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■開拓者活動絵巻 |
■オープニング本文 ●武天のとある大屋敷 「ククク‥‥お主も悪よのぉ‥‥」 「いえいえ、――様こそ‥‥ふふふふふ」 40畳はあろうかという大広間。そこに鎮座する影二つ。 「では、――様、これはほんのお土産代わりに――」 影の一つがつつーと小さな包を差し出した。 「いつもの『大福』か‥‥?」 「はい、今日の『餡子』大入りでございます――」 「ふふふ‥‥甘味はよいの、甘味は。特に黄金色の、のぉ」 「まったくでございます――」 二つの影は、低く卑下た笑い声を上げた。 「‥‥大きな顔をしていられるのも今のうちよ――」 残る影が萩屋のものだけとなり、静寂に包まれた大広間に凍りつくような低い声が満ちる――。 カーン! その時、突然の甲高い音が部屋の外に木霊した。 「な、何事だ!?」 萩屋は血相を変え障子を開け放つ。 そこには、柄まで真っ白に塗られた矢が一本、柱へと深々と突き刺さっていた。 「なんだこれは‥‥」 矢には一枚の紙が括り付けられていた。 「‥‥」 きょろきょろと辺りを見回した萩屋は、一度口に溜まった唾を飲み下すと矢に巻かれた紙を外す。 「‥‥‥‥読めん」 萩屋が手に取った白い紙には、文字が記されていた。――白字で。 「‥‥」 萩屋は手に持つ紙を面倒くさそうに丸めると、ぽいと中庭の池へと投げ捨てた。 「最近のいたずらは性質が悪い」 そう言い捨て再び部屋へ戻ろうとした、その時。 かつーん! 再び甲高い音が、雲一つない秋の月夜に響き渡った。 先程の白矢の上にかぶさるように突き刺さるのは、真っ黒に塗られた矢が一本。 「‥‥」 あからさまに嫌そうな顔をする萩屋。しかし、その手は黒矢に結ばれた紙へと吸い寄せられる。その紙には何故か手に取らずには居られない不思議な魔力歩秘められていた。 その紙に書かれていたものは――。 『前略 萩屋 様 朝夕日毎に涼しくなり、過ごし易い季節がやって参りましたが、いかがお過ごしでしょうか。 突然の手紙で驚かれたことかと思います。この度、ようやく自由になる時間が取れるようになってまいりました。つきましては、萩屋様宅に大切に保管されています隠し財産を頂きに参りたく、このような形でのお知らせとなりました。 今までご挨拶が遅れました事、重ね重ね申し訳ございません。 よろしければ来週の末日にお宅へお伺いしたく思っております。 お忙しいとは存じますが、どうかよろしくお願いいたします。 では、用件のみですがこれで失礼させていただきます。 秋風の冷たさに負けず、どうかご自愛下さいませ。 草々 怪盗 ポンジ』 「‥‥‥‥‥‥」 静止する時間はどれくらいだっただろう。 「‥‥見なかったことにしておこう」 萩屋は呟き、部屋へと消えた。 この矢文は本当に見なかったことにされてしまうのか!? それでいいのか萩屋! お前には浪漫がないのか!! 次回、『【ポ】怪盗、現る!』こうご期待!!! |
■参加者一覧
貉(ia0585)
15歳・男・陰
出水 真由良(ia0990)
24歳・女・陰
大蔵南洋(ia1246)
25歳・男・サ
アルティア・L・ナイン(ia1273)
28歳・男・ジ
喪越(ia1670)
33歳・男・陰
佐竹 利実(ia4177)
23歳・男・志
風雷(ia5339)
18歳・男・シ
小賀坂(ia6867)
23歳・男・シ |
