闇一夜の思い出
マスター名:真柄葉
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/10/24 19:27



■オープニング本文

●とある洞窟

 コンコン――。

隊長:「‥‥完全に閉じ込められたな」
副長:「鉄扉ですね。これはちょっとやそっとじゃ動きそうにない」
隊員:「す、すみません‥‥! 俺が‥‥俺があんな見え見えの罠にかからなければ‥‥!」
隊長:「過ぎた事は仕方がない。どう解除するか探ろう」
開A:「そうですよ。貴方のせいではありません。むしろ、この罠に気付けなかった私達の落ち度です」
隊員:「いやいや! ほんと、俺のせいだから! あんた達は何にも悪い事無いって!」
開B:「ここで傷の舐め合いしてても仕方ない。それよりよ、ここを脱出する手立てを考えよう」
開C:「んなもん、壁ぶっ壊せばいいだけじゃねぇか。俺が一発ぶん殴ってやるぜ!」
隊長:「いや、待ってくれ」
開C:「なんだよ隊長さん。止めんなよ。あんたも外に出たいだろ?」
隊長:「もちろん出たい。早くこの成果を報告したいからな。だが――」
開B:「だが?」
隊長:「無理に破壊すると、別の罠が発動する危険がある。こういう仕掛けがある遺跡は、大概連動する罠が張られているものだ」
開A:「ふむ‥‥。という事は、完全に閉じ込められて、脱出する術もないと?」
副長:「そうでもないでしょう。別の抜け道がない訳ではない。もしかしたら遺跡の方に何かあるかもあしれません」
開B:「ならば、一旦戻って遺跡を再調査しよう。ここでこうしていても時間が無駄だ」
隊長:「そうだな。別の抜け道を探そう」

●洞窟を戻って――

開A:「救援隊が来てくれる可能性は無いのですか?」
副長:「それは、ある。我々からの連絡が断たれ、3日過ぎれば救援隊が出立する手はずだ」
開A:「3日‥‥。出発したのが一昨日ですから――」
副長:「ああ、今日中に連絡が入らなければ、街で救援隊が組織されこの遺跡に向けて派遣される」
開B:「到着まで2日か。食料は持つが、問題は空気だな」
隊長:「これだけ広い洞窟だ。我々だけしかいないのであれば十分に持つだろう」
開B:「いや、それは火を焚かなければの話だろう。このまま松明を使い続ければ、地に毒が溜まる事も考えられる」
隊長:「‥‥ふむ。しかし、明りも無しでこの洞窟をうろつくのは危険だぞ? 君達が倒してくれたとはいえ、まだアヤカシが残っている可能性もある」
開B:「もちろん、アヤカシに対しては最警戒する。貴方達を危険に晒す事は無いので安心してくれ。ただ、最悪の場合、暗闇で動かず救援隊を待つ事になるが――」
開C:「だからあの壁ぶち破ったらよかったんだよ!」
開A:「ですからそれは別の罠が発動すると、隊長様が仰ったじゃないですか」
開C:「んなもん、やってみなけりゃわかんねぇだろ!」
開B:「却下する。我々だけであればある程度の事態であっても切り抜けることは可能だろうが、調査隊の皆が居る事を忘れるな」
開A:「そうですよ。調査遺体の皆様は、我々と違って志体持ちではないのです。簡単な落盤ででもお命を危険に晒す事になってしまいます」
開B:「それに我々も随分疲弊している。スキルを使わずあの鉄扉を破るのは難しいだろう」
開C:「うっ‥‥。それは、そうだけどよぉ‥‥」
開B:「納得できないのはわかるが、我々の使命は探索隊の皆の護衛である事を忘れるな」
副長:「そろそろ、遺跡に着きます――」

