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■オープニング本文 ● ビロビジャン。 ジルベリア帝国との戦いに敗れた国。そのかつての首都からジェレゾにむかう一団があった。 三台の巨大な荷車を、それぞれ十数頭の馬が引いている。そして、その荷車を数十人の騎士が守っていた。 「もうすぐアラミリだな。少し休息をとるか」 騎士のリーダーがつぶやいた。 場所は崖に挟まれた一本道。ここを抜ければアラミリに入る。 その時だ。風を切る音がした。そして騎士の口から血が噴いた。その首には一本の矢が突き刺さっている。 「敵襲だ」 誰かが叫んだ。 刹那である。崖を巨大な影が滑り降りてきた。 アーマー。遠雷よりも古い機体である。廃棄された機体が奪われたという噂を騎士たちは思い出した。 旧世代機が騎士たちに襲いかかった。廃棄された機体とはいえ、仮にもアーマーである。あっという間に騎士たちは駆逐された。 「ヴィクトールめ。上手く調整してくれる」 旧世代機から降りてきた男がいった。名はクレタスという。そして彼のいうヴィクトールとはジルベリアの天才技術者であった。ビロビジャンに残る抵抗勢力のもとに逃亡してきたのであるが、その理由についてはクレタスも詳しいことは知らない。 が、ともかくヴィクトールの腕前は確かであった。ジルベリアから奪った旧世代機をビロビジャンの騎士にあわせて改造してくれたのだから。 さらに彼は実験機を制作した。たった三機であるが。が、その三機はジルベリア兵によって発見、奪取されてしまった。 「超兵よ。思う存分暴れさせてやるぞ」 男が荷車にかけられた布をはねのけた。現れたのは黒く塗装された鋼の巨人である。 ジルベリア帝国主要アーマーである人狼より、さらに人の形に近い外形をもつアーマー。名称は仮に超兵と名付けられていた。対して旧世代機は猟兵と呼ばれている。 俯せ状態で横たえられた超兵の背部装甲を男――アイアコスは開けた。乗り込み、シートにつく。 「起動」 操縦用ヘルメットを被ったアイアコスが念じると新型練導機関が眼を覚ました。宝珠より供給される膨大な熱量が超兵の全身を駆け巡る。 ゆっくりと超兵が身を起こした。熱が蒸気となって全身から排出される。 アイアコスは全面に展開されたモニタースクリーンを見つめた。超兵の眼部分から見た映像を魔法によって変換し、投影したスクリーンである。 「いくぞ。ジルベリア人を皆殺しにする」 アイアコスは右手グローブを動かした。連動する超兵の右手が動き、巨大な剣を手にとる。 殺戮の意志を秘め、巨大な魔物が歩み始めた。 ● アラミリ。かつてのビロビジャン辺境の都市だ。 時刻は昼過ぎであった。突如のびた光の奔流に石造りの建物が吹き飛んだ。そして周辺にいた多くの人々が肉片と化した。 恐慌に陥った人々は見たのである。建物のむこうに屹立する巨大な影を。無論人々は巨影の名が超兵であることを知らない。 悲鳴が響き渡った時、第二の破壊の光が人々を灼いた。 その時だ。地をはしる人影があった。そして、人影は相棒である巨人に乗り込んだ。 「好きにはさせない」 駆動音とともに巨人は身を起こした。 |
■参加者一覧
皇 りょう(ia1673)
24歳・女・志
リューリャ・ドラッケン(ia8037)
22歳・男・騎
ハッド(ib0295)
17歳・男・騎
ネプ・ヴィンダールヴ(ib4918)
15歳・男・騎
ヴァルトルーデ・レント(ib9488)
18歳・女・騎
ウルイバッツァ(ic0233)
