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■オープニング本文 ● 「あったぞ」 ドアを開け、男はニヤリとした。 薄暗い地下倉庫。そこに巨人が眠っていた。 身長は三メートルほどだろうか。鎧をまとった騎士のように見える。今は生産が終えられている二代目正式アーマーであった。 「年代ものだが、ジルベリアの連中に泡をふかせるにはちょうどよかろうぜ」 男――アルフォンソ・ジーニが合図した。次々と別の男達が地下倉庫に降り立つ。名はそれぞれに、 カルロ・ヴォロンテ。 チェザーレ・ヴィーコ。 コンスタンティーノ・トゥルーリ。 ダリオ・トセッリ。 エミリアーノ・ティンティ。 フィオレンツォ・ストール。 ジャンパオロ・シコローネ。 グイドリノ・サラ。 ルイス・ロッカ。 全員、ジルベリア帝国に征服された小国の人間であった。 「久しぶりだな、豪風」 アルフォンソが懐かしそうに微笑んだ。 豪風。アルフォンソ達がつけたアーマーの銘である。豪風は元々彼らが搭乗していたものであり、帝国により没収されていたのだ。 盗んだ宝珠をセットして後、アルフォンソは胸部ハッチを開いた。乗り込み、座席につく。 天蓋からつられている操縦用ヘルメットをアルフォンソは手にとった。相変わらず重い。これでは首が凝りそうだな、とぼやきつつアルフォンソは操縦用ヘルメットをかぶった。 次いで操縦用グローブとブーツに四肢を入れる。こちらも窮屈であった。 豪風?起動。 アルフォンソが念じた。同時に練力開放。宝珠によりより強力練成された練力が練導機関に注入された。 一瞬、アルフォンソの全身が痺れた。まるで電流が駆け巡ったかのように。 刹那、ゴーグル内の視界がクリアになった。倉庫内の様子が見て取れる。魔法的処置により豪風の視覚とシンクロしたのであった。視覚は豪風の眼の存在するであろう位置に調節してある。 ぐおおお。 低い咆哮にも似た駆動音が響いた。次の瞬間、豪風が身を起こした。ゆっくりと立ち上がる。その威容に、残る九人が思わず後退った。 「いくぞ」 アルフォンソが命じると、九人が他の豪風に乗り込んだ。それを確かめたアルフォンソは、倉庫の片隅におかれた巨大な筒状のものに気づいた。 「大砲? いや」 アルフォンソは気づいた。それがアーマー用の魔槍砲であることを。おそらくは実験段階の試作品であろう。 「これは使えるぜ」 アルフォンソは再びニヤリとした。 ● 三メートルを超す、馬鹿馬鹿しいほど巨大な剣が真横に空を薙いだ。十人近い人間が吹き飛ばされる。地に叩きつけられた時、それは真っ赤な肉塊へと変わっていた。 「くそっ」 呻いたのは開拓者であった。その腕の中には少女が一人。先ほどの剣の一撃から救い出したのだ。 「どうしてこんなところにアーマーが――いや」 ここだけではない。他のところからも悲鳴や破壊音が響いている。他にもアーマーが暴れているのだ。 「帝国のアーマーを待っている余裕はない。やるか」 開拓者は立ち上がった。 |
■参加者一覧
青嵐(ia0508)
20歳・男・陰
柚乃(ia0638)
17歳・女・巫
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
孔雀(ia4056)
31歳・男・陰
レイス(ib1763)
18歳・男・泰
フランヴェル・ギーベリ(ib5897)
20歳・女・サ
ヴァルトルーデ・レント(ib9488)
18歳・女・騎
ディラン・フォーガス(ib9718)
52歳・男・魔
エリアス・スヴァルド(ib9891)
48歳・男・騎
紅 竜姫(ic0261)
27歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ● 抱きかかえていた少女を地におろし、銀髪を後ろに撫でつけた青嵐(ia0508)は鋼の巨人を睨みつけた。 「おそらくは二世代目のアーマー……しかし、そんな旧式機が何故ジェレゾで暴れているんだ?」 その時、アーマー――豪風4が巨剣を建物に叩き込んだ。石造りの建物が微塵に砕け散る。 「はっはは。ジルベリア人め。くたばりやがれ!」 豪風5の伝声管から笑い声が響いた。 「ジルベリア人め?」 聞きとがめ、目を眇めたのはボーイッシュな雰囲気の娘である。その手にはケーキのおさめられた箱をさげている。名はフランヴェル・ギーベリ(ib5897)。 「というところをみると、搭乗者はジルベリア人ではないということか」 「他国の人間であることは確かでしょうね」 阿鼻叫喚の巷、涼しい顔で佇んでいる若者がいった。これは名をレイス(ib1763)という。 「何者なのでしょうか」 「わからん」 青嵐が首を振った。そして、しかし、と続けた。 「判ってることが一つある。奴らには義も信念もない。力に溺れ、、己の不満をまき散らす事しか考えちゃいない。故に、俺はこれを否定せねばならぬ。民を守るのが、力あるものの義務なれば!」 「無視して帰ったらお仕置きされそうですし、やりますか」 レイスが苦く笑った。 ● ガシャリ。 金属が石畳をうつ大きな音に驚き、その気品に満ちた美しい少女は振り返った。 「どうしてアーマーがこんなところに」 少女――柚乃(ia0638)が呟いた。 その時だ。アーマーが巨剣を振り下ろした。 ぐしゃり、と。路上に呆然と立ち尽くしていた親子の肉体が潰れた。 ゴーグルに魔法投影された視界に柚乃の姿をおさめたチェザーレがニンマリした。 殺す。 チェザーレの意思をヘルメットがキャッチ、さらに手足の動きを感じ取ったグローブとブーツが微妙なアーマーの動きを補助。豪風3が一歩足を踏み込み、剣を横薙ぎした。 「危ない!」 横から跳んだ人影が柚乃を押し倒した。一瞬遅れて豪風3の剣が柚乃の頭部のあった空間を薙いですぎる。 「ぼんやりするな。死ぬぞ」 男――エリアス・スヴァルド(ib9891)が怒鳴りつけた。戦いなれた身のこなしからしておそらくは騎士であろう。はっと我に返った柚乃の目から涙があふれた。 「何の罪もない親子が」 「それどころの騒ぎじゃないわ」 嘲るように男が見下ろした。顔に白粉をぬりたくり、唇には血のように真っ赤な紅をさしている。孔雀(ia4056)であった。 「街中でアーマーが暴れてるのよ。犠牲者はもっとでるわ」 ふっ、と孔雀が笑った。まるでパーティーの只中にいるかのように。 と、別のアーマー――豪風4に搭乗するコンスタンティーノが獲物を見つけた。蹲った少女だ。 「ぴーぴーうるせえな」 豪風4が剣を振り下ろした。轟音が空を震わせ、石畳が砕け散る。当然少女の肉体はミンチ状に粉砕され――なかった。 豪風4からわずかに離れた位置に、一人の娘が立っていた。角があるところからみて修羅であろう。 紅竜姫(ic0261)。その胸には少女が抱かれていた。 竜姫は怒りに爛と眼を光らせ、豪風4を見上げた。 「何が目的かしらないけれど、誰かを犠牲にしてもいいっていうの…? 私は、そんなの許せないわ」 ● ふと、その男は足をとめた。髭にはすでに白いものが多くまじっている年齢。 男――ディラン・フォーガス(ib9718)は空を見上げると、小さく溜息をこぼした。 「どんよりと厚い雲に覆われた灰色の空。身を切るような空気。気が鬱ぐのは、気候のためだけか……。うん?」 