●戦いの跡が残る遺跡にて――
隊長:「抜け道らしいものは無い、か」
副長:「そうですね。遺跡の周りのみならず通路もくまなく見ましたが、特に怪しい場所は見受けられませんでした」
隊長:「なにか仕掛けがあるかもしれない。もう一度探ってみよう」
副長:「はい。皆さん、申し訳ないがもう一度仕掛けが無いか探ってください」
開B:「わかった」
隊員:「あの、隊長‥‥」
隊長:「なんだ?」
隊員:「えっと‥‥そろそろ松明が切れます‥‥」

 数刻後、洞窟は完全な闇に閉ざされた――。

●遺跡付近で野宿――
開C:「真っ暗闇だな‥‥」
開B:「少しの光も差さないとはな。これでは目が闇に慣れても関係がないな」
隊長:「暗闇で不安だろうが、数日もすれば救援が来る。今日はゆっくりと寝て疲れを取って欲しい」
開B:「そうさせてもらおう。流石にアヤカシとの戦闘で疲れた」
隊長:「アヤカシとの戦闘――か。今ここに、アヤカシが残っていなかったのは幸いというべきか」
開C:「残ってても俺がやっつけてやるぜ!」
開B:「まったく同意見だな。この暗闇でアヤカシに襲われれば、さすがの我々でも苦戦は免れない」
隊長:「あまり脅さないでくれるか? もうアヤカシの気配はないのだろう?」
開B:「ああ、気配を探ってみたがもうここに瘴気は無い」
開C:「俺の意見無視!?」


隊員:「皆さん、水を――うあっ!」
開A:「大丈夫ですか!?」
隊員:「いてて‥‥ああ、大丈夫。ありがとう」
開A:「気を付けてくださいね。いくら平坦な道だからと言っても、突起が無い訳じゃないんですから」
隊員:「う、うん、き、気をつけるよ‥‥って、そろそろ手を離して欲しいんだけど‥‥」
開A:「あっ! こ、これは失礼しました‥‥」
隊員:「い、いや、悪いのはこちらで‥‥」
開C:「‥‥」
開B:「邪まな事を考えるのはよせよ?」
開C:「なななっ!? そそそそそ、そんなこと考える訳ねぇだろ!?」
開B:「お前くらい分かりやすいと対処のしようもあるんだがな」
開C:「だだだ、だからなんにも考えてねぇって言ってるだろ!!??」

●夜は更け――
副長:「皆、寝たようです」
隊長:「そうか。ご苦労だったな」
副長:「これからどうしますか? 捜索隊が来るとはいってもまだ先になります。このまま暗闇で待つのも‥‥」
隊長:「そうだな‥‥どうするか、か」

 暗闇の中、それぞれの思いを抱き、洞窟の夜は更けていった――。


■参加者一覧
葛切 カズラ(ia0725
26歳・女・陰
出水 真由良(ia0990
24歳・女・陰
水月(ia2566
10歳・女・吟
劉 那蝣竪(ib0462
20歳・女・シ
カメリア(ib5405
31歳・女・砲
フレス(ib6696
11歳・女・ジ


