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■オープニング本文 ──事件の冒頭 ザワザワザワザワ 大勢の人々で賑わう街。 ここ泰国中央にある『凛安(りんあん)』と呼ばれる小さな街では、またしても事件が起こっていた。 流行病だのおちぶれ道場だの、まったく困ったものだ。 「誰か、先生を探してきてはくれないか?」 街の有力者である郭典法(カク・テンホウ)氏が、街角に出した御触書は以下の通りであった。 ────────────────────── 告 誰でも構わない。 この街から離れた山脈の麓に住まう『諸葛先生』を探し出し、来年度の運勢を占ってもらってきて欲しい。 もし宣誓のもとを訪ねてくれる者が居るのならば、私の店に来てください。 占いの結果を書き記して貰う竹簡を渡すので、それを持っていって来てほしい。 黄泉酒家・郭典法 ────────────────────── ちなみにこの名前に出てきた『諸葛先生』というのは、この街の近くの山の麓で隠居している有名な先生で、かなりの博識者らしい。 学問は陶然として、芸術や武術にも精通しており、道に迷った者たちが時折尋ねては、知恵を授かっているらしい。 だが、ここ最近は、その山野の近くにアヤカシが徘徊しているらしく、街の人は恐がって近寄らなくなってしまつたらしい。 そして、君達開拓者もこの街の中で、この御触書を見てしまった。 さて、どうするかね? |
■参加者一覧
沢渡さやか(ia0078)
20歳・女・巫
朧楼月 天忌(ia0291)
23歳・男・サ
ロウザ(ia1065)
16歳・女・サ
雷華 愛弓(ia1901)
20歳・女・巫
かえで(ia7493)
16歳・女・シ
リューリャ・ドラッケン(ia8037)
22歳・男・騎
瀧鷲 漸(ia8176)
25歳・女・サ
天弓 ナダ(ia8261)
28歳・男・弓 |
■リプレイ本文 ●はなまるセンセイしょん ──凛安・黄泉酒家 「地図はこれが一番正確なのですよね‥‥」 街の有力者である郭典法(カク・テンホウ)氏から預かった地図。 それを食卓の上に広げつつ、沢渡さやか(ia0078)がそう仲間たちに告げる。 「ああ、そうじゃないのか? こっちの似顔絵もある事だし、なんとかいけるとは思うが‥‥」 朧楼月天忌(ia0291)がそう告げつつ、依頼人に頼み込んで書いてもらった似顔絵を地図の横に広げる。 「ちずとにがおえある ろうざ、いそいであいにいく!!」 そう叫びつつ、地図と似顔絵を掴んで店の外に飛び出そうとするロウザ(ia1065)。 ──グイッ 「まあまあ、そんなに急ぐ必要はありませんよ。まだみなさんの準備も終っていませんから、それが出来次第出発することにしましょう」 竜哉(ia8037)がそうロウザに告げる。 「わかった。みんないそいでじゅんびする!!」 そう急かすロウザ。 「はいはい。ちょっとまってて下さいね。お土産に買って来たお酒も詰めないといけませんから」 そう告げつつ雷華愛弓(ia1901)も荷物を纏めはじめる。 「道中、アヤカシがでる可能性もあるそうですから。傷薬などの準備もしないといけませんね」 かえで(ia7493)はそう告げつつ、荷物の準備を終えていく。 持っていく筈の竹簡を幾つかの袋に纏め、いつでも出かけられるように準備をしている。 ──ギィィィィッ と入り口の扉が開き、瀧鷲漸(ia8176)が店内に入ってきた。 彼女はもう一人の先生という噂を聞き、旅泰街まで情報収集に出かけていたらしい。 「確かに、噂では『諸葛先生』のうちから離れた場所に隠居している人もいるみたいだねぇ‥‥」 「ほう。で、その人物のいでたちは?」 そう竜哉が問い掛けるが、瀧鷲は静かに腕を組んで考えこむ。 