【四月】デュエリスト2
マスター名:真柄葉
シナリオ形態: イベント
相棒
難易度: 普通
参加人数: 40人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/04/19 19:15



■オープニング本文

●闘技場
『レディース アェンド ジェントルメンッ!!!』
 音割れ寸前のスピーカーから響く、けたたましいまでのMCの声。
『お前ら、待たせたなっ!』
 そして、突如暗かった闘技場の中央へスポットライトが燦々と浴びせかけられた。
『一年間の長き時間を経て――今日、再び訪れた、D・T・S界の天王山っ!!』
 そこに浮かびあがる人影に場内の観客の視線が釘付けとなる。
『お前らの声援が、視線が、熱狂が!! 俺のビートに超絶リンクだぜ!!』
 ピシッと決めた黒の燕尾服に黒のシルクハット。陽を受けて白銀に煌めくマイクがその存在をこれでもかと主張していた。
 浮かび上がった人影は恍惚の表情を浮かべ、高らかに声を上げる。
『お前ら、その開いてるのか閉じてるのかわかんねぇ様なちっちゃな瞳おっぴろげて、この瞬間を焼きつけやがれっ!!!』

 おぉぉぉぉぉっっっ!!

 野次ともとれるMCの呼びかけにも、興奮する観客達は一際盛大な歓声を送った。
『D(舵天照)T(タクティクス)S(スターズ)、天下一決定戦、決勝っっっ!!! 今ここに、開幕だぁぁぁ!!!』
 決勝戦の開幕を宣言するMCに、割れんばかりの拍手と喝采が送られた。


『さぁて、決勝に残った猛者共を呼び出すぜっ!!』
 観客達の拍手と喝さいが収まるのを待って、MCが切り出す。
『お前ら、虎門にちゅうもーーくっ!!』
 闘技場の中央で、これでもかと大げさに右を指さすMC。
 さす指につられ、観客達の視線が見たもの。そこには豪奢な虎の彫刻が施された巨大な門があった。
『下馬評ではまったくの無名! 並み居る強豪を悪魔にでもとりつかれたのかと思わせる程のドローで次々を撃破し、ここまで成り上がった――』
 ギギィと軋み音を上げ、ゆっくりと開かれる虎門。
『恐怖の引き! 袖端 ふーーーりふりっっ!!』
 そこに立つ一人の少女の姿に、観客から惜しみない拍手が送られた。

「ほう、ここが決勝会場かえ? たいしたことないのじゃ!」
 風に揺らめくブロンドヘアー。
 強い意志を湛えるブルーの瞳。
 無い胸をどどーんと張り、袖端 振々華麗に登場である。

『そして、対するは――やはり来たっ! D・T・Sに生活の全てをかけるアホ!!』
 ペイジの登場を満足気に見つめたMCは、くるりと体を返し、マイクに向け叫ぶ。
『前回のD・T・S天下一決定戦にて、新人ルーキーにまさかの敗退!!』
 MCが左を指さすと同時に開かれる、虎門と対になる豪奢な龍の門。
『この一年どんな屈辱を味わったのか――世紀の変じ‥‥もとい、世紀の大盗賊――』
 門の奥から、ゆらりと姿を現す影に向け――。
『怪盗 ポ―――ンジっっっ!!』
 ビシッと影を指さし、MCが叫ぶ。

「はっはっはっ、俺、再び参上‥‥!」
 にやりと口元を歪め、開く門からゆっくりと歩みだした目出しバンダナを纏う変態。
 そう、元覇者ポンジである。
『うおぉぉぉぉぉぉ!!!!』
 ポンジの登場と共に、会場のボルテージは一気に最高潮に達っした。
『さぁ、戦の始まりだぁぁぁぁああ!!』
 そして、MCの絶叫により、戦いの火蓋は切って落とされたのだった――。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

<ルール>
ターン制のカードバトルです。

<ターン>
ドローフェイズ:山からカードを一枚引きます。
メインフェイズ:PCの召喚やフィールドカードを設置できます。召喚されたPCはそのターン攻撃することはできません。
アタックフェイズ:PCによる攻撃を行います。
エンドフェイズ:効果の終了したカードが墓地へと送られます。ターン内の効果もここで終了し、相手のターンへ移行します。

<カード>
プレイングにおいて、下記テンプレートに沿ったカード作成をお願いします。

―――――― カードテンプレート ――――――

カード名:
(PCの名前です。名前の前に称号など付けてもかまいませんが、PCの名前は省略なしで記入してください)

PC能力:○/△/□
(○=P(パワー)、△=S(スピード)、□=T(テクニック)です。この数字は合計で10になるように設定してください。例:5/3/2等)

PC効果:
(場に召喚されたPCが攻撃、又は防御時に使用する効果です。例:『内なる力の開放』このPCが攻撃を行った際、強力を使用しパワーを+2する。ただしスピードを−2する。等)

スキル効果:
(瞬間的に使用される効果です。自ターン、相手ターン、いつでも使用可能です。例:『浄化・清流のせせらぎ』相手カードのスキル効果1つを打ち消す。等)

フィールド効果:
(場に永続的に効果を発揮し続ける効果です。例:『剣士隊の進撃』味方の斬属性のカードは全てパワー+1テクニック−1の修正を受ける。等)

台詞:
(PCが場に出た時や、スキル発動時などに叫ぶ言葉です。お好きなものをどうぞ)

<補足>
PCカードが発動できる効果は1つのみです。
PC効果とスキル効果を同時に発動、とかは出来ません。




■参加者一覧
/ 星鈴(ia0087) / 三笠 三四郎(ia0163) / 羅喉丸(ia0347) / 葛切 カズラ(ia0725) / 鴇ノ宮 風葉(ia0799) / 酒々井 統真(ia0893) / 天河 ふしぎ(ia1037) / 礼野 真夢紀(ia1144) / 剣桜花(ia1851) / 九竜・鋼介(ia2192) / 水月(ia2566) / 平野 譲治(ia5226) / アーニャ・ベルマン(ia5465) / 鞍馬 雪斗(ia5470) / 鶯実(ia6377) / からす(ia6525) / リューリャ・ドラッケン(ia8037) / 一心(ia8409) / 村雨 紫狼(ia9073) / 草薙 睦月(ia9082) / 鞘(ia9215) / 霧先 時雨(ia9845) / 尾花 紫乃(ia9951) / レイラン(ia9966) / ユリア・ソル(ia9996) / アルセニー・タナカ(ib0106) / 琥龍 蒼羅(ib0214) / 不破 颯(ib0495) / 小(ib0897) / 朱鳳院 龍影(ib3148) / ヴァナルガンド(ib3170) / イクス・マギワークス(ib3887) / 藤吉 湊(ib4741) / 八十島・千景(ib5000) / 夜刀神・しずめ(ib5200) / リーゼロッテ・ヴェルト(ib5386) / ライラ・コルセット(ib5401) / 白仙(ib5691) / 翠荀(ib6164) / jiojiooi(ib6526


