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■オープニング本文 石鏡国、北部。人口一万くらいの町、百夜。 田舎だが、そこそこ栄えている。 町の代官は出張で長く不在だが、代わりに頑張っている町奉行がとても評判が良い。 特に治安維持に辣腕を発揮している。 「あっしは何もやっていません」 ここはお白洲。縄で縛られた男は、あくまで無実を主張したが、一段高い所から見下ろす町奉行は、すべてお見通しとばかり笑みを浮かべた。 「いい加減にしねえか! 手前がいくら嘘八百を並べ立てようと、この俺が一部始終をこの目で見てるんだぜ」 「そ、そんな馬鹿な」 愕然とする男に、奉行は打ち首獄門を宣言した。これにて一件落着。 新しい町奉行は難事件を次々と解決し、悪党どもをこてんぱんに叩きのめしてくれるというので、町人から絶大な信頼を得ていた。 あんまり活躍がすごいので、開拓者ギルドに妙な依頼が届いた。 「お奉行様があんまり張り切りなさるので、善良な悪人が困っております。どうかお助け下さい」 「世も末ですねぇ」 係員は冷やかしなら帰んなと目で訴えたが、依頼人は怯まない。 「困っている人を助けてくれるのがギルドじゃねえのかよ」 「そういわれても、どこから突っ込んだらいいのか」 「こことか、そことか?」 はいはい、指を刺さない入れない。 「お奉行様は俺達を捕まえて有罪にするだけで、まともなお裁きじゃねえんでさ」 「ちゃんと見てたって話じゃないですか」 「嘘ですよ、そんな芝居みたいな話がありますかい」 何か事件が起こると、奉行は配下の同心たちに付近で最も評判の悪い者、下手人と思われている者をしょっぴかせ、証拠や証人を捏造し、何もない時は自分が目撃者になり、有罪にしていた。町人はスピード解決で町のダニも掃除されるというので喜んでいるが、冤罪比率は凄まじいらしい。 「え?」 「そんな驚くことじゃねえよ、どこでもやってる話さ。だが、あの奉行はやりすぎなんですよ。盗人にも三分の理、身に覚えのねえ罪で打ち首じゃあ、浮かばれねえにも程があらぁ」 仕返しがしたいのだという。 依頼内容はこうだ。 偽の事件をでっち上げて奉行所に訴える。同心や岡っ引きがやってきたら、チンピラに扮装した開拓者が素行の悪さを見せつける。首尾よく捕まえられ、お白洲で嘘の証拠をでっち上げられたら、正体を明かして奉行の不正を糾弾する。 つまり、目には目を、という話だった。 「なるほど」 「なんでそんなまどろっこしい事をって顔だね。出る所に出てもいいんだが、そんなガラじゃねえ。俺達はお奉行様の首が欲しい訳でもないんだ、ただぎゃふんと言わせてみてぇのさ。という訳で、宜しくお頼み申します」 悪党に頭を下げられ、さてどうしたものだろう。 係員がシノビを使って下調べをしてみた所、依頼人の話は事実らしいというので、開拓者を募ることにした。依頼書を貼り出せる類のものではないので、それとなく開拓者達に声をかけてみる。 |
■参加者一覧
リンスガルト・ギーベリ(ib5184)
10歳・女・泰
フランヴェル・ギーベリ(ib5897)
20歳・女・サ
ナキ=シャラーラ(ib7034)
10歳・女・吟
サライ・バトゥール(ic1447)
12歳・男・シ |