■リプレイ本文 ●大屋敷 『はい!』 夜の屋敷の広大な中庭に凹られたごろつき達の悲鳴にも似た怒声が響いた。 「いいか! 貴様らは戦場で屁の役にも立たない、ただ飯食って糞垂れるだけの汚物製造機だと思え!!」 『は、はい!!』 「どもるな! 返事は『はい』だ!」 『はい!』 「いいか蛆虫ども! 決して動くな。動けば‥‥斬る。すっぱりとな」 ごろつき達の一糸乱れぬ返事に刀をちらつかせる佐竹 利実(ia4177)は満足げに頷いた。 「げっへっへ。萩屋様、何なりとお申し付けください!」 「いやいや、私めもおりますぞ! ささ、何なりと! 誠心誠意がご奉仕させていただきますー!」 「うむ、よきに計らえ。はっはっは」 中庭沿いの長い廊下を萩屋が上機嫌で歩く。そして、その後を喪越(ia1670)と貉(ia0585)が腰巾着よろしく手を擦りながらひょこひょこと追う。 「あ、萩屋様! お足元に蟋蟀が」 そう言うとすすっと萩屋の前に出る喪越。そして、廊下に迷い込んだ虫を庭へと掃う。 「くるしゅう無い。はっはっは! 褒美だ取っておけ」 そんな喪越の態度に上機嫌の萩屋は駄賃を放り投げる。 「へへぇ! 有難き幸せ!」 それを頭を垂れて受け取る喪越。一方、その様子を眺めていた貉は「キー!」と手拭を噛む。 「萩屋様、下種な盗賊の相手は我々に任せ、こちらで」 喪越に代わり萩屋の前へ出た貉が寝室に隣接する一室の障子を開く。 「うむ――これは?」 部屋へ入るなり萩屋の目に飛び込んできたのは、集められた家人と贅を凝らした宴の席。 「へぇ、盗賊が尻尾を巻いて逃げる様を家人の方と一緒に酒の肴にと思いまして。フフフ」 「ほう面白い! 褒美だ取っておけ」 更に上機嫌な萩屋は貉へ駄賃を放る。一方、その様子を眺めていた喪越はダンダンと地団駄を踏んだ。 「これが宝‥‥?」 地下室を行く大蔵南洋(ia1246)がそう呟いた。眼前には数多積まれた金銀玉宝。そして、まるでそれと同等の品であると言わんばかりに置かれた正体不明なガラクタの山。 「ご本人様にとっては宝なのかもしれませんね‥‥」 出水 真由良(ia0990)が困ったように呟く。 「でも、これだけあるとどれが目当ての物か判別できませんわね」 「確かに‥‥しかし、一つとして盗られる訳には行かん」 真由良の弱音に南洋が力強く答える。 「ええ。依頼は宝を護ることですしね」 南洋の言葉に真由良も真剣な顔で頷く。 「うむ。ここへは誰も立ちいらせん。家人も全て別室に隔離した。来る者は全て敵だ」 地下室の壁を拳で叩きながら注意深く歩く南洋の言葉には決意が込められている。 「はい、わたくしも準備に取りかかりますわ」 そう言うと真由良も仕掛けの準備を始めた。 「よし、完璧だ」 寝室の隅で手に持つ本を閉じアルティア・L・ナイン(ia1273)は満足げに頷いた。 「なんだそれ?」 そんなアルに風雷(ia5339)が問いかける。 「これかい? 義賊絵巻だよ」 「義賊絵巻?」 「うん、これから来る敵に向けて予習ってやつだね」 「予習って‥‥それって子供向けの絵本だろ?」 「そうだね。でも、ほら」 そう言ってアルが差し出した本の表紙には。 「『怪盗活劇 怪傑ポンジ団!』‥‥?」 そう書かれていた。 「どう? 予習にはぴったりだろ?」 得意げに本を掲げるアルに風雷は愛想笑いを返すしかなかった。 ●夜更け 「早くお会いしたいものですね」 心躍らせる真由良は地下へ続く階段下。 「さぁ、どこからでもきなさい。返り討ちにしてあげますよ」 中庭には用心棒達を従えた利実が仁王立ち。 「ひぃ、ふぅ、みぃ‥‥意外とケチだなあの旦那」 貉は地下室入口でせっせとお駄賃計算中。 「とうっ! いや違うな‥‥そりゃ! う〜ん‥‥」 大薙刀を振り回しては考え込むアルは寝室の隅。 「こんなとこから来たら、それこそ絵巻の一場面だよな‥‥」 寝室の天井で息を殺す風雷。 