【冬戦争】偵察
マスター名:まれのぞみ
シナリオ形態: シリーズ
危険 :相棒
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/12/14 17:51



■オープニング本文

「森が生まれた!?」
 アヤカシは歓喜をあげ、ひとは絶望の叫び声をあげる。
 薄暗い黄昏の中に、まがまがしいまでの瘴気を発する森が盛り上がるようにして拡がりながら、近くにあった家々を飲み込み、壊し、あるいはそれすらも物ではないなにかに変えていく。
 すでに避難を終えた近隣の村人たちが遠くの丘から、その絶望的なさまをまざまざと見せつけら、ただ力なく腰を落とし、あるいは呆然とあるがままを眺めているしかなかった。
 月明かりに照らされ森は、まるで巨大な生物でもあるかのように闇の中にうごめき、あるいは黒い犬が転がるようにしてあたりに浸食していく。
 かつては平和な田園風景の広がっていた一帯に、突然、それが生まれたのはなんの必然とどんな偶然の産物なのだろうか。
 それはまだわからない。
 ただ、果実の樹がアヤカシになるという事件が未解決のまま、事態だけは進行していくのであった。

 闇の中に吹く風の中に、ただその事実があるだけであった。

 ●

「魔の森、そう判断していいのか?」
「だとは思いますが……正直、わからないというのが正確な物言いでしょうね。ただ、まあ、普通の森ではないのは確かですよ」
 開拓者ギルドの扉には臨時対策本部と手書きで書かれた紙が貼られ、数人の職員たちが忙しげに出入りしていた。
 なんにしろ異常事態だ!
 果樹園が一晩で、突如として森に生まれ変わったのだ。
 通常ではありえないことである。
 だが、結果には原因があるいという金言に従うのならば、なにかしらの理由があるはずであり、理由は解決への糸口になる。
「森がどのようになっているかを調査する偵察部隊を派遣すべきでしょう」
「付近の守備隊を派遣してもらうというのではムリか?」
「敵がアヤカシであると思われる――八割、九割はそうでしょうが――以上、タダの人間を派遣することは、ムダに被害を拡大するだけであることはおわかりかと思いますが?」
「やはり、そうだな。開拓者にまかせるしかない、か」
 ふむと顎にあてながらギルドの男は、原因のわからぬ胸騒ぎに悩まされていた。
「なにかありますか?」
「情報がなさすぎでな、なにが正しい判断かわからんのだよ!?」

 ●

「……ええっと」
 その状況を目の当たりにして、それは自分の目をまず疑った。
 そして噂が本当であったと確認するとようやく、ふところからなにやら紙の束を取り出して読み返す。
「こんな風にはならないはずなんですけどね」
 何度読んでも説明書には、このような事例は書かれていない。
 自分で売った商品ではあるが、どうも不良品を売ってしまったらしい。
 彼が人間の老人の対価に売ったはずのものは、果樹を成長させ、ときにはアヤカシ化する果物ができる程度の肥料であったはずなのだ。
 だが、目の前に広がる森はもはや、そんなものではない。
 ましてや人間が噂するように魔の森ではない。
「アヤカシの要塞……とでもいいましょうか……まあ、いいでしょう」
 ぽいと説明書を投げ捨てると、それは黒い炎に燃え、灰となって風の中に消えていった。
「あとは、あたりのアヤカシが集まってきて住処にするか、その前に開拓者とか言う人間たちがどうにかしてしまうか……まあ、わたしの知ったことではありませんからね」
 無責任な商人の姿もまた風に消えた。
「ああ、またボーナスの査定に響くんだろうな……」
 という、なさけない言葉を残して。



■参加者一覧
奈々月纏(ia0456
17歳・女・志
カンタータ(ia0489
16歳・女・陰
奈々月琉央(ia1012
18歳・男・サ
鈴木 透子(ia5664
13歳・女・陰
フレイア(ib0257
28歳・女・魔
戸隠 菫(ib9794
19歳・女・武
緋乃宮 白月(ib9855
15歳・男・泰
松戸 暗(ic0068
16歳・女・シ


