【凰凱】地下闘技場・漆
マスター名:久条巧
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/12/28 03:45



■オープニング本文

──事件の冒頭
 ザワザワザワザワ
 大勢の人々で賑わう街。
 ここ泰国東方にある城塞都市『凰凱』も年末を向かえ、いよいよ人の往来が激しくなっていた。
新たな年を迎える為の準備に勤しむものも入れば、この時期こそ稼ぎ時と商いに精を出す人々も。
そんな中。

「・・・・うむ。ではそろそろ決勝リーグを始めるとしよう」
 楽しげに告げる一人の老人。
 彼こそが今回行なわれている地下闘技場最強拳士トーナメントの責任者、愁白葵である。
 先月で終った地上最強トーナメント予選。
 その結果に満足し、いよいよ決勝リーグを始めようというのであろう。
「その手筈は全て整っています。決勝に駒をすすめるのはこの者たちです‥‥」
 と最近になって雇われた秘書官が話し掛ける。
「ふむ。どれどれ‥‥と」
 手渡されたリストを眺め、満足している愁老師。
「さて、ここの8名枠が空いているのは?」
「はい。予選で惜しくも破れたものの中から、その実力があると判断されたものたちの為の参加枠。まあ敗者復活枠というものです」
「ほほう。それはそれは。実力は伴っていたものの運悪く破れさって逝ったものも中にはいるというが。いい趣向じゃ!!」
「では、準備を 始めたいとおもいます‥‥」


■参加者一覧
朝比奈 空(ia0086
21歳・女・魔
恵皇(ia0150
25歳・男・泰
朧楼月 天忌(ia0291
23歳・男・サ
秋霜夜(ia0979
14歳・女・泰
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
劫光(ia9510
22歳・男・陰
日御碕・神楽(ia9518
21歳・女・泰
ジークリンデ(ib0258
20歳・女・魔


■リプレイ本文

●御騒がせ御免
──秋霜夜自宅にて
「今月もよろしくおねがいします」
 そう告げているのは日御碕・神楽(ia9518)。
 秋夜から稽古を付けてやると告げられ、霜夜の家を訪ねていたのであるが‥‥。
──ドッゴォォォツ
 神楽の目の前で、『魂に』打撃を叩き込まれた霜夜が崩れ落ちる。
「い、今の技は?」
「ああ、霜夜の次の技だな。教えろとしつこいから実践で叩き込んだだけだ‥‥今の技は今までの技とはちょっと違ってな‥‥『覇王の足跡』と呼ばれている特殊な歩法が必要で‥‥」
 と告げられて、神楽はふと思い出した。
「あの‥‥それって‥‥」
 と告げると、神楽は静かに紅鳳院流体術の中の歩法の一つを見せる。
「ほう、覇王の足跡ではないが、近いものがあるな。力を溜めつつ、次の一撃に対応できる歩法か。それならこの馬鹿娘にも‥‥」
「誰が馬鹿娘だぁ!!」
 と突然舞い戻ってきた霜夜が秋夜に向かってストレートを叩き込む。
──ガシッ
 それを体で受止める秋夜。
「二人ともまずは基礎体術から初めて‥‥」
 いつものトレーニングを開始する秋夜。
「あの、秋夜師父、一つ訪ねたい事が」
「なんだ?」
「呂布という名前に聞き覚えは?」
 そう告げられて、しばしかんがえる秋夜。
「いや、きいたことのない名前だが‥‥」
 そうですか。と告げて、神楽は再び修行を続けた。


●地上最強は誰だ
──凰凱・地下闘技場
 それでは、いよいよ始まった決勝大会。
 その戦いの記録を見ていきましょう

・白虎第七試合
 朝比奈 空 vs 風のシュウエン
 朝比奈 空(ia0086)の対戦相手は覆面の拳闘士シュウエン。
「それではお手柔らかに。よろしくお願いします」
 静かに挨拶を告げる朝比奈。
「コンゲツハワタシノショウリネ!!」
 とカタコトで返答すると、静かに憶えたての抱拳礼で挨拶を返すシュウエン。

 そして試合では。
「はあはあはあはあ‥‥」
 全身傷だらけの朝比奈に対して、余裕の表情を見せるシュウエン。
「アナタタイジュツマッタクダメネ、コノママワタシノカテトナリナサーイ」
 と相手を見下しつつ攻撃を仕掛けてくるシュウエン。
「そ、そんなことを言っていられるのは今のうちだけですわ」
 と静かに呟くと、朝比奈はそのタイミングをじっと待っていた。
 常に月歩で致命傷にならないように攻撃を躱わしつつ、逆転の一手のタイミングをじっと待っていた。
「今です!!」
 油断したシュウエンの顎目掛けて、朝比奈は必殺の白梅香を叩き込んだ!!

