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■オープニング本文 ●開拓者ギルド 「はぁ〜、忙しいです〜」 年の瀬も迫った師走のギルド。ばたばたと忙しなくギルド員が駆け回る。 「受付に、依頼に、忘年会に‥‥でも、困ってる方は日付なんて関係無いですもんね〜‥‥」 顔が隠れるほど積まれた資料を持つ吉梨は、資料を机にどっさと置いて溜息一つ。 そんな時。 カツンッ! 「わきゃ!?」 受付卓に直角に突き刺さる一本の白矢。 「ななな、なにごとですか〜!?」 台帳を貫くそれに、吉梨はひっくり返りそうになるのを何とかこらえた。 「ギルド内で武器使用は厳禁ですのに〜! ぷんぷん‥‥おやや〜?」 突き刺さった矢に怒り心頭の吉梨は、矢に付けられた小さな矢文に気付く。 「お手紙‥‥ですよね〜?」 矢に結ばれた文を吉梨は恐る恐る手に取った。 「えっと、なになに〜‥‥」 『前略 開拓者 様 師走に入り寒さ一段と厳しい今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。 突然の手紙で驚かれたことかと思います。日頃お世話になっております皆様への感謝の意を込め、ささやかではありますが、催し物をご用意させていただきました。 突然のことで、このような形でのお知らせとなりました事、重ね重ね申し訳ございません。 よろしければ月光の輝く時間に、霊峰にてご一緒したく思っております。 お忙しいとは存じますが、どうかよろしくお願いいたします。 では、用件のみですがこれで失礼させていただきます。 雪風の冷たさに負けず、どうかご自愛下さいませ。 草々 怪盗 ポンジ』 「う、う〜ん‥‥」 矢文を読み終えた吉梨が唸る。 「これって、依頼なのでしょうか〜?」 ぺらぺらと矢文を振ったりひっくり返したり。 「ま、いっか〜」 何を思ったのか、スッと立ち上がった吉梨は、てくてくと依頼板に向かい、そのまま矢文を張り付ける。 「――これでよしっと。‥‥いいよね〜?」 忙しさのあまり、吉梨の思考はショート寸前であった。 落ち着け吉梨! 適当に張りだされたこれは、依頼なのか!? 報酬とかちゃんと出るんだろうな!? 次回『【ポ】ポンジ暁に萌ゆ?』、こうご期待!! |
■参加者一覧
蘭 志狼(ia0805)
29歳・男・サ
出水 真由良(ia0990)
24歳・女・陰
大蔵南洋(ia1246)
25歳・男・サ
喪越(ia1670)
33歳・男・陰
水月(ia2566)
10歳・女・吟
小野 灯(ia5284)
15歳・女・陰
千見寺 葎(ia5851)
20歳・女・シ
神咲 六花(ia8361)
17歳・男・陰 |
■リプレイ本文 ●春智山 「ぷはー! えらい目にあった‥‥」 辺りを覆う白の世界。そんな銀世界から、雪兎のようにひょっこりと顔を出したのは神咲 六花(ia8361)だった。 「皆無事か!」 次いで顔を覗かせた蘭 志狼(ia0805)が、真剣な面持ちで一行の安否を窺う。 「‥‥」 雪にまみれた水月(ia2566)が、瞳を潤ませながらもコクコクと懸命に頷き、顔を覗かせる。 「これが、なだれ‥‥? すごかった‥‥の」 そして、雪に映える紅髪に被った雪を、ぱたぱたと振り落とすのは小野 灯(ia5284)だ。 「これも催し物なのでしょうか‥‥?」 うまく引っかかったのか、上半身を雪に飲まれる事を免れた出水 真由良(ia0990)が呟く。 