■リプレイ本文

 狼煙があがった。
「あれは――」
 それに気がついた二人は空を見上げた。
 松戸 暗(ic0068)からの通信だ。
 目をこらして見れば煙の数は一本。
 ということは、仲間が森についたということだ。
 鈴木 透子(ia5664)はほっとして村の中へ向かった。
 村長のところへ向かうというカンタータ(ia0489)とは、ここでいったん別れて村の別の場所へと向かう。
 人気のない村だ。
 森の進行速度から、村の人間の大多数はここから離れた場所に作られた難民キャンプに移っていて、最低限の人間だけがいま村を守っている。
 付近から駆けつけてきたジルベリアの兵たちが、そうさせたのだ。
 丘になった場所を登る。
「このあたりですか――」
 村人たちから得た情報から察するに、このあたりなのだが、ああ――これが。
 自然、手を合わせる。
 彼女が探していた人物のなれの果てを見つけた。
 墓標だ。
「そういやぁ行商人から肥料を買ったっていってたな」
「……――?」
 村人から聞いた、その応答が心に引っかかる。
 アヤカシは常に人の心の隙に付け入るものだ。以前受けた依頼で話だけ聞いたモノとちょっと似ている気がしていて、行商人の話が聞けたからこう尋ねた。
「村で何かお悩みを抱えた方はいらっしゃいませんでしたか?」
 そう尋ねて回った先に見つけた結末が、これだ。
 その男は、すでに先月、かつてない豊作を聞き、満足して死んでいったという。老人の死に顔は、本当に幸せそうなもので、村人の長老たちもうらやましがるほどのものであったという。
(幸福な死か――)
 冬の風が吹く。
 女の髪が揺れる。
 いまでは、依頼の原因となった森となってしまったが、かつては眼下には美しい果樹園が拡がっていたのだろう。
 墓標を見つめる。
 聞くつもりでいろいろと考えていたのにムダになってしまった。
 もう一度、手をあわせ、心の中のもやもやをなんとなく落ち着かせ、腰をあげたところで、ふと気がついた。
「あら?」
 土の色が違う。
 誰かが墓を掘り返したような跡が見えたのだ。

 ●

「それじゃあ、超過料金頂きますね」
 にっこりと笑ってギルド出張所の係員から手渡された布の束を前に、奈々月纏(ia0456)はいままでの人生でどれくらいの正解と間違いをしてきたのだろうかと数えたくなっていた。
「本当に、これでよかったのやろうか?」
 出発前に、赤い布をできるだけ多く持って行く為、ギルドに用意して貰ったのだが、
「リボンみたいな長さの、赤い布が欲しいんやけど……用意できるやろか?」
 とまずは頼んでみたところ残念なことに品切れ。
「あわ……赤ないんか。ほなら、目立つ色ならなんでもええねん。堪忍な〜」
 とさらに頼み込んで植物の色の中でも目立つ色の布を探してもらったうえにギルドの職員たちが徹夜仕事で白い布を染めて依頼に応えてくれた。
 目の下に隈を作ったギルドの視線がなにか痛い。
 思わず、そばで布をまとめて荷物袋に入れている伴侶になんとなく寄り添うようにして、お手伝い。見ているだけで心温まるふたりの風景は、だからこそ、この季節、特定の者達にとっては無意識の宣戦布告でしかないだろう。
「ぱるぱるぱる」
「ほらほら妬んでいても幸せにはならないわよ」
 クリスマスも近いこの時期に、ラブラブな空気などを放っていれば敵愾心を呼び寄せるようなものである。嫉妬にかきたてられている独身の同僚を押さえつけてギルドの係員は、そんな幸せ者の片割れ、奈々月琉央(ia1012)に応じている。
「説明にあった『グンがいる!』という言葉が気になるが?」
「それは不明な状況ですね。なにかいると思って行動して貰うしかないというのが、ギルドの見解です」
「そうか……おや?」
 窓の外には三本の狼煙があった。
 森で動きがあったようだ。
「急ごう。まだ先遣隊がやられたとは限らないのだからな」