──フェブシッ!!
 それはシュウエンの顎にクリーンヒット。
 そのまま静かに床に崩れ落ちるシュウエンであった。
「勝者、朝比奈っっっっっっ」
 拍手喝采の中、朝比奈は静かに擂台を後にした‥‥。


・玄武第伍試合
 恵皇 vs 火のクウカイ
 恵皇(ia0150)の対戦相手は火のクウカイと呼ばれている女性武闘家。
「ずいぶんな久し振りだなぁ‥‥まあ頼むぜ」
「エエ、コチラコソヨロシクオネガイシマス」
 と挨拶を行う二人。
「それでは始めっ!!」
 その掛け声と同時に恵皇はクウカイに向かって構えを取る。
 と、その構えに素早く反応して、クウカイも同じ構えで恵皇の出方を待つ。
「‥‥ほう」
 静かに呟く恵皇。
 ──相手のクウカイもまた、じっと恵皇の動きを待っているかのようである。
「後の先か‥‥」
「サア? ドウデショウ?」
 ニイッと笑いつつ告げるクウカイ。
「ならいかせて貰うぜ」
 と呟くと、恵皇はいきなら攻撃を開始。
 素早く月を叩き込むが、同時に同じ起動でクウカイの攻撃も飛んできた。
「ちっ」
──ガシィィィッ 
 すかさずその攻撃を受け流すが、恵皇の攻撃も又クウカイに受け流されてしまう。
 そしてしばらくはそういった同じ行動が続いていた。
「ちっ。やりにくいったらありゃしない。どうしてこうも同じ技がくるかねぇ‥‥まるで‥‥」
(鏡写しか‥‥)
 とふと恵皇が気付く。
「ワタシノコウドウハスベテアナタノカガミウツシ。オナジニカエシマスワ」
 と告げて再び恵皇と同じ構えを取るクウカイ。
「フウン。なら‥‥」
 と再び連撃ラッシュを開始する恵皇。
 それに合わせてクウカイも開始するが、その中に恵皇は一発だけ『極神点穴』混ぜてみた。
──ドシュツ
 とその一撃のみクウカイは受てしまう。
「やっぱりか、すべては真似でしかない。今の技のように長い修練で身につけたものは真似できないっていうことか‥‥」
「クッ‥‥」
 ならばと、恵皇は一撃必殺の構えを取る。
「これでおしまいだ」
 と瞬脚で素早く間合いを詰めると、再び『極神点穴』を叩き込んだ。
 その一撃で勝負は決した。
「勝者、恵皇!!」
 その声をききつつ、恵皇はゆっくりと擂台から降りていった。


・青龍第ニ試合
 朧楼月 天忌 vs 紅美鈴
 朧楼月 天忌(ia0291)の相手は春詠拳の使い手である紅美鈴。
「さて、よろしくお願いします」
「ああ‥‥全く。絶対防御が相手かよ」
 と吐き捨てるように告げると、朧楼月は静かに身構える。
「ええ。私の絶対防御、打ち破れますか?」
 と静かに構える美鈴。
「それでは始めッ」
 と試合開始の合図が告げられる。
「うぉぉぉぉっ」
 激しく攻撃を仕掛けていく朧楼月。
 だが、その捨て辺手は美鈴によって無力化され受止められ、そして受け流されてしまう。
「畜生、届かねぇ‥‥」
「対した攻撃力ですね。けれど、あたらなければどうということもありませんわ」
 と軽くカウンタを叩き込む美鈴。
 それをもろに受けて、そのまま擂台の上で崩れそうになる朧楼月。
──ガシッ
 だが、崩れることなくそのまま立ち止まると、ゆっくりと体勢を整え直す。
「まだだ‥‥」
「あら。今ので終ったと思ったけれど、また戦えるのですか」
 とにこやかに告げる美鈴。
「ちっ。まったくありがたくて涙が出そうになるぜ。今までの戦いで、どうやら俺は『撃たれ強く』なったらしい‥‥」
 朧楼月の求めていた不死身ではないがもそれに近い身体に変化しはじめている。
 だが、それと同時に、朧楼月の中にも変化は現われてきていた。
「‥‥悪いな。勝たせて貰う」
 と告げると、朧楼月の攻撃が再開。
「ええ。いつまでも相手をしてあげるわ」
 と再び朧楼月の攻撃を受け流していく美鈴だが。
──ビーシッ
 といきなり頬を掠めていく。
(まさか‥‥)
 さらに朧楼月の攻撃は速度を増す。
 小手先の技瀬は一切なく、ただ純粋に『勝つ為』に攻撃を続けていった。
──ガシィィィィィッ
 そしてついに美鈴の腹部にクリーンヒット。
「‥‥多謝だ‥‥」
 静かに告げる朧楼月。
「ええ。これで貴方は完成に近くなったみたいね‥‥」
 と告げると、美鈴は自らキブアップを申請した。


