一匹の小鬼
マスター名:松原祥一
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/08/04 22:02



■オープニング本文

 街道から離れた小川のそばに、小さな村がある。
 村から南に歩いて行き、森を抜けると、荒れ放題の平原が広がる。

 そこに、一匹の小鬼が立っている。
 手には大きな鉈を握り、その足元には、血塗れのサムライが倒れている。
 小鬼は動かなくなった開拓者を踏み躙り、にんまりと笑みを浮かべた。


 開拓者ギルドに、鬼退治の依頼が一つ、張り出された。
 ある村の近くの荒れ地に一匹の小鬼が棲みつき、村人が難儀しているという。
「小鬼程度、造作も無い」
「それが、そうとも云えないのですよ」
 鼻で笑った開拓者に、係員が難しい顔で話し始めた。
「ほう? 何か裏があるのか」
「実は開拓者が一人、やられています」
 たまたま村に通りかかった開拓者が、話を聞いて小鬼退治を引き受けた。その開拓者は現在行方不明である。
「目撃した村人の話ですが、意気揚々と荒れ地に向ったサムライの帰りが遅いので様子を見に行くと、小鬼の足元に倒れていたそうです。もう一度、今度は人数を連れて村人が戻ってきた時には遺体も残されていなかったとか」
 小鬼が根城にする荒れ地は、普段は通行する者も稀だ。それでも時折、行商人などが抜け道として利用していて、放置は出来かねるという。また、いつ村を襲わぬとも限らず、不気味であった。
「ふむ。多少は使える鬼のようだな。だが、やられた奴が未熟であっただけのこと」
 隠れる場所が無い荒れ地なら、腕利きが多勢で囲めば鬼一匹など必勝必殺。逆に、恐れをなして現れない事だけが心配だった。
「何と云う事はあるまいよ」
 小杉半兵衛はこの依頼を受ける気になり、一緒に行ってくれる開拓者を探した。やはり小杉も、大きな事は言ったものの、一人で行く気は無いらしい。

 荒野に潜む一匹の小鬼退治、果たして如何なるか。



■参加者一覧
柊沢 霞澄(ia0067
17歳・女・巫
鴇ノ宮 風葉(ia0799
18歳・女・魔
海神 江流(ia0800
28歳・男・志
月酌 幻鬼(ia4931
30歳・男・サ
雲母(ia6295
20歳・女・陰
ライオーネ・ハイアット(ib0245
21歳・女・魔
水野 清華(ib3296
13歳・女・魔
御調 昴(ib5479
16歳・男・砂


■リプレイ本文

 『安らぎの白巫女』柊沢 霞澄(ia0067
 『風世花団団長』鴇ノ宮 風葉(ia0799
 『御饌津の守り役』海神 江流(ia0800
 『黒幻、泰然たり』月酌 幻鬼(ia4931
 『優しき覇王』雲母(ia6295
 『女心説きし淑女』ライオーネ・ハイアット(ib0245
 『深蒼裂く霊銃』御調 昴(ib5479

 以上、七人の開拓者の名を称えよ。
 彼ら七人は、前人未到の闇に挑みし本物の勇者。
 如何なる結末を迎えても、冒険に集った彼らの名誉は断じて傷つかない。


 ‥‥
 ‥‥‥
 ‥‥‥‥‥


 真夏の昼下がり。
 街道はずれで、独りの開拓者が倒木に腰掛け、大儀そうに煙草を吹かせた。
「お連れさんはどうなさいました?」
 不審に思った馬子が問うと、小杉半兵衛は疲れた顔で振り向く。
「帰った。こんな依頼、二度と受けるものかと怒り狂っていたな」
 半兵衛が座る倒木は、激怒した開拓者の一人が叩き折ったものだ。
「え!? あれほど上機嫌でございましたのに」
 顎に手をあて、首を傾げる馬子の爺さんに、半兵衛はぽつりぽつりと語り始める。


