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■オープニング本文 ●後方砦 「隊長! 負傷兵5名入ります!」 架設に建てられたテントへ荷車に横たわる傷付いた兵士が運ばれてくる。 「すぐに治療を! 寝台は12番から20番を! 空いてる寝台へ移せ!」 隊長と呼ばれた女性『支倉 藍』は、荷車を引く兵士たちに的確な指示を飛ばす。 「巫女隊、現在3番舎へ常駐。こちらへ回す人手が足りません!!」 そんな藍に兵士の一人が悲痛な報告。 「くっ! 私がやる! 負傷兵を寝台へ!」 「はい!」 「天儀の風よ――」 藍が静かに祈る。 「傷付きし者達へその慈悲を示せ! 『神風恩寵』!!」 力強い声と共に、傷付き苦しむ兵士達を暖かな春の風が包む。 「――ひとまずはこれでいい。この者達の経過観察任せるぞ!」 「はっ!」 衛生兵の一人に事後を託し、藍は仮設の兵舎を後にした。 ●砦中央部 「もう嫌なんだ!」 「待て! 考え直してくれ!!」 「次から次へと湧いてきやがって‥‥やってられるかよ!」 「これは‥‥?」 目の前の騒動に付き従う副官へと藍が問いかける。 「皆、帰郷を望む者たちです‥‥」 しかし、副官の答えは藍の聞きたいものではなかった。 「‥‥」 藍は副官を残し、騒動の元へと歩み寄る。 「な、なんだよ?」 騒動の輪の中へ突如現れた士官に、不満を吐いていた兵士が話し掛ける。 「回復したのであれば戦場へ戻れ!」 そんな兵士を見下ろすように藍は強い口調で言葉を投げた。 「こちとら有志で参加してる身だ! お前らの言う事なんか聞いてられるか!」 「お前!」 捲くし立てる兵士に副官が怒声を上げた。 「よい‥‥」 「しかし!」 兵士を見据える藍は、荒れる副官を静かに制す。 「戦意の低下が著しい今、一人二人引きとめても何もならん。それより続く者がでないよう注意を払え!」 「はっ!」 藍の指示に副官は短く答えると、騒動の張本人太刀を隔離すべく連行していった。 「戦線は連戦に次ぐ連戦‥‥このままでは‥‥」 藍の呟きは衛生兵の交わす怒号に掻き消された。 |
■参加者一覧
玖堂 真影(ia0490)
22歳・女・陰
玖堂 柚李葉(ia0859)
20歳・女・巫
巳斗(ia0966)
14歳・男・志
出水 真由良(ia0990)
24歳・女・陰
天宮 蓮華(ia0992)
20歳・女・巫
喪越(ia1670)
33歳・男・陰
佐竹 利実(ia4177)
23歳・男・志
トゥエンティ(ia7971)
12歳・女・サ |
■リプレイ本文 ●砦 広場のいたるところから笑い声が木霊する。 「――――お後がよろしいようで」 広場に設けられた小さな舞台の中央、無柄の和服をぴっちりと身につけた佐竹 利実(ia4177)の寄席が終了した。 「では、皆さん、これから楽しい宴の始まりです」 すくっと立ち上がった利実は広場に集まった数多くの負傷兵に向け、深々と礼をする。 「どうぞ、お楽しみに!」 湧きあがる歓声と拍手。皆がこの憩いの一時を満喫していた。 ●厨房 「これはどこに運ぶのであるか?」 顔が隠れてるほどの南瓜を抱えたトゥエンティ(ia7971)が厨房へ向け声を掛ける。 「えっと、そちらの台に置いて下さいます?」 トントンとリズムよく野菜を刻んでいた天宮 蓮華(ia0992)が顔を上げ答えた。 