25歳・男・騎
エリス・サルヴァドーリ(ic0334)
18歳・女・騎
源五郎丸 鉋(ic0743)
20歳・女・騎 |
■リプレイ本文 ● 騒乱の中、八つの影が疾駆していた。目指しているのは彼らの相棒である。 「虐殺とは愚かな……何者で何が目的かは知らぬが、無辜の民を傷つけ、己の誇りすら汚した先に何が残ると言うのか。これがジルベリアの騎士道だと言うのなら笑わせてくれる。皇家の名に懸け、全力で止めさせて貰うぞ」 気品に満ちた秀麗な相貌の娘がいった。そして巨人に駆け寄る。 戦装束で飾り立てられたそれの名は武神号。皇家の先代当主が現当主に贈った鉄の棺桶である。 今も娘――皇りょう(ia1673)の耳に残る言葉がある。先代当主の言葉だ。 「我が一族は戦場で生まれ、戦場で果てる。動き続けよ。最期のその刹那まで刀を手放すな。その汗の一飛沫、涙の一筋、血潮の一滴が人々を守る盾となるのだから」 その言葉を噛み締め、りょうは武神号の装甲ハッチを開けた。 同じ時、りょうと同じく気品に満ちた美貌の少年もまた装甲ハッチに手をかけていた。 彼の名はハッド(ib0295)。そして彼の駆るアーマーはてつくず弐号といった。 名こそてつくずであるが、しかしそれの潜在的ポテンシャルは高い。 基本となる機体は第四世代アーマー「人狼」である。が、てつくず弐号は人狼に多大なる改修を加えていた。特筆すべき点は宝珠の追加装備である。これにより跳躍時に出力をあげ、短期ながらも擬似的な飛行能力を得る事を可能としている。 「ふ〜む。面倒なコトになっておるよ〜じゃが、ここはひとつ、王自らが彼奴らに鉄槌をくだしてやろ〜ぞ」 尊大にハッドは笑った。 四機のアーマーが並んで、あった。 一機は深紅の塗装が施された人狼型駆鎧「ReinSchwert」の改良機だ。持ち主の戦い方が独特のため、改良と次世代機のテストベッド機体としての側面を持っている。名はNeueSchwert。 もう一機は桜色に塗装されていた。為耐久重視の機体構造となっており、背部には風の宝珠を利用した反動推進装置が備えられている。名はロギ。 さらに、一機。ヴァイナーという名のそれは改良を加えられていない人狼であった。が、この場合、それが搭乗者の並ならぬ技量を想起させて、いっそ不気味ですらあった。 そして四機め。こちらも何ら改良は施されていない人狼である。が、どういうわけか名をソリテというこの機体からはヴァイナーの場合と違って搭乗者の生真面目さが感じられた。 「何なのでしょうか、あのアーマー達は?」 すでに操縦シートについた少女がいった。律儀そうな美少女で、名はエリス・サルヴァドーリ(ic0334)。 「知る必要はない」 冷徹にこたえたのは綺麗な金髪の少女だ。端正な面立ちであるが表情は少なく、人形のそれを思わせる。名をヴァルトルーデ・レント(ib9488)というその少女は氷の声で続けた。 「彼奴らが何者であるのかには興味は無い。さらに何を考えているのかにも。ただ私が成すは、陛下の所有物たる臣民を害した大罪人を処刑するという一事のみ」 「でも」 呟き、その十五歳ほどの少年は夢見るような眼をあげた。白銀の狐の神威人ネプ・ヴィンダールヴ(ib4918)だ。 「あの真っ黒の駆鎧、見たことないですよね。改良……じゃない。新型の駆鎧かな」 「おそらくな」 こたえ、真っ直ぐな瞳の若者――竜哉(ia8037)は叫んだ。起動、と。 瞬間、新型練導機関が活動を再開した。宝珠から高効率で汲み出される膨大な熱量をまるで血液のように全身の機関に流入させる。 