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■オープニング本文 ●心津 部屋から白衣を纏った一人の女性が出てきた。 「お医者さんよ! どうなんだ!?」 出てきた女性に向け、道が声を荒げる。 「落ち着いてください。ここでは彼女に聞こえてしまいます」 焦る道を落ち着いた声で宥め、女医は屋敷の奥を指差した。 「領主殿のお部屋で詳しくお話しします」 「‥‥くっ!」 落ち着いた女医の言葉に、道はグッと拳を握り踵を返す。 「大丈夫。死にはしませんから」 「‥‥」 後ろから掛けられる言葉にも、道は表情に悔しさを存分に滲ませ、急ぎ領主の部屋へと足を進めた。 ●部屋 「もぉ‥‥一体何だって言うのよ‥‥」 突然連れてこられた見た事もない屋敷。 窓から覗く外の景色は、ずっと霧がかかって何も見えない。 「あたし、なんでこんな所に居るんだろ‥‥」 景色と同様に、自分の置かれている状況がまったく見えない。 遼華は、霧に霞む外の風景をぼんやりと眺め、ふぅと溜息をついた。 「お父様、心配してるかなぁ‥‥。って、それよりもお泉が怖いなぁ‥‥」 故郷の此隅できっと心配して待っているであろう、父親と養育係の顔を想い、遼華が呟く。 「それに、さっきの人。お医者様みたいだったけど‥‥あたしがこんな所に居るのと何か関係があるのかなぁ‥‥」 女医が出ていった扉を眺め、困惑したように呟く遼華。 「とにかく、もう一度あのお侍様に聞いてみよっと」 と、遼華は座っていた席から立ち上がり、廊下へと続く戸に手をかけた。 ●執務室 「‥‥」 女医の話に、一同に沈黙が降りる。 「――なので、今は何とも言えません」 言葉を締めくくった女医。 その話の内容は――。 遼華は心津で過ごしてきたこの約1年間の記憶がまるでない事。 その要因は、明確には不明だが、ショックによるものが大きいという事。 ただ、何らかの外的要因の傾向も見られる、という事も――。 「と、とにかく、体は大丈夫なんだな!?」 話の深刻さに耐えきれなくなったのか、道が大きな声を上げた。 「――ええ、身体自体は至って健康体です。所々擦り傷がある程度でね」 「そ、そうか‥‥」 女医の言葉に、道は深く安堵のため息をつく。 「しかし、このままでは‥‥」 そんな道の隣に座る穏が、言葉に悔しさを滲ませた。 「‥‥千覚冷」 と、今まで沈黙を守っていた戒恩が口を開いた。 「戒恩殿、今何と申されましたか?」 「千覚冷という妙薬がこの霧ヶ咲島にはあるんだそうだよ」 穏の問いかけに、静かに答える戒恩。 「千覚冷‥‥聞いたことがあります。確か、精神系の病を治療する特効薬、であったかと」 「うん、それだね」 女医が告げた言葉に戒恩は頷いた。 「しかし、千覚冷は幻の秘薬。そう易々と手に入るものではないでしょう‥‥」 「それがね――この心津の北、真冷山脈の一つ、言現山にあるということだよ」 「なんと‥‥このような僻地に存在しているのですか!?」 戒恩の言葉に、驚きながらも探究心をくすぐられるのか、瞳を輝かせる。 「でもよ、あんな所どうやっていくんだ?」 「古主一族に頼めばいい。折角交友関係を結んだのだ」 と、道の疑問に穏が答えた。 「きっと、遼華君に飲ませれば記憶は戻ると思うよ」 「そんなら迷う事はねぇだろ! サクッと取ってこようぜ!」 戒恩の言葉に、道が意気揚々と席から立ち上がった。 ●廊下 「‥‥」 遼華はドアの取っ手に手をかけたまま固まっていた。 「‥‥どういう事?」 中から聞こえる会話が自分の事である事はわかった。 でも、その内容が――。 「記憶が戻る‥‥? なに‥‥?」 取っ手を持つ手が自然と震えてくる。 遼華は音を立てないようにと、取っ手を掴んでいた手をぎゅっと胸元で抱きしめた。 「‥‥」 そして、ゆっくりと後退りした遼華は、一目散に元いた部屋まで駆け戻った。 ●執務室 「よぉし! 早速依頼出してくるぜ!」 「うむ、頼んだぞ」 道が立ち上がる。 目的のモノがあるのは真冷山脈。 とても一人では手に負える場所ではない。 一同は、ギルドへの依頼を決めた。 「‥‥」 しかし、意気揚々と戒恩の表情は尚も険しいまま。 「それでいいのだろうか‥‥」 「うん? 何か申されましたか?」 「うんん、何でもないよ」 「ふむ? それでしたらいいのですが」 問いかける穏にいつものひょうひょうとした笑顔を向け、戒恩は席を立ち上がる。 「うん、何でもない」 そして、戒恩は道を追う様に部屋を後にしたのだった。 |