 ●

 ここから見える森は、単なる森にしかすぎない――
 小さくつぶやいて、小さく背伸び。
 夜半の月は西に大きく傾いて、白い幻のような色になった月は、夜の闇から遅れるようにして青と白の空へ溶け込んでいく。
「うん……今夜も月がきれいでした」
 緋乃宮 白月(ib9855)は空を見上げながら、今度は大きく背伸びをした。
 夜の間、ずっと森を見ていたのだ。疲れていないと言えばウソになる。
 すこし柔軟体操をすると、
(まだすこし――)
 この前の戦いの傷がうずく。
(ムリはできないな)
 体のあちらこちらを確認するように運動をしながら、それでも森を見る。
 やはり、ごく普通の森にしか見えない。
 しかし、緋乃宮は知っている。
 この森は夜になるとまるで手足を持って移動する動物のような獰猛な化け物になるのだ。まさにアヤカシの森である。
 その証拠に――
「フレイア(ib0257)先生の実験室!」
 すこしはっちゃけてみせて、そんなこと言うと魔法使いは観客を前にして語り始めていた。
「まず森に入る前に、森とまだ汚染されていない境界辺りにムスタシュィルで結界を張り、鉢植えと果実を置いておき、感知結界により何モノかが接近して作用するのか否かを確認いたします」
 えぃ!?
「あらあら果実さんが暴れだしましたね。それでは、ホーリーアローで撃ってみて反応を確かめます」

 ちゅど〜んんんんん!?

「ほら死滅しちゃいました!」
「きみはなにをやっているのかな?」
 あたりを調べていた戸隠 菫(ib9794)は、仲間のそんな態度に思わず突っ込みを入れたいという内なる衝動に勝てなかった。
「あらわかっているんでしょ?」
 魔女のからかうような笑いは、どこか蠱惑的ですらある。
 あたりで、どっと笑いが起きている。
 さきほどまで心配げな顔をしていた兵たちの顔がすこし明るくなった気がする。兵ではあっても、かれらはふつうの人々なのだ。
 森を遠巻きに囲むために、近くの砦の軍がやってきたジルベリアの兵たちである。
(ジルベリア軍か……グン?)
 その様子を眺めていた緋乃宮の眉間にしわが寄った。

 ●

 狼煙で集まった仲間たちが森へ突入する準備を始めていた。
 鈴木が地図を確認している。
 村で手に入れたもので、先発隊の残したものだという。
 いろいろ不安になるが、とりあえずは、これを頼りに行くより他にはない。
 それに――
「先発隊の方々も見つけ出したいです」
 フレイアがなにか決心したようにつぶやく。
 森に踏み込む直前、戸隠が、まず戒己説破を唱え、仲間たちの無事を精霊たちに祈った。
 ついでフレイアのまわりで季節外れの蝶が舞ったかと思うと、それらが森への案内でもあるかのように先立って中へと向かっていく。
「一番侵入しやすそうに見える所は罠の可能性もあるから、良く調べないとね……」
 小道ぞいに森に入って数歩いったとたん、戸隠の足下に大きな穴が口を開いた。
 あきらかに罠が発動したとみていいだろう。
「なんて、いやらしい!」
 草むらに隠れて気付きにくい足元、根の部分には注意を払う様にしていたからいいようなものである。
 鉈で蔓や枝をかりながら森の中をゆく。
 切った枝や、地面の土を纏やカンタータが注意しながら採取し、袋の中に入れている。めぼしい樹に鉈で目印をつけたり布をしばったりしながら、もちろん樹に近づく時には充分に留意を払い、開拓者たちは森の奥へと進んだ。
「あれは?」
 シノビである松戸の目が、それを捉えた。
 乾いてひからびたものが木にかかって、ぶらぶらと揺れている。
 カラスのような鳥たちがやってきて、それをくちばしで突っついていたが、開拓者を見るなり飛び去っていった。
 はじめは、天儀でも見かけるかかしかと思った。
 だが、すぐにそれが木偶ではなく人間である。いやだったものであったことに気がついたという方がより正確だろう。すでに干からび、顔の形もわからなくなってしまっているがぼろぼろになった姿格好から村人であろうことを容易に想像がつく。
 戸隠の顔は青い。
 以前、彼女もこの件についてはギルドで見知っていた。だが、別の案件があった為、先発隊には加わることはできなかったが――体がひとつしかないことが恨めしい。巡りあわせが悪かったのだと言って自分をごまかすしかないが、決して気分のいいものではないのが正直なところだ。村長から消息不明になった村人たちのことを聞いているだけに、さらにつらい。

