フニフニダブル!
マスター名:真冬たい
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 10人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/10/15 01:17



■オープニング本文

 草履の裏をすり減らしながら、女性は土手の上を歩いていた。
 ここは見晴らしが良く天気も良いが、女性の視線は下を向いている。むしろ下しか見ていないと言っても過言ではない。
「みーこ! 出てきなさい、ご飯よー!」
 声をかけながらゆっくりと土手の上を進む。
 みーこ、とは女性の飼っているネコの名前だ。数日前にここで目撃されたのを最後に消息を絶ってしまったのである。
 どうせ見回りが長引いていたり、よその家でご飯を貰っているのだろう、とこういうことに慣れていた女性は思っていたが、今回は行方不明期間がいやに長い。
 そこで心配になり探しに出たという訳だ。
「もしかしてどこかで事故に‥‥」
 不安がよぎる。ありえない事ではない。

 ――がさっ

 草を踏んだような音がした。
「みーこ?」
 振り返り、辺りを見回してみるが何も居ない。
 ふと不安になった女性はある噂話を思い出した。朝に隣のおばさんが話していた『土手の近くに肉で出来た怪物が出る』というものだ。
(気味が悪いなぁ、でもみーこが居るかもしれないし‥‥)
 あのフニフニとした肉球にまた触れたい。
 みーこはいつも不機嫌そうな顔をしつつ触らせてくれた。
「無事でいてほしいな‥‥。‥‥え?」
 意を決して更に進もうと足を踏み出した時、奇妙なものが姿を現した。
 淡いピンク色をしたその姿を見、女性は腰を抜かす。
「に、にくの、ばけもの」
 大きな丸一個と、並んだ丸四個。
 その間から生えるフサフサの毛。
 ――それは人間ほどある肉球付きのネコの手だった。
「‥‥!」
 女性は背中を向けて逃げ出す。見慣れた肉球ではあったが、それはあるはずの胴体を持っていなかったのである。
 ネコの手だけ。
 恐らくアヤカシだろう。それが草の上に立ち、肉球をこちらに向けて佇んでいる。
 その異様な光景のことは、瞬く間に近隣の噂となって飛び交った。

 肉の化け物はフニフニした肉球の化け物だった、と。


■参加者一覧
王禄丸(ia1236
34歳・男・シ
水津(ia2177
17歳・女・ジ
からす(ia6525
13歳・女・弓
天ヶ瀬 焔騎(ia8250
25歳・男・志
趙 彩虹(ia8292
21歳・女・泰
ルーティア(ia8760
16歳・女・陰
エルディン・バウアー(ib0066
28歳・男・魔
岩宿 太郎(ib0852
30歳・男・志
フィン・ファルスト(ib0979
19歳・女・騎
千亞(ib3238
16歳・女・シ