■リプレイ本文

●暗い闇の中で

葛切 カズラ(ia0725):「ふぅ、随分と間の抜けたオチがついたわね〜」
出水 真由良(ia0990):「葛切様、その様な物言いをせずともいいではないですか」
カズラ:「あ、別に責めてる訳じゃないのよ? 逆に感謝してるくらい」
水月(ia2566):「‥‥感謝、なの?」
カズラ:「そそ、感謝。だって、この依頼見せ場というか、山場というか、盛り上がりに欠けてたと思わない?」
緋神 那蝣竪(ib0462):「そうかしら? アヤカシも居たし、宝珠だってあったし、満足できる冒険だったと思うわよ?」
カズラ:「うーん‥‥、確かにそう言うのはあったんだけどさ。それって普段行ってるとこでも起こるじゃない。遺跡探索の王道って言うの?」
フレス(ib6696):「天儀の遺跡は毎回こんなにワクワクドキドキの冒険なんだね! すごいんだよ!」
カズラ:「まぁ、初めの何度かは心躍るわよね。私も心だけじゃなく色々他にも躍ったものよ」
フレス:「他にも色々‥‥?」
カズラ:「でもね、何度も同じ感じの依頼ばかりだと、どうしても飽きちゃうのよね」
那蝣竪:「なーるほど。いわゆる『さぷらいず』が欲しかったのね?」
カズラ:「そうそう。那蝣竪ったら、解ってるわね。その『さぷらいず』って奴」
カメリア(ib5405):「サプライズ? 宝珠探しに行ったら、古代の銃が見つかったとかぁ?」
カズラ:「そんな遺跡あったら見てみたいわね‥‥」
フレス:「うーんうーん‥‥おんなじお菓子ばっかり食べててたら飽きちゃうのと同じ感覚‥‥?」
カズラ:「う、うーん‥‥」
水月:「‥‥私は飽きないの」
真由良:「水月様はぐるめですものね」
水月:「‥‥美味しいものは、正義なの」
フレス:「あ、それわかるんだよ! アル=カマルでも美味しいものはいっぱいあるけど、天儀もなかなかやるんだよ!」
カメリア:「あー、ジルベリアを忘れてもらったら困りますよぉ? 天儀にもアル=カマルにもない、美味しいものが沢山あるんですから♪」
那蝣竪:「ふふ。なんだか、話が明後日の方向いに行ったり一昨日の方向に行ったり、錯綜してるわね」
カズラ:「はぁ、笑い事じゃないわよ‥‥」

隊長:「お前達、楽しそうだな‥‥」
副長:「本当に。我々は不安で仕方ないというのに」
那蝣竪:「起こってしまったものは仕方無いわ。悲観していても事は何も進展しないでしょ?」
副長:「それはそうだが‥‥」
那蝣竪:「なら、楽しい方がいいじゃない。暗く沈んでたら、この真っ暗な闇に溶けちゃうわよ?」
フレス:「えっ!? 闇に溶ける、の‥‥?」
水月:「‥‥暗いのは嫌いなの」
那蝣竪:「ふふ、大丈夫よ。皆で楽しいお話していれば、闇は怖がって近寄ってこないもの」
水月:「‥‥するの。楽しい話は、好き」
フレス:「私も楽しい事は好きなんだよ!」
隊長:「ふ‥‥ははは」
副長:「隊長‥‥?」
隊長:「はは‥‥いや、すまん。笑うつもりはなかったんだがな。なぁ、副長」
副長:「はい?」
隊長:「我々は心強い者達に護衛を依頼できたようだな」
副長:「‥‥そうですね。同感です」
真由良:「男同士で密談ですか? 暗闇で仲良くお二人でだなんて‥‥今の世ではいらぬ誤解を招いてしまいますよ?」
副長:「い、いらぬ誤解とはなんだ!?」
カメリア:「え、え‥‥? 隊長さんと副長さんって、そう言う‥‥」
副長:「そう言うってなんだ!? 私は隊長を尊敬してはいるがそれ以上の感情は抱いてはいないぞ!?」
カメリア:「‥‥それ以上の感情がある事はご存知なんですねぇ?」
副長:「うぐっ‥‥! 
真由良:「カメリア様、あまり副長様を追い詰められてはいけませんよ?」
カメリア:「あれ〜? 最初に追い詰めたのは真由良さんじゃなかったでしたかぁ?」
真由良:「はて? わたくしは世間ではそう言う御趣味の方もいらっしゃると、お教えしただけですわ」
カメリア:「はて〜? そうでしたっけ?」
真由良:「あら、違いましたか?」
副長:「うぅ‥‥誰か助けてくれ‥‥」

那蝣竪:「天然娘二人に囲まれて、副長さんも幸せそうね」
カズラ:「そう見えるなら、貴女も幸せ者だと思うわよ?」
那蝣竪:「あら、少なくとも不幸じゃないわよ?」
カズラ:「この状況で?」
那蝣竪:「もし一人で閉じ込められていたら、不幸だったのかもね。でも、今は違うじゃない。皆が居るんだもの♪」
カズラ:「ほんと、幸せ者ね」