「ギルドで聞いた話だけだと、何とも分からないけど」
 海神江流のぼやきは、誰に呟いたものでもない。
 小具足にジルベリア風の鳥打帽、武天造りの太刀を佩き、鬼神の陣羽織も鮮やかな志士には、似合わぬ台詞である。
 しかし、一行の中にそれを咎める者は居ない。
「そうですね。少し‥‥あの話だけでは、問題が無いようにも不可解にも見えます‥‥。見かけによらず強い小鬼かもしれませんし‥‥」
 柊沢霞澄の声は苦しげだ。巫女は強い日差しを避けて顔を伏せた。霞澄は巫女装束の上に袖の長い魔術師のローブと祈祷服を着こみ、汗でびっしょり濡れている。
「村までは、まだ遠いのでしょうか?」
 霞澄の隣を歩く御調昴が立ち止まる。昴の格好はアル=カマルのディスターシャに赤いコート、小柄な体はジルベリア式の銃士コートに包み込まれ、黄金色の髪の間から獣人の証しである立派な角が覗いた。
「さあ。知ってそうな奴に聞いてみようや」
 この中で一番背の高い月酌幻鬼が、前方に顎をしゃくる。陽炎の先、近づく馬と人の姿が見えた。
「あれは小鬼とは違うかな」
 八尺近い巨躯の幻鬼。名は体を表すというが、幻鬼の場合はどうか。鬼面に鬼頭の外套、鬼咲の鉢金を締め、担ぐ巨大な斧は『鬼殺し』と、堂に入っている。
「どう見ても馬子だね」
 目を細めて断じる江流に、幻鬼は乾いた笑いを発す。
「はっはっは、俺だってそのくらいは分かる。だけど、確認は大事さ? 俺は推理したり、考えたりは苦手だからなぁ」
 人の姿をしていても、鬼の変化でないとは言えぬ。だが疑えば切りは無いので、海神は面白くない。
「その村なら、あと一刻ほどだね」
 馬子は開拓者達に丁寧に道を教えてくれた。
「時に爺さん、荒れ地に出るって小鬼の話は聞いた事があるかね」
 尋ねたのは小杉半兵衛。
「聞いたな。俺は見てないが、開拓者が喰われたって噂だね。さてはお前さん方、仇打ちかい」
「ふん、そんな大層なものじゃないわ。ただ、小鬼如きがのさばってるのは、気に入らないのよ!」
 霊杖を振り回して憤慨する鴇ノ宮風葉。少女は小柄な体と口調から幼くも見えるが、分厚い魔術書と陰陽の指輪、何よりローブの陰から垣間見える符が、陰陽師である事を示していた。
「如きと油断してたら、足元をすくわれるよ」
 たしなめるのは海神。彼には、風葉が不機嫌な理由の察しがついていた。来る筈の者が、一人欠けている。
「豪快に倒すところを見せようとか、考えてたのかな」
「そう、ばーんと見得を切って‥‥って、そんな訳ないでしょ!」
 風葉と海神は幼馴染みなのだそうだ。
「頼もしい開拓者様だね」
「‥‥だと、いいのだがな」
 小杉の浮かぬ表情を、馬子とライオーネ・ハイアットは怪訝そうに見る。ライオーネは一行の中では最も軽装で、水晶の冠と虹色の外套が目立つくらいだ。
「さっさと行くぞ。のんびりしてたら、日が暮れるわ」
 そう言って、雲母は早足で馬子の隣を抜けていく。黒角弓と、山伏の鎧は彼女が強力な弓取りである証拠。


「見事な出で立ちの開拓者様が七‥‥いや八人も。意気揚々と向われたので。俺は心の中で、皆様の前に立つ敵に同情したとも」
 馬子は輝くような開拓者一人一人の姿を思い出していた。
「今、云い直したよな?」
「いやいや、それより村で何があったので?」
「無い。それが大問題よ」
 老馬子は目を丸くする。