■リプレイ本文 悪は人の本性。 だから悪徳は世界に蔓延る。 正義とは悪の一面に過ぎない。 この世に救いなどあるものか! 「ご主人様っ」 リンスガルト・ギーベリ(ib5184)は必死で逃げる。 振り乱した長い金髪をフランヴェル・ギーベリ(ib5897)は乱暴に掴んだ。 「ひっ」 「聞き分けのない娘だ」 フランは白いスーツ姿の青年貴族。メイド姿の少女を見据える。 「服を脱げと言ったのが、聞こえなかったか?」 目が座っている。ネクタイを緩め、涎を拭う姿は演技とは思えない。 これは只事ではないと、道行く人々が足を止める。 「服の上から鞭が欲しいのか。いや罰は素肌で受けるものだ、さあ脱ぎなさい」 「ひ、人が見ています。何卒、お許しを…あっ」 頭を地面に擦り付けたメイドの襟首に、容赦なく腕が突っ込まれた。フランが少女の下着に触れる。我慢の限界だ。 「ざ、戯言も大概にせいっ!」 立ち上がりざま、メイドの正拳がジルベリア貴族の腹にめり込む。よろけたフランの手を払い、やさ男の顔面を打ち抜いた。 「げふっ」 「ああ! ご主人様ぁ、誰がこんな酷いことをっ」 殴り倒した主人に縋り付くメイド、見物人の目が点だ。 「何事だっ!?」 騒ぎを聞いて同心と岡っ引きが駆け付けた時には、怪しい貴族もメイドも姿が無い。 「…?」 石鏡の地方都市、百夜。近頃の話題と言えば、ついに始まった冥越奪還でこれからどうなるやらと一喜一憂、戦々恐々。万が一に備えて警備隊と商人が競うように傭兵を募ったり、力の無い人々は開拓者らの活躍に祈りを捧げたり。 その陰で、奇行を繰り返すジルベリア貴族の噂が聞こえていた。 「暖かくなると、おかしなのが現れる」 変態と片づける意見が多かったが、この話には続きがあった。出所は旅の瓦版師ナキ=シャラーラ(ib7034)だ。 「変質者を野放しにして良いのか? 良い訳ねーぜ!」 ナキは独自の情報源を持ち、件の変態貴族はジルベリアを脱出して石鏡に潜伏中の凶悪な殺人鬼だと触れ回った。 「その名もジルドーレ! 幼女ばかり狙う狂人だ。奴は目を付けた少女を浚うと、拷問し、凌辱し、殺して食らった正真正銘の悪魔だぜっ!」 ジルドーレとフランは、特徴に合致する点が多かった。こうなると百夜の奉行所も静観していられない。同心達はフランとナキの行方を捜した。 「金髪で子供の瓦版屋を見なかったか?」 「へえ。今さっきまで、ここに居ましたが」 舌打ちする岡っ引きの足元、大八車の下に隠れるナキ。彼女にも奉行所に協力出来ない事情がある。 「半蔵親分、ジルベリアの悪魔ってのは本当なんですかい?」 「さあな。お奉行様は開拓者ギルドに確かめてるって話だが、とっ捕まえて見りゃ分かる道理さ」 さて石鏡のギルドやジルベリアに問い合わせて、どのくらい日数がかかるか。 「早くて数日でしょう。下手をすれば依頼そのものが露見しないとも限りません。一両日中には決行した方が良いと、ナキさんは言っていました」 「そう、残念だね」 連絡係を務めるサライ(ic1447)が人目を忍んで訪れたのは、フラン達が潜伏する空き家。元の家主がアヤカシに取り殺されたとかで買い手がつかない廃屋を、絶好の条件だと格安で借りていた。 「…汝に頼んだのは、間違いじゃった…」 部屋の奥に吊るされているのは半裸のリンス。鞭で全身を打擲され、息も絶え絶えという有様だ。サライの目が曇る。 「ここまでする事は無いですよ」 「ああ…作戦とはいえ、リンスを虐めるのは心が痛む」 「頬が緩んでますよ?」 不安だ。 「やっぱり、僕が代わりに」 「…良いのじゃ。この変態は妾でなければ承諾せんと言うておるし、今更中止は出来ぬしのう。最後まで耐えて見せるのじゃ」 リンスはまだ折れていない。 「それでこそ、我が最愛の姪だ」 「あの変態女の息の根を止める機会かもしれねーぜ」 サライから様子を聞き、ナキは分からなくなる。