■リプレイ本文

●競技場
 集まる観客の注目の中。
『いくぜぇ! D・T・Sバトルゥ! レディ――』
 MCは、マイクに向けて叫ぶ。
『ゴォォ!!』
 決戦の幕開けを――。

●1ターン
「行くぜ! ドローだ!」
 先手を切ったのはポンジ。山札から最初の一枚を手札に加えた。
「ふっ、まずは小手調べだ!」
 と、ポンジは一枚の札を掴むと、
「『爆乳の龍王 朱鳳院 龍影』を召喚!!」
 場の中央へと投げ放った。
「ほう、まず我を選ぶとは。どれ、楽しむとしようか」

『おぉっ! ポンジ最初の札は、『赫帝』龍影だ!』

「ターンエンドだ!」

「ふむ、振の番じゃ!」
 ポンジの終了を静かに見つめ、振々が山札から一枚手札を加える。
「来るのじゃ『蒼聡姫 ユリア・ヴァル」!」
 そして、選んだ札を抜き放つと、場へ向けて投げ放った。
「ふぅ‥‥もう少し丁寧に扱って欲しいわ。ね? 振ちゃん」
「贅沢いうでないっ!」
「ま、いつからそんな口を聞くようになったのかしら? お仕置きが必要?」
「うっ‥‥」
『きたぁ! 振々お得意の一枚! いつもの前口上と共に参戦だっ!』
 召喚された途端のやり取り。
「た、たーんえんどなのじゃ!」
 振々は早々に話を切り終了を宣言した。

●2たーん
「っしゃ! いくぜ!」
 ターンは移り、ポンジは引いたカードをそのまま投げ放つ。
「『元箱入元気娘 ライラ・コルセット』を召還!」
「はいは〜い! どーんといくよぉ! あたしに任せときなっさい!」
 ポンジの召喚に応じ、ピンと指先まで伸ばし手を上げるライラが現れた。
「ふむ、相変わらず騒がしいの」
「あれ! 龍影いたの‥‥?」
「あれ、とはどういう事じゃ?」
「あはは! 何でも無い何でも!」
 龍影の出迎えに先程までの元気は何処へやら。ライラはたたたっと龍影の元に駆け寄った。
「ターンエンドだ!」

「なんじゃつまらん」
 動かぬポンジに、顔を顰める振々は札を引く。
「ふむ、まずはお主か」
 引いた札を見つめると、そのまま場へと投げ放った。
「『紅焔姫 レイラン』!」
「うに?」
 そう叫ぶ振々に呼応するように実を結ぶ札。
「あら、レーちゃん」
「あ、ユリアちゃん。ちゃお」
「ちゃお」
 現れたレイランはユリアを見つけると、まるで猫がじゃれつくようにその傍へ。
「たーんえんどなのじゃ!」

●3ターン
「考えてる事は同じってか?」
 振々を一瞥し、ポンジが札を引く。
「とっちが先に揃えるかなっ! 『氷狼 ヴァナルガンド』を召喚!」
 そして、ポンジは札を解き放つ。
「主が招きに応じ、氷狼ここに推参」
「やや? ヴァナじゃない。やほー!」
「よぉ来たな」
「先達がお二人ですか。微力ながら力になりましょう」
 現れたヴァルなガントを迎える仲間達。

「更に行くぜ! 『イクス・マギワークス』をフィールド効果で召喚!」
「ここで使用するのか。面白い」
 ポンジの声に呼応し現れるイクスは、
「――これも一つの魔の技。この諸刃の刻、見極められるかな?」
 両手を高々と掲げる。
「『領域反転』」
 そして、小さく呟いたイクスの魔力が場の上空に巨大な懐中時計を出現させた。

『おっと!? 何の効果も発生していない場に、この札! 場の効果を逆転させてどういうつもりだ、ポンジ!』

「さぁ、ターンエンドだ!」

「む? あの時計こわれておるぞ?」
「違うの。あれは逆回転してるの。フィールド効果が反転されるから気をつけるの」
「わ、わかっておるのじゃ!」
 レイランの冷静なツッコミに頬を膨らす振々が札を引く。
「これじゃ! 『治癒術士 泉宮 紫乃』!」
 そして、札を場へと放り投げた。
「ふぅ、なかなか乱暴な主様の様ですね」
 乱暴に放り投げられた札は実を結ぶ。
「あら、女の子はこれくらい元気じゃないとね」
「それはユリアちゃんだけで十分なの‥‥」
 現れた紫乃を迎えるユリアとレイラン。
「あ、お二人とも、またご一緒で来て嬉しいですわ」
 そんな二人の出迎えに、紫乃は和やかな笑みを向けた。
「えんどなのじゃ!」

●4ターン
「もう時間の問題だな! ドロー!」
 動かぬ戦況にポンジは満足気な笑みを浮かべ、札を引く。
「来い! 『知勇兼備の将 八十島・千景』!」
 そして、手札から抜き放った札を場へと投げつけた。
「来い、とは随分不躾な呼び出し方ですね」
「これで四人目か。じゃが、肝心の者がおらんのぉ」
「寝坊でもしてるんじゃないかな?」
「‥‥たんに札の巡りの問題かと思いますよ?」
「あのー‥‥一応出て来たんで、出迎えの一つでも欲しい所なのですが?」
 何ともちぐはぐな会話を交わし、また一人ポンジの陣営にPCが揃う。
「ターンエンドだ!」