「荒れ地の場所は分かったが、まもなく日も暮れる。出発は明日だな」
 村に着いた一行は村長の屋敷に行き、小鬼退治を依頼された開拓者と名乗った。村長は酷く狼狽した様子で、
「失礼、これほど立派な開拓者様にはお目にかかったことが無いもので。たかが小鬼一匹に、申し訳もございません」
 片田舎の村長には、都の開拓者が珍しい様で、特に霞澄、風葉、雲母のような歴戦の勇者は雲上人の如く思っていた節がある。
「田舎者の愚かしさから出たこと、お怒りとは存じますが、どうか、平にご容赦下さい!!」
 土間に体を投げ出し土下座する村長は、ともかく謝ってばかり。
「面倒だわ‥‥」
 雲母は弓で村長を張り倒しそうになるのを堪えて、壁際で佇んでいた。
「そんな‥‥僕なんて‥‥」
 持ちあげられて赤面した昴は村長の顔を上げさせようと近寄るが、何と声を掛けて良いか分からず、わたわたしていた。
「ふん、開拓者くらいでオタオタするなんてド田舎ね。だけど、あたしはいずれ世界の女王になるんだから、その態度、間違ってないわね」
「都の外で世迷言を云うのは慎まれた方が賢明だね。ほら、謀は密なるを良しとす、と言うだろう」
 風葉と江流は順応していた。
「お話をお聞きしない事には依頼に掛かれませんし‥‥。村長さん、お顔をあげて下さい‥‥」
「そうね。気になる事もありますし」
 霞澄とライオーネはすぐ謝る村長を宥めすかし、小鬼が出るという荒れ地の場所と、事件の経緯を確認した。2人とも、何かを期待していた訳では無く、それ故に質問も形式的で、目新しい情報は無かった。
「む、むむむ‥‥‥」
 村長との会話の最中、妙な唸り声をあげていた幻鬼。普段は陽気なおっさんだが、何故か厳しい顔で村長を凝視していた。
 その後、時間も遅いからと村に泊まった。目指す荒野は森を抜けた場所でまだ遠い。急ぐ必要も無かった。
「さて。俺は失礼するぞ」
 座を立った小杉に、
「どこへ行く?」
「村人にも話を聞こうと思ってな。付いてくるか」
「‥‥いや、明日の作戦を詰めておかねばならん」
 小杉の表情が暗くなる。
 気になった昴は、彼の後を追いかける。
「どうか、しましたか?」
「いやいや‥‥うむ。お主、歳は幾つだ?」
 腕を組んだ小杉は昴を見ず、月を見上げながら聞く。
「十四ですが、それが何か」
「短い人生だったな」
 小杉の嘆息に、昴は絶句。
「なっ、小杉さんは‥‥戦う前から僕達が敗北するというのですか?」
「初めて来た村で聞き込みはしない、その癖、戦術はかっちり決めておる。どこに勝算があるのか聞かせて貰いたい」
 7人の開拓者は、誰一人、村で情報を集めようとは考えなかった。いや、それどころか荒れ地で小鬼と対峙する時以外の事を、完全に放念していた。
「既に、我らは鬼に敗れた」
「‥‥どうして、そう云えるんだ? 敵は鬼じゃないかもしれないだろ」
 盗み聞きしていた幻鬼が姿を見せる。
「鬼だ。お主も出遭っているな」
「何?」
「分からぬか、疑心暗鬼という鬼よ」
「む」
 二人とも心外だった。皆、疑心暗鬼にならない用心を重ねているではないか。
「疑心暗鬼が怖くて、目を閉じたな」
 気になる事を調べようとせず、疑うこと自体を恐れた。開拓者は聞き込みをしないのではない。実は、出来ないのだ。
 確実と思うことに縋った。
 ギルドで聞いた話のみで戦術を考えた。ゆえに、小鬼が居る荒れ地以外のことは頭から抜けた。鵜呑みにした。
「おい、そこまで考えがあるなら、何で皆に話さねえ?」
「それこそ疑心暗鬼に陥るだけだ。俺のお勧めは逃げる事だが‥‥出来まい。覚悟だけは決めておけ」
「‥‥意外です。小杉さんはもっと無茶をする人と、思っていました」
 もう一人、盗み聞きしていた者が居た。
 昼間の熱を冷まそうと外に出た霞澄。
「俺とて、ヒヨっこ共の子守りとあれば無茶はせん。どうも、予定が変わってきたな」