いっそ、このままフランを獄門に送った方が、世の為ではないか。 「奉行は逃しちまっても、結果的に悪が一人滅びるんだぜ」 「依頼遂行が優先です。リンスさんも納得しませんよ」 ナキは顔をしかめる。難しい事は分からない、だから面倒な依頼は苦手だ。 「って事は、あたし達で悪事の証拠を見つけねーと駄目か」 「はい、僕達には動かぬ証拠が必要です」 瓦版はもう十分とみて、ナキはサライと一緒に奉行所の動きを探る。 「とはいえ、過去の事件を再調査するには時間が足りませんし、都合よく冤罪事件が起きるでも無し。…困りましたね」 ナキ達には切り札がある。だが、それを使う条件が厳しい。 「お奉行様? ああ、切れ者って噂だね」 「難事件を次々に解決するものだから、悪党からは鬼のように恐れられてるらしいな」 町で奉行の評判を聞いたが、概ね高評価だった。それっぽい悪党を捕まえているだけで、本当の裁きが行われていない事に気づく者はまだ少ないようだ。 「ムカつくぜ」 ナキは貧民窟で育った。そこと比べれば、この町は明るい。なのに警吏が形骸化して町が腐る様を、まるで歓迎するような皆の笑顔は不愉快だった。 「暴走してるようだね、今のうちに止めなければ」 そんな事をフランが言っていたのを思い出す。 「くそ、変態女のためって訳じゃねえんだぜ」 「その話、詳しく聞きてぇな」 油断だった。同心の一人を尾行したはずが、ナキは背中を岡っ引きに取られる。 「探したぜ。瓦版屋、てめぇのネタ元を教えて貰おうか」 十手を引き抜く岡っ引き。確か、半蔵という名前だ。 「親分、あやをつけるのは止めてほしいぜ。こっちは信用商売なんだ、情報源は明かせねえんだぜ」 逃げかけて、ぎょっとした。今しがた角を曲がった同心が引き返してくる。笑えない、まんまと罠に嵌った。 「流しの瓦版なんざロクなもんじゃねえ。大方あの二人も一味だろ。何を企んでいやがる?」 油断なく近づく半蔵。進退窮まったナキはフルートを取り出す。客寄せに吹いていたものだが、他にも使い道がある。 「…て、てめぇ…」 「どうしたんだい親分、疲れが溜まってんじゃねーか?」 ナキの足元に倒れ伏す同心と岡っ引き。 「お休みだぜ」 胸をなでおろし、ナキはその場を立ち去った。 翌日の夕刻、家主の密告で奉行所はフラン達の隠れ家を発見。夜な夜な叫び声が聞こえるという知らせもあり、町奉行自らが手勢を率いて乗り込んだ。 「家主の話では、借りた男はジルベリア貴族で名前はジル、女使用人のリンスと二人暮らしで、訪れる者は居なかったようです」 「うむ」 息を殺して屋敷を囲む彼らの耳に、リンスの悲鳴が聞こえた。 「ひぎいいっ! ごしゅじんざま、ごれいじょう殴られたら死んでしまいまずうっ!」 切迫した状況だ。奉行はすぐさま突入を指示。刺股や突棒など捕具を構えた三十名ほどの捕り手が屋敷になだれ込んだ。 「ぎゃああああ!私の腕、うでえええ!」 「足が、あしがああ! 殺して、ころしてくださいいい!」 叫び声を頼りに、奥の部屋に踏み込んだ捕吏が見たのは、凄惨な光景だった。むせるような血臭、血や体液がこびり付いた奇怪な拷問具の数々。そして、中央に立つフランは口から真っ赤な血を垂らし、狂ったような哄笑を上げていた。 「皆の者、面をあげい」 百夜町奉行、外岡景忠は白洲の最上段に座り、砂利敷に座らされたフランと顔を合わせた。 「其の方、ジルベリア人のジルに相違ないか」 「相違ある。僕の名はフランヴェル・ギーベリだから」 首を傾げたのは証人として同席した大家である。 「家主茂兵衛、この者はジルでは無いと申しておるぞ」 「嘘です。