『まだ動かない! それとも動けないのか!?』

「そう焦るでない!」
 興奮するMCを諭す様に呟いた振々が、札を引く。
「ふんっ! 振がさきのようじゃな!」
 引いた札を満足気に見つめる振々は、札を天へと投げ放つ。
「『霧先 時雨』!」
「さぁて、やりましょうか」
 天に消えた札は、時雨となって場に現れた。
「まったく振ちゃんの引きにはいつも驚かされるわ」
「変なモノでも憑いてるかもしれないの」
「わわっ!? 主様にそんな失礼なっ!?」
「ふふ、また随分と賑やかな場所に呼び出されたわね」
 繰り広げられるいつもの光景に、時雨は小さく微笑み皆の元へ。

「ふーむ」
 そろった仲間達の声を聞きながら、手札と場を見比べる振々。
「『琥龍 蒼羅』をフィールド効果で召喚じゃ!」
 そして、一枚の札を手に場に放った。
「‥‥ただ断ち斬るのみ」

『おぉっ!? ここでダイス固定か!? 全ての戦闘は速度勝負となるぞ!』

「『後の先』‥‥取るのはどちらになるだろうな」
 刀に手をかける蒼羅が、場をキッと睨みつける。
「たーんえんどじゃ!」

●5ターン
「なるほどな! 全体効果なら反転は関係ねぇからな! おもしれぇ!」
 ポンジは振々の手腕を余裕の笑みで見つめ札を引き、
「行くぜ! 『夢の翼空賊団長 天河 ふしぎ』を召喚!!」
 手に持った札を高々と掲げ叫んだ。
「大空の平和を乱す者は、僕が許さないんだからなっ!」
 札は一条の光を引き、天を照らす。
 そこには、飛行船を駆り蒼き大旗を翻すふしぎの姿があった。

『ついに出た、ポンジデッキのキーカード『天河 ふしぎ』! 出そろったPCは全て女性! まさに色気対決の様相を呈してきた!』

「ぼ、僕は男だぁぁあっ!」
 歓喜の叫びを上げるMCにふしぎは必死に返すが、もちろん誰も聞いてはいない。
「いくぜ! 【夢の翼】小隊攻撃を発動だっ!!」
「え、あ、うんっ! 任せといてっ!」
 ポンジの声に頷いたふしぎは、飛行船に備えられた精霊砲に手をかけた。

『きたー! ついに停滞していた戦況が動く! ポンジ必殺の【夢の翼】小隊攻撃だ!!』

「皆、いくよっ! 僕達の正義、見せてやるんだからなっ!」
 仲間達と合流したふしぎは、手に持つ旗を大きくはためかせ、
「『翼の乙女達』今こそ羽ばたく時だ!」
 号令をくだした。

「乙女、ですか。ふしぎさんも含まれるんですかね?」
「当然じゃろ。本人が叫んでおるのじゃからの」
「やっぱり! そうだと思ってたんだよね‥‥うんうん」
「皆、もう少し団長を尊重してもいいと思うのですが‥‥」
 せっかく決めたふしぎにも、他のメンバー達はガールズトークにもう夢中。

「精霊砲発射!!」 
 そんな事など露知らず、ふしぎは精霊砲の引き金を引いた。

『4人の空の乙女達、そして、ふしぎの精霊砲が振々に襲いかかる!!」

「すきかってにはさせないのじゃ!」
 しかし、ポンジのいい様にされる振々ではない。
「『小刃 小』をスキル効果で発動なのじゃ!」
 手札から一枚の札を取り出すと、盾の様に差し出した。
「小せぇからってなめんなよぉ!」
 と、傘を担いだ小が夢の翼と振々の間に立ち塞がる。
「そんな攻撃、この『鉄傘』で軽くはじき返してやるよぉ!」
 そして、手に持った鉄傘をバンと広げた。

『対象の攻撃を一つ指定し永続的に防ぎ続ける効果が、夢の翼の精霊砲を完封だ!』

「ふんっ! 初撃は止めても、これは止められねぇだろ!」
 精霊砲の攻撃は小の鉄傘に弾かれる。しかし、残る4人の矛先は振々に。
「あまいのじゃ! 小隊『幼馴染同盟』でぼうぎょなのじゃ!」
 バッと腕を振り上げた振々。そこには振々を守る様に立つ4人の戦姫達。
「地上でどうやって迎撃するつもりだ!」
 そう、夢の翼の4人は小隊攻撃効果により飛行状態にある。
「『茜色の射手 鞘』をスキル効果でしようなのじゃ!」
「援護する」
 音も無く振々の脇に現れた鞘が、無数の矢を弓に番え、矢先を天へと向ける。
「目標補足。全てを射抜く――」
 そして、いっぱいに引き絞られた弦を鞘は天へと解き放った。

「くっ‥‥!」
 天降る矢の雨は、空を舞う乙女達の翼を的確に打ち抜く。

『おぉ!? ここで鞘のスキル効果『即射・妨害』だ! 全ての攻撃PCはその特殊能力を失ったぞ!』

 飛行能力を失った夢の翼に4人は、失墜。敢無く地上へと引き戻された。

「うに‥‥なんだか気配がするの」
「ほら、レーちゃん、余所見しないの。私達の力見せてあげるわよ!」

 そこに待ち構えるは、幼馴染同盟の4人。
 8人の乙女達による戦いが始まった――。

<龍影vsユリア ダイス:3>
「速度勝負とは、運が無かったようじゃな」
「なかなか楽しかったわ。また戦場で会いましょ」

 ユリア、龍影を撃破。

<ライラvsレイラン ダイス:3>
「え? これで終わり? 嘘ぉ!?」
「うに、悪く思わないで欲しいの」

 レイラン、ライラを撃破。

<ヴァナルガンドvs紫乃 ダイス:3>
「お怪我はありませんか?」
「‥‥その心遣い、痛みいります」

<千景vs時雨 ダイス:3>
「同じ速度でかけっこってどうなのかしら?」
「延々と走り続ける羽目になるのは御免ですね」

 共にドロー。

『バトル序盤にこの大激突! しかし、若干振々に分があったか!?』

「ちぃ‥‥! ターンエンドだ!」

「はんげきじゃ! 行くのじゃ、皆の者!」
 ドローを終えた振々は、場に控える4人に号令をくだした。
「行くわよ、皆!」
「ええ!」
 ユリアの言葉に頷く時雨。
「小隊攻撃なのじゃ!」
 そこに振々の声が響く。

