【負炎】友軍救援
マスター名:黒鳶
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2009/10/29 21:52



■オープニング本文

 里に近い最終防衛線と言える戦闘地点で友軍はピンチに陥っていた。
「ダメです、敵は我が軍を半包囲して殲滅するつもりです」
 里に数少なくも残っていた守備部隊が一つはすでに半数以上も討ち取られており、アヤカシ達に囲まれていた。しかも数は敵の半数にも満たないだろう。
 里を後ろにして一塊になる守備部隊、それを半包囲に展開するアヤカシ達。完全にではないが囲まれているのは確かだ。このままでは守備部隊は全滅するだけだ。
 そんな守備部隊の隊長が半包囲している後ろのアヤカシの一匹に目を向ける。
「せめて、せめてあいつさえ出てこなければこんな事には」
 最初の方は守備部隊が圧倒的にアヤカシ達を押し返していたのだが、最後尾にいるアヤカシが出てくるとアヤカシ達に統一が生まれて、連鎖的な攻撃で押し返されてしまった。
 ここを突破されればアヤカシ達は里へ雪崩れ込むだろう、それだけは阻止しなければならない。だからこそ守備部隊の隊長はとある奇策を練り上げていた。
「開拓者達の到着はどれぐらいだ」
「そう時間は掛からないと思います」
「そうか、なら勝機はある」
 隊長が練り出した奇策。それは開拓者達に背後からの奇襲を掛けてもらうことだ。そうする事でアヤカシ達に混乱が生まれ、押し返すどころか掃討する事も可能だろう。そこまで出来なくとも、アヤカシ達を指揮している者を倒せば四散するに違いない。
 隊長はそう考えて開拓者ギルドへの依頼を申し出ていた。
「もうすぐだ、もうすぐで事態は逆転する。皆、あと少しだけ耐えてくれ!」
 残り少ない味方を鼓舞する隊長。そう、開拓者達が到着すればアヤカシ達をどうにか出来る事は確実なのだから。だから今は守り通さないといけない。なんとしても里を守るために。


■参加者一覧
羅喉丸(ia0347
22歳・男・泰
志藤 久遠(ia0597
26歳・女・志
柳生 右京(ia0970
25歳・男・サ
天雲 結月(ia1000
14歳・女・サ
大蔵南洋(ia1246
25歳・男・サ
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
各務原 義視(ia4917
19歳・男・陰
夏葵(ia5394
13歳・女・弓


■リプレイ本文

「さってと、どうなってんのかな?」
 ルオウ(ia2445)は背の高い草に隠れながら戦況を覗いていた。守備部隊はかなり追い詰められており、何とか戦線を維持している状態だ。
 そんな守備部隊を包囲している小鬼達の後ろに赤小鬼を見つけたルオウは仲間に報告するのだった。
「赤小鬼は一番後ろで一匹で居るけど、俺達の存在に気付くとすぐに仲間をよびそうだぜ」
「でしょうね、ここは急いで救援に入った方が良いでしょう」
 そんな事を言ってくる大蔵南洋(ia1246)は可能な限り兵達を救いたいと、いや、救わないと思っていた。
 これからの大アヤカシとの戦いに備えると兵は一人でも多い方に決まっているからだ。だからこそ、ここで無駄な犠牲を出すわけにはいかなかった。
「こちらの存在にはまだ気付いてはいなかったか?」
 そんな事を聞いてくる柳生 右京(ia0970)ここで敵に見付かっては奇襲の意味は無い。その事を懸念しての発言だろうが、ルオウははっきりとこちらには気付いていない事を伝えた。
「ならば当初の予定通りで構わないな」
「そうですね、それで行けると思いますよ」
 そんな会話をする志藤 久遠(ia0597)と各務原 義視(ia4917)この状態で開拓者達に気付いていないとなれば奇襲が成功する可能性が高いだろう。
「ならもう少し接近しようぜ。もう少しぐらい近づいて気付かれないだろ。それに助けに入りやすいからな」
 そんな事を言いだした羅喉丸(ia0347)。確かにこの距離で気付かれないのならもう少し接近しても構わないだろう。
 開拓者達は頷くと敵に気付かれないように接近を試みる。思ったとおり、かなり近づいても相手は守備部隊との戦闘に集中しているらしく。こちらの奇襲にはまったく気付いていないようだ。
 後は行動に移すだけだ。
「合力しあえば天は応えてくれる。死力を尽くすのみ」
 そんな言葉に頷きあう天雲 結月(ia1000)と夏葵(ia5394)二人とも確かに助け合えば必ず何とかできると信じているのだろう。それは天だけでなく、相手のパートナーとしても同じ事が言えるだろう。
「あたしが‥‥ゆっちゃんを護るからね」
 結月の後ろから抱きついた夏葵がそんな言葉を呟いた。そんな夏葵の手に自分の手を重ね合わせて結月は優しく夏葵の手をなでるのだった。
 守備部隊だけでない。夏葵も護る事もこの時には結月は自分の使命としているようだ。
 そんな二人の微笑ましいを通り越して、少し恥かしげもある仕草に開拓者達はいろいろな目で見ているが、二人が離れて気を取り直すと義視が呼子笛を取り出した。
「それではそろそろ行きますか」
 頷く開拓者達。義視は一度全員を見渡すと呼子笛を口に含むと思いっきり吹いて周囲に自分達の存在を知らせるのだった。
「いくぜっ!」
 真っ先に飛び出していくルオウ、その後に羅喉丸と久遠が続く。ルオウ、右京、南洋、義視は真っ先に敵陣の中央に向かって突き進む。
 羅喉丸と久遠、そして結月と夏葵は赤小鬼に向かって突き進むのだった。