「これが催し物だと言うのなら、やはりあのポ‥‥の字、只者では無いな」 真由良の呟きに、依頼人の名前を濁した大蔵南洋(ia1246)が相槌を打った。 「はぁ、酷い目に合いました‥‥」 深い溜息をこぼすのは千見寺 葎(ia5851)。自然の驚異はシノビの足ですら避けようがなかった。 「どうやら、皆いるようだな」 雪原から顔を覗かせる一行の姿を確認し、ほぅと志郎は安堵の溜息。 「こんな大掛かりな仕掛けを仕込んでいるなんて‥‥これは負けられないねっ!」 逆境は男を漢にする。燃える六花は山頂へ向け、ビシッと人差し指を突きつけた。 「何を企んでいるかは知らぬが、悪ふざけが過ぎる」 隣では南洋も鋭い眼光で山頂を睨みつける。 「その余裕、粉微塵に砕いてくれるわ!」 先陣をきる志郎に続き、一行は雪深い岩山へ歩を進めたのだった。 「‥‥‥‥」 去り行く一行の背後には、黄色と黒のコントラストが鮮やかな二本の足が、天高く突き出ていたとか――。 ●遡る事、数十分前 ここは春智山7合目。満天の星空の元、白に覆われた大地を行く8つの足跡があった。 「暗視の出番はなさそうですね」 葎が呟く。時刻はとうに日が変わる頃。しかし、雲一つ無い満月の明りと雪の照り返しによって、視界は良好であった。 「とはいえ、常人であれば凍てつく程の寒さ。麓で調達した防寒が役に立ちそうであるな」 薪運搬用の背負子を背負う南洋は、まるで冬山を縄張りにする猟師のようだ。 「折角のお招きですもの、ポンジ様にも楽しんでいただかなくては」 真由良は懐に抱くポンジへの贈り物を、大切そうに確かめた。 「お招き‥‥嬉しいです‥‥」 水月も食材を詰めた小袋を嬉しそうに抱き締める。 「うん、謎の招待、悪くないね!」 六花は意気揚々、この謎掛けにも似た依頼を心底楽しんでいた。 「もこす、もこもこ‥‥?」 「おぅよ、もこもこのぬくぬくだっ!」 「‥‥」 そんな、準備万端な一行とは対照的な人物が一人。明らかに雪山を舐めているとしか思えぬ喪越(ia1670)は、全身虎のきぐるみだった。 しかし、そんな喪越を、灯と水月は羨望と期待に満ちた眼差しで見つめる。 「‥‥ちょっとだけよ?」 純粋な4つの瞳に根負けした喪越が、ぼそりと呟いた。 『もこもこ‥‥!』 そこの言葉を待っていたかのように、幼き二人は喪越に飛びつく。 「ぎゃぁ! ひっぱるな! 摘むな! あぁ‥‥! そこは噛んじゃらめぇぇえええ!!」 好奇心の虜となった紅白の少女達の餌食となった喪越。――ちーん。 「見えたよ」 呟く六花。一行の目の前には、雲をつき抜け雄雄しくそびえる春智山が、その偉容を晒す。 「‥‥禍々しい雰囲気さえ感じるな」 薄靄を身に纏いそそり立つ岩山に南洋でさえも圧倒されていた。 「あの頂上にポンジ‥‥いやポンタ?さんが‥‥」 あやふやな記憶を辿りつつ葎が思うのは、憧れのシノビ。 「‥‥」 隣では水月が瞳を輝かせ、期待に胸膨らませていた。 「‥‥」 「喪越様?」 そんな偉容を前に、プルプルと身体を震わす喪越。真由良が心配そうに声を掛けると。 「はっぴー! にゅー! いや〜ん!!」 刹那、天を裂かんばかりの喪越の咆哮が木霊した。 いや〜んいや〜んぃゃ〜――。 雪山に木霊す山彦。 その時。 ゴゴゴゴゴゴ――――。 舞い立つ雪煙に、辺りは白一色に覆われた――。 ●9合目 「風がやんだ‥‥?」 固く閉じていた瞳を恐る恐る空け、南洋が呟く。 山の天候は変わりやすい。 この山最大の難所にさしかかった一行に、自然の驚異が襲いかかったのだ。 