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■オープニング本文 「他人の日記を隠れて読もうなんていうのは、いい趣味とは思えませんわね」 くすりと笑ってオルガは持ってきた紙の束を手渡した。 「ほざくな」 苦笑いしながら受け取る夫はガラドルフ。 言うまでもなくジルベリア皇帝である。 ふだんは田舎の屋敷にこもっている側室を首都にまで呼び寄せて、南部への視察のさいの日記などを出すように言ったのは、別に、あの時の旅行の思い出などというものを妻に望んだわけではない。 「やはり、あれだけ大々的に南部劇場をやりましても、あそこのことが気になるのですね」 「おまえもさんざん迷子になっておったろ」 そう笑って、主人は己の騎士に向かって心の中でつぶやいた。 (それで、なにを見てきて、それをこの中に記したのかな?) 「なんにしろ燃えた後の火の始末だけは慎重にしないとな。消火したと思っておっても、小さな火種が、いつかまた大火へと化けるかもしれん」 「別に火種は、それだけだとは思えませんけどね」 妻のまなざしも夫とは別にジルベリアという国を見ているし、幾つかの可能性と、それに対する、幾つかの対策が胸の内にある。 「これの礼と土産といってはなんだが、あれを二体、持っていけ」 「もう、よろしいのですか?」 「動きはする。どうせ外装は変えるのだろうから、適当な偽装をしておくように言ってはある。細かいところは、お前のところで調整しろ。それと、お前が以前からねだっていた例の計画だが……」 「どの計画ですか?」 「ああ、そうだな。アーマーのトーナメントの件だ」 ふとこから一枚の紙を取り出した。 黄金の文字で記された皇帝の勅書。 一読し、オルガはうれしそうな顔をして、それを自分の懐にしまった。 「陛下の勅書とは家宝ものですね」 「からかうな。それだけ価値があると思っているのだ。それに対価は支払われなくてはならないだろ?」 南部の思い出が記された妻の日記を手にして、夫は立ち上がった。 残念なことに今日は夫婦で席を温める暇はない。 「それでは、まずアーマーのトーナメントの準備をはじめなくてはなりませんね」 妻も立ち上がって帰り支度をはじめた。 「ああ、アーマーの技術を上げねばならんが、戦争ができぬのならば、それを擬した空間を作るまでだからな」 ● 「どうしたのですか?」 都から帰ってきてから、ずっと地図をのぞきこむ屋敷の主人に声をかけてくるものがあった。 「あら、もう体は大丈夫なの?」 エスティアという名前の騎士である。 半年ほど前に。彼女自身の責任ではないにしろ、体をこわしてしまった上に、それによって発生した不祥事により謹慎中の身である。謹慎といっても、もとより体が動くようになったのは夏も過ぎた頃からであり、最近、ようやく自分の足だけで歩けるようになったばかりなので、体のいい長期休養というところだろう。 「なにか大きな物を搬入していましたが?」 「ああ、そうね。あとで地下へ行ってみなさい。いいものがあるわよ」 しかも、主人の好意により屋敷内の行動はほぼ自由であるし、なによりも側室とは言え、皇帝の妻たる者へ預けられることが、はたして謹慎にあたるのかと心ある者は思った者もあるが、その融通のよさであり、言葉悪しくののしるのならば公私の分別もできないいかげんさこそが、ジルベリアという国であり、人治国家というものであった。 「ここはケインさんの牧場だからダメ。ここもヤーボさんの農場だからだめだし……」 あいかわらずオルガは地図を前にして知恵をしぼっている。 「アーマーのトーナメントをやるための広い土地を探しているのよ。買い取って常設の会場を作る前提だから、市井の皆さんの生活を壊すようなことはしたくない。