『ここで『幼馴染同盟』の小隊攻撃! 同じ小隊のPCが場にある場合、その数と同じだけ攻撃に+1の効果だ!』

 蒼羅の効果によりダイスは3。総計26もの攻撃がポンジへ向け突き進む。

「くっ‥‥こんな序盤で使う事になるとはな!」
 迫る四人を前に、ポンジは札を一枚抜き放つと、ギュッと握りつぶした。
「む、なんじゃ?」
 ポンジが札を使用した形跡はある。しかし、何も起こらぬ場に、振々は怪訝な表情を向ける。
「『凶鳥 からす』をスキル効果で使用! 全てのPCは破壊される!」
 と、ポンジが空を仰ぎ、スキル効果を叫んだ。

 途端、掃天を突如覆う漆黒の雲。
「無慈悲に無情に冷酷に――」
 闇となった空から木霊す女の声。
「うに? これは‥‥?」
 そして、雲が吐き出す黒の雨がPC達に振かかった。
「闇の雨は全ての者に等しく降り注ぐ」
 言葉の終わりを待っていたかのように、小雨は豪雨へ。

 黒き雨は全ての視界を零にした。

『闇闇闇! 一体場はどうなっているんだ!!』

 しばしの時を経て、闇が霧散する。

 そこにはただ一人。居るはずの無い一人の少女が。
 そして、少女はぺこりと首を垂れ――闇に消えた。

『なんと、からすのスキル効果により、場のPCが一掃された!!』

「うぬぬ‥‥! たーんえんどじゃ!」
 ポンジの奇策に、振々はギュッと拳を握る。

●6ターン
「‥‥ふんっ!」
 どこか怒りを含んだ表情でポンジが札を引く。

 場にはフィールド効果をもたらす、イクスと蒼羅のみ。

「『星鈴』を召喚!」
「よっしゃ! うちの武、魅せたるでっ!」
 ポンジにより投げられた札は高速で回転し、場の砂塵を忽ち巻き上げる。
 そして、砂塵を内側から破壊し、ニヤリと微笑む星鈴が場へと現れた。
「続けていくぜ! 『駄洒落呟く青年 九竜・鋼介』をフィールド効果で設置!」
 ポンジは更なる札を行使する。
「出番出番っと〜」
 召還された鋼介は、どこか眠そうな目で辺りを見渡した。
「見せてやれ! お前の実力をな!」
「実力を実録〜ってね。では、毎度馬鹿馬鹿しい噺を一つ‥‥」
 息巻くポンジの言葉に頷いた鋼介は、まったりとした口調で噺を始める。

『でた! 寒くも無いのに辺りを凍りつかせる鋼介の駄洒落攻勢! 場に出たPCはそのターン何もできず固まるぞ!!』

「今回は死後の世界の話をしましょう。――あの世〜」
 噺を続ける鋼介は、度肝を抜く冒頭にニヤリとドヤ顔。

『‥‥‥‥』
 もちろん、会場は得も言われぬ空気で包まれる。

「あはははっ! あの世があのよ〜ってっ!? マジか! そこかっ!!」
 しかし、呼び出した張本人ポンジだけは超大うけ。
「あほちゃう‥‥。おかげでうちが攻撃でけへんやん‥‥」
 そんなポンジを呆れた様に見上げる星鈴。
「はははっ――うぇ、っげがほっ!? ‥‥ふぅ、危なく笑い死ぬ所だったぜ‥‥ターンエンドだ!」
 だが、ポンジは至極満足気にターンの終了を宣言した。

「あほじゃ。あほがおる‥‥」
 ようやく落ち着いたポンジを憐れむように見つめ、振々が札を引いた。
「『森を駆ける風犬 翠荀』を召喚じゃ!」
 振々が投げた札に誘われ、場に一条の風が吹き抜ける。
「うちの出番だねーー!」
 そして、風と共に現れた翠荀がひょこりと耳を揺らせ場に降り立った。
「たーんえんどじゃ!」

『さぁ、両軍再びPC達が出そろい始めたぞ!』

●7ターン
「ふーん、面白い!」
 振々陣営に現れた翠荀を眺め、ポンジが呟く。
「だが、まだ動けねぇだろ! 星鈴、やってやれ!」
 引いた札を手札に加えたポンジは、場の星鈴に指令を下した。
「抵抗でけへん子供を殴るんは趣味とちゃうんやけど‥‥。これもお仕事や、悪ぅ思わんといてな!」

『おぉっ! 星鈴、障害のなにも無い荒野を一人駆け抜ける!! これは振々に直接攻撃だ!!』
 振々が召喚した翠荀は、鋼介のフィールド効果により防御に参加できない。
 星鈴は、悔しそうに睨みつける翠荀を横目に、振々へと飛びかかる。

「おっと! ここで星鈴のPC効果発動! Pを−2にして残りに+1するぜ!」
「と言う訳なんや、ごめんな? いくで! 『六交活卦・護領』や!!」
「む‥‥!」
 星鈴は振々へと襲いかかる寸前、自身の気を転換させた。

<星鈴・直接攻撃 ダイス:3>

 振々、ライフ−4。

「さぁて、ついでにこいつもだ! 『酒々井 統真』を召喚!」
 顔を歪ませる振々を満足気に見つめ、ポンジは次なる一手を打つ。
「ったく、ついでに呼び出してんじゃねぇよ」
 その言葉が気に触ったのか、統真はどこか不機嫌に場に現れた。
「更に行くぜ! 『雪斗』をスキル効果で召喚!」
 そんな統真の冷たい視線など気にもせず、ポンジは更なる一手を打つ。
「やぁ、統真。こんな所で会うとはね」
「お前もこっち側か。まぁ、お互い頑張ろうぜ」
「ふふ、がんばるのは統真だよ」
「うん?」
 微笑みかける雪斗に、統真は首を傾げる。
「雪斗のスキル効果『魔拳の誇り』! 雪斗自身を武器へと変化させ、対象のPCへ付与する! 付与されたPCはPに+3、Tに+1の効果を得る!」
 そんな二人を他所に、高らかにスキル効果を宣言するポンジ。
「と言う訳さ。統真、行くよ!」
「なるほどな。来いっ!」
 途端、雪斗の身体が闇と化す。まるでアヤカシが瘴気へと還る様に。
 そして、溶けた闇は統真の拳へと再び収束していく。
「こりゃ悪くねぇな」
 闇に巻かれる自らの拳を握りしめ、統真はその力を感じる。
「『魔拳装・酒々井 統真』完成! ターンエンドだ!」
 強化された統真を見つめ、ポンジは終了を宣言。