■参加者一覧
天河 ふしぎ(ia1037)
17歳・男・シ
ミル ユーリア(ia1088)
17歳・女・泰
アルティア・L・ナイン(ia1273)
28歳・男・ジ
皇 りょう(ia1673)
24歳・女・志
各務原 義視(ia4917)
19歳・男・陰
御神村 茉織(ia5355)
26歳・男・シ
五十君 晴臣(ib1730)
21歳・男・陰
蓮 神音(ib2662)
14歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●心津 霧ヶ咲島は、今日も変わらぬ霧模様。 霧の中に浮かぶ質素だが重厚な造りの屋敷、その一室では――。 「ごめんね、ごめんね‥‥助けられなくて‥‥」 「あの、えっと‥‥泣かないでね?」 瞳に涙を溜めしきりに頭を下げる石動 神音(ib2662)に、遼華は困惑気味に声をかけた。 「うぅ‥‥」 「え、えっと‥‥石動さんだっけ。ほら、あたしは元気だよ?」 と、遼華は両手を上げ力こぶを作ってみせる。 「うぅぅ‥‥ごめんね‥‥」 しかし、その仕草までもが痛々しい。 神音は湧き出る涙を抑えることができず、ただ泣きじゃくり頭を下げた。 「どうしてそんなに謝るの‥‥? 石動さんは何も悪い事してないのに‥‥」 と、困った様に神音へ向け言葉を投げかける遼華。 「違うのっ。あの港で助けられてさえすれば、遼華おねーさんは‥‥」 しかし、神音は何も知らぬ純粋な問いかけに、一層自責の念を強めた。 「港? えっと、ごめんね。よくわからなくて‥‥」 遼華も、年下のこの子をどうしていいのか分からず、ただ謝った。 どどどどど――――。 言葉なくすすり泣く声だけが響く部屋の静寂を割り、けたたましい地鳴りが響く。 バタンっ! 「わっ!?」 「はぁはぁ‥‥遼華殿!!」 そこへ部屋の扉を勢いよく引き、皇 りょう(ia1673)が血相を変えて現れた。 「あ、え、えっと‥‥? どちら様でしょう‥‥?」 りょうの必死の形相に遼華はポカンと呆けながら問いかける。 「りょ、遼華殿‥‥。私を覚えておられぬのか‥‥?」 「あ、えっと‥‥ごめんなさい。どこかでお会いしましたか?」 かつてはまるで姉妹の様に接してきたりょうの事すらも、遼華は覚えていない。 「‥‥いや、申し訳ない。私は皇 りょうと申すしがなき武辺者。この度、依頼でここへ参った」 「そ、そうだったんですか。あの、お疲れ様です‥‥でいいのかな?」 「う、うむ。労い感謝する」 言葉を交わす二人の間に流れる、何とも言えぬ気まずい空気。 「石動殿、皆が表で待っている」 と、りょうは遼華から視線を移し、神音へ言葉をかけた。 「う、うん‥‥」 神音はあふれ出る涙を拭い、りょうの言葉にこくんと頷く。 「では、遼華殿。我々はこれで失礼致す」 「え、あ、はい。お気をつけて」 礼儀正しく礼をするりょうに習い、遼華も首を垂れる。 そして、二人は何かを振り切る様に遼華の部屋を後にした。 ●廊下 廊下の壁に寄りかかりアルティア・L・ナイン(ia1273)が部屋から漏れる話声に耳を傾けていた。 「‥‥」 「迷っているね」 そんな、アルティアにそっと声をかけたのは五十君 晴臣(ib1730)であった。 「‥‥晴臣くんか」 くるりと振り向いたアルティアは、表情も変えず友の顔をじっと眺める。 「まだ決められないのかい?」 「‥‥決められない、のかな。それすらもわからないよ」 いつもは飄々として本音を見せないアルティア。 しかし、今は少し違っていた。 「驚いたね。アルティアが素直に答えるなんて」 「‥‥そうだね。僕も驚いてるよ。自分がこんなにも臆病だったなんてね」 と、感心した様に見つめる晴臣に、アルティアは自嘲気味の笑みを浮かべた。 「いつもは見てるこっちが不安になるくらい積極的なんだ、釣り合いが取れてちょうどいいよ」 「はは‥‥。そうも知れない」 一見すれば憎まれ口を叩き合う二人。 しかし、その裏にはお互いを想う確かな友情がある。 バタンっ。 その時、遼華の部屋の扉が開く。 「出てきたみたいだね」 神妙な面持ちの二人を眺め、晴臣が呟いた。 