竜哉の眼前に映像が映し出された。NeueSchwertの眼のから見た映像を魔法的に翻訳したものだ。 微かな駆動音とともに竜哉の操るNeueSchwertが身を起こした。ふかしすぎた熱量を関節部から排出する。傍らはネプとヴァルトルーデの操るロギとヴァイナーも屹立していた。 「先にいくぞ」 いまだ起動中であるエリスに告げて、竜哉はNeueSchwertの足を踏み出させた。 ● 「どうやら俺だけじゃないようだな」 人狼から声がした。名はスメヤッツァ。 搭乗しているのは燃えるような紅髪の若者であった。名をウルイバッツァ(ic0233)という。 彼の前の術式スクリーンには四機のアーマーが映っている。おそらくは軍のものではない。となればウルイバッツァと同じ開拓者に違いなかった。 その時、別のアーマーが一機、身を起こした。 青黒い塗装。様々な補強が施された機体は左右非対称で、いかにもバランスが悪そうだ。名は黒曜。 「おい」 ウルイバッツァが呼びかけた。 「きみもあいつらと戦う気かい?」 「ああ」 黒曜のコクピットで肯いたのは凛然とした容姿の娘だ。獣耳をもっているところからして神威人であろう。 「駆鎧乗りの源五郎郎丸鉋(ic0743)。よろしくお願いするよ」 「僕の方こそ」 こたえたウルイバッツァの眼前のスクリーンに、その時、見たこともない漆黒のアーマーが映し出された。 「あれは」 ウルイバッツァが声を途切れさせた。槍のようなものをかまえたそのアーマーの動き――身ごなしともいうべきものに彼は尋常ならざる鋭さを感じ取ったのだ。 「あれほどの機体と装備でもこの行動……惜しいねぇ」 「見慣れない機体に見慣れない装備…あれは魔槍砲? 新型か?」 鉋が身を乗り出させた。その時だ。漆黒のアーマー――超兵初号機のもつ槍の先端から光の本流が迸りでた。 「まずい」 ウルイバッツァの回避の意志、そして両手両足の筋肉の動き、それらを総合的に読み取った魔法機関がスメヤッツァに回避行動をとらせる。が、遅い。 「くうっ」 咄嗟にウルイバッツァはオーラダッシュを発動させた。スメヤッツァの脚部からオーラが放出され、機体が一気に横に跳んだ。傍らを超高圧の熱量が疾りぬけていく。 「なんて威力だ」 ウルイバッツァは呻いた。かすめただけでスメヤッツァの機体がダメージをうけている。まともにくらえばどうなることか。 「あれって」 ネプが眼を輝かせた。 「魔槍砲…ですよね。 駆鎧用の魔槍砲なんて発明されたのです…? 欲しいのです…!奪いたいのです…! とりあえず、あの魔槍砲持ってる敵と戦ってみるのですー!」 ネプがロギの前進させた。地響きをたて、建物の陰を縫いながら超兵初号機に接近していく。 「おい。待て」 竜哉は慌てた。が、ロギはとまらない。 「ヴァルトルーデ」 呼びかけると、NeueSchwertがもう一機の漆黒の機体――超兵弐号機を指し示した。 「俺は奴をやる。手を貸してくれ」 「わかった」 「エリス」 竜哉がようやく立ち上がったソリテにむかって呼びかけた。 「ネプを追ってくれ。黒い奴の性能がわからない。一機だけであたるのは危険だ」 「わかりました」 エリスがソリテを前進させた。鋼の足に踏みつけられ、石畳の路面が悲鳴をあげる。 と、エリスの脳裏をその時疑念がよぎった。敵の正体と目論見について。無辜の民を虐殺することにどんな意味があるのか。 慌ててエリスは首を振った。疑念を払う。 ここは戦場である。その戦場において武人たる者が戦いの意味を問うなど愚かなことであった。 