「ポ〜ンジ、今日こそ逮捕だ〜!」 寝室を望む縁側で十手片手に喪越が燃える。 「物音一つ聞き漏らしはしない」 南洋が地下室の中央に鎮座していた。 その時―― 「ごめんください」 萩屋の大屋敷の玄関を叩く音と共に男の声が寝室にまで響いた。 『どなたですか?』 「怪盗ポンジが参りました」 『お入りなさい』 「ありがとう」 完璧すぎる一人芝居の後、ガラガラと音を立て玄関の戸が開かれた。 「今何か聞こえなかったか‥‥」 男の声に唖然とする喪越が利実に問いかける。 「‥‥ポンジと聞こえたような気がしますが」 さすがの利実も戸惑いを隠せ無い。 「ま、まさかなぁ‥‥」 「さすがにそれは無いんじゃ‥‥」 貉とアルが引きつる顔を見合わせる。 そこへ―― 盛大な音を立て両開きにされる寝室の襖。 「はっはっは! 待たせたな!」 開口一番、男が叫ぶ。 「俺、ただいま参上!!」 呆然と口を開ける一同の前に、ポーズを決める怪盗ポンジがついに現れた。 「いや、待って無いけどな‥‥むしろこない方が依頼達成できてウハウハなんだけど」 実に嫌そうに愚痴るのは貉。 「いやいや、怪盗とやり合えるなんてわくわくするじゃないか」 逆にキラキラと目を輝かせるのはアルだ。 「まさか、玄関から入って来たんですか‥‥」 中庭防衛の要、利実の苦労は徒労に終わる。 「非常識にもほどがあるぞ‥‥いや、逆に常識的なのか? う〜ん‥‥」 屋根裏で一人首を捻る風雷。 「ん? おまえら誰だ?」 襖の先にいた一行をポンジは不思議そうな顔で見つめる。 「はっはっは! 誰だと? 随分とご挨拶じゃないか、ポ〜ンジ!」 そんなポンジに十手を突きつけ喪越が吼える。 「喪越くん、知り合いなの?」 まるで旧知の仲とでも言いたげな喪越にアルが問いかける。 「いや、初見」 と答えたのはポンジだった。 「キー! そんなつれない貴方を好敵手認定!」 勝手に認定してしまった喪越に。 「ふ〜ん」 ポンジは鼻をホジホジ、まるで興味を示さない。 「お遊びはそれくらいにしてもらいましょう。噂の怪盗との死合心待ちにしていましたよ!」 そんな隙だらけのポンジに、利実の刃が牙を剥いた。中庭から一足飛びに寝室へ舞い降りると、必殺の『居合』一閃。 「っととと、あぶねぇな」 利実の刃がポンジを捕らえた――。誰もがそう思った瞬間、その姿はやる気の無い声と共に霞みの如く消えうせた。 「なっ!?」 視覚では完全に捉えた。しかし、刀を持つ手に肉を絶つあの独特の感触が伝わってこない。利実は刀を鞘に戻す事も忘れ呆然と立ちつくす。 「上が賑やかになってきましたね」 階上の騒動に若干羨ましそうに真由良が聞き耳を立てる。 「我らはここを死守しよう。上の面々も手練揃い、突破されることは無いと思うが、用心に越したことは無い。相手が相手だけにな」 鎮座する南洋に動揺は無い。瞳を閉じ静かに階上の状況を窺っていた。 「‥‥や、やあ」 「ごきげんよう」 ここは闇の国『天井裏』。そこで二人は出会った。 「って、お前なんでここにいんだよ‥‥つか、考え一緒かよ‥‥」 天井に伏した風雷の前に現れたのは、蜘蛛の巣を纏ったポンジその人。 「ふむ。おまえとは気が合いそうだ」 顎に手を当て満足げに呟くポンジ。 「嬉しくねぇよ‥‥ってか、同じシノビとして恥ずかしいぜ‥‥」 一方、こめかみに指を当て呟く風雷。そんな切ない時間が過ぎ行く天井裏を。 「そこだ、曲者っ!」 小気味のいい音を立て、アルの薙刀が貫いた。 「うわ!? ちょっと待て!」 次々と天井を貫くアルの刃。天井裏の風雷はたまったものでは無い。 「外したか! おのれちょこまかと!」 