「‥‥僕達も行こう。決める前にしなければならない事がある」 「ああ」 そして、二人は部屋を出た二人の後に続き、外へと向け歩きだした。 ●庭 立木の枝に腰かけ、部屋を見下ろす御神村 茉織(ia5355)。 「‥‥どうやら、身体は問題ないみたいだな」 部屋の中を所在なさげに歩きまわる遼華の姿。 「‥‥やっぱり忘れちまってるのか」 しかし、先程の会話。今まで苦楽を共にしてきた者を『誰?』と問うたのだ。 茉織は、胸に去来する言い知れぬ痛みに、表情を曇らせた。 「一体、あいつになにされたんだ‥‥!」 と、思い浮かべるのは薄く微笑む男の顔。 「‥‥あー! 今は考えてる場合じゃねぇな」 ぶんぶんと迷いを晴らすように首を振った茉織は、音も無く枝から飛び降りた。 「まずはしなくちゃならねぇ事からかたずける」 そして、深く霞む霧の中へと姿を消した。 ●執務室 「失礼します」 「やぁ、いらっしゃい」 首を垂れ部屋へと踏み入った各務原 義視(ia4917)を迎える戒恩。 「‥‥随分と呑気ですね」 迎えた戒恩の言葉に、義視は不機嫌そうに返した。 「そう見えるかい?」 「ええ」 そんな戒恩に、義視は沸き上がる怒りを殺し淡々と話しかける。 「そう見えたのなら、私の演技力も捨てたものじゃないね」 その言葉に、義視はハッと顔を上げ、戒恩の表情を初めてまじまじと見た。 目の下に深く刻まれた隈。心なしか増えた白髪。何よりも、その表情が。 「‥‥思慮が足りなかったようです。ご無礼をお許しを」 「いや、気にしないでくれていいよ。それよりも」 「ええ、必ずお持ちします。それで――」 「うん、用意しておいた」 と、戒恩が机に置かれた小さな袋を指示した。 「ありがとうございます。さすがに手ぶらで願い出るのは気が引けますので」 「うん、古主の長にもよろしくね」 「ええ、領主戒恩、そして、領主代行遼華よりの心からの礼であると伝えます」 「‥‥そうだね。頼んだよ」 「はい」 そして、義視は机に置かれた小袋を手に取ると、戒恩の部屋を後にした。 ●屋敷門外 「二人だけか?」 高く険しい真冷山脈へと向かう為、重装備を纏う二人に向け穏が声をかけた。 「すぐ来るわ。皆、少し準備してるだけだから」 答えるミル ユーリア(ia1088)。 「うん。――あ、噂をすれば」 と、天河 ふしぎ(ia1037)が後ろを振り返った。そこには各々準備を終えた残りのメンバーが門から出てきていた。 「同行はできないが、お前達であれば問題ないだろう」 「うんっ! 古主の皆ならきっと協力してくれるよ! 大飛行船に乗ったつもりで待っててよっ!」 一行を頼もしげに見つめる穏に答えるふしぎ。それもまた実に頼もしいものであった。 「飛行船でもあれば、すいっといってぱーっと取れるんだろうけどね」 「うん‥‥でも、この霧じゃね‥‥」 と、空を見上げるミルとふしぎ。そこにはいつもと変わらぬ濃く湿った霧が漂っていた。 「前も歩いて越えたんでしょ? なら問題ないわよね」 「うんっ。協力してくれる人達もきっと大勢いるからね!」 過去に通った道。そして、知り合った人々。それが何よりの頼りになる。ふしぎは力強く頷いた。 「じゃ、行きましょ! 色々考えるのは後よ!」 そして、合流した一行は、目指す真冷山脈へと霧の中へ足を踏み入れた。 ●道中 「もうすぐ集落があります。そこで一旦休憩しましょう」 険しい山道を地図を片手に霧の中を指し示す義視。 その指先を追う様に、一行が霧の中を見やった。 「またここに戻ってきたんだ‥‥」 と、霧を眺めつつふしぎが呟いた。 「前にも来たの?」 「うん、あの時は‥‥遼華がいたんだ‥‥」 神音の問いかけにふしぎは、低く沈んだ声で答える。 「なに? 泣いてるの?」 と、ふしぎの顔を覗き込むミルが呟いた。 「なっ!? ち、違うんだからな! ちょっと目にゴミが入っただけなんだからなっ!!」 そんな言葉にふしぎは目をごしごしと拭い、必死で否定する。 「そう? それならいいんだけど。まだ感傷に浸るのは早いわよ」 「ひ、浸ってなんかいないんだからなっ!」 「ふしぎおにーさんも悲しいんだね‥‥」 と、そんなふしぎに神音は寂しげに声をかける。 「か、悲しくなんてないんだからなっ! 勘違いはいけないんだぞっ!!」 