「あ、トゥエンティさん、こっちにですよ」 蓮華に指示された方へひょこひょこと歩くトゥエンティを火場担当の巳斗(ia0966)が手で招く。 「ここでいいのか?」 巳斗の前に並べられた食材の山の隅へ、トゥエンティが大きな南瓜をどんと乗せる。 「ありがとうございます。重かったでしょう?」 懸命に働くトゥエンティを優しく見つめる巳斗に。 「これしきたいした事ないのであーる。もっと言いつけるのであーる!」 えっへんと小さな胸を張るトゥエンティ。 「あら、その南瓜もですか?」 切った野菜を籠に入れ火場へやってきた蓮華がトゥエンティの王冠を指差す。 「こ、これは違うのであーる! これは我輩の宝物なのであーる!!」 びくっと肩をすくませたトゥエンティは自身の頭を飾る南瓜の王冠を必死で抑える。 「これは失礼いたしました。とても美味しそうな南瓜に見えましたから、つい」 くすくすと笑い会う蓮華と巳斗。一方、王冠を死守するトゥエンティは少し涙目だった。 ●広場 「ささ、お酒をどうぞ」 利実の前座が終わり、皆がくつろぐ広場を、出水 真由良(ia0990)が瓢箪片手に酒を運ぶ。 「今日一夜だけは、全て忘れ楽しんでくださいね」 兵士一人一人に声を掛けながら、酌をしていく真由良。 「お料理もご用意してありますので、どうかお楽しみに」 にっこりと微笑む真由良に、不承不承参加していた兵士達も次第に打ち解けていった。 ●兵舎 「柚李葉ちゃん、準備はどう?」 兵舎の中、陣幕で区切られた一角が一行の控え室となっていた。 「えっと、これでいいかな‥‥?」 玖堂 真影(ia0490)の呼びかけに恐る恐る答えた佐伯 柚李葉(ia0859)は紅白が映える巫女袴を纏っていた。 「うんうん、似合うよ。これであたしとお揃いね」 巫女装束を纏う柚李葉を満面の笑みで見据える真影。 「それじゃ、とっておきのお団子作ろうか!」 「うん! うんと甘いの作ろうね」 にこやかに頷き合うと二人は陣幕をくぐり、料理班と合流した。 ●舞台 「紳士淑女のしょくーん! ま・た・せ・た・な!」 ジルベリアの礼装を身に纏った喪越(ia1670)が篝火で照らされた舞台の中央に颯爽と現れる。 「ほれ、隊長さんも」 次いで喪越にとんと背を押され姿を現したのは砦の指揮官藍。 「う、うむ‥‥」 いつになく緊張した面持ちの藍に。 「そんな厳つい面してちゃぁ、せっかくの宴が台無しだぜ?」 そう言って喪越が指差すのは、藍の登場で緊張に包まれる広場。 「あ‥‥こほん‥‥皆、今日は無礼講である。存分に羽目を外せ!」 咳払い一つ。少し照れの混じる声で藍が広場に向け叫んだ。 『おおぉーー!!』 湧きあがる歓声。隊長の一言に兵士の迷いは吹き飛ぶ。 「さすが隊長さん。効果覿面だねこりゃ」 ひゅーと口笛を鳴らし、一変した会場を眺める喪越に。 「あとは任せる」 くるりと体を返した藍はそそくさと舞台から退散しようとする。 「おっと、そうはいかねぇよ?」 しかし、喪越に腰を抱かれ止められた。 「今日は二人で司会するんだからよ」 「なに!?」 「はい、礼!」 藍の抗議は無視。喪越は藍の頭をぐいっと押さえつけると強引に礼をさせたのだった。 ●厨房 狭い兵舎に作られた架設の厨房は宴の準備で大忙し。 「トゥエンティさん、おにぎりを大皿へお願いできますか?」 「おにぎり‥‥これであるな?」 「巳斗くん、蜂蜜貸してー」 「はーい、すぐに持って行きますね」 「蓮華さん、栗の準備そろそろいいですか?」 「ええ、もう大丈夫ですね。