「ならば三機めの黒い奴は吾輩の獲物だな」 ハッドはてつくず弐号に斧をかかげさせた。そして高らかに名乗る。 「我が駆鎧を盾とし兇刃を避け、疾くこの場を去るよう」 「私は先にいくぞ。悠長なことをしている余裕はないからな」 ずずん、と。りょうの操る武神号が超兵参号機にむかって足を踏み出した。 ● 二度のオーラダッシュで、一気にロギが超兵初号機に迫った。術式スクリーンで確認したアイアコスがわずかに眼を見開く。 「ジルベリア? いや」 超兵初号機が魔槍砲をかまえた。撃つ。 「凄い威力でも当たらないと、ね」 三度めのオーラダッシュ。足から噴出するオーラでカフェの椅子をはね飛ばし、ほぼ真横にロギが跳んだ。破滅的熱量の奔流がロギの翻るマントを灼く。 「あっ」 ネプが声をもらした。術式スクリーンに肉迫する超兵初号機の姿が映っている。 次の瞬間、衝撃が来た。機体がゆれ、ネプの身体がシートにめり込む。 蹴られた。 そうネプが気づくより先に、魔槍砲の筒口がスクリーンで大映しになった。 次の瞬間である。超兵初号機の装甲がはじけた。被弾したのだ。超大口径の弾丸がごとんと石畳に落ちた。 「ちっ」 舌打ちし、アイアコスは超兵初号機を後退させた。その眼前、ソリテが再びアーマーマスケットをかまえた。 「逃しません」 エリスの叫びとともに、ソリテがトリガーをひいた。同時に超兵初号機の魔槍砲もまた熱線を放つ。空で弾丸が溶け、その余波がソリテの装甲を灼いた。 ● 「駆鎧乗りの源五郎、参る!」 オーラを放出し、鉋が黒曜を跳ばせた。ターゲットは旧型機――猟兵壱号だ。すでに全機の位置は確認してある。 もはや巨大な鉄板としかいいようのない巨剣を振り上げていた猟兵壱号に乗り込んでいたクレタスはその事実に気づいた。建物から目標を変え、黒曜に叩き込む。 ぐおん、と鉄と鉄をぶつけたような音を轟かせ、黒曜の鋸刀が巨剣を受け止めた。 「今度は私の番だ」 鉋の斬撃の意志。黒曜が大剣を猟兵壱号の顔面にぶち込んだ。激烈な衝撃に猟兵壱号の頭部がひしゃげる。魔法回路が遮断され、内部スクリーンの映像が消えた。 装甲の外から鉋の声が響いてきた。 「伊達や酔狂でこんな姿をしているのではないと言う事さ」 「くそっ」 怒号を発したものの、もはや猟兵で戦うことは不可能だ。全部装甲ハッチを開けたクレタスは、次の獲物に馳せる黒曜の後ろ姿を憎しみのこもった眼で見つめた。 同じ時、ウルイバッツァもまた別の猟兵に接近していた。彼の脳内には全アーマーの位置図が構築されている。 動いた。黒い奴が撃つ。 スメヤッツァがオーラを放出した。熱線を躱しつつ、さらに猟兵に接近。巨大なアーマーアックスを叩きつける。 咄嗟に猟兵参号が大剣で受けた。が、強烈な衝撃を受けとめきれず、腕ごと剣がはじかれる。 「とどめだ」 スメヤッツァの足が猟兵三号の全部装甲にぶち込まれた。 ● 超兵三号機のコクピット内。 搭乗者のエリアスはターゲットをロックオンした。てつくず弐号だ。 魔槍砲を撃つ。のびる破壊熱線はしかし、たくみに躱したてつくず弐号の傍らをはしりぬけていく。 「遅いのだ」 オーラを噴出、すべるように回避しつつ、今度はハッドが魔槍砲で狙いをつけた。撃つ。 撃ちだされた熱量は超兵三号機のもつ魔槍砲を直撃した。爆発。眼も暗むような閃光が広がり、てつくず弐号の術式スクリーンが一時的に光量をしぼった。 刹那である。爆煙を切り裂いて超兵三号機がてつくず弐号に殺到した。反射的にハッドはてつくず弐号を後退させた。が、間に合わない。 「は、迅い」 ハッドが呻いた。