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■オープニング本文 魔槍砲。 それは本来アル=カマル製の特殊銃を指す。 宝珠が組み込まれた長銃身型であり、先端には槍のような刃が装着可能。宝珠近くの樋口から火薬や専用の薬品を詰め込む構造を持つ。 しかし、魔槍砲には銃口が存在しない。そして多くの魔槍砲は弾丸を込める手順さえ必要とせず、練力消費によるスキルを代替えとする。 銃身の先端から時に放たれる火炎、爆炎は一見すれば精霊魔法のようだが物理的な攻撃能力を有す。 これまで改良が続けられてきた魔槍砲だがここにきて停滞気味。アル=カマルの宝珠加工技術の行き詰まりが原因といわれている。 このような状況下で朱藩国王『興志宗末』と万屋商店代表『万屋黒藍』は魔槍砲に注目していた。 ●安州 朱藩の首都として恥じない賑わいを見せる安州。そんな中で一番の目立つのがここ、輿志王が座する城である。 「三条槍術流が使い手、三条 せん。輿志王の招へいに応じ、まかり越して候!」 「まぁまぁ、堅くなるなって。顔上げて顔上げて」 王を前に武人らしく首を下げるせんに、輿志王はにへらと緩みまくった笑みを向けた。 「はっ! ‥‥して、例の代物は‥‥」 と、顔を上げたせんは、そわそわと恋い焦がれる乙女の様な表情で、輿志王に問いかける。 「魔槍砲の事か?」 「は、はいっ!」 ふと輿志王が漏らした言葉『魔槍砲』。 その単語に、せんは目を輝かせ何度も頷いた。 「実はなぁ‥‥」 「は、はいっ!」 「まだできてねぇんだよな」 「‥‥はい?」 全く予想していなかった輿志王の言葉に、せんは呆然と口を開く。 「だから、まだできてねぇんだって。でだ、三条槍術流の使い手であるあんたに、手伝ってもらおうと思ってな」 「‥‥はっ!? も、申し訳ござらぬ。お話が理解できぬのであるが‥‥?」 「いや、だからな。未完成なんだよ魔槍砲って奴は」 「み、未完成‥‥?」 「そ。だからな、おまえさんのその槍術の腕を見込んでだな。改造に一役買ってもらいてぇんだよ」 「わ、私の腕ですか‥‥?」 「そそ。聞いてるぜ? 結構な腕前なんだろ?」 「そ、それは、槍に関しては同流派並びに他流派においても、ひけを取るものではないと自負しております!」 輿志王の言葉に、せんはとんと胸を叩き、自信に満ちた表情を浮かべた。 「そんじゃ、よろしく頼むわ。この武器が実用に耐えるものになるかは‥‥お前さんの腕にもちょっぴりかかってるからな」 「は、はいっ! 不詳三条 せん。この身に代えましても!」 「いや、だからそんなに堅くなんなって‥‥」 自らに課せられた使命に燃えるせんに、輿志王は苦笑交じりに呟いたのだった。 ●鍛冶屋街 もうもうと立ち込める黒煙。 カンカンとリズムよく打ち付けられる槌音。 「‥‥うーん」 鍛冶の街安州の心臓部ともいえる鍛冶屋街の一軒の工房。 「とりあえずこんなもんか‥‥」 机に置かれた三本の魔槍砲を見下ろし、鉄砲鍛冶『宗吉』がぽつりと呟いた。 それは、前回開拓者から寄せられた案を元に改造を施し、天儀製の魔槍砲として完成させた物。 「何でもかんでも放りこみたいんは山々やけど‥‥ほんま微妙な調整しとるわ、この武器」 宗吉は机に置かれた魔槍砲の一本を取り上げた。 「一から作ったら、それも可能なんかも知らんけど‥‥」 新大陸アル=カマルで使用され、発展してきた武器。非常に強力で今までにない可能性を秘めたこの武器。しかし、それはあまりに拙い。 宗吉は新しく仕上がった魔槍砲を見つめ、少し困った様に呟いた。 「まぁ、俺は俺の仕事をするまでやな。城の大将も期待してくれとるみたいやし」 と、突然興味を失ったように魔槍砲を机へと戻した宗吉は、 「次も、ええ案が出て来てくれるかなっと」 散歩にでも出かけるのか、軽い足取りで自らの工房を後にした。 |