■リプレイ本文

●標的発見
 開拓者にだって、ただ肉球をフニるためだけに時間を費やす時はある。
 例えその肉球がアヤカシであったとしても。

 アヤカシ二体はすぐに見つけることが出来た。草の少ない場所に出ると、その巨体は殊更目立つのである。
「うむ、不気味だ」
 そう王禄丸(ia1236)が呟く。
 大きすぎる肉球とは何とも不気味なものだった。もちろん許容範囲に含まれている者も多いが、王禄丸はどうしても気味が悪いという印象を拭えない。
「そうだな、やはり猫は小さいから可愛いのだ」
 王禄丸の隣に立ち、からす(ia6525)がこくりと頷く。
「何事も巨大になるほど可愛さが薄れていくものだよ」
「同意見だ」
 しかし一つの意見には逆もまた存在するものだ。
「なんて素敵なナマモノなんだ、こりゃあ一生分フニるっきゃねぇ!」
 お菓子か何かを前にした子供のように目を輝かせ、岩宿 太郎(ib0852)が拳を握る。
「肉球‥‥しっかり堪能したいなぁ」
 肉球に触れるところを想像しているのはフィン・ファルスト(ib0979)。
 しかし退治するという目的も忘れてはいない。このままもし誰かが犠牲にでもなったら、さすがに夢見が悪いだろう。
「癒し能力のあるアヤカシ、強敵ですね‥‥!」
 人によっては敵味方関係なく癒しをもたらすアヤカシ――という風に認識した千亞(ib3238)は、油断せぬようにと気合を入れた。
 その数秒前には肉球をフニった時の幸せな気持ちを思い出して頬を緩めていたりしたが。
「うーん、二体も居るのには何か理由があるのかな」
 ルーティア(ia8760)は自分の顎に手を当てて考え込む。
「連動してるとか、一匹のアヤカシの両腕だったりとか‥‥その場合はどこかに本体が居たりするのかな?」
 しかし見る限り二体とも自身の考えで独自に動いているようだ。
 どこでものを考えて動いているのかは分からないが、あまり心配はいらないだろう。
 そう結論付けたルーティアはパッと笑顔に切り替える。
「まあ今はそんな事はどうでもいい。肉球肉球♪」
 ふわふわとした気持ちに包まれている者が多い中、ちょっと違った感情を抱いている者も居た。
「負けません‥‥負けませんからっ!」
 ぐぐぐ、と力を入れる趙 彩虹(ia8292)のアヤカシを見る目は、完璧にライバルを見る目だった。
 何に負けないのかと問われれば、彩虹は自らが着たまるごととらさんの両手を見下ろすだろう。
「よし、わかったぞ」
 天ヶ瀬 焔騎(ia8250)がアヤカシをズビッと指さして言う。
「つまり、もふられに来たんだろう?この肉球」
 愛い奴じゃないか、と焔騎はちょっぴり斜め上の発言をし、全力でもふもふすることを心に誓った。
 もちろんキメ台詞も忘れない。
「最後の瞬間までもふるつもりで居る志士、天ヶ瀬だっ!」

 いったいアヤカシはどれだけの時間、どれだけの開拓者にフニフニもふもふと触られるのか。
 当のアヤカシ達はまだ知らない。


●標的接触
 まず最初の問題はアヤカシが二体居るということだった。
 一体に構っている間にもう一体に攻撃されては堪ったものではない。
 そのため開拓者達はそれぞれ右手担当の「ふに班」、左手担当の「もふ班」に分かれることにした。
 ふに班はからす、エルディン・バウアー(ib0066)、太郎、フィン。
 もふ班は水津(ia2177)、焔騎、王禄丸、彩虹、千亞。
 フィンはふに班を左手担当だと思っていたが、人数的にこちらの方が良いだろう。
「ルーティアさんは‥‥どっちにするです‥‥?」
 荒縄の先に杭を括り付けつつ水津が聞く。
「んー、丁度半分に分かれられるし、ふに班にしようかな!」
「では、からすさん達と一緒ですね‥‥」
 それぞれ班に分かれ、準備を終える。
 まずはアヤカシの動きを止めることが先決だ。そして動けなくなったところを、安全に、確実に、フニる。
「よし‥‥いくですよ‥‥!」
 水津が初めに走り出し、そして戦闘が始まった。