「そ、そうなの‥‥? なんだか、とっても悲しそうに見えたから‥‥ごめんなさい」 そんなふしぎの否定に、神音はしゅんと肩を落とす。 「わわっ! べ、別に責めてるんじゃなくて‥‥そ、その、何でもないんだからなっ!」 悲しそうに肩を落とす神音に、ふしぎは慌てて声をかけるが。 「あーあ、泣かせたわねフシギ」 「なな、泣いてなんかいないんだからなっ!?」 にやにやと二人のやり取りを見つめるミルに、もうふしぎは大混乱。 「あんたのことじゃなくて‥‥って、もうわかったから」 くるくると目を回し、顔を真っ赤に否定するふしぎに、ミルは苦笑い。 「さぁ、カノン。一人黄昏てるおにーさんはほっといて、早く先に進みましょ。リョウカが待ってるわよ」 「え‥‥あ、う、うんっ!」 ミルにポンと肩を叩かれた神音は、再びいつもの笑顔で答えた。 「ま、待ってよっ!? 僕も行くんだからなっ!」 と、急いで二人の後を追うふしぎ。 そんなやり取りに、どこか沈んだ空気の流れていた一行の雰囲気も少し和らいだ。 「余程、思い出深い土地なんだね」 「どうだろうね。あの時も色々とあったから、そう思うのかもしれない」 更に険しくなる道すがら、晴臣の呟きにアルティアが答える。 「ふむ。あの時、ね。やっぱりアルティアは少し変わったね」 「そうかい? 何も変わってないよ。いつ君の隙を突こうかと虎視眈々と狙ってるんだから」 と、答えるアルティアは何時もにも増しておどけた表情を作って見せた。 「そうやって強がっている所もね」 「‥‥それは気遣い、と思っていいのかな?」 「ああ。少し高くつくけどね」 「そうか。それは後で戒恩くんに請求しないといけないな」 「ふむ。それならもう少し吹っかけるかな」 「いいんじゃないかな? 払うのが僕じゃ無ければ」 二人は肩を並べ山道を進む。 互いの言葉を頼もしいものと感じながら――。 「決めたか?」 「‥‥心づもりは出来ている」 一直線に前を見、小さく呟いた茉織の言葉に、りょうもまた視線を合わせず答えた。 「ったく、相変わらず堅ぇな。会ってたろ? なんで他人のふりしたんだ?」 「‥‥そちらも相変わらず趣味が悪い――と、聞かれていたのならば、何も言うまい。今、あれが最良と思い、ああしたまで」 「最良か。確かにそぉかもしれねぇな。今あいつに、俺達が友人だ、なんて言ってもさっぱりだろうしな」 「‥‥少しでも、覚えていてくれるかと期待もしたのだがな」 「結果は――あの通り、ってか」 「‥‥うむ。いきなり見知らぬ者が大挙しても、遼華殿を困らせるだけと思ったのでな」 「そこは流石、聡明な志士様であらせられるな」 「茶化のならば、もう話をせぬぞ」 「おっと、これは失礼。でもよ――思い出してほしいな」 「‥‥ああ」 そして二人は坂道を一歩踏み出す。 あの時、遼華と共に歩んだ道を再び――。 「見えましたよ」 と、そんな一行へ義視が再び声をかけた。 そこには、山肌にしがみ付く様に立つ3軒の民家。 「もうすぐ日も暮れます。少し急ぎましょう」 義視の言葉に頷いた一行は、急ぎ足に集落へと向かった。 ●民家 現れた一行を、住民達は温かく迎える。 「よかった。野宿にならなくてっ」 「であるな。さすがに野宿は厳しい季節になってきた」 温かい火を携える囲炉裏に真っ先に近寄った神音に、りょうが答えた。 「おや、皇くんでも弱音を吐くんだね。ちょっと驚いたよ」 「よ、弱音などではない! 私はただ事実を語っただけであってだな――」 「うん、そうだね。すっかり冷えて来たしね。助かった助かった」 そんなりょうの反論を軽く流し、アルティアも炉端へと着いた。 「丁度、いい猪が取れたんだ。さぁ、喰ってくれ!」 猟師が囲炉裏に吊るされた大鍋の蓋を取った。 と同時に部屋いっぱいに広がる、食欲をそそる匂い。 「有り難く頂戴するよ」 いの一番に箸を鍋へと進めたのは晴臣。 「あ、神音もいただきますっ!」 次いで神音が箸をつきいれる。 そして、一行は二人に続き鍋に箸をつけ、臓腑に染み渡る芳醇な味と香りを堪能したのだった。 「今日は代行さんはいないんだな?」 食事も終わり、義視が持ち込んだ心津名産の茶『渡薫』に一心地着いた頃、猟師が徐にそう切り出した。 「‥‥ええ、今日は屋敷で統治の勉強でもなさってるでしょう」 と、義視が笑顔を作り、猟師に答える。 