「それがねぇ‥‥噂は噂、本当に見た事のある人ってほとんどいないらしい。見た人は、まあ今はこのまちにいないらしいんだ。旅の商人らしいからなぁ‥‥」 やれやれという表情で告げる瀧鷲。 「まあ、博学の師ということならば、かなり頑固で偏屈な人物かも知れぬ。まあ、直にあってはくれないかも知れぬから、色々と策を練っておいた方がいいかもな‥‥」 天弓 ナダ(ia8261)がそう言いつつ立上がる。 「じゃゅんびできた、すぐいく!!」 ロウザが直にでも飛んでいきそうな感じである。 「街道はそのまま行くとして、森に入った所から、俺と汝で印を付けつつ進む事で異存はあるまい?」 ナダがかえでにそう問い掛ける。 「ええ。異存はありません。重い荷物は皆さんで配分し、お土産の準備も完了。急いで出かけないと、ロウザが痺れを切らしてしまいますわ」 「確かに。それじゃあ出発するか!!」 かえでの言葉に相槌を撃つと、朧楼月が威勢よく叫ぶ。 かくして、一行は件の『諸葛先生』の住まう森へと移動開始。 ●あやかしの森へようこそ ──街道から入った大森林地帯 ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァッ 真っ二つにされた巨大な猪型アヤカシ。 それを横目で睨みつけつつ、竜哉と朧楼月の二人は得物を構えて周囲を見渡す。 森に入ってから 、一行は奇妙な気配を感じていた。 沢渡の瘴索結界により、それがアヤカシの気配であると判った一行は、それらを避けるように、地図に記されていた目印を頼りに森の奥へ奥へと進んでいた。 その途中、すこし開けた場所で一行はついに猪型のアヤカシと遭遇してしまった。 走る速度は相手の方が上、逃げる事かなわぬと感じた一行は、そのままアヤカシ大事に突入した。 だか、こちらの気配を感じ取ってか、次々とアヤカシが姿を表わす。 ついには、一行の周囲をアヤカシが取り囲む形となってしまっている。 「あやかし、じゃまする、ならば、きる!!」 そう叫ぶと、ロウザが一気にアヤカシへと走り出し、手にした手斧を次々とアヤカシに叩き込む。 ──グウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ 咆哮を上げる猪型アヤカシ。 ──スッ‥‥ と、ロウザの後方では、雷華が華麗に神楽舞・攻を舞う。 そしてそれらの光景を見ていた一行も、すぐさま攻勢に切り変えた!! 「加勢します!!」 まずはかえでが走り出し、手に装備している鉄爪でアヤカシの胴部を切り裂く!! 絶叫を上げつつ、アヤカシは周囲のロウザとかえでに向かって牙を突きたてようとする。 だが、それらはギリギリの所で躱わす。 ──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ そしてアヤカシの首筋に朧楼月と竜哉の一撃が叩き込まれた!! 上段から全力で首を叩き斬る朧楼月と、下段から切り上げるように首を切断する竜哉。 二人の剣の交差点には、たしかにアヤカシの首が在った‥‥。 ──ズバァァァァァァァァァァァァァァァァッ 一撃で首を切断され、アヤカシは絶命。 「さて。と、遠くの敵は大体片付いたが。こっちはどうだ?」 ナダが弓を納めつつ呟く。 森に潜んでいたアヤカシを発見したナダは、手にした弓でそれを撃破。 そのまま後方で舞を躍っている雷華の護衛についていたらしい。 「大体終ったようですね」 周囲の安全を確認すると、一行は再び地図を見ながら進みはじめた。 ●曲者っていうか、もうダメですから!! ──山の麓・とある草庵 街を出てかなりの時間が経過している。 すでに日はどっぷりと沈み、夜鳴鳥の鳴き声が森に響く。 大森林を変えて山麓へと差し掛かったとき。 「あれだ!! あかりがみえる。あそこがしょかつせんせいのいえだ!!」 