・玄武第二試合
 秋霜夜 vs アンリエット
 秋霜夜(ia0979)の相手はジルベリアの武道家・アンリエット。
「よろしくおねがいします」
「こちらこそ」
 と、さわやかな挨拶を交わす二人。
「それでは始めッ!!」
 そう審判が叫んだ直後。
 霜夜の視界からアンリエットが消えた。
 これは前回、朧楼月相手に行った幻惑殺法。
「未、見えない‥‥けど」
 と静かに告げると、霜夜は意識を集中する。
 相手の攻撃のタイミング、その刹那の気の動きを的確に感じ取る。
「ここです!!」
──ガシィィツ
 突然何もない空間に向かってガードする霜夜。
 そこにはアンリエットの正拳が放たれていた。
「何故‥‥」
「気の動きが判るのですよっ‥‥相手の気が‥‥」
 と告げると、そのまま必殺の『破鎧撃』を力一杯叩き込む霜夜。
 その一撃で勝利が確定した。
 擂台から吹っ飛び意識を失うアンリエット。
「はわわわわわ、そ、そんなに吹っ飛ばなくても」
 と慌ててアンリの元に歩いていこうとした霜夜は、ふと自分の足元を見て気が付いた。
 擂台の石畳が自分の脚によって踏み抜かれている。
 が、その脚の位置は、今までの自分の『破鎧撃』の歩法ではあり得ない位置にあった。
「これ‥‥が『覇王の足跡』‥‥」


・白虎第肆試合
 ルオウ vs わんドシ君
 ルオウ(ia2445)の対戦相手はわんドシ君。
 決勝ということで、前回から見せていた覆面に武胴着といういでたちである。
「では、よろしくおねがいするワン!!」
「あーーー、はいはい。ではいっちょやってみるか」
 と呟くルオウ。

「それでは始めっ!!」
 その掛け声と同時に、激しい打撃戦が始まった。
「ちっ。やっぱり集合持ちだけあっていい動きしているじゃねーか」
「この動きについてこれるとは対したものだワン」
 と二人で高速の乱打戦を開始していた。
 何処かでちっょとでもタイミングを間違えると、そのまま相手の乱打を総べて受けてしまう。
 まさに命がけの真剣な組み手となっていたのである。
──ズシィィッ
 そして致命打が叩き込まれたのはわんドシ君であった。
 ほんの誤差。
 僅か一手の遅れがわんドシ君の敗北を決定した。
「やられたワン」
「ふう。まあこんなものだろうさ。‥‥天忌が残っている以上、こつちも負けていられなくてね」
 と告げると、ルオウもまた勝ち名乗りを受けつつ擂台を後にした。


・朱雀第肆試合
 劫光 vs 輝魂闘士のエレ
 劫光(ia9510)の対戦相手は輝魂闘士のエレ。
「さて、よろしく頼む」
「ええ。こちらこそよろしくお願いします」
 エレに挨拶した後、劫光は静かに開始線に戻る。
「さて、どこまで通用するのか‥‥」
 と今回の修行の全てを思い出しつつ、劫光はエレをじっと見る。
 そこには油断もなにもない、ただ戦うだけの一匹の『獣』が身構えていた。

──ゾクッ
 と、突然劫光の全身に寒気が走った。
(すでに気圧されているのか‥‥いや、そんなバカナ‥‥)
 と素早く心を落ち着かせる劫光。

「それでは始めッ!!」
 という開始の挨拶と同時に、劫光は詠唱を開始した。
「右手に燃えし火輪‥‥左手に凍れし氷柱‥‥対極の力一つとなりて彼のものを打ち砕け‥‥」
 前回の大会、秋夜が行い再び目の当たりにした師の技‥‥
 それを思い起こしながら美鈴に教わった様に指の先へと力をコントロールし、収束させる。
「陰陽体術ねぇ。まあ、あんたの技は今まで見せて貰っていたからねぇ‥‥」
 と告げると同時に、エレもまた静かに何かを呟いた。