ディランは驚いたように眼を見開いた。 やや離れた場所。建物の間に屹立する巨影がある。 「旧式のアーマー…?」 そこまで呟いた時だ。アーマー――ジャンパオロの操る豪風8が剣を建物に叩きつけた。 「スィーラ城のお膝元で、この騒動は…反乱か?」 ディランは豪風8にむかって駆け出した。事態に気づき、逃走してくる人々をかきわけるようにして。 その時、ディランは気づいた。彼と同じく豪風8にむかって疾駆する者があることに。 「俺はサムライのルオウ(ia2445)! よろしくなー」 その者が不敵に笑ってみせた。燃えるような紅髪が特徴的な少年だ。 「おお。これで二人……いや」 ディランは眼を上げた。その視線の先、建物の屋根の上に漆黒の影がある。 黒衣の娘。吹きつける寒風に金の髪を翻らせて。――ヴァルトルーデ・レント(ib9488)であった。 ● ダリオのゴーグル内の視界に、一人の娘の姿が投影された。フランヴェルだ。逃げ惑う人々の中、盾を構えながら接近してくる。 仲間に破壊と殺戮の続行を命じ、ダリオはフランヴェルめがけて豪風5の歩を進ませた。 その時だ。フランヴェルが吼えた。それは狼の咆哮に似て。 斃す。三機の豪風がフランヴェルめがけて殺到した。 「帝都で蜂起する連中だ。動けなくなる迄、死力を尽くして戦うだろう。ならば、完膚なきまで叩き斬る!」 フランヴェルが跳び退った。同時に手にした箱を豪風5の顔面めがけて投げつける。 「何っ!」 ダリオが呻いた。ゴーグル内の視界がケーキのクリームにより半分ほど塞がれている。 同じ時、豪風7の機体がぐらりと揺れた。まるで何かにつまずいたかのように前のめりで倒れていく。 「図体がでかいというのも大変なものだな」 ほくそ笑み、鋼糸を収納した青嵐は油壺を手にした。それを投げつけようとし――あっ、と愕然たる声を発した。倒れ掛かった豪風7の足元からオーラが噴出したからだ。 砂塵が巻き上がり、青嵐の視界を塞ぐ。まずい、と悟った青嵐が背を返した。が―― 空に豪風7の巨体が踊った。その手には槍に似た武器が携えられている。アーマー用魔槍砲だ。 魔槍砲の先端から目も眩まんばかりの光が噴出された。咄嗟に青嵐が空に身を投げ出す。一瞬遅れて地が爆裂した。 凄まじい衝撃に建物が震えた。爆風により、当の豪風7すら機体を仰け反らせている。凄まじい破壊力であった。 豪風がアーマー用魔槍砲を放り捨てた。砲身が大破してしまったからだ。やはり試作品ということか。その影響で豪風7の左腕も砕け散っていた。 「うっ」 地を穿った大穴の傍ら。苦悶し、横たわる青嵐の姿があった。直撃を受けたわけではないが、その身体はぼろぼろになっている。 「とどめを刺してやる」 豪風7は剣を手にした。と、その視界に巨大な影が浮かび上がった。遠雷だ。 豪風7が剣を遠雷に薙ぎつけた。が、手ごたえはない。遠雷は青嵐の作り上げた幻影であった。 刹那、豪風7の足元に人影が現出した。レイスだ。 「ふんっ!」 レイスが身体を豪風7の膝間接部に叩きつけた。同時に練力を流し込む。 ぐらりと豪風7の機体がよろけた。関節部が損傷を負ったのだ。しかし破壊までには至っていない。 「さすがに硬い」 レイスが歯噛みした。同時に白光が袈裟に疾る。 地に降り立ったレイスががくりと膝を折った。掠めた豪風7の剣。その一撃によって彼の鎖骨と肋骨が砕かれていたのであった。 「ええいっ」 ちらりと仲間の様子を見やり、なおさらに怒りの炎を燃え上がらせたフランヴェルが豪風5に襲いかかった。その襲撃を、しかしダリオは見とめることはできぬ。 易々と豪風5の足元まで接近すると、フランヴェルは殲刀――秋水清光の刃を豪風5の膝関節部に叩き込んだ。