 その時、背後で木々が動いて来た道を閉ざしたことに開拓者たちは気がつかなかった。

 ●

 凶事がつづく。
 さらに奥に進むと、すこし広い場所に出た。
 休息をとるには絶好な場所だ。
 ならばと、開拓者たちは周囲を調べる。
「先発隊さんの足取りとか判るかー思ったけど、難しいな〜……」
 焚火の跡や足跡などの形跡。彼らの進んだ行き先についてなどなど、調べる事はたくさんある。
「ええっと……」
 草むらで足をひっかけた。
 ずれかかったメガネを直して、足下を見れば――
 普通の女の子であったのならば悲鳴のひとつもあげたことだろう。
 だが、彼女は開拓者だ。
 驚きはしたものの一息をついて冷静な声で夫を呼んだ。
 あわてて駆け寄ってきた琉央は声を失った。
 そこには三人の開拓者風の者たちの死体が転がっていたのだ。
 男の脳裏に、ギルドで聞いた情報がよみがえる。
(ああ、やつは最近、結婚したばかりで嫁さんの腹には子供がいるそうだ。それなのによぉ――)
 開拓者のリーダー格だったという同郷の知人が、そう言っていた。
 そして、中のひとりが聞いていた特徴と一致する。
 自然、夫は妻の横顔を見ずにはいられなかった。
「静かに!」
 突然、松戸が小さくも鋭い声をあげた。
 草木のような模様の格好をした不思議な格好をした連中が三人、組を作ってやってきた。
 人間ではない。
 すくなくとも腕が四本ある以上、そいつらが人間であるなどと考える者はいなかった。
 むろん、こうなった時はどうするべきかは決まっている。
 無用な戦闘は不要。
 開拓者たちはとっさに、それぞれの技術と能力を使って姿を隠すのであった。

 ●

 敵が去った。
 同時に未確認のアヤカシの存在も確認できた
 再度、真なる水晶の瞳を使って瘴気を確認してみよう。木々も地面はどちらも瘴気がただよっている。しかし、あれは――!
 近くの木にたわわに実るリンゴから瘴気が出ていた。
 そして、それらには人と同じ瞬きをする目があった。
「ちッ!?」
 火遁の炎がリンゴを焼いた。
 しかし、これで敵に自分たちのことが知られたに違いない。
 確かに、目と目は通じ合っている。
 開拓者から離れた場所にもリンゴがあった。その中のひとつを木からもぎとるアヤカシがいた。手に取ると、映像が脳裏を走る。
「予想どうり人間がやってましたな。まったく開拓者とか申す者たちは勤勉でしかたありません」
 ぴんと伸びた髭に指をやりながら、そのアヤカシは何事か考え、映像が途絶えたところで決心をした。
 先発隊の死体を食べるアヤカシを蹴って命令をくだした。
「――よいですか深追いする必要はありません。どうせ、あなたたちの現在の実力では返り討ちにされるのが関の山。ここから帰っていただければ充分です。この前、勝てたのも、地の利が我々にあった上に敵が我々のことを知らなかったことが幸いしただけです」
 そう諭してアヤカシたちを人間の討伐に向かわせると、そのアヤカシは再び考え事をした。
(なんにしろ心もとありませんな。やはり、もちっと軍勢を呼び寄せておかねばなりませんな。ここを根城としたがっている、かの王がやって来られるまで時間を稼ぎ、さらに王の部下のアヤカシども鍛え上げることができるかどうか……。最善は尽くすつもりですが、二兎を追う者の例えもありますが、はてさて?」