そうすると、おのずから――」 その時、唐突に都で会った、ひとりの貴族の顔が思い浮かんだ。 「……ここならばいいわ!」 「ここは!?」 地図をのぞきこんでエスティアの顔が曇った。 知り合いの貴族の大きな別荘がある敷地に大きな丸印がつけられていたのだ。 「すでに先住の方々がいらっしゃるではありませんか!」 「買えばいいだけよ!」 そう言うと、オルガは立ち上がった。 「彼から理由ありで屋敷を買って欲しいと頼まれていたのよ。理由が面倒だったから、躊躇していたけどしかたないわね。決まったならば話は早いわ」 「面倒な理由?」 「やっかいな住人が住みついているそうよ」 「でも、それでは……」 貧民が住む場所もなく空き屋となった貴族の屋敷に住みついたということなのだろうか。それならば、そういう人間を無碍に扱うことこそ、ふだんのオルガのきらうところではなかったのか。エスティアのそんな表情を認めると、オルガは年下の同居人に向かってウィンクをしてみせた。 「いいのよ! アヤカシさんには人権はないんだから!?」 |
■参加者一覧
羅轟(ia1687)
25歳・男・サ
アレーナ・オレアリス(ib0405)
25歳・女・騎
シーラ・シャトールノー(ib5285)
17歳・女・騎
奈々生(ib9660)
13歳・女・サ |
■リプレイ本文 「おとーちゃん!」 子供が大きな声をあげながら扉をすり抜けて、部屋に飛び込んできたので、親となっているアヤカシは文字どうりの意味で眼をまんまるにした。 「おお、どうしたんだ?」 「人間の子供を見つけたんだ!?」 「ほぉ、こんなところでめずらしいな。それで、どうしたんだ? とーちゃんに捕まえて欲しいのか?」 いつもは、親アヤカシが子供のために人間というメシを狩ってくるのだ。 「今日は俺が捕まえてみようと思うんだ!」 「そんなことを言い出すなんて、お前も大きくなったものだな。とーちゃんはうれしいぞ」 そう褒められると、子供アヤカシは照れくさそうに笑った。 「俺も早く成長して、アヤカシ小学校を卒業したら、アヤカシ中学、高校、そしてアヤカシ大学に入って……――」 と、どこまでが冗談であり、どこからが本当なのか人間にはわかりがたいアヤカシのユーモアをまじえた親子の会話はつづく。 「――大きくなったら立派なアヤカシになって、人間をたくさん狩って、とおちゃんやかーちゃんを楽をさせてあげるよ!」 日々は駆け足のように過ぎ去っていき、ほんの前までは小さかった子供がすぐに大きくなって、自分を越えていく。 「そうか、よしよし」 尻尾で頭をなでてやると、じゃあと頭をふって子供は壁の中に消えていった。 とある商人から紹介を受け、アヤカシたちの巣に越してきてからというものの、彼のアヤカシとしての生活は順風満帆、幸せそのものだった。 最近も、同じ屋敷に住まうアヤカシたちの町内会で決まったことだが、こんど近くにある人間の村を襲おうという話になった。 この調子ならば、その襲撃に子供も連れていってやれるだろう。 人間たちの恐怖に凍てついた表情のおもしろさ、発する阿鼻叫喚の心地よさ、そして肉の柔らかな女、子供を生きたまま噛み砕いたときの歯ごたえ、そしてなにより死にたての人間のうまさをおしえてやらねばならない。 いつか子供が成長した暁には人間たちが帝都と呼ぶ土地をも征服しよう。人間がジルベリアと呼ぶ、この大陸をも、天空のどこかにあるというアヤカシだけの土地と同様にしなくてはならないのだ! そんなことを想像している内に、高揚した気分になって、使命感で胸をいっぱいになってしまった。 そして、それが仇となった。 扉が開く、小さな音がした。 「おや、お隣さんかな?」 妻が天井をつたって玄関に向かう音がしたかと思うと、悲鳴があがった。 「どうし――あっ!?」 あわてて、入り口へ向かうと、目の前で瘴気に戻っていく妻の姿を目にした。 