必殺の柳生無明剣だ。 ガキン、と。硬い音を響かせ、秋水清光がはね返された。レイスの玄亀鉄山靠と同じように一撃で関節部を破壊することは不可能であった。 「なら、こいつはどうだ!」 跳躍しざま、フランヴェルは刃を薙ぎ上げた。金属音とともに地に落ちたのは、豪風5が背に負っていた魔槍砲である。 ごろんと転がった魔槍砲を豪風6が拾い上げた。狙う。ポイントしたのはフランヴェルの背だ。 「死ね!」 エミリアーノが叫んだ。魔槍砲の先端が青白く輝き――爆発した。 ● 「おい! この落ちこぼれども! 弱いものいじめしかできねえのか!? このルオウ様がこらしめてやっから悔しかった来てみやがれえ!」 ルオウが吼えた。同時に三機の豪風が振り返り、ルオウを追って歩み出した。 「うまくいったようだな」 ディランが呪文を唱えた。 現象界干渉。元素固定。街路に鉄の壁が現れた。 「よし。これでアーマーもこちらには来れまい。今のうちに逃げるんだ」 ディランは逃げ惑う人々にむかって叫んだ。その時―― 「鼠め。逃げられると思っているのか」 嘲笑すると、グイドリノは一気にを練力を放出した。オーラを噴出した三機の豪風がすべるようにルオウに接近、剣を振りかぶった。 「ぬうう」 ルオウが剣気を放った。が、豪風はとまらない。 「まずい!」 ディランが再び鉄の壁を現出させた。咄嗟に反応できなかった豪風8が壁に激突。壁が粉砕され、豪風8の頭部がひしゃげた。 「ディラン、やるぜ!」 ルオウの満面を彩った凱歌の笑み。が、それはすぐに凍りついた。鉄の壁を踊り越えて二機の豪風が空に舞っていたのである。同時に二機が魔槍砲をかまえた。 「愚者の戯言に付き合う義理は無く同情する機微は一片足りとも無く、唯々陛下の持物たる臣民を傷付け暴威を恣にした罪は重く、因って処刑人たる私が貴様等の矜持と言う犬をも喰わぬ塵芥や、貴様等愚者に協力する道化共諸共に、素首を斬り捨て晒すものとする。…処刑、執行」 地を馳せた黒影が跳んだ。そして死神のように襲った。 煌く銀光。陽光をはねたヴァルトルーデの鎌は豪風10の腕関節部を切り裂いた。 瞬間、魔槍砲が炸裂した。現出する小太陽。ヴァルトルーデと豪風10が爆風に吹き飛ばされた。 そして、豪風9。魔槍砲でルオウをポイント、撃つ。 着弾。強大な熱量が地をなめていく。 咄嗟にディランが呪文を唱えようとしたが、間にあわない。破壊的熱量に吹き飛ばされる。地を転がりつつ、魔法で生み出した蔦で豪風8の動きを制限するのが渾身の業だ。 「うおおお」 雄叫びは空で響いた。ルオウだ。 「お前らは間違ってる。無関係な人を傷つける奴を、俺は断じて認めねえ!」 ルオウが棍棒――石の王を豪風9の頭部に振り下ろした。咄嗟にはねたのは豪風9の拳である。鉄すら砕く石の王がぶちこまれ、豪風9の頭部が粉砕された。同時、鋼の拳がルオウの身を鞠のようにはねた。 ● 「助けが来るまで、何とか私たちで持ち堪えないと…」 竜姫の身が突如現出した。 練力による脚力増幅。竜姫は瞬間移動ともいってよい疾駆ができるのであった。 「逃がすかよ」 コンスタンティーノがオーラをふかせた。加速した機体が迫り、竜姫を剣で薙いだ。いや、剣は空をうった。竜姫がまたもや瞬脚を発動させたのである。 と、竜姫の眼前に巨影が立ちはだかった。豪風3だ。 踏み込みざま、豪風3が剣をはしらせた。鋭い一撃にさしもの竜姫の反応も遅れた。鉄柱ともいってよい分厚く巨大な剣が竜姫の身体を粉砕し――なかった。 豪風3の剣がとまっている。機体の足に蔦がからみついていた。 「これ以上、誰も傷つけさせません」 柚乃が印を解いた。 「俺がやる」 石畳を削り、停止。