「よくもやってくれたのじゃ!」
 初のダメージを受け振々は怒り心頭。掴むように山札から札を引く。
「倍返しじゃ!」
 そして、場にある翠荀に向け、号令をかけた。
「よぉし! さっきのウップン晴らしてやるよっ!」
 そんな号令にぶんぶんと腕を回し、両手を地についた翠荀は、キッとポンジを見上げる。
「いっちばーん、翠荀! いっきまぁす!」
 そして、四肢の力を一気に解放し、ポンジに向け駆けだした。

『ここで振々の攻撃だ!! ダイスは速度固定! スピード重視の翠荀の一撃は痛いぞ! どうするポンジ!』

「ふんっ! その邪魔な札を破壊する!」
 向い来る翠荀を前に、ポンジは余裕の笑み。ポンジは振々側に佇む蒼羅を睨みつけた。
「『不破 颯』をスキル効果で使用! 『割り込み御免!』ライフを−2する事により、効果一つを無効化する!」
「さてさて、呼び出されたからには適当にがんばりますかね〜」
 ふあーっと大欠伸をかます颯がフラフラと場に現れる。
「狙いはわかってんだろうな!」
「はいはい、アレですかね」
 と、二人が指すのは場を睨みつけ続ける蒼羅。
「ダイスの目を固定しようなんて、そんな如何様、お天道様が許しても俺が許さない! な〜んてね」
 水平に構えた弓が蒼羅へ向け狙いをつける。
「ばんっ!」
 そして、張り詰めた矢が解き放たれた。

『おっと! ここで場を支配していた蒼羅が破壊された! これでダイス勝負になるぞ!!』

 ポンジ、ライフ−2。

「はっはっ! さぁ、張り切ってダイス振ってくれよ!」
 速度以外は1しかない翠荀。ポンジは余裕の表情で振々を挑発する。
「ふんっ、馬鹿めが! 翠荀のPC効果発動なのじゃ! 翠荀が攻撃の際は、スピードで攻撃判定を行う。のじゃ!」
「その言葉、待ってたよっ!」
「へ‥‥?」

『大間抜け!? ポンジ折角破壊した蒼羅の効果であったが、振々は二重の構えだったぞ!!』

「風と一緒にぃ突き抜けるっ!!」
 風となった翠荀の痛烈な一撃がポンジの頬を抉った。

 ポンジ、ライフ−8。

「まだ終わっていないのじゃ! 『爆裂☆アーニャ・ベルマン』『忠実な執事 アルセニー・タナカ』を連続召喚じゃ!」
 振々は止まらない。投げ放たれた札は場に降り立ち実を結び、
「弓ともふらを愛する戦士アーニャ・ベルマン参上!」
「ほらアーニャ様、裾に土埃が――」
 華麗に決めポーズを決め参上したアーニャと、身なりには無頓着な主人を甲斐甲斐しく世話するアルセニーが現れた。
「たーんえんどじゃ!」

●8ターン
「油断なんかしてっからだ」
「うるせぇ!」
 溜息混じりに呟く統真の言葉に、ムキになるポンジは乱暴に札を引く。
「『瀕死ちま 剣桜花』を召喚!」
 そして、一枚の札を場に投げ放った。

 ――ぽて。

「酷いちま‥‥。ちま虐待反対ちまよ‥‥」
 空を舞う札はぽてりと場に何かを落し、砕け散る。
 場に産み落とされた?のは戦う前から包帯まみれの点滴まみれ。まさに瀕死状態のチビサイズの桜花であった。
「桜花のPC効果発動! 桜花は場に出た瞬間破壊される。代わりに能力値0のちま桜花を召喚する! こいつは防御のみに参加し、破壊されても復活するぜ!」
 ぷるぷると小刻みに震える瀕死の桜花を何故か満足気に見つめ、ポンジは効果を宣言する。
「ちまは適当生物なので死なないちまよ‥‥」
 ふるふると健気に立ち上がるちび桜花。
「まだまだ行くぜ! 『思い馳せる陰桜 鶯実』、『雪猫巫女 白仙』を連続召喚!」
「白仙、大丈夫か?」
「‥‥うん、ありがとう」
 ポンジの呼びかけに、白仙の手を引きながら鶯実が場に現れる。
「更に更に一枚、札を場に伏せるぜ!」
 と、ポンジはPCを召喚する事無く、札を場に裏むきに伏せた。
「む?」
 そんなポンジの奇行に振々は怪訝な表情を向ける。
「終了! 攻撃は無しだ!」
 そして、自陣の3PCと伏せられた札を眺め終了を宣言した。

『おっと! ポンジ打って出ない! 何もせずに終了を宣言だ!』

「ふんっ! 臆病風にふかれおって!」
 仕掛けてこないポンジを鼻で笑い飛ばし、振々は札を引く。
「『魔女 リーゼロッテ・ヴェルト』を召喚なのじゃ!」
 と、ふわりと紅い風が振々の視界を遮る。
「あらあら、素敵な人がいっぱいね。お姉さん、嬉しいわ」
 そして、現れたリーゼロッテは、その二つ名からは想像もできぬ柔和な笑みを浮かべ場を見渡した。
「たーんえんどなのじゃ!」

『何と! 振々も攻撃に出ない! またまた睨みあいが始まるのか!?』

●9ターン
「行くぜ! ドロー!」
 札を引いたポンジは、自陣の陣容を見渡す。
「‥‥行くぜ! 鶯実、白仙で攻撃だ!」
 そして、呼び出されたばかりの二人に向け、攻撃の指示を下した。
「さて、相手はどんな娘でしょうね。女の子ならやる気が出るんですけどねぇ」
「‥‥」
「あ‥‥ははは、冗談ですよ。白仙、先に行きますね」
「‥‥うん」
 そして、手を取る二人が敵陣目掛けて駆けだした。