巨大な黒い鎧がいて、その手にした剣がにぶく光っている。 「悪いが……アヤカシに……かける……情け無し」 ● とある貴族の所有する屋敷をオルガという有閑マダムが買い取ったという話は、以前した。そして、その屋敷に住みついているアヤカシの退治と、その建物を破壊して更地にして欲しいという依頼がギルドに出たことも語った。 さて、その顛末である。 「合法的に地上げ屋をやれるなんて、めったにない経験だね! なりきってやっちゃうぞ♪ まあ相手はアヤカシなんでまどろっこしくオドシてやる必要なんてないわけです。ぜぇんぶ、滅しちゃえばいいわけだね♪」 奈々生(ib9660)の耳がぴーんとのびて、鼻歌まじりでご機嫌な様子だ。 「おらおら居座っているアヤカシはどこじゃい!? さっさと出てこいや!」 一方、いまもアヤカシを二体、屠ったばかりの羅轟(ia1687)はうかぬ様子のアレーナ・オレアリス(ib0405)を見返した。 「どう……した?」 「気のせいかしら?」 「気のせい?」 シーラ・シャトールノー(ib5285)が同じ言葉を返した。 「誰かが逃げたような気配がした――そんな気がしたの」 「アヤカシもバカじゃないし、事前に集めた情報だとお化け屋敷って噂される位、アヤカシが集まっていたそうじゃない」 「アヤカシが集まったって、誰かが集めたのかな?」 「ま……さ……かな」 「まあ、これだけ派手にやっていればなにごとか気がつくのもいるかもしれないわね」 「あ、その点は大丈夫。仕掛けは重々、ご存じろってね」 すでにアヤカシに逃げられないように入り口には封をしてある。 あとは掃討戦といこうか。 「じゃあ、こうしようよ!」 咆哮で、隠れた敵をおびき寄せる。 「わたしはサムライなんで、たたかうしかできません。斬って斬りまくりましょう。この刀も肉を断ちきりたくてうずうずしてるの――」 つまるところアヤカシを斬って、斬って、斬りまくりたいと、まことに自分に正直な台詞である……が、 「あ、れ?」 まずは眼をぱちくり。 確かにアヤカシはあらわれた。 しかも目に見ても塊かと思えるほど多くの群れである。 ただ、その先頭を走っているのは、 「わぁぁぁ!?」 顔面蒼白な人間の子供たちの一団であった。 「お、おばけぇっっ!?」 その背後からは幽霊や黒い目玉やらの魑魅魍魎の類が廊下一杯になって迫ってくる。まるで黒い波が押し寄せてくるようである。 「アヤカシ!?」 「ならば、聖堂騎士剣で滅ぼして差し上げましょう」 黒い驚異の前に、白い救済があらわれたかと思うと、一閃、アヤカシの一角が消え去り、そこに向かって残った開拓者たちが突撃をかけた。 「大丈夫かしら?」 状況を確認しながら、女騎士は子供たちをつれて後方へ下がった。 「いかがいたしました?」 アレーナは子供たちにも士道にのっとって、うやうやしく礼をして尋ねたのは、すこしでも警戒を解きたかったのだ。だが、それは無用の心配であったようだ。もはや、アヤカシに襲われることはないとわかった途端、子供たちは安心したようにくたくたと腰くだけになってしまった。 ● 「まあ、あなたたち……」 子供たちを前にして、オルガは両手を腰にあてながらあきれたといった風な顔をしていた。羅轟から保護要請を聞き、やってきて見れば、よく見知った顔、顔、顔。 「しばらくみないと思ったら!」 オルガが言うには近所の子供たちだという。 よく彼女の屋敷に遊びにくるのだが最近は会っていなかったという。 もちろん子供たちにも言い分があって、オルガがしばらく外出ばかりしているので、自分たちで遊ぶ場所を探し当てたということなのだが、 「だからといって知りもしない他人さまの屋敷にもぐりこもうなんて、あまりいい趣味じゃないわよ。