嬉々として刃を突き立てる続けるアル。 「がんばれー」 刃を紙一重でかわし続ける風雷を生暖かく見守るポンジが声援を送る。 「お、お前、覚えてろ!! おわっ!?」 そして、最初に限界に達したのは天井だった。 ドスーン! 「つつぅ‥‥アルティア、お前、ちょっとは加減しろよ!」 「ははは、ごめんごめん。一度やってみたかったんだよ」 堕ちた風雷が頭を擦りながら愚痴る。尻に敷かれたアルに向かって。 そんな二人を尻目に部屋へ降り立ったポンジは悠々と地下への階段を目指す。 「な、なに!?」 しかし、その前に立ち塞がった潤む瞳の小さな命にポンジの足が止まった。 「そこまでですわ」 小動物の後にはでーんと真由良が立つ。 「ポンジ様、やはり貴方は心清き方のようですね」 「うん?」 「開拓者の足止めを物ともしない方が、この様な小さな命を前に足踏みされるとは」 階下より真由良が語りかける。 「やはり貴方様はこのような汚い事に手を染めていい方ではありません。今からでも結構です。どうか真の正義の道を見出してはいただけませんか?」 どこまでも穏やかにポンジへ説得の言葉を向ける真由良。 「ねぇちゃん、いいこと言うねぇ。心洗われる様だぜ‥‥」 その言葉にポンジは感動の涙。真由良の言葉はポンジの心へ深く響く。 「ポンジ様‥‥」 「ねぇちゃん‥‥」 見つめ合う二人の距離が徐々に縮まる。 その時。 「でかした出水! 発動!」 隙を見せるポンジに向け喪越の地縛霊『箪笥の角』が発動。 「ぐおぉ!?」 虚無より現れた凶器がポンジの右足小指を捉える。 「でかした喪越君! 発動!」 足を抱えて苦しむポンジへ向け、貉の地縛霊『たらい』が発動。 「ぬおぉぉ!?」 虚空より現れた銀盤が乾いた音を立てポンジの脳天へ直撃する。 「今だ取り押さえろ!!」 貉の一声に男衆がポンジへ飛びかかる。一人また一人とポンジへ折り重なるように飛びついた男衆は見事ポンジを取り押さえ――。 たかに見えたその時、突然の破裂音と共に階段を白煙が覆いつくした。 「げほげほ! なんですか!?」 いきなり視界を奪った白煙に咳き込む利実が叫ぶ。 「そこだ!」 そんな中、地下室に待機し事の一部始終を静かに見守っていた南洋が、動く影をその眼に捉え刀を薙いだ。 「きゃ」 白煙を絶つ一閃は、場違いな悲鳴と共に一つの影を浮かび上がらせる。 「最早逃げ場は無い。観念して宝は諦めてもらおう」 影に向け南洋が詰め寄る。しかし、白煙も収まりつつある地下室に現れたのは蒼き影二つ。 「真由良君が二人‥‥?」 ぼやける視界の中でアルが人影を前に眼を擦る。 「まぁ、本当にそっくりですね」 目の前に現れた真由良(?)に真由良はいたく感心、まじまじと見つめる。 「そっくりですか‥‥?」 真由良の呟きに利実が答える。確かにそこには蒼き衣を纏い青い髪を湛えた真由良(?)の姿。 「ほら、この胸なんて」 そう言うと真由良はおもむろに真由良(?)の胸をつんつんと突く。 「いや、根本的に骨格が違うと思うが‥‥」 特徴は一致していてもそこは男女。南洋も呆れ顔だ。しかし、真由良は嬉しそうに真由良(?)をいじる。 「ごくりっ‥‥」 その時、喉を鳴らした真由良(?)の震える指が真由良の豊かな双丘へ迫った。 『させるかよっ!!』 当然、魔手は阻まれた。男衆の渾身の蹴りを持って。 「ぐはっ!?」 盛大に吹きとんだ真由良(?)は転げに転げ――。 「ぐおおぉぉ‥‥!」 勢いよく柱に後頭部を打ち付け、頭を抱えのた打ち回る。 「ふははっ! よくぞ見破った!!」 のた打ち疲れたのか真由良(?)はガバッと立ち上がると、衣に手を掛け一気に脱ぎ捨てた。現れたのは何を隠そうポンジだった。 