■参加者一覧
無月 幻十郎(ia0102)
26歳・男・サ
三笠 三四郎(ia0163)
20歳・男・サ
輝夜(ia1150)
15歳・女・サ
各務原 義視(ia4917)
19歳・男・陰
ティアラ(ib3826)
22歳・女・砲
夜刀神・しずめ(ib5200)
11歳・女・シ
御調 昴(ib5479)
16歳・男・砂
リラ=F=シリェンシス(ib6836)
24歳・女・砂 |
■リプレイ本文 ●安州 朱藩の首都安州では、今とある武器が密かな流行を呼び起こしていた。 「へぇ、もう出来上がったんだね」 机の上に置かれた3本の魔槍砲を眺め、リラ=F=シリェンシス(ib6836)が呟いた。 「そうですね。さすが朱藩の鉄砲鍛冶の皆さん、といった所でしょうか」 と、御調 昴(ib5479)。 二人は、机に並ぶ三本を、どこか感慨深く見つめる。それもそのはず、二人とも前回の魔槍砲改造の立案者であったのだから。 「これが魔槍砲‥‥ふむ、実珍妙な武器じゃの」 と、輝夜(ia1150)がそんな二人の横から魔槍砲を興味深げに覗き込む。 「槍と大筒の相の子、とでもいうのかねぇ」 初めて見る魔槍砲を取り上げ、無月 幻十郎(ia0102)は小さく呟いた。 「見た目からして何やけったいなもんやな‥‥ほんまに使えるんかいな」 幻十郎が取り上げた物とは別の魔槍砲を手に取り、夜刀神・しずめ(ib5200)は振ったり構えたりと、じろじろと眺める。 「信頼に足る武器でなければ誰も使いたがらないでしょうしね」 そんなしずめの言葉に、三笠 三四郎(ia0163)はうんうんと頷いた。 「我が信仰的に武器に携わるのは些か不本意ではありますが‥‥未知の技術というものはやはり心惹かれる物がありますね」 と、魔槍砲に向け独特の印を切ったティアラ(ib3826)。言葉ではそう言ってはいるが、眼は子供の様に輝いている。 「ほなら、今回も始めよか」 卓を囲む一行に向け、鉄砲鍛冶宗吉が声を上げた。 ● 卓を囲む一行は、目の前に並んだ新たな武器をより実用的に改造する為の案を出し合っていた。 「ふむ、構造自体は意外と単純ですね」 机の上に広げられた魔槍砲分解図を見下ろし、各務原 義視(ia4917)が呟いた。 「まぁ、構造はな。宝珠がからんどるから、制御はえらい面倒やけど」 設計図を睨みつける義視に、宗吉が話しかける。 「量産性を上げるのであれば、やはり機構の簡略化は必須ではと思ったのですが、あまり手を入れられる部分はなさそうですね」 「それでも今後武器として広めていく予定があるのなら、生産性を上げて経費を削減する事は必要ですよ」 と、悩む義視に声をかけたのはティアラであった。 「工程が複雑ですと、作業にかかる日数や人件費が膨らみます。そうなってしまうと、どうしても量産性は落ちます。ですので、構造が単純な物であっても、その部品一つ一つの生産コストを見直すべきでしょう」 ティアラはぱちぱちと脳内算盤を弾き、経費と量産性の均衡点を模索する。 「それから、一連の作業の流れを作ることができれば、不良品を減らすこともできます」 「そうですね。穂先の部分などはさすがに出来ませんが、その他の部分は鋳造技術などを応用して、できるだけ同じ品質の物を大量に用意できれば、かなりの生産性向上、コスト削減につながるでしょう。そうなると、今までの様な職人による『一点物』の必要が無くなります」 「おいおい、俺達はお払い箱やゆぅんか?」 「いえ、そうは言っていません。あくまで量産品を作る為の一つの手段です。他の武器の様に、上質な武器はやはり職人による『一点物』が基本。それに製造者への指導は必ず職人の知識と腕が必要になります」 「そうですよ。