物わかりのいい貴族ばかりじゃないんだしね」 まるで、いたずらをした教え子をしかる教師のように小言をぐちぐち。 「そもそも見も知らない人間じゃなくて、アヤカシがいたけどね」 そっとつぶやく獣人の背後では、オルガの小言など馬耳東風のようすで子供たちが好奇心のまなざしを向けている。視線を感じ、すこし不安を覚えながら、まだ経歴の浅い開拓者は背中に、すこし冷や汗を流していた。 アヤカシと戦う時には感じないプレッシャーだ。 頃合いを見計らったように、お腹が鳴りだすような、いい匂いがしてきて 「いかがですか?」 という声とともにケーキが出てきた。 パティシエであるシーラが、しばらく使っていなかったゲストハウスの釜に本来の仕事を与えたのだ。 まったくもって腕の立つ料理人というものは魔法使いである。 ぎすぎすしていた空間も、その匂いと、味で一変させるのだ。もとからオルガの小言など聞いてなかった子供たちは、あっというまにケーキに飛びついた。 「あ、これは俺の!」 「それは、わたしがもらうんだもん」 「いや、僕がですね――」 「大丈夫よ。たくさん作ったから!」 お菓子作りの名人は、至福の時間を作ってくれる。 「どこかにお店でも持っているのかしら?」 オルガもケーキを一口、舌に載せると、驚いたような声で質問をした。 「どうしました?」 「おいしいってことよ!」 ほおばる子供たちの気持ちを代弁するようなオルガの声に、にっこりと笑って応えたシーラの表情は開拓者ではなく、パティシエのものになっていた。 「惣菜とお菓子を主力商品とした、パティスリー・エムロウドという店をやっているんです」 「お店はどこの街の、どこの通りにあるのかしら? まさか他の儀なんてことはないでしょうね!」 「それでしたら、あんな素敵なキッチンがあるんですから軽食を提供する場所もあってもいいですね? 完成の暁には、あたしのパティシエとしての腕を買っていただけると嬉しいですわ」 「……考えてみるわ」 そう言うと、なにやらオルガは考え込むようにまぶたを閉じ、やがて目を開いて、すこしおもしろそうなことを思いついたはという顔をした。 「ねぇ、料理の腕で勝負をしてみたくない?」 「えッ?」 その時、音がしてきた。 「アーマーの起動音よ」 料理人の疑問には応えずに、カップを取りながらオルガが視線を外へと向けた。 ゲストハウスのテラスに作られた軽食場からはトーナメント会場が一望できる。 「ゲストハウスの一棟はトーナメント会場になりそうな場所に面している部屋を軽食場にすると良さそうね。寛ぎながらトーナメントの様子が見えるよう、壁の一面を大きく開いてテラス風の食堂に。その反対側に厨房をざっと作ると良さそうだわ」 というシーラの案が、ほぼそのまま採用されたことなる。 そして、会場が見えるということは現在はまだ解体中の屋敷――アヤカシを追い出した建物だ――を眺めることができるということでもある。 アーマーがそこで廃材を片付けている。 横では、黒い姿の剣士が半壊した屋敷と格闘していた。 羅轟の一撃、一撃がかつては建物であったものを廃棄資材へと変えていく。 それをアレーナのアーマーが回収しているのだ。 そこへ別の声がした。 「お手伝いします!」 敷地の外から見知らぬアーマーがやってきた。 操縦席から身を乗り出している騎士に向かって、オルガや子供たちが手をふっているところを見ると、彼女たちの知り合いなのだろう。 「エスティアです!」 彼女が自己紹介をしてきた。 「あら?」 エスティアのアーマーは偽装をしているようだ。 その姿に目は知らず、アレーナの耳は聞き逃さなかった。 (駆動音が違う?) ● 「ゲストハウスは使われていなかったなら、お掃除が必要かな。掃除用具も持っていこう。色とりどりのお花とかかざりたいな。寝具にはこだわりたい! 