「酷い吹雪でした‥‥」 吹雪で寒がる水月を、胸の内に抱いていた真由良が安堵の溜息を漏らす。 「‥‥すぅすぅ」 「あら、寝てしまわれたのですね」 穏やかに寝息をたてる水月に、真由良はにこやかに微笑んだ。 「待ってください!」 何とか進む一行を、先行していた葎が制す。 「葎様、どうされました?」 「あれを」 苦々しく呟く葎が指差す先には、ころころ転げ落ちる小さな石。 「いしころ‥‥ふってきた、の?」 きょとんと葎の指差した方向を見つめ、灯が呟いた。 「まずい。落石の兆候やもしれぬ。各々気をつけられよ」 山の危険を麓で聞き込みしてきた南洋が、皆に注意する。 「へくちっ‥‥!」 その時、真由良に抱かれた水月が、かわいらしいくしゃみをした。 『あ』 ゴ、ゴ、ゴゴゴゴゴ――!! 「またかっ!!」 南洋の絶叫。雪に混じり大小無数の岩が、一行目掛けて転がり落ちる。 「皆、僕の後ろへ!!」 六花が落石から女性陣を庇う。 「二度も巻き込まれるわけにはいかないよ! いけ! 斬符『烈鬼解々』!!」 符を放つ六花。襲い来る落石を次々と切り裂いていった。 「負けぬ! この程度の試練、この蘭志郎、乗り越えてみせる! 必ずやこの御節を山頂へ‥‥!!」 謎の使命に燃える志郎は迫り来る雪と岩を華麗にかわしていく。 「ふふふ‥‥」 そんな自然の驚異を目の前に、虎‥‥喪越が不敵な笑みを浮かべた。 「もこす‥‥?」 そんな喪越を灯がじーっと見上げ問いかける。 「たららららったっら〜! ほのほしざ――おぉぅ!?」 何処に隠していたのか、自分の身長の二倍はあろうかという物干し竿を取り出した喪越。しかし、物干し竿がその役目を発揮することはなく、喪越は落石の最初の餌食となった。 「もこす‥‥!」 小柄な身体で必死に落石をかわし続ける灯が、倒れた喪越の元に駆け寄る。 「‥‥俺のことは置いて‥‥いけっ! がくっ――」 駆け寄る灯を、喪越は片手で制しわざとらしく倒れ込んだ。 「うん‥‥わかった、のっ」 あっさりと承諾した灯は、てくてくと皆の元へ。 「‥‥え?」 一人取り残された喪越は、そのまま雪山の一部となった――? ●山頂 「これは‥‥?」 葎の暗視が捉えたのは、切立った崖に突如現れた人工物。 「律さん、どうかしまし‥‥」 後を追い登ってきた六花も、目の前の光景に言葉を失った。 「こんな所に遺跡だと‥‥?」 まるで自分に問いかけるように南洋が呟く。 「いせき‥‥? おっきい、の」 一方、灯は純粋にその大きさに驚いていた。 「‥‥」 水月も瞳をキラキラと輝かせ、灯の言葉にコクコクと頷く。 「何がでるかわからん、各々用心せよ!」 刀の柄に手をかけ、志郎が遺跡ににじり寄った。 「ポンジ様はこの中でしょうか?」 そんな志郎の警戒も、動揺のかけらも見られない真由良には関係なし。真由良はおもむろに遺跡の扉に手をかけ、開け放つ。 「ぽ〜んじ、逮捕だー!」 開いた遺跡へ向け、いつの間にか合流した喪越が物干し竿を振りまわし突貫した。 ●遺跡 「あったかい、の‥‥」 もこもこの羽織を脱ぎ、灯が大きく息を吸い込んだ。 重厚な扉を空け、中へと踏み入った一行を待ち受けていたのは、雪山の頂上とは思えぬほどの暖かな光と空気。 「これは本当に遺跡なのか‥‥?」 目の前に広がる光景に、現実なのかと頬をつねる志郎。 遺跡の内部は、まるでジルベリアの貴族の邸宅を思わせる調度品に彩られる。奥には真っ赤な炎を抱く暖炉のような物まで見えた。 