さらにコンスタンティーノが豪風4をダッシュさせた。 瞬間、辺りに霧が満ちた。が、それは視界を遮るほどのものではない。物陰に隠れた孔雀が舌打ちした。 「だから集めるんじゃなくて一機に全員でかかった方がよかったのよ。それに」 孔雀はニンマリした。それは毒蛇の笑みであった。 「ほう」 豪風1のコクピット内。シートについたアルフォンソが感嘆の声をもらした。 ゴーグル内の映像。不規則な軌跡を描いてするすると退る男がいる。エリアスだ。 数回、アルフォンソは剣をうちこんだ。が、いずれも空を薙いですぎている。 「やるな。ジルベリアの中にも貴様のような奴がいたか」 「帝国に恨みを抱く者たちか」 エリアスが問うと、アルフォンソがそうだとこたえた。一瞬、エリアスの顔に浮かんだのは寂漠たる翳であった。 守りたいものを守れず、死んだように生きている自身と比べ、激情か憎悪か信念か――ともかくも思いのままに行動する彼ら。何と羨ましい連中なのだろう。 この行動の果てに待っているのは確実なる死だ。が、それすらも俺は手に入れることはできない。 アルフォンソが豪風1を加速させた。さすがのエリアスも逃げ切れない。 「危ない!」 柚乃の絶叫。瞬間、豪風1の眼前に鉄の壁が現出した。 「くそっ」 豪風の足が壁を蹴った。同時にオーラ噴射。豪風1の機体がさらに高みに舞い上がった。 「もらったぜ」 豪風1の魔槍砲がエリアスをポイント。刹那―― 怨嗟に満ちた悲鳴が響き渡った。その場の全員が冷たい激痛をおぼえ、血を噴く。孔雀の放った怨念の集合体の仕業である。 「こんなことで」 口から血を滴らせながら、アルフォンソが魔槍砲に練力を送り込んだ。その脳裏に浮かんでいるのはジルベリア兵に殺された妹の面影である。そして―― 孔雀の悲恋姫のためにすべての者が一瞬動きを遅延させた。が、一人、臨戦態勢を継続させた者がいる。竜姫だ。 生命波動により負傷回復。一瞬後、瞬脚を発動させ、豪風4に肉薄した。 竜姫は拳を豪風4の足にぶち込んだ。それは破壊を目論む一撃ではない。衝撃は豪風4のバランスを奪った。 「なっ」 倒れつつ、豪風4の剣がはねあがった。竜姫が跳び退る。 「馬鹿が」 カルロが竜姫をポイント。魔槍砲を撃つ。空間を灼きつつ疾る熱光は竜姫をとらえ――竜姫が消えた。 「終わりだ」 豪風1の魔槍砲先端の輝きが膨れ上がった。咄嗟にエリアスは動けない。 次の瞬間だ。竜姫を捉え損ねた熱光が豪風1の胸を溶解させた。 「死ぬな!」 エリアスが豪風1胸部装甲の隙間に漆黒の剣を突き入れた。こじ開けようと力を込める。 「アルフォンソ!」 コンスタンティーノの絶叫をまきちらし、豪風4が殺到した。エリアスめがけて剣を振り下ろし―― がっきとばかり、剣が豪風4の巨剣を受け止めた。全衝撃をうけ、石畳が陥没、亀裂がはしる。 剣の主は巨漢であった。その顔をエリアスは知っている。 「バルトロメイ・アハトワ。生ける伝説か!」 「騒ぎを聞いてな」 右手のみで軽々と巨剣を受け止めているバルトロメイがニィと笑った。そして周囲を見回し、その灰色の瞳に驚嘆の色を滲ませた。 「旧式とはいえ、四機のアーマーを四人で相手取るか。俺が出向くまでもなかったようだな」 エリアスの視線の先、数対のアーマーの姿があった。帝国のアーマーだ。 エリアスは視線を豪風1のコクピットに戻した。皮膚を炭化させたアルフォンソの姿がある。 「死んじゃだめよ」 孔雀が駆け寄った。 「あんたにはまだ使い道があるんだから」 「どけ」 孔雀を押しのけると、エリアスが問うた。 「……教えてくれ。貴様の名を」 「俺はアルフォンソ。アルフォンソ・ジ――」 声は途切れた。 |