肌触りの良いシーツやカバーに、ほどよくやわらかい枕! やっぱり宿泊する場所は寝所が心地よくないと」 なんてことをつぶやきながら、天敵たちから逃げ出してきた小動物風の開拓者は、部屋の掃除とベットメイキング。 まったく貴族の屋敷というのはゲストハウスだというのに広くてしかたない。 すっかり早くなった初冬の夕暮れは暗い。 「うん?」 なにか気配を感じた。 いや、気のせいか、もはや、それを感じることはない。 「まあ、いいか。帰るみたいだし」 彼を呼ぶ仲間の声がする。 奈々生が出て行くと、部屋の片隅には身を縮め、肩をふるわせていてた、あのアヤカシの子供の姿があった! 両親が殺されるところを見てしまって、そのままここに逃げ込んできたのだ。 目は爛々と殺意に燃え上がり、しかし、自分の実力では歯牙にも掛けられぬことはわかっている。親が、友が、仲間が……くやしさで目から血が流れてきた。 窓がかたかたと鳴いている。 風が吹いていた。 暗くなってくる。 突然、窓が開いてつむじ風が入り込んできたかと思うと、失敗したなとつぶやきながら、子供アヤカシの前にとある姿があらわれた。 「すこし、遅れてしまいましたね。開拓者ギルドに、ここの関連の依頼が出たときには、まさか人が集まるとは思わなかったのですがね……人間とは、まったくよくわからない生き物ですよ。いろいろな人もいらっしゃるみたいですね。」 口でできたアヤカシなのかと思える。 人間の姿をした、それは一度、見たことがある。 この屋敷を父に紹介した、あの商人だ。 「なんだよ!」 そもそも、お前があそこを薦めなければという思いとともに、崩れていく建物をアヤカシは眺めていた。 あそこには恐ろしく、現在の自分の能力では勝てない人間どもがいる。 食べ物が自分に刃向かったという腹立たしさ、あまつさえ大切な家族を殺したという晴らしてもはらすことができない恨めしさで胸が張り裂ける。 「あ、わたしはこういうものです」 アヤカシの胸から飛び出た異物に体を汚されながら、胸元から名刺を出して、その男は頭をさげた。 「まあ、今回の不始末の原因はいくらか私にもありますし、もしも怨みをはらしたいのならば我が社としても格安でご協力させていただきますよ」 ● その日の夕暮れ。 オルガはとりあえず子供たちを連れて村まで帰ることとにして、一日中、重労働であった開拓者たちには屋敷の方に食事や風呂、それに寝室などを準備したので、そちらへ行ってもらうこととなった。 今日の仕事は終わった。 ひとり残ってエスティアは後片付けをしていた。 ずっと後になってからやってきたというのに、病上がりの体には、それからつづいた廃材処理でアーマーを動かすだけでも重労働だった。 トレーニングをしているつもりだったが、まだまだ。 ひさしぶりにアーマーに乗った騎士は、それでも満足していた。 「いい子ね」 にっこりと笑って、まだ名前もつけてあげていない新型アーマーの顔を見上げた。 むろん他の朋友たちのように笑顔で応えたりするものではないが、巨大な鉄の鎧の姿は彼女にとって、アーマー乗りにとっては誇らしいものであった。 アーマーの肩越しに星がまたたいている。 いつか皇帝が、夢見るように語ったことがある。 「アーマーも、いつかは龍のようの空を舞い、あの星のまたたく大空を駆けて戦う事すらできるようになるであろう」 だが、そこに至るには、まだ千里の道を行くほどの時間がかかる。 だが―― エスティアは指を動かし、足で地面を叩き、自分の体の傷が完治したことを確かめ、そして確信をした。 時間はなにかを変えていく。 それが良いか悪いかではない。 変わっていくのだ。 こんどの大会では―― ● 同じ頃、羅轟は違和感に我知らず胸騒ぎを覚えていた。 「駆鎧の……トーナメント……か……何か……御披露目は……あったり……するの……だろうか?」 |