血沙汰はご法度。鐘撞堂の周りにいた観客からもきゃあ、という声があがる。
「ずるはいけませんよ、ずるは!」
 玉響はピリリ!と思いっきり笛を吹いた。するとなんだなんだと椀子蕎麦対決を見守っていた観客が鐘撞堂に集まってきた。
「おっとここは任せとけ!」
 見せ場とばかりに村雨が腕まくりをした。地味な仕事から一転、シノビとの攻防になり血が騒ぐのである。
「村雨のにぃちゃん! がんばれー!」
 可愛らしい声援つきである。これで頑張らずにおられようか。

ゴォォーン

「あ。でも数忘れた‥」
 ごにょ、と一人がきづいた。玉響の縄で、村雨もライもシノビを捕まえようとするのだが、相手も勿論おとなしくしていない。豆の乗った台をひっくり返したりと大騒ぎである。

―――目の前の捕り物に興奮するあまり、気がつけば全員、鐘の数を忘れたのであった。



●大虎?
 椀子蕎麦の椀がみるみる積みあがっていく。大家勢も四人で頑張った。だが鐘も半分くらいは鳴っただろうか。
「‥ど‥どうだ」
 口を開けば蕎麦が出てきそうな状態であるが、シノビの白雨と若い三人はまだ比較的元気であった。
「ちぇ、蕎麦もなくなっちゃったか。仕方ねぇなぁ。心意気みせてもらったからこっちも見せねぇとな」
 羽喰が唇を尖らせながらどかりと胡坐をかいた。
「水鏡に任せた! 響は向かいの筋の東から二つ目の部屋だよ」
「よし! 行くぞ!」
 声とは裏腹によろよろと腹を抱えながら大家が響の元へ向かった。



「来たみたいだね」
 額に最中の皮をきっちりと鉢巻で巻いた響が、護身用の木刀を携えて大屋の襲来を待ち構えていた。去年は店子同士が連携して罠をつくって撃退したのだが、その後の修理が馬鹿にならなかった。おまけに今年はそれを見越してシノビを三人も雇ってきたのだから、同じ手は通用しないだろう。
「ボクが守るから大丈夫だよ」
 ほろ酔い加減の水鏡 絵梨乃(ia0191)が響の手からひょいと木刀を抜き取った。
「なにすんのさ?」
「怪我したりさせたりするのはご法度なんでしょ?」
「だって多少の危険は‥」
「あるけどね‥ッと」
 水鏡が目の前消えたかと思うと、響の体が傾いだ。気がつけば水鏡に抱え上げられている。よけた水鏡の足跡を苦無が寸分の狂いなく縫い付けていく。
「?! 飛び道具とは卑怯者!」
「だね」
 叫んでいる響を降ろすと、『泰練気法・弐』を発動した水鏡が戸板の陰にいた白雨の手から残りの苦無をもぎ取った。その様子を遅ればせながら到着した大家が見咎める。
「こら! 白雨よさんか!」
「しかしこのままでは拉致が‥!」
「決め事は守らないといかん!」
「おや‥随分と気持ちのいいおじさんだこと」
「ぬ? うう、さてはまた開拓者だな‥」
「どう? 一対一で呑み比べ勝負といかないかい」
「ワシは‥うーむ‥」
 ぼってりと蕎麦で出た腹をさする。これ以上は大して呑めまい。
「では拙者が」
 眼光を鋭くした白雨が代表をかってでた。先ほどの屈辱を雪ぐつもりなのだろう。
「ボクは酔拳を使うから、そう簡単には負けないけどね」
 ふふ、と楽しそうに水鏡が土間におりると酒と椀を持ってきた。