宗吉さんの様な熟練の職人さんが居なくては、この案がそもそも立ち行かなくなってしまうんです」 と、ふてくされる宗吉に義視とティアラはそれぞれ言葉をかける。 「熟練の職人が、中程度の技術者に教える。ただそれだけで、年単位での人件費コストの削減になります」 「ふむ」 「そうする事によって、今いる技術者の方の手が使えるという訳ですね」 そして、昴もまた二人の意見に賛同した。 「特殊な武器と言っても、槍であり、砲である。ならば、それらとの共通の部品はあるのではないでしょうか?」 「うん? 多少の加工は必要やろうけどあるやろな」 「では、それを流用する事で、コストを抑えることはできるでしょう」 「部品の流用と量産化か‥‥。ふむふむ、ええんちゃうかな」 宗吉は出されて意見を一字一句漏らすことなく紙へと書き込んでいった。 ● 「量産品として完成させるのであれば、威力は押えるべきでしょうね」 と、三四郎がふと呟いた。 「どうゆーことや?」 「コストはもちろん大切ですが、やはり信頼性が重要という事です」 「ふむ。粗悪品を作る様な事はすんな、ってことか?」 「ですね。そもそも、この武器は量産との相性が悪すぎます。火砲を備え槍と成す。鉄のみでできる刀とは訳が違う」 「宝珠もからむしな」 「ええ。ですから、量産を求める物は、威力を落し信頼性を上げるべきです」 三四郎はこの不安定な武器『魔槍砲』の危険性を説いたのだった。 「そも、信頼のおけへん武器を使う奴なんかおらへんしな」 と、三四郎の意見を推す様にしずめが席に腰かけたまま、ぼそりと呟く。 「その意見には賛成ですね。信頼を得るのであれば、使う素材の問題も出てきます。劣質な物を用い故障でも起きれば、戦場では命取りですからね」 「もちろん質を下げるつもりはないで。それは鍛冶としての俺の矜持が許さんからな」 皆の意見に、宗吉は固く約束をした。 ● 「折角やし改造案があったら聞くで?」 一通り出そろった量産案を纏めた宗吉が、皆に向け問いかけた。 「この魔槍砲を見ていて気付いたのじゃが、槍撃と同時に砲撃を行うというのは無理なのか?」 「あ、私もそれを思ってたわ」 と、声を上げたのは輝夜とリラであった。 「折角、槍と砲の機能を備えておるのじゃ。何も別々に使う必要もなかろう」 「そうよね。この魔槍砲参式なんだけど、威力を落すのなら近くで撃たなきゃ意味が無いし、それならいっそ敵の目の前で撃ってやればいいって思うのよね」 「じゃの。そうすれば威力はそれほどなくても問題無い。掌の上に置いた爆竹を爆発させても火傷程度じゃが、握った手の中で爆発させれば――」 「どかんっ。粉々ね」 「うむ」 二人はお互いの説明を補う様に、その構想を皆に伝えていく。 「槍撃を軸とした零距離射撃か」 そんな二人の構想に、宗吉は感心したように聞き入った。 「若干、砲撃のタイミングに熟練が必要であろうがの」 「槍撃自体を引き金にしたらええんや」 と、輝夜の意見にしずめが声を上げた。 「突きで出来る衝撃を無駄にすることあらへん。その力使って引き金の代わりにするんや。引き金も必要なくなるし、一石二鳥ちゃう?」 「‥‥なるほど、面白いかもしれませんね」 と、しずめの意見に義視が食いついた。 「宝珠への伝道線を穂先の方へ持って行って――」 「ここやな、穂先の根元に引鉄の機構を持ってきてや――」 「それやと導線が迂回する事になんな、こっちを回せば――」 机に置かれた図面を囲み、三人は数字や文字を次々と書き込んでいく。 「まぁ、相応の反動は覚悟せねばならぬから、それなりの体力は要求されるがの」 「それに耐久度もね。槍先も一緒に粉々じゃ。本末転倒だわ」 そして、三人に使い手としての案を添えていった。 「‥‥逆の発想もありなんじゃないでしょうか?」 纏め上がった構想を前に、義視がふと呟いた。 「うん?」 