 突然の襲撃に赤小鬼は慌てふためくように中央の部隊から三匹ほどの小鬼を自分の元へと呼び寄せた。赤小鬼は臆病なだけに奇襲には自分の防衛が最優先なのだろう。
 そんな赤小鬼の周りに集った小鬼に羅喉丸と久遠は一匹ずつ撃破するとそのまま赤小鬼突っ込む
「いざ、勝負!」
 なるべく大声で叫ぶ久遠。自分の声が友軍にも聞こえれば援軍が来た事が確実に伝わり士気が上がるだろうと考えた結果だ。
 残りの一匹の小鬼を結月が撃破すると羅喉丸と久遠はそのまま赤小鬼に突っ込むフリをしてあっさりと追い越して小鬼達の迎撃部隊との合流を計った。
 どうやら最初から牽制が目的だったらしい。これですっかり混乱に陥れたアヤカシ達の部隊だが、最初の突撃が牽制だと分かると赤小鬼はすぐに小鬼達に指示を出しに戻り、残った結月と夏葵と対峙するのだった。


「急々如律令」
 眼突鴉で敵陣の中央に一撃を加える義視。先程の赤小鬼に向かった援軍も加えれば中央の勢力は半減したも同然であり、あと少しで突破できるだろう。
「今こそ押し返す好機、共に戦わん」
 友軍に大声で呼びかけながら小鬼を撃破する南洋。そのまま敵陣を突破すると友軍と合流して先頭に立つ。ここで小鬼達を迎撃しようというのだろう。
 そんな南洋に続くようにルオウも両断剣で小鬼を撃破すると友軍と合流する。その頃にはすでに羅喉丸と久遠も合流していた。
 右京だけが友軍とは合流せずに挟撃体勢を取っていた。ここで全て合流してしまってはせっかくの挟撃の意味が無くなる。だから自分だけはここで敵を挟み撃ちにするつもりなのだろう。
 けれども時はすでに遅し、先程の赤小鬼の指示で小鬼達はすで半包囲を崩していた。中の部隊はそれぞれの両翼部隊に合流すると今度は守備部隊と開拓者達を挟み撃ちにする左右に部隊を展開させて逆に守備部隊と開拓者達を挟撃陣に捉えていた。
 合流を優先させただけに、そこまで気が回らなかったのだろう。さすがにここまでの行動は読めなかったようだ。何人か残って挟撃体勢を維持し続けるならこんな事にはならなかったが、仲間を救いたい一心で合流を優先させたため、今度はこちらが挟撃される事になってしまった。
 どうやらこれも赤小鬼が予想していた事の一つであり、混乱は一時的なもので、友軍と開拓者達は再び厳しい戦いに身を投じなければならなかった。