 右手担当のふに班は、恐らく右手だろうと思われる肉球に向かって進む。
「さあ、これをご覧なさい!」
 エルディンが懐から取り出したねこじゃらしをブンっと振ってみせる。
 しかし姿形は猫の肉球といえども、同一の習性までは有していないのだろう。肉球は攻撃と判断したのかエルディンに突進した。
「うっ、でもこれはこれで幸せ‥‥」
 衝撃と共に押し付けられた肉球の感触を思い出しつつ考える。
 その間にもう一撃ベシンッ!
「‥‥いや、痛いかも。やっぱり助けてください!」
「ちょっと羨ましい気がしますねー‥‥でもきちんと攻撃になってるみたいです。ルーティアさんいきましょうっ」
 フィンがそう声を掛けたのと同時にルーティアが呪縛符を取り出した。
 それを肉球に向かって投げつけるように貼る。
「こら、暴れるな!じっとしてろ!」
 小さな式が肉球を押さえつけ、動きを鈍らせた。それを確認して太郎が肉球の目の前でしゃがんだ。
 休んでいる、というよりは力を溜めている、という方が正しいだろうか。
 太郎は角度を調整し、フィンに目配せしてから下から突き上げるようにタックルを仕掛けた。
 フィンもほぼ同時に槌を振るい、肉球の一番てっぺんに強烈な一撃をお見舞いする。
 肉球は仰向けに――人間でいえば恐らく仰向けに倒れ、つやつやの肉球を天に向けた。
「やった、成功だ!」
 太郎が喜びつつ荒縄をビシッと伸ばす。その荒縄の先に付いているのは丈夫な杭。それがいくつもあった。
「さて、しばらくの間大人しくしててもらうぞ?」
 ダウンしている肉球は、まだ何が始まるのか気づいていない。


 左手担当のもふ班もふに班に続いて行動を起こしていた。
 左手の肉球は仲間の方に意識がいったらしく、接近するまでもふ班のことに気がつかなかった。
 気がついたのは毛のある部分に強い衝撃を受けたからである。
「おお、驚いているようだ」
 それはからすの風撃だった。
「ほれ、そっちに行ったぞ」
 からすが焔騎を指さして言う。肉球は体勢を崩しつつも反撃に移っていた。
 佇んでいた時とは違い、機敏に動く肉球を焔騎は目で捉える。
「残念だが一気に畳み掛けさせてもらうぜ!感触を楽しむためにっ!」
 焔騎は横踏を駆使して肉球の攻撃を避け、旗に縛り付けた荒縄を肉球に絡ませていく。
 たった数本では何の脅威にもならない、と思ったのだろうか、肉球は意にも介さない。
 しかしそれは悲劇的な油断だった。
「これが丁度良いな‥‥よっ!」
 盾の角で旗を地面に深く刺し、絡ませた荒縄をビンッと張る。
 と、その時、それでも暴れる肉球に新たな荒縄がかけられた。
「大人しくモフられてくださいねっ」
 嬉しげな笑顔で千亞がぎゅいっと荒縄を引っ張る。
「それでは私もっ!」
 彩虹が躍り出て自分に泰練気法・壱をかける。そして――
「存分にフニる為、ちょっと失礼します‥‥ねっ♪」
 足払いの要領で空気撃を肉球の下部にあて、転倒を誘発させた。
「お見事です!」
 千亞が兎耳をぴこっと動かす。
 倒れ、更に荒縄の呪縛を強化されつつある肉球に水津が何かを近づける。‥‥魔女の箒だ。
「ほれほれ、じゃれついても良いんですよ‥‥」
 しかし肉球はただただ暴れている。猫っぽいのは外見だけなのだろう。
 残念ですね、と呟いた水津は続けて神楽舞「脚」と神楽舞「進」を一生懸命踊り、仲間を強化・支援する。
「うむ、なかなかに奇妙‥‥あれをうちに勧誘するのも、ほどよく奇異でアリかもしれん」
 少し離れたところから見物していた王禄丸が呟く。
 聞き咎める者は居なかったが、なんとも大胆な発言である。