「へぇ、あの若さでそんな難しい事をねぇ。さすがだ」 そんな義視の言葉に猟師はしきりに感心していた。 「ええ、仮にも領主代行ですからね‥‥」 と、そこまで話して義視は黙り込む。 「うん? どうかしたか?」 「あ、いえ。なんでもありません。遅くなりましたが馳走感謝いたします」 「うん? ああ、丁度獲れたとこだったしな、あんた等は運がいい」 義視の切り返しに不思議そうな顔をした猟師であったが、すぐに普段の豪快な笑みを浮かべた。 「では、明日も早めに出発しますので、我々は休ませていただきます」 「おう、ちょっと狭いけど、奥の二部屋使ってくれ」 「ありがとう。それでは――」 と、猟師に深く頭を下げた義視が立ち上がる。 それに続く様に一行も立ち上がり、行くの部屋へと消えた。 ●寝室 いつの間にか霧は晴れていた。 「きれい‥‥」 窓から覗く満天の星空を眺め神音が呟く。 「明日は晴れるとよいな」 呟く様に答えたのはりょうであった。 狭い部屋で雑魚寝状態の女衆。皆が窓から覗く星児らを見上げていた。 「二人はどうするの?」 と、そんな二人にミルが問いかけた。 「‥‥えっと、神音は――」 そんな問いかけに、神音が口を開く。 「神音は‥‥飲んでほしーと思ってるよ」 初めて聞く明確な意思。神音の言葉に残る二人はじっと耳を傾けた。 「一緒にお仕事したのは、たったの一度だけだけど‥‥それでも忘れられてるのはすごく悲しーもん」 泣きそうになる気持ちをグッと押さえ、懸命に言葉にする神音。 「でも、これは神音の気持ち。ただのえごだって事は神音にもわかるよ。だから、傍にいて最後まで見届けるつもり」 小さな体に抱える強い意志。神音は隠すことなく、それをすべてさらけ出した。 「神音より昔からのお知り合いなおねーさん二人はもっと悲しーんじゃないの?」 と、問いかけは残る二人へ。 「‥‥そうね。あたしも飲ませたい」 先に答えたのはミル。 「これは我儘なのかもしんないけど、あたしは前のままのリョウカと友達でいたい」 静かに、そしてゆっくりとミルが言葉を紡いでいく。 「そりゃ記憶をなくした今からでも友達にはなれると思うよ。――でも」 と、ミルは再び窓の外に広がる夜空に視線を移し。 「今まで一緒に作ってきた楽しい思い出‥‥悲しい思い出もあるけど、それを忘れられるのはイヤだもの。だから、思い出してほしい」 そう締めくくった。 「‥‥御二人とも、しっかりとした意思を持っておいでなのだな」 二人の会話から少しして、今まで沈黙を守っていたりょうが口を開いた。 「りょうおねーさんは、まだ悩んでるの?」 「悩んでいる、のであろうか。少し違うかもしれぬな」 問いかける神音に、りょうは曖昧な返事を返す。 「答えは出てるけど、口にするのを躊躇ってる。って感じね」 「‥‥なるほど。そうやもしれぬ。さすがミル殿」 「茶化さないの」 「すまぬ。――答えはここにある。うむ、その通りだ」 と、りょうは再び天井をじっと見据えると、左胸の前で拳をぎゅっと握った。 「――私は遼華殿の意思に任せたい」 「それはリョウカに選ばせるって事?」 「うむ。私はずっと考えていた。あの逃亡劇が本当に正しかったかどうか、と」 そして、りょうは再び語り始める。 「あれが全ての始まり――。人一人の知りえる世界など僅かでしかない。幸せに生きていけるのであれば、全てを知る必要はないのではないかと――」 と、一息で語り終えたりょうは、一旦間をおいた。 「‥‥いや、それでも遼華殿は知ろうとする気がするな。なにせ芯の強いお方だ」 そして、りょうは遼華を想い薄く微笑んだ。 「そうね。やっぱり最後はリョウカの意思よね」 「うんっ! 神音もそー思うよ! 遼華おねーさんなら、きっと決められるもん!」 りょうの意見に賛同するようにミルが、神音が次々に声を上げた。 「戻ってきて欲しいものだ、な――」 それぞれの思いを吐き出した三人は、静かに眠りに落ちていった。 ●寝室 夜も更け、辺りは静寂に包まれる。 隣の部屋から聞こえてくる微かな話声だけが、僅かに耳に届いていた。 「ふしぎは、こっちの部屋でよかったの?」 「‥‥へ? っ!? ぼ、僕は男なんだからな?!」 女部屋よりもさらにすし詰め状態の男部屋。 アルティアがふしぎに向け、ぼそっと呟いた。 「アルティア。自分の不安を他人で紛らわせるのはよくないよ?」 