この人は確かに。台帳を見て頂ければ分かります」 証拠品として台帳が提出される。 「それで?」 フランヴェルは苦笑し、名乗ったことは認めた。 「僕が悪魔のような男で、可愛いリンスをこの手にかけたと? 君達はそんな妄想で僕を捕まえたのかい」 肩をすくめ、悠然と立ち上がる。 「ええい、控えろ」 与力の目配せで左右の同心が動くより早く、ネクタイを捨てる。 「乱心致したか」 「正気さ」 服を脱ぎ始めた。呆気にとられる皆をよそにフランはスーツとさらしを放った。 「良く見たまえ」 身に着けているのは黒い紐ショーツ一枚。ほぼ全裸で胸元を押さえ、自信満々だ。 「ジルドーレは男の筈だが?」 一時休廷。 陣幕で風呂敷のように包まれて退場し、服を直して再着席するフランヴェル。今度は両脇に捕具を構えた同心が配置された。 「変だな。僕の疑いは晴れたと思うけど」 「お主の容疑は町中での度重なる猥褻行為、ならびに使用人殺害である。女だからと無罪の証しにはならぬぞ」 「ちぇ、見せ損か。まあ羞恥心は無いから平気だけどね」 町中での乱行については、一応は事実と認めながらもあれは粗相をしたリンスへの躾であると突っぱねた。 「それが罪だというなら受け入れても良いよ」 罰は鞭打ちと聞いて、うっとりする変態。 「だけど、やってもいない殺人は受け入れ難いね。証拠はあるのかな?」 状況証拠は揃っていた。殺されるという本人の声を、同心達も聞いているのだ。しかし、フランヴェルは頑として否認する。こうなると、正攻法では裁判に日数がかかる。 「いい加減にしねえか! 手前がいくら嘘八百を並べ立てようと、この俺が一部始終をこの目で見てるんだぜ」 痺れを切らした外岡は得意の名台詞。これには与力が唖然とした。現場で指揮していた奉行が、何を目撃したというのか。 「呆れたね」 「全くじゃ!」 声は空からだ。頭をあげたフランが笑う。滑空艇の上に立つのは殺したはずの少女。 「ほほう、妾が殺されたとな。ではここにいるのは誰じゃ?」 証人として白洲に立ったリンスガルト。可哀想なのは大家で、顔面蒼白で今にも気絶しそうだ。 「これ茂兵衛。あらためて訊ねるが、この者が召使いのリンスに相違ないか?」 存外に落ち着いた外岡に、開拓者は顔を見合わせた。茂兵衛の方はもう動転してしまって暫く言葉もなかったが。 「…か、顔は似ておりますが、私の知っている娘はこんな堂々とした態度ではありませんでした」 予想外の答えを発する。 「妾がリンスじゃ!」 「いいえ。立ち居振る舞いが違います。べ、別人でございます」 先入観もあり、そもそも良く知りはしない。おどおどしたメイドと、本来の貴族令嬢の彼女を同一人物とは思えないのも無理はない。 「どうするのじゃ、これでは作戦が」 「問題ないよ」 動揺するリンスを優しく宥めるフラン。 「君の可愛い声を聴かせてあげればいいのさ」 「?」 「だって、彼は可愛いリンスしか知らない。不本意だけど仕方無いよ」 フランの瞳は愉悦に酔っていた。さすがは稀代の変態、発想が違う。 「こ、この状況で汝は…」 リンスは絶望した。 「仲間割れか?」 フランの胸倉を掴み、泣きそうなリンス。同心達が止めるべきか迷っていると、最上段の奉行が一喝。 「いい加減にしねぇか! 手前ぇらの魂胆は読めてるんだよ」 「何?」 「お前達は瓦版やのナキと結託し、ありもしない殺人鬼の噂を流した。奇矯な振る舞いを繰り返して注目を集め、その隙に、金貸しの甚五郎を殺害した。どうじゃ、相違あるまい」 事件のあった晩、実はもう一つ、事件が起きていた。 それが、金貸しの甚五郎殺しである。 