「リーゼロッテで鶯実を防御なのじゃ!」
「やっと出番かしら?」
 振々の指定により、リーゼロッテが鶯実を迎え撃つ。
「かかったなっ! 鶯実のPC効果発動! 『華好き』:このPCは対戦相手が女性の場合、全能力に+1する!」
「さて、お相手して頂きましょうかねぇ」
 狙いをつけた鶯実の表情が妖艶に歪んだ。
「ダイスロール! ――1だ!」

『ポンジの目は1! パワー勝負だ!』

「リーゼロッテのPC効果発動なのじゃ! 『不死への渇望』このPCが敵を破壊した場合、その攻撃力の差分だけPLのライフを回復する。のじゃ!」
「ふふ、貴方の魂は私と振々の為に使ってあげる」
 今まで柔和は笑みを浮かべていたリーゼロッテの表情が一変。怪しく微笑むと、その笑みに呼応するかのように、影から出でた漆黒の蛇が鶯実を絡める。
「うっ‥‥! こういう趣味は無いのですけど」
「それがどうした! こっちの勝ちは変われねぇ!」
 しかし、効果を発動しても鶯実のPが上回っていた。
「更に『愛玩士 葛切 カズラ』をスキル効果で使用なのじゃ!!」
 影に絡められる鶯実に、振々は更なる攻勢をかける。
「あら、なかなかいい趣味ね。でも、私がもっと遊んであげる」
 場に現れたカズラは、リーゼロッテにも負けぬ妖艶な笑みを浮かべ、
「スキル効果『触手攻め・祭』ダイスが1、6の時にのみ使用可能。対象のPC一体の能力値を自在に変化させられる。のじゃ!」
 不気味に蠢く幾本もの触手を召喚した。
「と言う訳で、パワーに振らせてもらうわね」
 そして、カズラの触手はリーゼロッテの蛇に同化する。
「いや、ですからね。そう言う趣味は‥‥」
 リーゼロッテの呼びだした影の蛇、そして、カズラの触手が鶯実に襲いかかった。

<鶯実vsリーゼロッテ ダイス:1>
「官能的な一時はいかがだったかしら?」
「今度はもう少し別方面のを期待しますよ‥‥」

 リーゼロッテ、鶯実を撃破。

 振々、ライフ+8。

「‥‥てめぇ! ゆるさねぇ!!」
 蛇と触手に絡め捕られ墓地へと送られる鶯実の姿をその目に捉え、ふるふると震える白仙が心の底から湧きおこる渇望を口から吐き出す。
「もう一人忘れてるぜ! 行け白仙! その怒り力に変えろ!! 『黒仙化』だ!!」
「言われるまでもねぇぇ!!」
 湧き起こる怒りが白仙の真っ白な髪を、徐々に漆黒へと変えていく。

「PC効果! 鶯実が墓場に送られた時に発動。白仙は黒仙と化し7/3/0のPCへと変貌する!」
 豹変した白仙を黒きオーラが包み込む。
「うおぉぉぉ!!」
 そして、怒りに堅く拳を握る白仙の攻撃が、振々に炸裂した。

 振々、ライフ−7。

『白仙の直接攻撃が決まった!! しかーし! 先のライフ回復により、然したる効果は無いぞ!!』

「ちぃ! ターンエンド!」
 攻撃は当たったが、差し引き0にされたポンジは、悔しそうに終了を宣言した。

「‥‥」
 引いた札をじっと見つめたかと思うと、あからさまに眉を顰める振々。
「たーんえんどじゃ!」

『なに!? 召喚も攻撃もせずに終了!? ポンジの攻撃をしのぎ切って来た余裕の表れか!?』

●10ターン
「その余裕いつまで続くかな!」
 札を引いたポンジは、一枚の札を場に投下した。
「『浪漫ニスト 村雨 紫狼』をフィールド効果で召喚!! 『俺が紳士だ!』場にある女性PCのダメージを−1。攻撃力を+1だ!」
 呼び出した紫狼の背を眺め、ポンジが高らかに効果を宣言する。
「‥‥」
 しかし、現れた紫狼はじっと振々の姿を見つめたまま動かない。
「お、おい! さっさと発動しやがれ!」
「‥‥俺の札の注釈を忘れたか!」
 と、紫狼は面倒臭そうに自らの胸元につりさげられた看板を指差した。
「えっと‥‥やっぱいわねぇとダメ?」
「ダメ! さぁ、叫べ! 心の底から、その欲望を吐き出しちまうんだ!!」
 どもるポンジに向け、紫狼はぐぐっと拳を握る。
「ぐっ‥‥お前の、お、お前の――」
「どうしたポンジ! お前はその程度の男なか!!」
 まるで熱血教官の如く、不甲斐ないポンジに喝を入れる紫狼。
「お、お前の‥‥おぱん――」
「そうだ! その意気だ!!」

「‥‥『羅喉丸』をスキル効果で使用なのじゃ」
 そんなやり取りを冷たい目で見つめる振々は、一枚の札を場に投げ放った。
「人呼んで砂塵の崩脚。羅喉丸ここに参上」
 すたりと音も無く地に降り立った羅喉丸。
「スキル効果発動なのじゃ! 『破軍崩震脚』場にあるフィールド効果をすべて破壊する。のじゃ!」
「了解だ」
 振々の宣言にこくんと頷いた羅喉丸は、上空へと飛びあがる。
「この一撃に一擲を成して、乾坤を賭せん――」
 そして、上空から地上を見つめると、自身の身体を高速で回転させた。

 羅喉丸を起点に、場に巻き起こる竜巻。

「砕け、破軍崩震脚!!」
 そして、竜巻の中心を一直線に降下する羅喉丸渾身の蹴りが場に穿たれた。

「ああぁ、フリフリたーーーん‥‥」
 紫狼の断末魔の叫び?を残し、場にあるフィールド効果は全てかき消された。

『い、一体なんだったんだ!? 場に現れた紫狼、羅喉丸の効果により敢無く消滅!?』

「ふぅ‥‥ある意味助かったぜ」
 自ら招いたピンチを乗り切り?ポンジは額に浮いた汗を拭う。
「気を取り直して行くぜ! 統真&雪斗で攻撃だ!!」
 そして、ポンジは統真達に攻撃を指示した。
「行こうか、統真」
「おう! お前の力見せてもらうぜ!」
 雪斗を拳に纏う統真が場を駆け抜ける。
「統真のPC効果発動! 『力押し』:ライフを1払う事で、ダイスの目を1に固定!」