「前に見たのと違う‥‥」 以前に見知った遺跡とはまるで異なる内部に、水月も懸命に辺りを窺う。 「山頂に遺跡‥‥それもこんなに煌びやかな‥‥謎だ!」 一人考えに更ける六花の胸中には、この奇怪な謎に対する闘志がめらめらと湧きあがっていた。 暖かな空気に誘われて、中へと歩みを進める一行。 『お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様☆』 そこに突如、声をかける者がいた。 「あ、ポンジ様。ご無沙汰しております。‥‥今日は一段とお綺麗ですね」 呼ぶ声に振り向いた真由良は、一瞬きょとんとなりながらもにこやかに挨拶。 声の主、そうそれは誰であろう、ポンジその人であった。――首から上は。 「いったい何のつもりだ‥‥」 呻く様に呟く南洋。その表情はアヤカシと対峙した時でさえ、これほど歪ませることは無いであろう。 『はい、由緒正しきジルベリアの風習に則り、皆様をお出迎えです☆』 そんな南洋に、ポンジは優雅な笑みを浮かべ答える。 南洋が驚愕に震えたポンジの服装、それは。 夜の闇にも負けぬ漆黒のロングスカート(フリル付き)に、新雪の如き純白のエプロン(フリル付き)が映える由緒正しき服装。頭に添えられた薄紅色のカチューシャ(フリル付き)がアクセントとなっているのが、なんとも心憎い。 そう、一言で言えばメイドだった。 「なんと破廉恥な‥‥ええぃ、ポンタ、そこへ直れ! 貴様には男としての矜持が足りぬ!」 ポンジのあまりに過激な衣装に動揺したのか、それとも生来の生真面目さからか、志郎はポンジに指を付きつけ凄む。 『きゃ☆』 志郎の迫力にポンジは小さく悲鳴を上げ、ぺたんと床に尻餅をついた。 「いいか、男と言うものは――」 そんなポンジを見下ろし、志郎は淡々と男道について語り始める――が、 「いじめ‥‥駄目!」 身体を強張らせビクビクと震えるポンジを、庇うように立ち塞がったのは水月だった。 「い、いじめではない!」 「しろう‥‥ぽんじいじめて‥‥るの?」 目に強い力を宿し志郎を見上げる灯も、水月の横に立ち両手を広げ立ち塞がった。 「ち、ちがう! やめろ、そんな目で俺を見るなっっ!!」 「‥‥いじめ、いくない」 必死に抵抗する志郎の肩にぽんと手を置き、喪越が首を横に振る。 「うわぁぁあああっ!」 皆の痛々しい視線を受け、志郎は涙を零しながら部屋の隅へ移動、そのまま壁に向かい座りこんだのだった。 「あれはまさか‥‥?」 一方、遠巻きにその様子を伺っていた葎は、憧れのシノビを前に、呆然と羨望の入り混じった複雑な表情でポンジを見つめ呟いた。 「どうかした‥‥?」 そんな葎へ、あまり聞きたくはなさそうに六花が問いかけると。 「秘伝・声色変化の術!?」 「‥‥ただの裏声だと思うよ?」 ドーンと四肢を着き感涙を流す葎に、六花が冷静に突っ込んだ。 「ポンジ様、この暖炉お借りしてもよろしいでしょうか?」 様々な反応を見せる一行を他所に、真由良はにこにことポンジに問いかける。 『はい、どうぞご随意に☆』 「あ、僕にも手伝わせてください。お餅持ってきたんです」 鍋へ向かう真由良に、葎が声を掛けた。 「ありがとうございます。‥‥葎様?」 「あ、はい、すみません! これです」 真由良を手伝いながらも、ちらちらとポンジを伺っていた葎。 「ふふ、ポンジ様が気になりますか? とてもお綺麗ですものね」 「え? お、お綺麗‥‥?」 真由良の価値観は、ポンジに憧憬を擁いている葎でさえ、さすがに疑うものがあった。 