●冷たき闇の中で
真由良:「誰も責めてはいませんよ?」
隊員:「そ、そうなんだけどさ‥‥」
真由良:「誰も気にしておりませんよ。数日もすれば救援隊が――あ‥‥!」
隊員:「おっと!? だ、大丈夫か‥‥?」
真由良:「申し訳ありません。何かに躓いてしまったみたいです。お手をありがとうございます」
隊員:「い、いや、これくらいどうってことないさ」
真由良:「本来、わたくしが支えるべき立場ですのに――あ」
隊員:「うん? どうしたんだ?」
真由良:「履物の緒が切れてしまったみたいです。どうしましょう」
隊員:「そ、それはまずいな。真っ暗だし床に何かあるとまずい‥‥お、俺の肩でよければ掴まってくれ」
真由良:「まぁ、よろしいのですか? ――それではお言葉に甘えさせていただきまして」
隊員:「お、おう! ――って、ちょ!? くっつきすぎ――」
真由良:「動かないでくださいませ。うまく歩けなくて‥‥」
隊員:「おふぅ!? わ、わかったから耳に息をかけないでっ!?」
真由良:「そう言われましても‥‥」
隊員:「あふんっ?!」

●腹の虫も鳴く頃に
那蝣竪:「こっちはダメね。暗視で探ってみたけど何も無かったわ」
カメリア:「こっちの組も収穫なしですねぇ。やっぱり何度探しても抜け道は無いみたいですよぅ」
カズラ:「右に同じく。ま、アヤカシももう居ないみたいだし、安全は安全かしらね」
フレス:「うーん‥‥後は真由良姉様だけなんだよ」

真由良:「皆様、お戻りでしたか」
フレス:「あ、真由良姉様、お帰りなさいなんだよ!」
カメリア:「どうでしたかぁ? 何か見つかりました?」
真由良:「いえ、残念ながら何も。やはり出口は正面の入口だけの様ですね」
副長:「‥‥ふむ。やはりこれ以上の捜索は無駄ということでしょうか」
隊長:「ああ、下手に動いて体力を消費するのは控えた方がいいな。このまま大人しく救援を待とう――」

 ギュルルルルル!!

那蝣竪:「しっ! 今のは‥‥鳴き声‥‥?」
フレス:「お腹の底に響く様な‥‥なんだかとっても怒ってる感じの声だったんだよ!」
カズラ:「そんな訳は無いわ。アヤカシはもうここにはいないんだから‥‥」
カメリア:「もしかして、ケモノが居たのかもしれないですねぇ。とにかく戦闘の準備を」

 ギュルルルルル!!

水月:「‥‥お腹へったの」
一同:『‥‥へ?』
那蝣竪:「も、もしかして‥‥今の水月ちゃんのお腹の虫さん?」
カズラ:「すごい鳴き声ね‥‥」
水月:「‥‥お腹へったの‥‥」
フレス:「えっと、そろそろご飯の時間? 真っ暗で時間がよくわからないんだよ」
真由良:「暗闇のおかげで時間の感覚が狂っていたようですね。――皆様、夕食にいたしませんか?」
副長:「はは、そうですね。言われてみれば腹が空いたように思います。隊長、よろしいでしょうか?」
隊長:「ああ、頼む。それにしても、正確に時を刻むお嬢さんが居れば、この暗闇でも日が知れるな。実にありがたい」
那蝣竪:「うんうん。水月ちゃんすごいわ♪」
水月:「‥‥褒められたの? お腹の虫さん、褒められたみたいなの。これで、残りの食べ物は貰ったも同然なの」

一同:『いやいやいやいや‥‥』

●腹の虫も機嫌を戻し
水月:「‥‥ご馳走様、なの」
真由良:「あら、あまりご満足いかなかったのですか?」
水月:「‥‥やっぱりご飯が見えないと、美味しさも半減なの‥‥おかげで、3人前しか食べられなかったの」