「今思ったんですけど、近接特化があるなら、射撃特化があってもいいのではと」 「うーん、でもなぁ」 と、出された意見に宗吉は乗り気を見せない。 「駄目でしょうか?」 「そもそも、近接武器やからな、これ。遠距離仕様にしたら、槍がいらん様になるで?」 「ふむ‥‥」 「まぁ、需要はあるやろうから、案としては貰っとくわ。魔槍砲の改造案やと使えへんやろうけど、他の武器に流用できるかもしれへん」 「はい、お願いしますね」 「私からもいいですか?」 と、二人の会話の終わりを待って声を上げたのはティアラであった。 「ええよ。どうした?」 「はい。えっとですね。簡略化の一環なんですが、魔槍砲の砲撃を一発限りにするというのはどうでしょう」 「一発限りに? 弐式とはちゃうんか?」 「はい、弐式は威力が大きすぎるので、壱式程度の威力で単発式を考えてます」 「ふむ?」 「これは槍での攻撃をメインに置いた案で、単発式にすることで、火薬倉の小型化と省スペース化を図って、機構の簡略化と軽量化を目指せないかと思いまして」 「砲撃は取って置きにするゆぅ事か」 「はい。槍をメインに据えれば、長期間の継続運用にも耐えられますし」 「なるほどな。ええ案やな。ちょっと考えてみるわ」 「はい!」 義視とティアラの構想もまた、魔槍砲の一つの道。 宗吉は出された貴重な案をしっかりと記録に残した。 ● 「せん殿」 「む? 何であろう?」 皆が提案する数々の案を、分ってる風に頷きながら会議に参加していたせんに、幻十郎が声をかけた。 「魔槍砲はもう振ったのかい?」 「うむ、皆が揃う前に振らせていただいた」 「どうだった?」 「重いな」 「ふむ‥‥」 「だが振れぬ程ではない。そもそも、槍にごちゃごちゃと色々な物をつけるから――」 「まぁ、愚痴もわからなくもねぇけどな。それでも王さんが使いたいって言ってるんだ。呼ばれたからには期待に答えなくちゃな」 「う、うむ。当然ではないか!」 「よくいった。そんじゃ、この魔槍砲に合うスキルを作ってくれ」 「な‥‥に? そんなもの、我が流派には――」 「だから開発するんだっての」 「開発など、簡単にできるものではない! そもそも一つの技を完成させるまでには幾年もの――」 「確かに、槍は突いてよし、払ってよし、叩いてよしの万能武器や」 と、ぶつぶつと槍の技について御託を並べ始めたせんに、しずめが声をかける。 「当然だ! 我が流派が選んだ獲物に死角はない!」 「けど、それだけやったら決め手に欠けるゆぅもんや」 「む‥‥?」 「普通の戦場やったら、まぁ、ある程度はそれでいいやろう。でも、うち等の相手はアヤカシやで? それだけで凌げる相手とちゃう」 「だなぁ。決め手に欠けた戦いは‥‥うーん、ウンザリするなぁ」 しずめの言葉に、しばし考え込んだ幻十郎は眉を顰めた。 「魔槍砲はそれを克服するには十分な打開策をもっとる。砲撃ゆぅな」 「ならば、新たな技など――」 「練力尽きたらどないするんや。まぁ、スキルも練力使うけど、砲撃の比やない。燃費がええのはやっぱしスキルやろ」 「それに、攻撃するなら選択肢は多い方がいいしな」 「そやな。手数は多いほどええ。とゆぅ訳で、三条の姐はん、スキル開発がんばってな」 「う、うむ、そう言う事であれば‥‥」 どこか納得のいかぬ顔で頷いたせんを、幻十郎としずめは満足気に見つめた。 ● 「魔槍砲の技術者というのは、やはりアル=カマルに行かなければ居ないのでしょう?」 と、皆の意見を静かに聞いていた昴がリラに問いかけた。 「居ないでしょうね。そもそもこの魔槍砲だって、アル=カマルでも特殊な部隊しか持ってない武器だし」 「技術者はさらに少ないという訳ですか。となると技術を伝えるのは難しいかもしれないのですね‥‥」 「そうね。