そんなアルティアに釘を刺したのは晴臣。 「‥‥ふぅ、無駄に付き合いが長いのも困ったものだね」 「おや、それは失礼」 困った様な呆れる様なアルティアの答えに、晴臣は悪びれる様子もなく答えた。 「明日も早いというのに、皆寝ないのですか?」 と、そんなやり取りに、義視は呆れる様に声を上げた。 「義視だって人の事言えないんだからなっ」 「‥‥こほん。私はいいんだよ。明日の道行き等、計画しなければいけない事が山ほどあるんだから」 そんなふしぎの言葉に、義視は咳払い一つ。何やら言い訳がましく弁明する。 「なんだよ、結局誰も寝てねぇのかよ」 「茉織くんもね」 「ま、違いねぇ」 茉織もまた、この夜の静けさに眠りを得られない一人であった。 「向こうの部屋も、まだ眠ってないみたい」 と、ふしぎが首を横に傾け、隣の部屋へと続く襖を見やる。 「誰も思う所は同じ、という訳か」 そんなふしぎの視線を追う様に、義視も顔を傾けた。 「で、皆はどうするんだい?」 そんな男衆に晴臣が問いかける。 「俺は飲んで欲しい」 その問いかけに、迷いなく答えたのは茉織であった。 「へぇ、随分とはっきりと言えるんだね」 その答えが意外だったのか、晴臣は感心したように茉織を見る。 「忘れた一年間、人生を巻き戻ってやり直せるんなら、話は別だけどな」 淡々と言葉を紡ぐ茉織に、皆の視線が集まった。 「二度もあの二人の死を聞かせるのは、悪いが俺には出来ねぇ」 その言葉に込めた茉織の想い。 それは、今まで遼華と共にあった者であれば、誰もがわかった。 「それによ。この間までの遼華を見ればわかるんじゃねぇか?」 茉織は、皆の視線など気にすることなく言葉を続ける。 「いくつもあった辛い事を乗り越えた先に辿り着いた、あの遼華の充実した笑顔」 と、茉織は身体を起こし、横になる一行を見渡した。 「あの笑顔まで無かった事にするなんて、俺には出来ねぇよ」 締めくくられた力強い意志。 他の皆はその意志を頼もしくも羨ましく聞いていた。 「茉織すごいね‥‥。僕なんて本当に記憶を取り戻すのがいいのか、今でもわからないよ‥‥」 と、ふしぎがぼそりと呟いた。 「だって、遼華はもともと普通の女の子なんだから。それが今元に戻ったってことでしょ?」 そんなふしぎの問いかけ。しかし、その問いに答える者はいない。 「それに‥‥もしあいつに何かされてたとしたならって考えると‥‥」 ふしぎが言葉にした『あいつ』。 ここに集う皆にとっては、名を出さなくてもわかる。 「でも‥‥やっぱり忘れて欲しくない、よ」 鼻を啜る声と共に、やっとの思いで紡いだ言葉。 「ごめん。曖昧な答えで‥‥」 「いや、気持ちはよくわかる」 しゅんと沈んだ声で謝るふしぎに、義視が声をかけた。 「私も、いや、ここにいる皆、同じ気持ちだと思うから」 と、義視は身体を起こし、暗がりの中自分を見つめる皆を見渡す。 「そもそも、こんな辺境。依頼がなければ一生来る事はなかったでしょう」 外に広がる荒涼とした山肌を見つめ、義視が呟いた。 「でも、彼女がいたから。だから、この新天地に来る事が出来た」 草木も疎らな景色。義視にとって、それは最早外国の景色ではない。 「今、心津には少しずつではあるけど、移民が増えている。そして、その人々は新しい住処として、ここを選んでくれた」 自分の関わった事が実を結ぶ。それは、義視にとっても他人事ではなかった。 「心津を選んでくれた人々の為にも、代行殿には戻ってきてもらわなくてはならない」 義視の言葉が指す『人々』。そこに開拓者の皆も含まれている。 「私は飲んでもらいたい。一言、どうしても言いたい事があるから」 と、義視は言葉を締めくくった。 「‥‥すごいね。これも遼華の人徳?」 三人の話を聞き終え、晴臣が口を開いた。 「皆、随分と感情が先行している様にも感じられるけど、その選択は本当に万人にとって最良な物なのかな?」 続く問いかけ。 「正直な所、私は遼華の記憶があろうが無かろうが、ほとんど初見の様なものだから言えるけど――」 答えを待たず晴臣は言葉を続けた。 「ちゃんと見えているかい? 遼華を想うあまり視野が狭くなっていないかい? 私はそれが心配だよ」 それは皆へ向けての警告のようにも聞こえる。 「とは言うものの、ケリはつけないとね。