●本懐
「これはいいもふです‥‥」
 もふもふもふもふと手を動かす水津。その眼鏡は怪しく光り、何も知らない人が見たら儀式か何かかと見間違えそうなくらいだ。
 まるで火の玉くらいなら周りを飛んでいそうな、そんな雰囲気を醸し出していた。
「それにしても大きいですね、爪も大きいんでしょうか‥‥」
 出来心でギュッと真ん中を強く押してみる。
「!!」
 思っていたより凄い勢いで飛び出してきた鋭い爪。
 危うくそれで手を切りそうになったが、夜と早駆けを使った王禄丸に引っ張られて事なきを得た。
「普通に触る方が良いようだな」
「ありがとうです、お父様‥‥」
 彩虹がグッと自らの肉球越しに力を入れて前へ出る。
「それでは次は私が。がっつりフニりましょう♪」
 楽しむ気満々だが、もちろん警戒は怠っていない。この呪縛もいつまで効くか分からないのだ。もしかしたらアヤカシもこちらの様子を窺っているのかもしれない。
 が、そういう細かいことは一旦おいといてフニフニだ。
「フニフニ‥‥うん、確かにフニフニです」
 じっくりと触り、彩虹は呟く。しかし瞳は真剣な色を宿していた。
「しかしですね? やはり猫なら猫の一部としての肉球を楽しむべきであり、手の部分のみ、更にこの大きさでは可愛さという点では――」
 ぺらぺらと肉球に対してマシンガントークを開始する彩虹。
 彼女の肉球にかける思いは本物である。
 その様子を見つつ、順番待ちがてら焔騎が持参した酒を飲む。少量ならばこの後の戦闘にも影響ないだろう。
「‥‥なんというか、皆、良い表情してるぜ。幸せそうだ」
 何かに夢中な人々を見ながらの酒というのも乙なものだ。
「さて、そろそろ俺も触ってみるか」
 肉球に触れると、それは程よい弾力と共に、ふにり、と指の両側を包み込んだ。
「おぉ、これは。良いぞ、申し分ない」
 猫好きにはたまらない、と焔騎も顔を綻ばせる。
「ふわあああ、ずっとこうしてたいです‥‥!」
 千亞は全身を使って肉球にスリスリしていた。
 持ってきたマタタビを試しにチラつかせてみるが、肉球はとてつもなく無反応。アヤカシである以前に鼻が無いのが原因でしょうか、と千亞は首を傾げる。
「‥‥よし、お前。百鬼夜行に入らんか?」
 王禄丸が近づき、肉球に対して言った。
 百鬼夜行とは彼の通う拠点のことだ。本人曰く「人もアヤカシもウェルカムマイ拠点」ということらしい。
 残念ながら肉球は返答しなかったが、返答出来なかったともいう。

 歓声はすぐ近くからも上がっていた。
「いいな、これは凄くいい!」
 ルーティアは感触を記憶しておくために何度も何度も肉球をフニフニする。
 そうして何度触っても飽きない感触だ。
「ふにふに、ふにふに‥‥ああ、至福の感触♪」
 片方の手で肉球を、もう片方の手で自分の頬に触れているのはフィンだ。
 溜まらず大きな肉球の上で横になってみるも、さすがに肉球もそれに対しては暴れた。
 うろたえずにそれを槌で抑え込むフィン。
「‥‥コレ、連れて帰っちゃダメです?」
「餌が人間というとんでもないペットになってしまうと思うが」
 からすの冷静なツッコミに「ですよねー」とフィンは頷く。
「しかし荒縄、もう少し強化しといた方が良いかもなぁ」
 太郎がグイッと肉球を押さえ、杭の代わりに物見槍で固定して荒縄の本数を増やしていく。
 そこへ妙に高い声がかかった。
「あーれー、お代官様ー、ごむたいをー」
 エルディン渾身のアテレコである。
 それにノッた太郎は悪代官じみた悪人顔をしてみせた。
「よいではないかーよいではないかー」
 肉球ではなく太郎の方にアテレコするのはからす。しかし恐ろしいほど棒読みだ。
 荒縄を増やし終わった太郎は肉球に顔を埋める。それと同時に両手を使ってフニフニしつつ、一言。
「いかん、たまらぬ」
 それを聞き、エルディンも猫じゃらしでくすぐったりボヨボヨと跳ねたりしてみる。なかなかに面白い。
 こうしてしばらくの間、短いようで長い至福のフニフニタイムは続いた。
「きみも哀れよの」
 からすだけが肉球に同情のまなざしを向けていた。
「他の皆も堪能したかね」
 ふにっと肉球の端を押しつつ、皆を見回して言う。
 なんだか惜しい気がしてしまうが、放っておけば被害を出す存在だ。‥‥最後はきちんと、開拓者の手でケリをつけねばならない。


●後始末

 ぶちぶちっ!