 その頃、結月と夏葵は赤小鬼と対峙していた。小鬼の援軍は無い。いくら赤小鬼が臆病でもこれ以上の戦力を割く事が出来ないのは分っているのだろう。それに相手は二人だけである。赤小鬼が何とかできると思ってもしかたない。
 けれどもそれは二人の実力を見誤っていると言えるものだろう。
「あたしの月には指一本触れさせません」
 鷹の目と即射を使い足を狙って攻撃に出る夏葵。この攻撃が見事に足を貫通しただけでなく、完全に相手の機動力を落とす結果となった。
 ここぞとばかりに結月は気力を一気に消費すると示現に全て注ぎ威力を一気に向上させる。
 示現は最初の一撃に全てを賭ける流派であり、その一撃はかなりの威力を発揮する。そのうえ結月は気力で更に威力を上げている。
 その一撃だけで赤小鬼の首を落とすには充分だった。
 首を落とされた赤小鬼は身体が地面に崩れ落ちるとそのまま紫色の瘴気となり地面へと消えていった。
 これで司令塔は完全に倒した。小鬼達の部隊はこれで混乱するに間違いないだろう。それ以上にこの二人の連携攻撃が功をそうしたようだ。
 最初の一撃で赤小鬼に大ダメージを与えて、その後は援護を受けながら撃破するはずだったが、赤小鬼が思っていたより弱かったのか、それとも二人が強かったのかは分からないが、思っていたよりも早く赤小鬼を撃破することが出来たのは確かだ。
 結月も早めに決着をつけるつもりだったが、ここまで早く終わるとは思っていなかったようだ。
 何にしてもこれで赤小鬼は撃破で聞いた夏葵は結月に抱き付いて、自分達の任務が完了した事を喜び合ったが、まだ全てが終わったワケでは無い。まだ守備部隊を囲んでいる小鬼達が残っているのだから、けれども司令塔を失った小鬼部隊も崩れかかっていた。


「逆に考えてください。これは挟まれたのではなく、各個撃破のチャンスです。片方に攻撃を集中させて一気に壊滅させてください」
 冷静に状況を分析して策を提示する義視。
 そんな事を言われる前に右京はすでに片方の部隊に向かって突っ込んでいた。
「数は多くとも所詮は雑魚か」
 赤小鬼が敗れて統率が取れなくなった小鬼を撃破していく右京。それに合わせてルオウも手当たり次第に切り付けていく。
 けれども戦闘をしているからには、こちらも被害が出るのも確かだ。南洋はそんなてこずっている兵を助けながらも小鬼達を撃破していく。
 赤小鬼が撃破されて自暴自棄になって突っ込んでくる小鬼達もいる。そんな小鬼達の前に羅喉丸は立ち塞がる。
「ここから先は通行止めだ、先に進みたければまず俺を倒す事だな」
 もうヤケになっている小鬼達は羅喉丸に突っ込んでくるが、羅喉丸は骨法起承拳と気功波を使って一気に撃破する。
 そんな戦闘が続くと逃げ出す者も出てくるだろう。義視は呪縛符で逃げ出す小鬼達を捕らえると久遠が横薙ぎに一気にトドメを刺していく。
 これで完全に小鬼達の部隊は組織として機能はしていない。すでに片方の部隊は壊滅しており、もう片方の殲滅に掛かっているほど小鬼達は減っているのだから。
 そんな小鬼達に右京は追い討ちを掛けるかのように両断剣を繰り出す。
「もう少し愉しめると思ったが‥‥当てが外れたな」
 赤小鬼が滅してからというもの烏合の衆と化した小鬼の群れに右京はそんな感想をもらす。
 そんな右京とは違い。南洋は守備部隊と協力して小鬼達を撃破していく。


 何匹かは逃したようだが、小鬼達の部隊は完全に壊滅した。合流した時に挟撃の危機にあった時にはどうなる事かと思ったが、義視の機転でどうにか難を脱する事が出来た。
 なんにしてもこれで友軍が壊滅する事はなくなり、アヤカシ達は森へと引き返していった。
 これから何度もこんな事があるかもしれないが、今は無事に里を守りきれた事を喜ぶべきだろう。
 なにしろ守備部隊は壊滅しなかったのだし、アヤカシ達は撃滅出来たのだから、依頼をこなせたといえるだろう。
 そんな開拓者達の活躍もあり里は守られたのだった。