この事は私達の不手際が招いた禍根だから」 今まで感情を表に出さなかった晴臣の言葉に、僅かだが怒りが滲んだ。 「その言葉、耳が痛いよ」 と、そんな晴臣の問いかけに答える様にアルティアが身体を起こした。 「ほんとに晴臣くんは冷静だね」 「君達が焦っているのだと思うけどね」 「いやぁ、まったく耳が痛いよ」 アルティアは自嘲気味な笑みを浮かべた。 「遼華くん‥‥か」 と、アルティアは今だ答えの出ない心の内を探る様に、すっと自分の胸へ視線を落とす。 「背負いこみすぎだと思うけどね」 そんなアルティアに、晴臣が声をかけた。 「‥‥そうかな?」 「開拓者は万能じゃない。迷ってるなら明確な答えを出す必要はないんじゃないかな」 「‥‥そうだね。うん、決まったよ。僕は――遼華くんの意思に任せる」 晴臣の言葉を胸の内で反芻し、アルティアが顔を上げ力強くそう言葉にした。 「それも一つの選択だよ」 「うん。ただ、僕はどんな決断であっても、遼華くんの味方でありたいな」 「味方か‥‥確かにそうだな」 アルティアの言葉に、茉織が頷いた。 「うんっ! 僕もずっと味方だよっ! ここに来れなかった紅竜もきっとそう思ってる!」 そしてふしぎが、この場に立てなかった者の想いを力強く答えた。 「皆、心の内は決まったようですね。とは言っても、問題の薬が手に入らなくては、全て想いは水泡に帰します」 それぞれが抱く想いを感じ取り、義視が口を開く。 「明日も早い。早く休みましょう」 もう深夜にもなろうという時間。 一行は義視の声に答える事も無く、それぞれの床につく。 その胸に、遼華への想いを抱いて――。 ●真冷山脈 「お、よく来たな」 小屋を出て半日。 険しい道をひたすら登ってきた一行を、古主の長が迎えた。 「ここに来れば会える気がしていました」 と、義視が長に軽く一礼。 一行が辿り着いた場所。そこはかつて激しき戦いが繰り広げられた山の斜面であった。 「古主! お願い力を貸して。僕達は何としても千覚冷を手に入れたいんだ!」 「千覚冷? あんなもんなにするんだ?」 ふしぎの言葉に答える長は、不思議そうに問いかけた。 「遼華が記憶を無くしたんだ」 と、晴臣が答える。 「へぇ、あのお嬢ちゃんか。それでアレがいるのか」 「長殿。手を貸してはもらえぬか!」 「手を貸すも何もなぁ‥‥」 すっと前に出たりょうに、長は少し困ったように返す。 「どんな険しい道でも、神音がんばるから! お願いします、千覚冷のある場所まで連れて行ってくださいっ!」 「連れてってつっても、お前らもう着いてるじゃねぇか」 『え?』 長の言葉に呆気にとられる一行。 「千覚冷なら、そこらじゅうに――」 と、そんな一行を他所に、長は手近にあった岩をぺしぺしと叩くと――。 「よっ」 カツンっ。 大岩に向け槌を振り下ろした。 「こ、これは‥‥?」 「これが千覚冷」 と長が指差したのは、割れた岩の中央で淡く光る蒼い輝石であった。 「ああ、でも溶けるから気をつけて持って帰れよ?」 「え‥‥? 溶けるの?」 と、千覚冷の破片を手に取ったミルが見つめる。 「鉱石が溶けるなんて、聞いた事がないですが」 それはまるで氷が解けるように、徐々に小さくなっていく。 「空気に溶けるのか‥‥。それで幻、か」 その不思議な輝石を、茉織は感心したように見つめた。 「ともかく、一刻も早く戻ろう。溶けてしまっては元も子もないからね」 アティアの言葉に頷いた一行。 長に深く礼を述べ、一行は手に入れた千覚冷を大切に抱き、急ぎ斜面を駆け降りた。 ●祠 屋敷から少し離れた小高い丘。 その上に立つ小さな祠の前。 「‥‥」 祠の前に居住まいを正し、正座で瞳を閉じるりょうの姿があった。 と、りょうは瞳を開くと徐に鎧を脱ぎ始める。 「貴女の明るさには何度も助けられた。貴女がどのような選択をしようと、私は常に傍にあろう」 そして、りょうは羽織までも脱ぎ去ると、地面に置いてあった脇差を手に取った。 「貴方に何かあれば私も腹を切る。それが友として私が出来る覚悟――」 と、脇差をすらりと抜いたりょうは、柄から手を離し刀身を握る。 日の出に照らされる白き姿。 りょうは友の無事を想い、じっと瞳を閉じ運命の時を待つ――。 ●屋敷 「え、えっと‥‥?」 部屋に詰めかけた七人を、遼華は状況が飲み込めずただ呆然と見上げる。 