超兵の機動速度は彼の想像を遥かに超えていたのだ。 瞬間、超兵三号機の巨剣がてつくず弐号に叩き込まれた。衝撃にてつくず弐号が仰け反る。無視できぬダメージを負っていた。 「はっはは。帝国に味方する犬やろうめ。とどめだ」 エリアスは哄笑した。そして超兵三号機の全出力を込めた一撃をてつくず弐号の頭部へ―― 巨剣がはじかれた。シールドによって。武神号だ。 「私が相手だ」 りょうがいった。この場合、彼女は自身も気づかぬ笑みをうかべている。 「……それにしても、この胸の高まりは、私も志士道だの何だのと偉そうな事を言える人間では無いという事か。強い相手と相対する程に、魂が昂る。修羅道の業の深き事よ」 りょうが攻撃の意志を爆発させた。その思念をトレースした魔法機関が武神号を刺突の形に機動させる。鋭い剣の一撃が超兵参号機の肩を貫いた。 「くそっ」 エリアスが超兵参号機が後退させた。人狼を凌駕する超兵の迅速な機動力がなければ魔法機関そのものを貫かれていたところだ。 ● 「貴様ら、何者だ」 竜哉が超兵弐号機を狙った。魔槍砲を撃つ。 「俺達はビロビジャンの騎士だ」 攻撃を躱し、超兵弐号機コクピット内のパウルが叫んだ。そして彼もまた撃った。 「馬鹿が」 熱線を回避し、竜哉が吐き捨てた。 「こんな力をもちながら帝国軍じゃなく民衆に八つ当たり? そんな根性だからお前らは国を守れなかったんだよ!」 「ぬかせ。お前に何がわかる?」 「わかるさ。我が国もまた失われ、既に帝国北方の一領地だ。我も名を失い、身を堕とした。だがな、お前たちと違って、俺は騎士たる誇りだけは失わなかった」 「黙れ」 超兵弐号機が魔槍砲のトリガーをひいた。NeueSchwertもまた。 凄まじい破壊力を秘めた熱量が二条、空を灼きつつ疾った。空で交差。破壊力と破壊力がからみあい、そこに小太陽を現出させた。 刹那、パウルは見た。光を背に死神のよう影が迫って来るのを。 死神に雷光がからみついた。瞬間的に高められた熱量が蒸気に変じて影の全身から吹き出る。 「くっ」 咄嗟に超兵弐号機が魔槍砲をかまえた。が、トリガーがひかれるより早く、影――ヴァイナーが石斧を振った。練導機関が唸りをあげる。 「ぬっ」 バウルが呻いた。石斧によって魔槍砲がはじかれている。前面ががら空きだ。 「おしゃべり時間は終わりだ」 冷たく告げると、ヴァルトルーデはヴァイナーをさらに肉薄させた。 ● 「終わったようだな」 武神号の装甲ハッチが開き、りょうが姿をみせた。同じく姿をみせたネプが惜しそうに魔槍砲の残骸を眺めた。あれほど粉々になっていては修復は不可能だろう。それでもネプは未練たっぷりに呟いた。 「どこかの工房にでも持っていって、使えるレベルまで修復してくれたりしないですかね…?」 「…開拓者のように」 操縦シートに背をもたせかけたままエリスが口を開いた。とてつもなく疲れている。 それでもエリスは続けた。 「国境のない者同士であったなら、このような事は起きなかったのでしょうか。 広げるは容易く、消すのは難しいものです。戦火は」 「くだらん」 ヴァイナーから降りると、ヴァルトルーデは動かぬ猟兵にむかって歩みを進めた。中には操縦者が閉じ込められている。 結果、開拓者により五体の旧型機が破壊された。漆黒の新型機二体は撤退、一機は自爆してしまった。新型機をジルベリアにわたさぬという最後の意地であったのだろう。 「が、皇帝に弓引く者を許してはおけぬ。処刑する」 すう、と。ヴァルトルーデは死神の鎌にも似た漆黒のそれを持ち上げた。 |