カズラ:「あの小さな体のどこにそんなに入るのか‥‥一度、とことん徹底的に赤裸々に調べてみたいわね」
那蝣竪:「赤裸々は少しまずいんじゃない‥‥?」

フレス:「美味しかったんだよ! ご馳走さまっ!」
副長:「保存食ばかりで申し訳ないがな」
カメリア:「そんな事無いですよぅ。お腹一杯食べられるだけで、大満足です〜」
フレス:「それじゃ、お腹も一杯になった所で恒例のアレいくんだよ!」
真由良:「アレ、ですか?」
フレス:「食べた後は、身体を動かす! 皆に我が家に伝わる伝統の舞を披露するんだよ!」
カメリア:「え、え、え? この暗闇で披露ですぅ?」

 タンタンタタタン――!

水月:「‥‥見えないの」
カズラ:「見えないわね」
カメリア:「見えないですぅ」
那蝣竪:「見えないわねぇ」

 タタンタンタン――!

真由良:「折角の舞が見えないのでは勿体ないですね。‥‥練力はあまり残っていませんが――宵闇に灯せし一光の蛍火」

 ポウッ――。

カズラ:「なるほどね。じゃ、私も――絡み、うねり、蠢け。皇穣の火!」

 ポウッ――。

カメリア:「夜光虫‥‥すごく綺麗ですねぇ」
那蝣竪:「ええ‥‥二つの光に映し出される褐色の肌。まるでヴェールの様にひらひらと舞う黒い髪。とても幻想的で情熱的ね」
水月:「‥‥私もお手伝いするの」
カメリア:「え? 水月さんも踊られるんですか?」
水月:「‥‥違うの。私はこれで――」
カメリア:「これは――鈴?」
水月:「‥‥なの」

 シャラン――。

那蝣竪:「――澄んだ綺麗な声。とても落ち着くわね」
カメリア:「本当に。洞窟に閉じ込められている事を忘れてしまいそうになりますねぇ‥‥」

●幻想を終えて

 パチパチパチ――!

フレス:「ふぅ、楽しかったんだよ! 水月の声とっても綺麗だったし!」
水月:「‥‥お粗末さまだったの。フレスさんの舞もとっても綺麗だったの」
フレス:「わわ、そう言ってもらえるとなんだか照れるんだよ!」
カメリア:「お二人ともとてもお上手でしたよ! なんだかとっても温かい気持ちになれましたぁ!」
那蝣竪:「まさかこんな所で、こんなにもいい物が見れるなんて思わなかったわね」
真由良:「はい、まさに眼福でしたね」
カメリア:「とは言え、また暗闇に戻ってしまいましたねぇ‥‥こんなに真っ暗な場所にいると、あの話を思い出してしまいます」
真由良:「あの話、ですか?」
カメリア:「あ、ご興味ありますか? ちょっと身の毛も弥立つおどろおどろしいお話なんですけど――」
那蝣竪:「なになに、怪談話? 私も混ぜてよ」
フレス:「私も混ざるんだよ。ジプシーに伝わるとっておきのお話を披露するんだよ!」
カメリア:「あ、いいですね♪ では怪談話大会を開催しましょうか!」

一同:『賛成!』

カズラ:「あー、私はパスね」
カメリア:「あれぇ、カズラさんは参加されないんですか? 楽しいですよ?」
カズラ:「ふふ、もっと楽しいことがあるからよ。ね、隊員さん」
隊員:「お、おう!」
カメリア:「?」
カズラ:「ふふ――それじゃね」

●怪談怪談また怪談
水月:「‥‥」
真由良:「水月様、大丈夫ですか?」
水月:「‥‥大丈夫なの。このくらい何ともないの‥‥」
真由良:「そうですか? 肩が震えて――あ、次は那蝣竪様の番の様ですね」
水月:「‥‥っ!」
真由良:「水月様? そんなにくっつかなくても私は隣にいますよ?」
水月:「‥‥わ、わかってるの。全然わかってるの‥‥」
真由良:「そうですか? それならばいいのですけど」