 ポンジ、ライフ−1。

『またしてもダイス固定か!? 雪斗との共闘により、P10になった統真が振々を襲う!』

「これで決めてやるぜっ!!」
 漆黒の拳を纏う統真が振々へと向け飛びかかる。

 その時――。

「甘いのじゃ! 『天下無敵のお転婆娘 夜刀神・しずめ』をスキル効果で使用。なのじゃ!」
「よっしゃ! うちの任せときっ! って、なんでうちがおまえに呼び出されなあかんのや‥‥」
 威勢良く出て来たものの、召喚者が振々だとわかるとあからさまに表情を顰めるしずめ。
「うるさいのじゃ! 文句をいわずとっととスキルをつかうのじゃ!」
「はぁ? それが人にものを頼むたいどゆぅんか? これやから世間を知らんお子様は‥‥」
「へらずぐちばかりいいおって‥‥こうしてもいいのかえ?」
 と、振々はしずめの札に両手をかけ、破くぞ、と無言の意思表示。
「汚っ! それが領主のすることゆぅんか!?」
 しかし、自分自身を人質に取られてはしずめもなす術が無い。
「『悪魔の囁き』を発動なのじゃ! 対象の敵PC一体を魅了し、自陣へと招く。のじゃ!」
 至極不服そうな顔をしながらも、しずめはポンジ側の星鈴の元へ。

「あんなアホの元におってもええ事あらへんで? 少なくともあっちは金持ち、ギャラも段違いや」
 そして、しずめは星鈴の耳元で悪魔の囁き。
「そ、そうなんか‥‥?」
 しずめの巧妙な台詞回しに、星鈴も思わず聞き入ってしまった。
「ほな、そうゆぅことで」

『しずめの効果により、ポンジ側であった星鈴が振々側へ!?』

「なっ!?」
 突然自陣から消え、相手方に移った星鈴に驚愕するポンジ。
「星鈴で、統真を防御なのじゃ!」
 そんなポンジを嘲笑うかのように、振々は統真の攻撃を星鈴に任せた。

<統真vs星鈴 ダイス:1>
「あんたとやるとはな‥‥」
「ま、そういう遊戯やしね。今度機会があれば本気でやりあお」

 統真、星鈴を撃破。

『自陣PCで防御せず、相手PCをうまく使ったぞ!!』

「くそっ! エンドだ!」
 渾身の一撃を自PCで防がれたポンジは、ギリッと唇を噛み終了を宣言。

「行くのじゃ!」
 そんなポンジとは対照的に、余裕を崩さない振々は札を引き、
「アーニャとアルセニー、翠荀で攻撃なのじゃ!」
 場の二人に攻撃指示を下す。
「はいは〜い」
「アーニャ様、はいは一回です」
 元気よく手を上げたアーニャとそれを静かに諭すアルセニー。
 そして、場を駆ける二人を眺め、振々はダイスを振る。
「‥‥2じゃ!」

『ダイスは2! パワー勝負だ!!』

「アーニャのPC効果発動なのじゃ! 『爆裂アロー』自らのSとTを減らしPに加算出来る。全ての能力をPに移すのじゃ!」
「むぅ‥‥また筋肉ついちゃう‥‥」
 振々の宣言に口を尖らせるアーニャ。

『おぉ! ここでアーニャのパワーが10に!』

「アーニャを桜花でブロックだ!」
「ちま虐待、反対ちま‥‥!」
 しかし、ポンジ側には鉄壁の防御?を誇る桜花がいる。
「ふんっ! アルセニーのPC効果発動なのじゃ! 『生贄の羊』相手が指定した対象を自分に移す。のじゃ!」
「貴女の相手はこの私。不肖ベルマン家執事アルセニー・タナカがいたしましょう」
 と、アーニャの防御に向っていた桜花は、くるりと強制反転。アルセニーへと対象を変える。
「ちまー!?」

『アルセニーの効果により、桜花の対象はアーニャから移った!!』

「行きますよ〜! 吹っ飛んじゃいなさいっ!」
 遮るものが無くなったポンジへの道。
 アーニャは自慢の弓を大きく絞ると、その矢を炸裂させ――。

「『世界征服志願者 鴇ノ宮 風葉』をスキル効果で使用だ!!」
「やっとあたしの出番ってわけね! へぇ、なかなかいい状況じゃないのよ!」
 ポンジの召喚により現れた風葉は、まさに絶体絶命の状況に不敵な笑みをこぼす。
「行け! 『精霊砲』直線状にあるPC全てを破壊しろ!!」
「言われなくてもやってやるわよ! 一撃必殺っ‥‥。避けられるものなら避けてみなさいよ! ま、無理だろうけど!」
 
 溜めに溜めた風葉の霊力の一撃がフィールド上を奔る。

『おぉっ!? 巨大な閃光が場をなぎ払う! アーニャだけでなく攻撃に出ていた統真までも巻き込んだぞ!?』

「うぅ‥‥もうちょっとだったのに」
「おいおい、とばっちりかよ‥‥」
 風葉の一撃に沈む二人。

 つんつん――。

「うん?」
 沈んだアーニャを満足気に見つめていたポンジの足をつつくものが。
「うちを忘れてるよ?」
 と、そこに居たのは翠荀。
「へ‥‥?」
「いっけぇ!!」
 見つめる翠荀の瞳を呆けた顔で眺めるポンジの顎へ、渾身の拳が襲いかかる。
「ぐっ! 『影技士D 竜哉』をスキル効果で使用!」
「やれやれ、世話が焼けるのぉ」
 ポンジの呼びかけに飄々と姿を現した竜哉。
「言ってねぇで、何とかしろ!」
「はいはい。『対格上戦術』って奴を見せてやるさ」
 必死に訴えかけるポンジの言葉を軽く流し、竜哉は拳を向ける翠荀を見やる。
「馬鹿正直に戦うだけが、戦術じゃないって事を教えてやる」
 と、呟いた竜哉は、フッと闇に姿を消す。
「えっ!? ちょ、ちょっと!?」
 そして、翠荀の背後に回り込んだ竜哉がその動きを押さえつけた。