「ばればれだよな‥‥」 現れたポンジへの風雷のツッコミは右から左へ。 「お前らなかなかやるな! もしかして開拓者って奴らか?」 再び戦闘体制を取る一行へ向け、ポンジが問いかける。 「だったらどうだというのだ」 腰の刀に手を沿え、じりじりと距離を詰める南洋が凄む。 「ちょいと本気を出してやるよ!」 ポンジの声が響くと同時、地下に風が舞った。 「何!?」 逆巻く風は密閉された部屋を縦横無尽に吹き荒れる。一行は暴風になす術なく立ちつくす。 「風遁!? いや幻術か! 皆、気をしっかり持て!」 しかし、シノビである風雷が風の正体を見破り注意を促す。 「これが幻術だって!?」 襲い来る風にアルが戸惑い問いかける。その暴風は正体が判っても抵抗できるものでは無い。 「おー、あったあった」 風に翻弄される一行を尻目に突然屈んだポンジが、嬉しそうに声を上げた。 「くっ、宝が‥‥!」 必死に風に抵抗する南洋だが、目の前で行われる犯行をなす術なく見つめるしか無い。 「この風何とかなら無ねぇのか!」 もっとも抵抗力の高い喪越でさえ、声を上げるのがやっとだ。 「ったく、人様のもん勝手に持って行きやがって」 ポンジの背には沸々と怒りの炎が上がる。 「それを君が言うのかい‥‥?」 アルのツッコミは風に掻き消された。 「このままじゃ‥‥!」 なにも出来ない歯痒さに焦るは利実。 その時、突然風が消えた。 「お、おわ!」 風に抵抗していた貉は力余ってたたらを踏む。 「さて、帰るかな」 振り向いたポンジの手には一枚の硬貨。 「そ、それは?」 地下室には財宝と呼ばれるものが数多ある。しかし、ポンジが手にしたのはただの硬貨に見える。 「うん? これ? 先週無くした俺の昼飯代」 問いかける真由良にポンジは宝の正体をあっさり白状。 「ひ、昼飯代‥‥?」 突拍子も無い答えに風雷が問いかける。 「萩屋の奴め、落ちてる物は誰のものでも無いとか――」 小銭を握り締めながら、ポンジがぼやく。 「それが君のだって証拠でもあるのか!」 ぼやくポンジに向けアルが叫んだ。 「あるぜ? ほら」 当然だと言わんばかりにポンジが一行に向けた硬貨の表面には赤き拇印が刻まれていた。 「ぼ、拇印?」 あまりの出来事に一行唖然。 「それじゃな、開拓者の諸君! また合おう!!」 そして、それだけ言い残し地下室を抜け出たポンジはそのまま月夜に消えた。 「百文の為にここまでするのか‥‥」 呆れる南洋はこめかみに手を当て唸る。 「確かに、予告状に『萩屋様の』とは書かれていませんね‥‥」 呆ける真由良は、手にした予告状の写しを見つめる。 「あー面白かった」 くつくつと思い出し笑いのアル。 「まだまだ修行が足りませんね。明日から特訓です」 ポンジにいい様にあしらわれた利実が呟く。 「これって成功だよな? 報酬もらえるよな?」 「萩屋の財産は無事だから成功だろ?」 報酬の心配をする貉を風雷が宥めた。 「ポンジはとんでもないモノを盗んで行きました‥‥」 そんな中、ポンジが消えた秋夜の月を感慨深く眺めながら喪越が呟いた。 「何も盗られて無いのでは?」 そんな呟きに真由良はきょとんと問いかける。 「それは――」 「それは?」 「私の心です」 感慨に更ける喪越を一人残し、呆れ尽くした一行は萩屋邸を後にしたのだった。 無事、萩屋の宝を守りきった開拓者一行。しかし、開拓者とポンジの戦いは始まったばかりだ! 行けポンジ! 迎え撃て開拓者!! この世の正義をその手に掴むまで!!! つづく‥‥のか!? 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