「遼華、私達は開拓者。名くらいは聞いた事があると思う。持ち込まれた依頼を解決する便利屋みたいなものだよ」 と、晴臣が遼華に向け語りかけた。 「ここの領主戒恩の依頼を受けて、私達はここへ来た」 きょとんと見上げる遼華に、晴臣は丁寧に説明を続ける。 「そして、私達は依頼を達成した。それがこれだよ」 と、晴臣は目の前に置かれたのは時折蒼く輝く粉末を指差した。 「遼華くん、君は記憶をなくしているんだよ」 「え‥‥?」 アルティアは一つ一つ言葉を選ぶように、ゆっくり告げた。 「やっぱり、あたし記憶喪失なんですね‥‥」 「遼華おねーさん、気がついていたの‥‥?」 「うん‥‥ここは初めて着た場所なのに、どこか懐かしいし、接してくれる人は皆優しいし、それに――」 と、俯いたまま神音の問いかけに答える遼華。 「お話聞いたから」 どこか迷った様に、そして申し訳なさそうに語る遼華を、一行はただ見守るしかなかった。 「‥‥気付いてるなら話ははえぇな。遼華、お前は確かに記憶を無くしてる」 そんな時、茉織が口を開いた。 「‥‥」 じっと茉織の言葉に耳を傾ける遼華。 「この一年で、お前の身辺は劇的に変わった。多分、想像もできねぇくらいにな」 「‥‥」 「無くした記憶には、楽しい事もある。それに、辛い事もな」 「‥‥」 「お前が決めろ。飲む飲まないはお前の自由だ」 見上げてくる視線を真摯に見つめ、茉織は遼華へと決断を迫った。 「‥‥」 しばしの沈黙が部屋を支配する。 「皆さん、あたしのお知り合いなんですね。きっとここの中に居る本当のあたしの大切な友達」 と、口を開いた遼華が自分の胸へすっと手を添える。 「ありがとうございます。本当のあたしをこんなに想ってくれて」 言葉ではない何かが、遼華の心に確実に届いた。 「あたし、飲みます――」 遼華は決断した。 そして、目の前に置かれた粉末を手に取ると。 ごくり――。 水と共に粉末を一気に飲み込んだ。 「‥‥遼華」 だれの言葉だろう、薬を飲んだ姿勢のまま動かない遼華の名を呼ぶ。 「‥‥」 一秒が一分にも一時間にも感じる、長い長い沈黙。 そして――。 「‥‥あ、あれ? 皆、こんな所でなにしてるんですか?」 心配そうに見つめる一行に、顔を上げた遼華はきょとんと問いかけた。 「リョウカっ!」 「ちょ、ミ、ミル‥‥? って、イタイイタイっっ!」 飛び付いたミルの熱い抱擁。 それは一般人な遼華にとって熱すぎる抱擁であった。 「あわ、ごめん! ――リョウカ?」 「うぅ‥‥痛かった‥‥。うん? どうしたの?」 「戻ったの‥‥?」 慌ててはなれた遼華に、ミルが恐る恐る問いかける。 「戻った? 何が?」 痕がつくほど抱きしめられた体をさすりながら遼華がきょとんと問い返した。 「何がって‥‥あんた記憶を無くしてたのよ?」 「へ? ミル、何言ってるの?」 「遼華おねーさん、ほんとーに覚えてないの‥‥?」 「覚えてって言われても‥‥あれ、そう言えば私なんでここに居るんだろ? 確か港で‥‥」 心配そうに見つめる神音に遼華は必死に記憶を辿る。 「代行殿、申し訳ない!」 「え、え?」 『港』の名が遼華の口から瞬間、義視が皆の前へ出、深々と頭を下げた。 「あの時‥‥あの時救えてさえすれば‥‥!」 血が滲むほどギュッと拳を握りしめ、悲痛に呟く義視。 「あの時‥‥?」 しかし、遼華は何の事かわからず、ただ義視を見つめた。 「記憶を無くしていた時の記憶は、人によっては無くなるの」 と、いつの間にか部屋の隅で様子を伺っていた女医がそう告げた。 「え‥‥? という事は、遼華はこの2ヶ月間の事‥‥」 「ええ、多分覚えてないわ」 ふしぎの言葉に、女医ははっきりと答える。 「‥‥はぁ、真相は闇の中ってか」 と、そんな女医の答えに茉織が大きな溜息と共に、肩を落とす。 「なんだろう、一気に力が抜けた感じがするよ」 自然と込み上げてくる笑いに、アルティアは手で顔を覆った。 「一件落着‥‥という事にしておこうよ、今は」 そして、そんなアルティアの方を晴臣が叩いた。 「皆、変なの」 きょとんと見上げる遼華の顔を、一行は嬉しそうに、そして頼もしく見つめたのだった。 一連の事件は、一先ずの解決を見る。 しかし、一行の心に遼華の記憶が戻った喜びと共に、どこかやり切れぬ思いを残したのだった――。 |