「なるほどねぇ」
 老人は手拭いで顔の汗を拭きとり、小杉の横に腰を下ろした。
「開拓者様も、色々と大変だね。危険の多いお仕事ゆえ、俺ら凡夫とは悩みも違いますわい」
「ふん。いつもこうでは、命が幾つあっても足りぬよ」
 小杉は苦笑を浮かべる。
 疑心暗鬼は非常に手強いが、毎度依頼にくっついて来る訳ではない。その為に、裏方が居る。ギルド所属の調役やシノビ、更に係員の手腕により、大抵の依頼では、開拓者は己の力を示す事に専念出来た。
「志体持ちは貴重だ、まして経験豊富な奴らをむざむざと失いたくは無いからな」
 ギルドが出来たばかりの頃はともかく、今回のような五里霧中は稀である。
「では、皆様は何故此処に?」
「‥‥係員が間抜けなのだ。わしなら、この仕事は村に返す。領主に頼れと言ってな」
 十に九まではそれで決着。違った時は領主から依頼が来る。敵の姿も見えてきて、動く金も増えるので下調べも可能。村や私兵に犠牲は出るかもしれないが、それが順当。
「十に九までは楽な仕事、と思っていたのだ」
 小杉は自嘲した。妙な小鬼退治と言っても、9割は大した事が無い、小杉の経験則だ。雲母も、そう考えていたようだ。
「今回は、そうでは無かったと」
「備えておる時には何もなく、抜けておる時に万が一は起こるものよ」


 翌日は朝から雨だった。
 小杉の話を聞いた三人は混乱し、他の四人は小鬼の幻影を追っていたから、森をどう歩いたか、あまり覚えていない。
 気付けば、前方が開けていた。
「さーて、いっちょ気合入れますか」
 戦闘開始を告げるように、風葉は己の頬を叩く。
「皆様にご加護を」
 霞澄は全員の手を握り、加護結界を施した。その後、申し合せた通りに八人は三組に分かれる。
「囮か。年長者は労わるものぞ」
 小杉はぶつぶつ文句を言っている。昴と霞澄を加えた三人が様子見班として、荒れ地に踏み込む。
「覚悟を決めたんじゃ?」
「言葉のあやだ。死にたくない」
「結構です。地面に注意を‥‥気が付いたらアヤカシの腹の中は、御嫌でしょう」
 地面を注視する昴。霞澄は瘴索結界を掛けて全方位警戒。
 ゆっくりと三人が荒れ地に踏み込んでいく様子を、森の中に隠れた潜伏班の幻鬼、雲母、ライオーネがじっと観察する。
「広いな。やっぱり罠じゃねーのか、なあ雲母?」
「黙ってろ。たかが一匹かつ小鬼か‥‥少しは楽しませてくれればいいんだがなぁ」
 雲母の呟きは、心底どうでもよさそうで、覇王は依頼の遂行のみを思考する。
「あちらは大変そうですね」
 ライオーネは茂みの陰から、荒れ地の左側に目を向ける。もう一手の潜伏組、風葉と江流は敵の背後を窺うため、様子見班とは距離を取って側面から進撃していた。
「お穣様は僕の後ろに」
「無理無理、一番槍はあたしが貰ったっ!」
 小具足だの装備の重い江流は機動力が無い。隠れる所の無い荒野で、それでも隠れなければならないから移動は匍匐前進。実際、この二人が一番汗をかいた。