殻が固いので剥く時気をつけてくださいね」 「あ、柚李葉さん、ボクも手伝います!」 「我輩も手伝うのであーる!」 「ダ、ダメですよトゥエンティさん! 刀で切っちゃ!?」 「む? ダメであるか?」 「はい、刀は置いておいてこの包丁で剥いて下さいね」 「うむ、蓮華は気が利くのであーる!」 「柚李葉ちゃん、お団子手伝ってー!」 「あ、真影さん今行きますー」 「蓮華さん、お餅のタレ、味見お願いします!」 「――うん、さすがみーくん、とっても美味しいですよ」 「えへへ、褒められてしまいました」 「‥‥照れるみーくんも可愛いですわ」 「わわわ!? こんなところで抱き付いちゃダメですよ!?」 「なんだろね‥‥こねこね」 「どうしたの真影さん‥‥こねこね」 「前々から怪しいと思ってたのよ‥‥こねこね」 「怪しいって、巳斗さんと蓮華さん? ‥‥こねこね」 「何かあるわね‥‥あたしの感がそう告げてるわ!」 「そ、そうかな〜‥‥」 厨房は大忙し(?)であーる。 ●兵舎 「まぁ、とってもお似合いですよ」 にこにこと満面の笑みを浮かべる真由良の対面には、妖艶な遊女の衣装を身に纏った、まさかの喪越。 「‥‥目覚めてしまいそう」 鏡に映る自分の姿をうっとりと魅入る喪越。 「この間の一件を参考にしましたので、こちらの具合も問題ないと思うのですけど‥‥」 少し悩ましい表情で真由良がおもむろに喪越の胸(偽)を突く。 「ぷにぷに‥‥ふにふに‥‥大丈夫ですね」 真由良は喪越の胸(偽)をつんつん、そして、自分の胸をつんつん。変わりの無い感触にご満悦だ。 「なるほど‥‥この間の一件か‥‥それは是非確かめねぇと――」 ごくりと唾を飲み込んだ喪越は、震える指を真由良の胸へと――。 ぱさっ―― 「ふぅ、大体準備は終わりましたね。そちらはどうで――も、喪越先生‥‥?」 現れたのは陣幕を屑って顔を出した巳斗と。 「みーくんどうしまし――あらあら、お邪魔でしたかしら?」 口元に手を当てわざとらしく驚く蓮華だった。 「ねぇ、真影さん‥‥」 「しー! 見つかっちゃうでしょ!」 さらに化粧台の下から小さな呟き二つ。 「あら、佐伯様、玖堂様、御機嫌よう」 そんな囁きを聞きつけて化粧台の下を覗きこむ真由良は、二人を見つけにこやかに挨拶。 「わひゃ! 見て無いから! あたし達何も見て無いから!」 「だからやめようって言ったのに‥‥」 必死に首を降る真影。そして、その後で申し分けなさそうに小さくなる柚李葉。 ばさっ。 「料理は全部運んだのであーる! 次は‥‥?」 続きトゥエンティが勢いよく陣幕を開け現れる。 「むむ? おとなのじじょう、と言うやつであるか?」 なんだか気まずい雰囲気を察したのか、小首を傾げるトゥエンティ。 「ふむ、なかなかに面白い状況のようではありますが‥‥とりあえず、斬っておきますか」 その後から、現れた利実の手には抜き身の刀が握られていた。 「わわわ――」 状況の急変に硬直する喪越は、なぜだか汗と涙と鼻水でせっかくの化粧が台無しだ。 「ワタシキレイ‥‥?」 その後喪越は、きついお仕置きを受けたのは言うまでも無い。主に利実に。 ●砦門 「お早いお帰りでがんすね」 「!?」 大きな帰り荷を背負った兵士に声を掛けたのは、門の柱に背を預けた利実だ。 「み、見張りか‥‥!?」 突如掛けられた声に焦る兵士に。 「まぁ、無理することも無いですよ」 利実は瞳を閉じ静かに語りかける。 