 荒縄を引きちぎる音がフニりタイム終了の合図だった。
「あんなに毛を逆立たせて‥‥やっぱり嫌だったんでしょうか?」
「それはそうだろうな。――よし、いくぞ」
 千亞に頷いた後、王禄丸が地を蹴って散華を繰り出す。
 放たれた三つの手裏剣は高速で回転し、肉球の体力を一気に削いだ。
 そこへ忍拳のかかった千亞の拳が空気を切って襲い掛かる。
「兎の拳の感触はどうですかっ?」
 肉球はぐらりと体を傾けるも、またフニられては堪らぬといった様子でその場に留まった。
 飛び出すような肉球のパンチを避け、白い気に包まれた彩虹が掛け声と共に深く一歩踏み出す。
「覚悟をッ!」
 猛々しい雄叫びと共に極地虎狼閣が肉球の体に深手を負わせた。
 よろり、と揺れ、肉球はそれでも爪をジャキリと出す。
 その目の前に焔騎が立ちはだかった。
「今度は、猫として産まれて来いよ」
 少し表情を緩めて呟き、すぐ真剣な顔に戻る。
「全力全開、朱雀悠焔――ッ紅蓮椿!!」
 焔騎の紅蓮紅葉と紅椿の複合必殺ががっちりと決まった。決まって、肉球は今度こそ地に体を横たえる。
「ふぅ‥‥なかなかの難敵でしたね‥‥」
 彩虹は額の汗を拭い、肉球的な意味でのライバルを見送った。

「あちらは決着がついたようですね。こちらも頑張らなくては」
 エルディンが肉球の爪を受け止めながら言う。やはりアヤカシに対しては簡易な拘束ではすぐに破られてしまった。
 一度爪から離れたエルディンはアクセラレートをかけ、その後すぐにホーリーアローを準備する。
 間髪居れずに放たれたホーリーアローは肉球の右上に命中した。
「散々フニらせてもらった後で悪いけど‥‥カッ飛べ!」
 ぐらっ、と体勢を崩す肉球にフィンのスマッシュが何発も撃ち込まれ、空気を吐き出すような音を何度も齎す。
「あれっ、まだ倒れないか‥‥見た目よりタフですね」
 フィンはバッと距離をとるが、効いてはいるようだ。
 ルーティアが刀で爪を止め、弾き返す。その目にはしっかりした闘志が宿っていた。
「早めに決着をつけたいね」
 ルーティアの刀が黒く染まってゆく。
 瘴刃烈破の影響だ。肉球の攻撃をかわしつつ懐に潜りこみ、体を切り裂きにかかった。
『――!!』
 肉球が思わず身を引いて勢いを殺す。
 しかしダメージを負うことは避けきれなかった。その隙を突き、からすがギュッと手に力を込める。
「猫には狼。魂ごと食らい尽くせ」
 からすの烈射「天狼星」が炸裂した。
 肉球は草花と共に薙ぎ払われ、見てすぐに生きていないと判別出来る状態で地面に転がる。
 太郎がぼそりと言った。

「さらば肉球、お前のフニモフは忘れない」


 その後千亞が彩虹の肉球をもみもみしたり、ルーティアが肉球型の式を作り出したり、からすがねこのてを見てしみじみしたりといった思い出が出来たが、きっとこの先フニフニだったアヤカシのことを忘れる者は居ないだろう。
 この手にあの感触が残っている限り。