先ずはロウザが草庵らしい光を発見、一気に走り出した。 「ふぅ。まったくお気楽な‥‥」 溜め息を突きつつ、雷華が静かに呟いた。 そして先に走っていったロウザに追い付くように、一行も少し駆け足で草庵へと向かっていった。 「すいません。こちらに諸葛先生はいらっしゃりますか‥‥」 雷華が玄関でそう叫ぶ。 と、質の良い白い着物を身に纏った男性が出てくる。 「諸葛は私ですが、どんな御用でしょうか‥‥」 ニコリと笑みを浮かべつつ、そう告げる諸葛先生。 「実は、黄泉酒家の郭典法さんから竹簡を預かって参りました。これで来年の運勢を占ってほしいということです‥‥」 と告げるかえで。 「はあ、なるほど‥‥」 と告げると、諸葛先生は空をゆっくりと眺める。 「では、こちらへどうぞ‥‥」 と、一行は諸葛先生の草庵へと案内される。 そこの一番広い部屋に通されると、一行は車座でそこに座った。 「では、まずは竹簡をお預かりします‥‥」 と告げると、一行は分配してあった竹簡をまとめ、諸葛先生にさし出す。 「それではよろしくお願いします」 と、雷華が持ってきた酒を諸葛先生にさし出す。 「ほう‥‥成る程ねぇ‥‥」 と呟きつつ、諸葛先生は窓の外をじっと見る。 「月は雲の合間から覗き、窓辺には虫の鳴く声。風が部屋をほどよく冷やしてくれます‥‥酒を飲むにはちょうどいいかもしれませんが、酒だけでは今度は身体を弱らせてしまいます‥‥」 と告げる。 「わかった、さけのさかな、とってくる!!」 そう叫ぶと、ロウザが窓から外に飛び出した!! 「ロウザっ!! 単独は危険だっ!!」 慌てて朧楼月も走り出すと、そのままロウザの後を追いかけた。 その光景を、キョトンとして表情で見ている諸葛先生。 「ま、まあ‥‥しばらく待つとしましょうか‥‥」 と諸葛先生が告げると、一行もまた緊張感がほぐれたらしい。 「私は瀧鷲 漸と申す。この様な格好で申し訳ないとはおもうが、私にはこの格好でなければいけない理由がありどうしても譲れぬのであります。無礼ではあるが、槍をご教授させていただけないでしょうか」 と星座のまま諸葛先生に告げる瀧鷲。 「槍ですか‥‥では1度外へでるとしましょう」 と告げると、諸葛先生はそのまま外に出る。 「では構えてください‥‥」 その言葉に、瀧鷲はゆっくりと槍を構える。 と、諸葛先生は、ちかくに落ちていた柳の枝を手に取ると、それを構える。 「私はこれで‥‥ではかかってきなさい」 「いざ!!」 ──ヒュンッ!! 鋭い3連突きを諸葛先生に叩き込む。 が、それらを全て諸葛先生は、柳の枝で払い落とした。 「そ、そんな馬鹿な!!」 「余計な力が入っています。それでは、多少は兵法になれているものならば軌跡を見破られます‥‥どうしても槍は直線的な動きになってしまいがちです。その常識をまずは自分で打ち払って見てください‥‥ではもどるとしましょう」 と告げて、諸葛先生は草庵へと戻っていった。 ──そして 「では俺からもひとつ」 と告げると、ナダはゆっくりと話を始める。 「とある糸の色をなくした月の王が苦手な物を、先生に是非御覧になって頂きたくお持ちしました‥‥いかがでしょうか」 「ふむふむ‥‥」 と呟くと、諸葛先生は棚に置かれている巻き物を一つ差し出した。 「それはこれですね?」 そう告げられた巻き物を受け取ると、ナダはそれを開く。 そこにはなにも書かれてはいなかった。 「こ、これは?」 「まだなにも記されていません。何故なら、そこにはこれから、貴方たちが書き記すのです。貴方たち一人一人の生きざま、生きた証を。それは即ち、月の王の苦手とするものではないでしょうか?」 (答えは希望‥‥つまり、俺達のこれからの生きざまは希望にみちあふれているということかよ‥‥これは本物だな) と心の中で呟くナダ。 ──ガララッ と、勢いよく草庵に戻ってきたロウザと朧楼月。 