『なんと! ここで再び−8を受けるかと思われたポンジ! しかし、竜哉の効果により、翠荀のSが3まで落とされた!』

 ポンジ、ライフ−3。

「くぅ! いてぇ! ――だが、ありがとよ!」
「ぬ?」
 攻撃を受けたポンジが不敵に微笑む。
「『草薙 睦月』をスキル効果で使用!」
「私が活路を開きましょう」
 自慢の弓を携え、場に降り立った睦月は礼儀正しくポンジに一礼すると、振々へと向き直る。
「対戦相手とのライフ差が5以上ある時に使用可能! 双方のライフを低い方と同じにする!!」
「‥‥この一撃、貴女は耐えられますか?」
 そして、ポンジのスキル効果宣言と共に、番えた矢を振々へ向け解き放った。

『なんだなんだ!? 今までいいようにダメージを喰らっていたのは、この為か!? 睦月の効果により、振々に――何と11ダメージ!』

「うぬ‥‥!」

 振々、ライフ−11。

『これで、双方のライフは残り6! ライフまで振り出しだ!!』

●11ターン
「はっはっはっ!」
 不気味に高笑いを上げるポンジ。
「行くぜ! 平野 譲治をフィールド効果で召喚!」
 徐に山札から札を引くと、ポンジが最後の一手に打って出た。
「うっしっ! やってやるなりよっ!」
 ポンジの呼びかけに答え、パンパンと拳を打つ譲治が場に現れる。
「譲治のフィールド効果発動! 全てのダメージは1.5倍となる。更に回復量は2倍となる!」
「さぁっ! 皆っ、全力で遊ぶなりよっ!!」
 譲治は場にある全ての者に向け、大きく両手を広げた。
「ここだ!」
 続いてポンジは、伏せていた札をついに開く。
「三笠 三四郎の時限スキル効果発動!」
「ようやく出番ですか」
 表となった札から現れた三四郎は、
「行きますよ、さつな」
 共に召喚された龍に跨った。
「いけ! 『雷雲に舞う飛龍』3ターン場に伏せた後に発動。相手に直接10ダメージを与える!!」
 待ちに待った効果の発動に、ポンジは嬉々として効果を宣言する。

『設置した地雷がついに発動!! 一撃必殺の攻撃が振々を襲う!』

「おっと、更に譲治の効果により、ダメージ1.5倍だ!」
「その首、貰いました」
 更に強化された三四郎の強襲が振々を襲う。

「甘いのじゃ! 『藤吉 湊』をスキル効果で使用なのじゃ!」
 しかし、振々は動じない。
「商売ってもんは、実際肌で感じてこそ! って、どっかで聞いたんや!」
 現れた湊は、御自慢のそろばんをぱちぱちと弾き、山札の上にどどーんと鎮座した。
「『未完の商売論』双方のPLは山札から二枚手札に加える。のじゃ!」
「お、先物買いとは。お嬢ちゃん、なかなか商売のツボわかっとるやん!」
 スキル効果を宣言した振々は、湊が鎮座する山札に手を伸ばし札をむんずと掴んだ。
「な、なにをいまさら!」
 決まったと思っていたポンジの顔には、あからさまに動揺の色が浮かぶ。
「‥‥ふんっ! 『夢見る小猫・水月』をスキル効果で使用なのじゃ!!」
「‥‥へ?」
 そして、その札は振々の元へ。
「‥‥団長さん、こんにちわなの」
 召喚された水月は、対戦相手であるポンジにぺこりと首を垂れる。
「『真澄鏡』:対象の効果一つを複写する。のじゃ!」
「なっ!」
 驚くポンジを前に、水月は両手を大きく掲げると、空に浮かぶ巨大な水鏡が姿を現した。
「‥‥団長さんならきっと平気なの」
「え!? なにが!?」
 根拠のない水月の励ましに、ポンジ思わずツッコミ。
 巨大な水鏡は、飛来する三四郎の姿を移しとる。

 現れる三四郎の分身。
 そして、写し取られた分身はポンジへと――。

「馬鹿が! そんな事したら相討ちに――」
「『礼野 真夢紀』をスキル効果で使用なのじゃ!」
 負け惜しみともとれるポンジの言葉にも、振々の余裕は崩れない。
「お役にたてるといいのですけど」
 振々の呼びかけに真夢紀は、ゆっくりと場に姿を現す。
「『復活の言霊』じゃ! 墓場にある札を一枚場に召喚できる。じゃ!」
「それでは参ります。泉宮 紫乃さん、今一度この地に戻られ、我等の力となりたまえ!」
 スキルの効果が告げられると、真夢紀は札の積まれた墓地を見やる。
「後は頼みました」
 と、それだけを言い残し、真夢紀は自らを墓地へと。
「このまま紫乃のスキル効果『治癒符』を発動じゃ!」
「ありがとうございます、真夢紀さん。貴女の期待に答え幼馴染の皆の力、今ここに」
 真夢紀を犠牲に再び召喚された紫乃は、瞳を閉じると温かな風を巻き起こす。
「真夢紀の効果! 振ったダイスの出目+墓場にある幼馴染の数だけライフ回復じゃ!」
 と、スキル効果を宣言した振々はダイスを振る。

『‥‥でた! ダイスの目は3!!』

「ふむ、3なのじゃ! 合計で6じゃ!」
「そ、そんな事しても、三四郎の攻撃はしのげねぇぞ!!」
 次々と繰り出される振々の札技に、ポンジはまさに負け惜しみ。
「まだじゃ! 譲治の効果で、2倍回復じゃ!」
 それはポンジの繰り出したフィールド効果。
 紫乃の癒しの風は効果を倍にし振々を包み込んだ。
「なっ!?」

『お!? 紫乃の回復、そして譲治の効果により、振々は12回復だ!?』

「自分の札でじめつするがいいのじゃ!!」
 自分へ向かう三四郎本体を見向きもせず、振々はポンジへと向かう分身に檄を飛ばす。
「何とも情けない結果になったものですね」
「馬鹿、な‥‥」
 水月のスキルにより別れた三四郎の片割れがポンジへ、容赦のない一撃を見舞った。

『なな、なんと決着っ!? まさかまさか、ポンジが放った渾身の一撃は反射という形で自らに降りかかる!! これでポンジのライフは0! よって――勝者、振々!!』
 場にがくりと膝を折ったポンジ。そして、ふふんと無い胸を張る振々。

 今ここに年度のDTS決勝の幕が閉じたのであった――。