カメリア:「――最後の蝋燭が消えた、その時‥‥!」
那蝣竪:「‥‥ドキドキするわね」
フレス:「ごくり――」
カメリア:「どーーーん!!」
那蝣竪:「きゃぁ♪」
フレス:「うぷっ!? 那蝣竪姉様、お胸が苦しいんだよ!?」
那蝣竪:「あら、ごめんなさいね。ふふ」
フレス:「――ふぅ、死ぬかと思ったんだよ! それにしても‥‥むぅ‥‥おっきいんだよ‥‥」
那蝣竪:「? どうかしたの?」
フレス:「何でもないんだよ! それより、次は那蝣竪姉様の番なんだよ!」
那蝣竪:「あらあら――じゃ、私の聞いたお話ね――」

●恐怖の一時も終わり
真由良:「水月様? あら――」
水月:「――すぅすぅ」
真由良:「泣き疲れてしまいましたか?」
水月:「‥‥泣いてなんかないの!」
真由良:「っ。それは失礼しました。私はてっきり――」
水月:「――すぅすぅ」
真由良:「‥‥まぁ、寝言でしたか。ふふ。お休みなさいませ」

●寝床の中で
那蝣竪:「――あらあら、そんなことまで――」
フレス:「那蝣竪姉様、どうしたんだよ?」
那蝣竪:「あ、うんん、無いんでもないのよ」
フレス:「? お声が楽しそうなんだよ?」
那蝣竪:「ふふ、楽しそうに鳴く鈴虫の声色が聞こえただけよ」
フレス:「むむ? 鈴虫の声なんて聞こえないんだよ?」
那蝣竪:「大人にしか聞こえない鈴虫なのよ。さ、そんな事より寝ましょう。明日は救援隊が来てくれるんだしね」
フレス:「むー?」

●毛布に包まれ
隊長:「――と、まぁそんな感じだ」
水月:「‥‥昔の人はすごい罠を考えたの‥‥」
隊長:「まぁ、犠牲者が出なかっただけましだがな」
水月:「‥‥でも、宝珠は」
隊長:「ああ、見事に砕けたな。おかげでお偉いさんからは大層な雷を貰ったよ」
水月:「‥‥でも、それは仕方のない事なの。隊長さんのせいじゃないの」
隊長:「君は優しいな。しかしな、それで済まないのが大人の世界だ。ま、君ももう少し大きくなればわかるさ」
水月:「‥‥わかりたくない、の‥‥」

●寝息を聞きながら

 ピチョン――。

カメリア:「水の滴れ――」

 ヒュゥ――。

カメリア:「風の鳴動――」

 コンコン――。

カメリア:「岩の堅牢――」
副長:「眠れないのか?」
カメリア:「あ、いえ。そう言う訳ではなくて――闇の世界を旅していました」
副長:「闇の世界?」
カメリア:「ええ。こうやって暗闇に包まれていると、普段見えていない、でも、確かにそこにあるもう一つの世界が見えてきませんか?」
副長:「‥‥何の事だ?」
カメリア:「ふふふ、見える人にだけ見える特別な世界のお話です♪」
副長:「楽しそうだな‥‥」
カメリア:「ええ、とても」

●闇に差す光

 ゴゴゴゴゴゴ――。

水月:「‥‥眩しいの」
真由良:「闇に目が慣れていましたからね」
那蝣竪:「皆――無事の様ね」
カズラ:「無事――だといいけどね。ふふ」
カメリア:「カズラさん、なんだかとっても満足気なお顔ですね?」
カズラ:「そう? ふふ――」
フレス:「とっても楽しかったんだよ! こんな冒険なら後2,3回あっても大歓迎なんだよ!」
水月:「‥‥」
真由良:「水月様。もう隠れなくても大丈夫ですよ?」

隊長:「――皆、ご苦労だったな。色々トラブルもあったが、何とか無事に出られた。これも皆のおかげだ。さぁ、皆、これで依頼終了だ!」

 降り注ぐ朝日の下、洞窟は大きな拍手で包まれたのだった――。