 ●

 戦端が開いた。
 それは撤退開始の合図でもある。
 異変に際しては琉央が隼人を使って真っ先に反応する。
 先ほど見た四本手のアヤカシを叩き斬り、さらに迫ってくる敵を仲間たちから引き離す。
「こっちだ!?」
 威嚇にも似た咆哮を放つ。
 今回の任務は生きて情報を持ち帰ることだ。
 ならば可能な限りは戦闘は避ける方針で、互いに無謀な突撃や術を誰かが試みようとする場合には止める事になっている。
 まだケガの癒えない緋乃宮は八極天陣を使って全力で回避。 
 腕に足に、体にからみつこうとしてくる木の枝、ツタから身を守る。
「こっちです」
 鈴木が描いてきた地図を確認して、仲間を引き連れ来た道へ戻った――はずであった。
「道がない!?」
「なんだって?」
 松戸がうめき、それに気がついた。
「木につけた傷が消えていく?」
「しまった!?」
 緋乃宮は息を呑んだ。
「そうだ木もアヤカシならば自己回復くらいするやつもいる!」
 愕然とする目の前で、アヤカシの木に刻んだ目印ががみるみるうち消えていく。そして、傷をつけられた怨みを晴らすかのように木々がざわめき、うなり声をあげて、かれらの行く手を遮る。
 森そのものが敵意をもはや隠すことない。
「うっ」
 石つぶてや、矢を森の影から撃ってくる者がいる。
「援軍?」
「こんな時に――」
 万事休す。
 いまや獰猛なアヤカシとしての本性をむき出しにした森の木々が、その枝を腕に、葉を武器にして開拓者たちに襲ってくる。その背後から敵の増援が近づいている。
「させない!」
 包囲されないように隠密行動をとっていたフレイアが、ここぞとばかりに姿をあらわしてブリザーストームで、援軍を妨害、さらに松戸と纏の放った紅蓮の炎が木々を焼く。
 突破口ができた。
「あれ!」
 木の枝に巻いた赤い布を見つけた。
 それが点々と続いている。
 あの目印を頼りに道なき道を突っ切るしかない。
「いくぞ!」
「しんがりは、わたしが!」
 戸隠が最後に立って仲間の盾となる。アヤカシの追っ手の攻撃を一身に受ける。むろん痛く苦しいが、そんなこと気にしている場合ではない。斬っては捨て、おいすがる敵を蹴り倒しては、しだいにしだいに距離を拡げていく。
「出口だ!」
 先頭から仲間の歓声が聞こえた。

 ●

「見事なものです」
 戦いの推移を見つめていたアヤカシの口元がゆるんでいた。
 苦しい状態になっても、絶望的な状況で戦っているという自分に酔うことなく、本来の目的である撤退をやりきった開拓者たちを褒めずにはいられなかったのだ。
 この性格が命取りになるかもしれない。
 しかし、それも一興。
 どうせ時間と命はいくらでもあるのだ。
 アヤカシは、こんな言葉を残して作業へと戻っていった。
「さて準備をはじめましょう。時が満ちる前に――」

 ●

 帰途から数日後のことである。
 持ち帰った木々の枝や土を調べていたフレイアは奇妙なことを発見した。
 それらを鉢にいれてしばらく放っておくと、それはアヤカシに成長するのだが、しばらくすると枯れるのだ
 いったい、なにが原因なのかしらと彼女は考えるのであった。