外岡奉行の推理はこうだ。 フランに殺されたと見せかけたリンスが、密かに屋敷を抜け出して甚五郎を殺し、金を奪う。まさか死人が下手人とは思わない。その上でジルによるリンス殺しの疑いをはらせば、フランにもアリバイが出来るので捜査の目を晦ませる。死体が消えても狂言が見破られないように、わざと食人鬼ジルドーレの噂を流した。 「まんまと出し抜いたつもりだろうが、生憎とこの奉行の目は節穴とは違う。潔く、観念せい!」 一方的に捲し立てられて、初耳のフランは絶句。適当に話を合わせただけで、所々辻褄が合っていないのだが、咄嗟には反論できない。 「濡れ衣だ!」 そう叫ぶのがやっと。 「では、其の方らはなぜ斯様な真似をしでかした。言い逃れできまい」 言葉に詰まる。奉行を罠にはめるため、とは言える雰囲気では無い。 外岡がニヤリと笑う。これでは奉行にやられた悪人達と同じ末路だ。型にはめられたのは、彼女の方か。 「お待ちください」 最後の証人の登場だ。行く手を塞ぐ同心らを蹴り飛ばし、サライとナキが乱入した。 「彼女達は下手人ではありません!」 「狼藉者!」 「待て。…下手人では無いとな? では誰だと申すのだ?」 奉行が止めたのは、一味と思われたナキが逃走するならともかく白洲に現れたのを理屈に合わないと感じたからだ。 「そうだ、真犯人が別に居るというなら連れて来い」 「その必要はないですよ。だって甚五郎さんを殺した犯人はこの中に居ますから」 皆の視線がフランに集まった。リンスまで、半泣きで疑いのまなざしをくれている。 「あなたが犯人です」 警備に混じっていた岡っ引きの半蔵を指さすサライ。 「見て来たように言いやがるじゃねえか?」 「はい。犯行時間と現場は分かっていますから、見て貰いました」 「そうだぜ!」 ナキが得意になり、時の蜃気楼を説明する。 「魔法が証拠になるか!」 「ならないでしょう。ですが半蔵さんの長屋に隠してある大金と、血のついた匕首。この動かぬ証拠を前に、どんな反論がありますか」 「ほぅ」 今回は表に出ない分、サライは誰より多忙だった。仲間のサポートと捜査の為に、ほぼ不眠不休。それを察して、十手持ちは自白する。 「ねえな。あの野郎を刺したのはおいらだ」 以前から外岡の強引な裁きに不満を持っていた半蔵は、フラン一味を使って甚五郎を殺す計画を思いつく。外岡は必ずフラン一味を有罪にするのだから、完全犯罪成立だ。甚五郎は外岡のせいで捕まえ損なった悪党だという。 「恐れ入りました」 サライは自分達の事を、町奉行所の不正を調査する為にギルドからやってきた開拓者だと説明する。嘘は言っていない。 「うーむ。これにて一件落…」 「まだ大事な問題が残っているよ」 奉行に待ったをかけるフラン。 「そうじゃの」 外岡を徹底的に追及すると思いきや。 「リンスの真偽がまだだ」 「それは先程…」 「何を言っているんだい。奉行の推理を僕達は否定したし、実際に事実では無かったね。つまり、きみが僕の可愛いリンスか否かは、まだ明らかではないのさ」 リンスガルトが、茂兵衛の知るあの気の弱いメイドであると証明できなければ、フランにかかった殺人の容疑は晴れない。 「一理あります」 頷くサライ。 「やってやれ。減るもんじゃねーぜ」 笑いを堪えるナキ。 「い、嫌じゃ」 涙目のリンス。 「誰か、僕の鞭を」 フランは真顔。 「…」 奉行は無言。開拓者と分かった上は、とっととお帰り願いたい。 「お奉行! 構わぬから妾殺しの罪でこの者を縛り首にするのじゃ!」 「リンスは可愛いなぁ」 フランは至福の笑みを浮かべた。 |