●百‥?
「おい、豆あったかー?!」
「あった、こっちに三つ!」
 子供達と村雨、玉響、ライは手分けして豆を拾っていた。もちろん、白水と白雲はきっちり縛り上げて邪魔のないようにしているが。
 数を数える作戦は成功したようだったが、邪魔が入ると子供達が全員そっちのけで応援していたため、慌てて散らばった豆を拾っているところである。
「一個でもなくすと損な気がしますです」
 必死に暗闇の中、玉響がろうそくの明かりに目を凝らして豆が落ちていないか確認をする。ライもシノビたちのまわりに落ちていないか注意深く確認している。
「‥大体、でいいわけもないのですが‥」
 僧達も困っている。捕り物が行われているときも鐘をならしていたから、もう八十くらいは撞いた気がするが、あといくつなのか正確なところはわからない。
「とりあえず、ゆっくりでもいいからもう少し撞いといてくれよ。終わった‥はずはないだろうからさ」
 村雨が終わりだと勘違いされると困ると主張した。
「ですが‥」
 渋る僧達。あとで多いだの少ないだの、双方から言いがかりが来るのは勘弁してもらいたいというところだろうか。
「あと、これだけは絶対撞いてないのです‥」
 両手に救うようにして玉響が持つのは皆で集めた二十ほどの豆。
「では、私が引き受けましょう」
 僧達が責任が持てないのであれば、と引き受けたのはライであった。取り出した鞠を強く蹴り鐘にぶつける。

――ゴォォン

「一つ、ですね」
 玉響が一つ豆を減らした。ゆっくりとではあるが、鐘は鳴り続ける。
「よし、玉響がもつ豆がなくなるまでだ。あとは落ちてないかよくみろよ!」
 村雨と子供達は再び豆を捜し始めた。



「いい飲みっぷりだな。ほらもう一杯」
「おまえこそ。ほら飲めよ」
 白雨と水鏡は注しつ注されつで飲んでいる。

ゴォォォン

「ん。鐘の音が変わったか?」
「気のせい気のせい。ほらほら」
「‥強ぇな。‥水鏡とやら‥」
 名前を呼んだところで、がくん、と卓に白雨が突っ伏した。それを水鏡が見て笑っている。観衆たちも美しい開拓者が飲み勝つ様をみて大いに盛り上がった。
次の男、またその次‥と大家勢は水鏡に挑んだが、大して飲まないうちにつぶれてしまった。


 鐘はまだ鳴っている。


「うーん。さすがにきたかな」
 水鏡が四人を倒すと、言葉通り酔いが回ってきたのか、卓に突っ伏して眠ってしまった。
交代で守っていたエグムと羽喰の残り二人が響を守ろうと体をはった。
 相手はもはや大家一人である。
「よっし! ここまできて開拓者相手に力づくもないわな。響! このまま酒で勝負だ!」
「望むところよ!」
 エグムと羽喰の肩を掴んで真ん中から響が割って出る。このまま最中の皮に酒をかけられたりしたら一巻の終わりだが、そんな心配は無用の二人だった。
「やれやれ、ですね」
 エグムが酒を酌み交わし始めた二人を見てため息をつくのであった。



「これで最後―!」
 ライの一蹴でゴォォンとひときわ大きく鐘が鳴った。
 鳴らし終わった分、鳴ってない分、それぞれの三方のまわりに散らばる豆を拾って数を数え、鐘を鳴らし終わった。おそらくは百八つが正確に鳴り終えただろう。
「さあ、結果だ! 村に戻ってみようぜ!」
 子供達と開拓者三人は勢いよく村に駆け出した。


「結果は‥?」
 卓に突っ伏している響と大家。おそるおそる聞く玉響に、羽喰がにかりと笑って親指を立てて見せた。
「今年も長屋の勝ちだー!」
 観衆の中の誰かが叫んだ。
 勝った、負けたと騒いでいる輩もいる。何がしかの賭けが成立していたのかもしれない。
「賭けは感心しませんね‥」
 教師然としたエグムには、粋は理解できても野暮は受け入れ難いものであった。
「さってと! 終わったことだし! 俺らも甘酒で乾杯だー!」
「俺も酒もってきたぜ! 皆で飲もう!」
 すっかり店子と仲のよくなった羽喰の号令で、観客にも店子にも羽喰と村雨から甘酒と酒が振舞われる。響の額にはすっかり最中が張り付いているが起きる気配がない。湯のみに注がれた甘酒を手で包みながら、玉響がほっこりとわらう。
「わ。‥ほかほかで御座いますね。‥なんだか幸せな気分です」
「うん。新しい年もいいことがあるといいな!‥じゃ」
 片手に湯飲みを持ち、全員が乾杯した。

「新年おめでと―――ッ!」
 長屋の店子と開拓者一同にとってよい年になりますように。