「陰陽体術を駆使するものにとって大切なもの。常に冷静であれ‥‥」
 戦いの場の高揚に身を置きながら、心を水面の如く落ち着ける劫光。
 だが、エレは執拗に攻撃を開始しはじめた。
──ガシィィッ
 激しく、そして重い一撃。
 それをどうにか受止めると、劫光はそのまま勢いに身を任せて吹っ飛ぶ。
「まだだ‥‥心が‥‥」
 静かに着地する劫光。
 だが、そこにエレのラッシュが叩き込まれていく。
 それらの攻撃にたいして劫光はただじっと見を固くし受止めているのが限界であった。
「加減はなし。いくぜ」
 とエレが最後の一撃を構えた時。
『師よ…どうだろう?』
 心の中に師を思い、尋ねる劫光。
『行け‥‥』
 そう羅刹の声が脳裏に届く。
「陰陽体術、北斗星君『螺旋龍』!くぅぅらぇえええええ!!」
 そう叫びつつ、指先から実体化した龍を解き放つ。
 それはカウンターぎみにエレの胸部に突きたてられると、そのまま背中に向かって貫通していった!!
「ぐはあっ!!」
 大量の血を吐きつつその場に崩れるエレ。
「勝者、劫光っ!!」
 勝ち名乗りを受ける劫光。
 だが、その右腕にはすでに治療符が張られていた。
「以前よりは制御できている‥‥が油断すると腕一本持っていかれるか‥‥難しいぜ」


・朱雀第六試合
 日御碕・神楽 vs 仁美・ブリュンスタッド
 神楽の対戦相手は御存知仁美・ブリュンスタッド。
「お願いします」
 丁寧にお辞儀しつつ挑む。
「こちらこそ、よろしくおねがいましす」
 と、カタコトから解放されてものの、やはりどこか言葉が違う仁美・ブリュンスタッド。
「それでは始めッ!!」
 という合図と同時に、まず最初に仕掛けたのは神楽。
 緩急をつけた風の様な体裁きを軸に相手を揺さぶっていく。
 それに対して仁美・ブリュンスタッドは次々と攻撃をしかけていくが、それらは全て螺旋で逸らされてしまう。
「決勝に進むだけあって、いい動きですわ」
「貴方もです。けれど、これでおしまいです」
 と告げると、神楽は『瞬脚』を発動。
 そこから剛体術による震脚での踏み込みを発動すると、震脚から伝わってくる大地の力を『破軍』にて指先に集中する。
 そしてそこから最大急所に最短距離から『極神点穴』による螺旋の一撃を畳み込んだ。
「ぐはっ‥‥」
 それは深々と胸部に突き刺さる。
 そしてよろよろと後ろにさがった仁美・ブリュンスタッドは、静かにギブアップを宣言する。
「これ以上はだめね‥‥けれど、貴方もあまりその技を多用しないほうがいいわ‥‥」
 と告げられる。
 その言葉が何を伝えたかったのかわからないまま、神楽は擂台を後にする。
──フラツ
 と、その最後の段を下りたとキ、ふと脚から力が抜けた感じがした。
「え?」
 と思ったものの、とくに以上は感じられない‥‥。
「なんだろう、いまの感覚‥‥」


・玄武第六試合
 ジークリンデ vs 呂布
 ジークリンデ(ib0258)の対戦相手は、女性拳術家の呂布。
「ええっと‥‥よろしくですぅ」
「ジークリンデと申します。よろしくお願いしますわ」
 二人とも挨拶を終えると静かに構えを取る。
 そして両者ゆっくりと開始線に立つと、そのままじっと開始の合図を待つ。
「それでは始めっ!!」
 
 挨拶が終ったと同時に、ジークリンデと呂布の二人は一進一退の攻防を繰り広げている。
 先日、神楽と戦った呂布とはまた違う、柔らかい動きでの攻防である。
 一方のジークリンデもまた、今までとは動きが違っていた。
 相手の動きがなんとなく見える。
 いや、正確には精霊達が、ジークリンデに力を貸してくれているかのように感じられていた。
 アクセラレートで加速し、攻撃・回避を高めつつ速さで常にイニシアチブをとろうとするジークリンデにたいして、呂布はそれらの攻撃全てを一つ一つ丁寧に受け答えていく。
 だが、素手の呂布と精霊力を乗せているジークリンデでは一撃の重さが少し違う。
 そしてここぞというときにアクセラレートを精霊力で強化して反射神経を極限まで高め、止めの一撃を叩き込む。
「必殺‥‥精霊砲ですわっ!!」
 と精霊力を乗せた掌底を呂布に向かって放つ。
 その一撃を受止めたものの、呂布はその場に崩れオチていった‥‥。
「あ‥‥熱いですわ‥‥」
 と真っ赤になっている素手を振り冷ましつつ、ジークリンデは擂台を後にした。

──Fin

●正門横・地上最強拳士決勝一覧
 一部抜粋 
・朝比奈 空   :翡翠1黒炭0
・恵皇      :翡翠1黒炭0
・朧楼月 天忌  :翡翠1黒炭0
・秋霜夜     :翡翠1黒炭0
・ルオウ     :翡翠1黒炭0
・劫光      :翡翠1黒炭0
・日御碕・神楽  :翡翠1黒炭0
・ジークリンデ  :翡翠1黒炭0