「氏族の矜持に付き合って、命張るなんてねぇ」 「な、何が言いたいんだ」 まるで独り言のように呟く利実に向け、兵士が問いかける。 「うーん、特に言いたいことはないでがんすよ。死ぬ前に逃げる。実に真っ当な考えだと俺は思うでがんす」 腕を組みうんうんと一人頷く利実に、兵士は無言で立ちつくす。 「右の道はさっき小物がいたんで殺っときました。帰るならそっちからどうぞ」 そう言って、利実が刀で指す方角には一つの小道。 「ほんとに行ってもいいのか‥‥?」 利実の行動に兵士も戸惑いの色を隠せ無い。 「俺、口は堅いでがんすよ?」 「すまねぇ‥‥」 利実の一言が決め手となったのか、兵士は申し分けなさそうに頭を垂れると指された道へ。 「‥‥さて、俺は俺の矜持を全うしますか」 誰に語るでもなく、利実の独り言は月夜に消えた。 ●舞台 篝火に照らされた舞台。 ひらひらと蝶の如く舞う紅白。 月光に輝く一陣の剣洸。 たんっと床を打つ乾音。 「辺津が鏡、八握の剣――」 脇差を振りかざし、勇壮に舞う剣舞は真影のもの。 「生玉、死玉交わりて比礼に結ぶ――」 華麗なる舞に心奪われる兵士達が、声も発せず見入る中、凛とした真影の声が響く。 「由良由良と奮え、強き魂」 だんっと床を蹴り宙に舞う真影が。 「弱き心、今ここに絶つ!」 締めの言葉と共に、脇差を一閃させた。 ●広場 おにぎり、焼き鳥、天婦羅。 椎茸汁、野菜炒め、漬物。 お団子、お汁粉、蕎麦掻。 広場の中央に並べられ行く数々の豪華な食事を、兵士達が羨望の眼差しで見つめる。 「まぁ、みーくんとっても可愛いですわ」 「蓮華さんこそ‥‥ボクもそんな格好いい男になりたいです!」 性別を変えた互いを見つめ合いながら、蓮華と巳斗が褒めあい料理を運ぶ。 「ねぇちゃん、にいちゃん‥‥にいちゃん、ねぇちゃん?」 二人の見事な変装ぶりに兵士の一人が戸惑いつつも声を掛けた。 「はい、どういたしました?」 「もう食っていいのか‥‥?」 「あ、ごめんなさい‥‥皆様、どうぞ召し上がってください」 問いかける兵士に深々と礼をした蓮華は柔和な笑顔を浮かべ、兵士達へ声を掛ける。 「お待たせしました! 皆さんへ勇気と活力を、と精一杯作りましたよ!」 蓮華の隣でジルベリアの女中服を身に纏う巳斗も元気よく兵士へ食事を勧める。 『おおぉ!』 二人の声にお預けを喰らっていた兵士達は、奪いあうようにその料理を口へと運んでいった。 「こんなちっこいのに開拓者とはねぇ」 「年は関係ないのである。開拓者家業とは実力社会なのである。せちがらい世なのであーる」 ぽんぽんと頭を撫でる兵士に胸を張り持説を説くトゥエンティ。 「まぁ、開拓者が加勢にきてくれれば俺達一般人はお役ご免だわな」 「何を言っているか。開拓者は万能では無いのであーる」 そんな兵士の軽口にもトゥエンティは至って真剣に答える。 「守りたいものがあるなら自分で守ればいいのである。実に簡単な事なのであーる!」 小さなトゥエンティの自信に満ちた言葉は兵士達の心の奥の靄を徐々に晴らしていく。 「ねぇちゃんも怖いってのか‥‥?」 「ええ、もちろんですよ」 焚かれた篝火の光に集まるように真由良の周りには幾人もの兵士が集っていた。 「でも、あなた開拓者でしょ?」 女兵士の語り掛けに真由良は。 「開拓者である前に一人の人間ですわ。闇に恐怖し、アヤカシに畏怖する」 ゆるりゆるりと一言ずつを噛み締めながら語る。 「そして、戦えない者の為、代弁者となり刀を振るう。