「‥‥」 「あら、水月様。それもご一緒に?」 真由良が視線を落とすと、そこには巾着を差し出す水月の姿。 「美味しいお鍋‥‥作りますっ!」 小さな手をグッと握り水月が意気込む。 「そうですわね。ポンジ様の為に美味しいお鍋を作りましょう」 そんな水月へ真由良がにこりと微笑んだのだった。 「みんなでいっしょーけんめー‥‥つくった、の♪」 『まぁ、わざわざありがとうございます☆』 机には、いろとりどりの御節と暖かな湯気を立ち上らせる鍋が用意されていた。 「もてなしを受けてばかりでは、申し訳が立たぬからな」 ポンジの異様にはもう慣れたのか、南洋はせっせと酒の用意。 「さぁ、皆様。どうぞ召し上がれ」 出来上がった鍋と持ち寄った御節を前に、真由良が皆に声をかけた。 わいわいと賑やかな宴が、何時間にも渡って繰り広げられた。 激辛巾着運試しで喪越が自爆したり。 志郎がいじけるあまり切腹しかけたり。 ポンジをちら見し過ぎた葎の首がつったり。 お腹一杯の水月が暖炉の前で丸くなってたり。 六花が遺跡の内部を虫眼鏡片手に調査したり。 灯が煮えてない激辛巾着をポンジの口に放り込んだり。 激辛運試しで勝ったのに、南洋がメイド服を着せられたり。 酔った真由良がポンジを無意識に誘惑したり。 皆、思い思いの時を過ごしていた。 ●朝 「む!」 まったりとした空気が流れる空間で、ポンジがハッと我に返る。 「ポンジ様?」 突然豹変したポンジに、真由良が不思議そうに問いかけた。 「来る!」 そう短く叫んだポンジは、おもむろにメイド服に手を掛けると、一気に脱ぎ捨てる。 中からは、いつものポンジ登場。 脱ぎ捨てたメイド服を丁寧に折りたたみ始めた。 「あれはまさか‥‥!」 そんなポンジを羨望の眼差しで見つめ続ける葎が呟いた。 「一応聞くけど‥‥なに?」 こめかみを指で摘みながら、六花が問う。 「秘術・変り身の術!?」 「‥‥ただ脱いだだけだと思うよ?」 しかし、六花の突っ込みは感動にむせび泣く葎の耳へ届くことは無かった。 「お前ら、ついてこい!」 メイド服を丁寧に箪笥へ仕舞い込んだポンジが一行に声をかけると、遺跡の扉を開き外へ。 そこには。 夜空を彩っていた満天の星々の光が霞む。 無限に広がる雲海が橙の淵を帯び。 凛とした空気を切り裂き、来光がその姿を現した。 「はっはっはっ! 絶景かな、絶景かな!!」 「はっはっはっ! 絶景かな、絶景かな!!」 「ぜっけー‥‥かな!!」 腰に手を添え、高らかに笑うポンジ。そして、その真横では同じ格好をした喪越と灯。 「この依頼、これが目的だったのか‥‥」 絶景に目を奪われる志郎がぼそりと呟いた。 「‥‥」 眠気眼をこすりながらも、水月も絶景に魅入っている。 「今回は身のある依頼であったな」 横では南洋も満足げに旭に照らされていた。 「これを見せていただく為にわざわざ?」 陽光を受け光り輝く蒼髪を揺らし、真由良がポンジに寄り添い問いかける。 「見せる? ちげぇよ、あれを盗みに行くんだ!」 そう、宣言するポンジは、あろうことか山の頂きより身を投げた。 「あ」 しかし、ポンジの身体には、いつの間にか荒縄が結ばれている。 「まいっか。これも試練だよ、ポンジ君!」 ポンジの大跳躍は荒縄に阻まれ、そのまま落下。 落ち行くポンジを、六花が生暖かく見守ったのだった。 凛とした朝の空気の元、一行は吊るされたポンジの事など気にも留めず、登り行く旭日を時も忘れ眺めていたのだった。 |