兎や魚、はては野草といったものを集めてきたらしい。 「これで‥‥」 「おさけのむ、おいしいものたべる!! それでみんなまんぞく!!」 にこやかにそう告げるロウザ。 「では料理は私達が‥‥」 と告げて、沢渡とかえで、雷華、瀧鷲といった女性陣が厨(くりや)で料理を始める。 やがて、諸葛先生を交えた大宴会が行なわれた。 この時ばかりは無礼講と、諸葛先生も美奈の作った手料理に舌鼓をうち、美味しい酒をたらふく飲んだ。 そして一行は一人ずつ酔いつぶれ、ついには全員がその場で眠り込んでしまった。 ──そして早朝 「あ、あれれれ? 先生はどこに?」 最初に目を覚ました竜哉が周囲を見渡す。 だが、どこにも諸葛先生の姿は見えない。 「大変です!! 皆さん起きてください!!」 その言葉に一行は次々と目を醒ます。 だが、どこにも諸葛先生の姿はない。 「せんせい、どこいった?」 まだ眠そうな瞳でそう呟くロウザ。 「さあ‥‥こんな早朝から一体どこに‥‥」 とかえでが告げたとキ、ふとかえで(ia7493)は文台の上に置かれていた手紙を見つける。 ──────────────────── 昨晩はご馳走様でした。 訳あって、安佐から出かけなくてはなりません。 竹簡には全ての占いが記されています。 それを渡してください。 諸葛 ──────────────────── 「まあ、竹簡に占いが記されたのなら、これで万々歳だな!!」 と告げる朧楼月。 なにはともあれ、一行は荷物を纏めると早々に山から降り、街へと戻っていった。 ●後日談 ──黄泉酒家 無事に竹簡を受け取り、それを依頼人の元に届けた一行。 其の日は疲れを癒す為に酒家に一泊させて貰える事になった。 その夜。 大勢の客で賑わう黄泉酒家に、一人の来客が在った。 身なりはそれほどよくなく、質祖なきものをきた男性。 連れの弟子らしき書生さんと一緒に酒場に入ると、そのまま開拓者一行の近くで食事を始めた。 「諸葛先生‥‥今日は次のまちまででかけるのでしたよね?」 「ええ。桃華の寄合所からから呼出状が届いていますから。まあ、なにか困った事が在ったのでしょう‥‥」 という会話が聞こえてくる。 「諸葛先生!! 昨晩はお世話にな‥‥」 「ええっと‥‥」 「諸葛先生?」 「あ、あんた本物の諸葛先生か?」 一言挨拶をしようとした瀧鷲とかえで、竜哉、朧楼月がそろってそう叫ぶ。 「ええ。私が諸葛凰(しょかつろう)です。皆さんは私のことを諸葛先生と慕ってくれていますが‥‥」 その言葉に、一行は頭を捻る。 「昨晩ですが、私達は諸葛先生の草庵を訪れまして‥‥」 「ここの主人の依頼で、竹簡に占いを書いて欲しいと頼まれたのだが」 雷華とナダもそう呟く。 と、ポンと手を叩く諸葛凰先生。 「どこかで道を間違えたのでは? あの山の麓には私の草庵と、もう一人‥‥とんでもない人の草庵もありますから‥‥」 ──ズテェェェェェェェェェェェェェェェェェェン 勢いよくコケるロウザ。 「きのうのせんせい、にせものか!!」 その言葉に、諸葛凰先生はコクリと肯く。 「まあ、私も知って居る男でして。名前は諸葛売。呑む打つ買うの三拍子揃ったとんでもない占師ですよ‥‥まあ腕は確かですけれど、とにかく酒とばくちと女に目がなくて‥‥みなさんも何かされませんでしたか?」 そう告げられて、一行は色々と昨晩の事を思い出す。 「まあ、色々とあったようななかったような‥‥」 「まあいいでしょう。主人、その竹簡をみせていただけますか?」 と告げられ、偽物諸葛先生の占いが記された竹簡を調べる本物諸葛凰先生。 「大丈夫ですね。占いは正しく記されています‥‥では失礼しますね‥‥」 と告げられて、諸葛凰先生は食事を終えてその場を立ちさって行った。 残った開拓者達が絶叫を揚げたのはいうまでもない‥‥。 ──Fin |