「あれか?」
 二百mほど進んだ所で、枯れ木の陰に動くものを発見した昴達。立ち止まった三人は悲鳴を聞く。
「た、助けてくれーー!!」
 前方から駆けて来たのは、人間。逡巡する三人を輝く矢が追いぬく。
「ホーリーアロー!」
 森から全力疾走したライオーネの聖矢が人間を射抜く。
「う、あ」
 無傷と知るや、
「アムルリープ!」
 霞澄にすがりつくように、その人物は崩れ落ちた。酸素不足、無理をしたライオーネも膝をつく。
「隠れて!」
 追いついた風葉が仲間達の前に白壁を打ちたてた。
「鬼かっ!?」
 短剣と手斧を手にした四匹の小鬼が迫っていた。突如出現した壁に戸惑う先頭の小鬼の脳天を、閃光が貫く。
「これで三匹‥‥退屈だわ」
 早駆で距離を詰めた雲母のレンチボーン。
 壁と射手により鬼が怯んだ隙に、隊列を入れ替える7人。
「鬼ぱぁぁぁーーーんち!!」
 鬼殺しの両断剣。斧が巨大すぎ、幻鬼のそれは断つというより潰す感じで小鬼を粉砕した。一瞬で戦力は半減し、残る二匹は浮足立つ。
「開いた花道、通るのはこのあたしだっ! ‥‥目に焼き付けなさい、この一撃!」
 背中を見せた小鬼の肉体がピクリと跳ねる。風葉のヨモツヒラサカを受け、三匹目が絶命した。
 残る一匹は逃げた。が、昴の二丁短銃が止めを差す。
「か‥‥勝った?」

 小鬼を退治した八人は、村人を保護して村へ帰還。
 村人は都の開拓者が小鬼を倒す所を見物するつもりで、先に鬼に見つかってしまったと話した。疑問はあったが、ともあれ依頼は完了だ。
「何と四匹も? 皆様は村を救った英雄です。有難う!」
 村長からは再び土下座の歓迎を受けた。これから三日三晩の宴を開くという。固辞したが、一晩は付き合わされた。田舎は娯楽が少ない。村人は皆、開拓者の武勇談を聞きたかった。
「覚悟がどうとか、言ってたよな?」
「知らん。思った通りの楽な仕事だった」
 小杉は無愛想に酒をあおる。
「うう‥‥泥だらけ」
 鴇ノ宮は風呂を頼み、男女交替で入った。一仕事の後の湯水は心地よかった。
「つまらん‥‥ん?」
 小鬼が弱すぎたと雲母は不満だった。彼女は入浴後、早々に帰り支度を始め‥‥絹を切り裂く絶叫があがる。
「なんだ!? 鬼の残党かっ」
 浴衣姿の雲母が血相を変えて飛び込んできた。
「私の弓! 奪ったのは貴様か!?」
 目が合った村人を吊るしあげる雲母。
「落ち付け、どうした?」
「‥‥やられた。私の装備が、無い」
 仰天した彼らは己の荷物を確かめる。金と、全員の荷物が二品足りない。

「「「殺す!」」」

 凄まじい殺気だった。
 真面目に何名かは村人を全滅させかねない剣幕で、話を聞いて村長は昏倒。村人に話を聞くと、そう言えば宴会中に見覚えの無い者が居たような、と証言した。殆どが酔っていたので確かな事は不明。


「‥‥災難でしたなぁ」
 話を全て聞いた馬子はよっこいしょと腰を持ち上げる。小杉も立ちあがり、ふと振り返った。疑えば、馬子の荷すら盗品に見えた。



 以下は余談。
 楽な仕事のはずが、憔悴しきった八人が帰還し、これにはギルドの方が慌てた。
 今は武州の合戦中で、開拓者の士気は何よりも優先する。調査の結果、不確かな情報で依頼を扱った係員に不備があったと判断し、ギルドは開拓者の装備を弁償した。
 人間万事塞翁が馬。

 最後に、九人目の賢者が居た事だけ記し、幕とする。