皆様と同じですわ」 その言葉に真剣に聞き入る兵士たちに、真由良はにっこり微笑みこう締めくくる。 「さぁ、もう一度護る為の戦いを始めましょう。皆の未来の為に」 「隣いいか?」 広場を見据える門で一人静かに酒を煽る利実に藍が声を掛ける。 「おや、こんな寂しいところへようこそ」 利実は突然現れた藍にも動揺することなく言葉を返す。 「人ごみは苦手だ‥‥と、こんなことでは隊長は勤まらんな」 藍は自嘲気味に笑顔を浮かべる。 「自分を偽らないのが長生きの秘訣でがんすよ」 「ふっ、開拓者はいいな、自由で」 「隊長さんもなればいいですよ、開拓者。この戦に勝利してからね」 「考えておくよ――一献いただけるかな?」 「こんな安酒でよければ喜んで」 二人は月光を肴に杯を酌み交わした。 ●舞台 どこからともなく舞台に響く声。 「おめぇら、宴の最後だ! とくとご覧あれってな!」 その声を合図に、カーンと澄んだ拍子木の音が舞台に響いた。 「柚李葉ちゃん!」 「うん!」 そう言って舞台袖より飛び出すは、巫女の衣装を身に纏う柚李葉。 「こんばんわ。佐伯 柚李葉です。笛吹きます」 舞台中央に立つ柚李葉は、兵士達に向けぺこりと一礼した後、懇切丁寧に自己紹介。 「柚李葉ちゃん! 挨拶はいいから!」 律儀に挨拶を交わす柚李葉を見かねて、舞台袖から真影が声を掛ける。 「あ、う、うん。皆さん、聴いてください」 こくりと頷き笛を口元に当てた柚李葉から、静かに音色が広場に広がっていく。 夜に溶ける笛の音はどこまでも澄み。 千里を越える風のように雄大に聴く者の心へ語りかける。 「合わせますね」 その笛の音を邪魔しないように小さく呟いたのは巳斗。三味線を抱え柚李葉の隣に立つと、笛の音を惹き立てる様に弦を弾く。 月光を受け輝く弦が奏でる羽音。 弦の追奏を受け、炎を揺らす笛音は勇壮な決意の色。 柔勇、二つの音色が互いを惹き立て合い。 闇を纏う夜を照らし出す秋月となる。 「さぁ、わたしたちの出番ですわね!」 「え、ええ‥‥」 息巻く女装喪越の声に、真影は一歩引きながら答える。 「わたしの舞で殿方のはぁとを鷲掴み――って、玖堂さんお待ちくださる!?」 野望に燃える喪越を尻目に真影はさっさと舞台へ。 弦笛の音色に誘われ出でた、赤姫。 紅髪を振り乱し勇壮に舞うは、真影の炎舞。 炎舞に導かれゆるりと歩むは、玄姫。 どこで覚えたのか、艶やかにしなやかに、喪越の艶舞。 対照的とも見えるこの二つの舞は、楽の音に乗り次第に調和して行く。 そして。 静々と舞台へと進み出た蓮華が中央へ。 それを合図に勇壮なる真影の舞が舞い落ちる花びらの如く終焉を向かえる。 「汝の戦う理由は何か 思い出せ」 蓮華の隣へと降り立った花びらが凛とした声を響かせ、雄雄しく歌う。 「初めて刀を手に取った日の想い」 真影の歌を継ぐのは蓮華の優しい歌声。 「国の為 他人の為 己の為」 継いで喪越が。 「見失うな 想いの数 それこそが我らの力だと」 そして柚李葉が。 「大切なものの為に 希望を未来に繋げて」 巳斗も続く。 「振るう刀の先に見えるは 何よりも尊き命の灯 抱く優しさ巡り巡り」 三様の歌声に導かれ、再び蓮華が。 「いつか汝を守護せん」 そして。 『辛くとも 決して絶やすな志の炎!』 5人の合唱は、魅入る兵士達の心に再び決意の炎を燃やした。 舞台の終焉と共に一行が広場に向け投げ入れた勝利祈願の兵糧丸を、こぞって取り合う兵士達の心に負心はすでになく、明日を生き抜く為の英気が煌々と灯されたのだった。 |