宝珠の加工技術はこちらの方が進んでると言っても、構造自体はあちらの技術者に一日の長があるでしょうし」 「では、核となる部分、練力伝道部を教える技術者をアル=カマルから招聘してはどうでしょう?」 「あっちから呼ぶんか? それやったら益々俺の居場所が無くなるんやけど‥‥?」 「いえ、そうではありません。宗吉さん、この魔槍砲はまだまだ未完成です。この未完の技術を大成させようとするなら、技術的邂逅による変化が必要になると思うんです」 再びむくれる宗吉に昴は、ゆっくりと自身の考えを説明していく。 「あちらの技術者だけで作れば、元の魔槍砲です。こちらの技術者だけで作れば、模倣品でしかありません。しかし、二つの技術が融合すればどうでしょう?」 「ふーむ」 昴の問いかけに、宗吉の頭の中でものすごい速度の思考が巡る。 「それこそが、未だに完成を見ないこの武器の一つの完成形になるのではないでしょうか。もちろん、問題は山積みでしょうけど」 「‥‥面白いな。俺もこんな武器作った連中の顔見てみたいし。わかった、輿志王に話して見るわ」 「はい、きっと楽しいと思いますよ」 納得したように頷く宗吉を、昴とリラは嬉しそうに見つめた。 ● 「ふと思ったんだが、武器系統の変更はできねぇのかねぇ?」 と、突然声を上げた幻十郎に皆の視線が集まる。 「まぁ、名前が魔『槍』砲なんだし、槍がいいんだろうけど。それこそ接近武器には色々あるだろ?」 「ふむ、では仮に槍以外の物にするとして、どのような物が?」 「んー、棍とかかねぇ? 槍と形は似てるしな。それに、刃が無い分軽くなるから、耐久度に重点を置けるんじゃないかねぇ? 武器は攻撃するだけのもんじゃないしな。耐久度が上がれば、受けにも使える」 「私も同じような事を考えていましたね」 と、幻十郎の意見に乗った形で三四郎も声を上げた。 「砲撃時はその反動からか、無防備になる瞬間があるでしょう。そこで、使用者を守る盾を兼ね備えた物を造れないかなと」 「盾? そんなもん付けたら重ぉなるだけやで?」 「本体に取り付けなくても、銃架に組み込むなどでもよいのです。理想としては盾形の魔槍砲なんてあればいいと思うんですけどね」 宗吉の返しも予想していたように、三四郎は自身の考案した魔槍砲の新たな形を提言した。 「我もそれを思っておった」 そして、三四郎に引き続き輝夜も席を立つ。 「二人の意見もそうであったが、思考を柔軟に考えるべきであろう。そもそも、槍一択というのが解せぬ」 と、輝夜は机に立てかけてあった巨刀に目をやった。 「我が提案したいのは、発展型の魔槍砲じゃ。この巨刀に砲撃構造を加えることはできぬものか? まぁ、構造的に可能かどうかは、我ではわからぬからな。――任せる」 と、輝夜は宗吉をちらりと眺め席に着いた。 「ふーむ、面白い案やとは思うんやけど、さすがに改造の域を越えとるな」 「ふむ」 輝夜の言葉に苦笑交じりで答える宗吉。 「まぁ、槍以外で作ってみたいゆぅ事は報告はしとくわ」 「ああ、頼む。最終的に、いろんな武器の魔槍砲ができればいいのにな」 皆の意見を紙に写し取る宗吉に向け、幻十郎がにかっと微笑みを向けた。 出た意見の他にも、様々な意見が示される。 砲口の連装化、砲撃タイプの切り替え式、点火補助倉の脱着――。 すぐには実現できない案も含めた数々の案。そんな中、二つの案が実を結んだ。 引鉄を廃し、突きの瞬間にかかる負荷で火薬に引火させ砲撃を行う。対個零距離砲撃型魔槍砲。仮に魔槍砲肆式とする。 槍の攻撃を主とし、砲撃の単発化を行い機構の簡略化と軽量化を狙う。単発式魔槍砲。仮に魔槍砲伍式とする。 そして、全ての魔槍砲の量産に向けての体制作りとして、各部品の分業化の提案がなされた。 こうして未知の武器『魔槍砲』の改造は、様々な案を元に進められる。 いずれ来る実用化へ向けて――。 |