【凰凱】地下闘技場・陸
マスター名:久条巧
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/11/09 19:15



■オープニング本文

──事件の冒頭
 ザワザワザワザワ
 大勢の人々で賑わう街。
 ここ泰国東方にある城塞都市『凰凱』では、ここ最近になって他国からやってくる観光客が増えている。
 アル・カマルとの貿易が始まって数カ月。
 この凰凱にも大勢の旅人や商人が訪れていた。

「・・・・うむ。ではそろそろ第七回の試合を始めるとしよう」
 楽しげに告げる一人の老人。
 彼こそが今回行なわれている地下闘技場最強拳士トーナメントの責任者、愁白葵である。
 先日行なわれた第一試合の出来栄えに満足し、次の日程を組み込んでいたのである。
「その手筈は全て整っています。そろそろ上位選手が絞られてきました。ご老巧には良い報告が・・・・」
 と最近になって雇われた秘書官が話し掛ける。
「ふむ。なんじゃ?」
「このままですと、来月頃には決勝トーナメントが始まるかと思われますが‥‥」
「おお、そうか。ではいよいよじゃな」
「はい。新規参加者はそろそろいなくなっていますし、残ったものもかなりの手練れのみです」
「よろしい。では今回の大会で予選は終了とし、来月には決勝トーナメントを開始しよう」


■参加者一覧
雪ノ下・悪食丸(ia0074
16歳・男・サ
朝比奈 空(ia0086
21歳・女・魔
朧楼月 天忌(ia0291
23歳・男・サ
秋霜夜(ia0979
14歳・女・泰
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
劫光(ia9510
22歳・男・陰
日御碕・神楽(ia9518
21歳・女・泰
ジークリンデ(ib0258
20歳・女・魔


■リプレイ本文

●静かなる意志
──泰国示源流道場
「今月もよろしくおねがいします」
 板張りの道場で静かにそう頭を下げているのは雪ノ下・悪食丸(ia0074)。
 ここ泰国にある示源流道場を訪れた彼は、自身の技である『示源流拳法』にさらに磨きをかけるべく、修行の為に訪れていたのである。
 しかも今月は、道場までエレを呼び出し試合をしているという情況である。
「‥‥まあ構わないけれどねぇ‥‥」
 と呟きつつ、柔軟体操を終えるエレ。
「では、よろしくお願いします‥‥」
 と丁寧に一礼すると、そのまま試合を始める二人。
「エレさん、俺とデートしていただけませんか?」
 試合開始直後、悪食丸がそうエレに向かって叫ぶ。
「‥‥試合の結果次第だな‥‥」
 とニィッと笑いつつ告げるエレ。
 ここでエレが動揺し、そこから新たなる境地を身につける可能性を考えていた悪食丸だが‥‥
「‥‥ならば本気でイカせて戴きます」
 と静かに身構える。
「いいねぇ、その気構え。好きだよ、そういうの‥‥」
 と告げるや否や、エレが一気に間合いを縮めてきた‥‥。

──その頃の山の中
 秋夜の素をおとずれて修行を行なっていたルオウ(ia2445)と、朧楼月 天忌(ia0291)の二人は、修行中にこれまた偶然大熊猫と遭遇。
「‥‥ふむ。よし、奴等を怪我させることなく、追い払って見ろ」
 と告げる秋夜。
「面白い‥‥」
 と告げると、朧楼月は静かに大熊猫に向かってガンを飛ばす。
 その瞬間、数頭の大熊猫が怯み、その場から逃げ出した。
「殺気か‥‥いや『滅殺の気功』か」
 と静かに呟く秋夜。
「ほう‥‥ならば‥‥」
 とルオウもまた静かに身構える。
「我は刃なり‥‥我が拳は殺戮の剣、我が命は聖なる炎‥‥破羅伝模怒っ!!」
 戦闘言語の発動。
 と、やはりそのルオウの気合に押され、大熊猫達は怯んで逃走した‥‥。
「よし、二人とも稽古をつけてやるか‥‥殺す気で掛かってこい。俺は今から、お前たち二人を殺す‥‥」
 静かに立ち上がり、そう告げる秋夜。
「上等だ、今日こ‥‥そ‥‥」
「いいだろう。この俺の全て‥‥を‥‥もっ‥‥て‥‥」
 立ち上がり身構えたのはいいが、秋夜の前で魂までも凍りつけられたように動けなくなった二人。
(この俺が‥‥恐怖を‥‥感じている‥‥だと)
(戦闘言語では‥‥心までは‥‥護りきれないのか‥‥)
 そのまま大地に崩れる二人。
 がっくりと崩れ、肩で息をする。
「‥‥どうだ? かかってこないのか?」
「いや、いかせて‥‥貰うが‥‥」
「我は‥‥炎‥‥漆黒の炎‥‥」
 そのまま意識を失った二人。
 そして其の日から、秋夜とのガチ特訓が始まった‥‥。


●春詠拳道場にて候
 劫光(ia9510)は静かに道場主である紅美鈴をじっと観察していた。
「『春詠拳』‥‥見せてもらった。あれが完全制御の陰陽体術、か」
 そう告げている劫光に、美鈴が声を掛ける。
「春詠拳・護りの型2から。一通りの型は判って居るわよね?」
 そう告げられて、劫光は静かに立上がると、他の門下生とともに型を習いはじめた。
「みい輪、一つ教えて欲しい。『異界の復讐の王』に呼びかけを行った術で慌てて止めに来たのはなぜだ?」
「あれは滅びの技です。人が制御できるものではありません‥‥」
 それ以上は告げない。
 そして劫光はそのまま、大会開始まで春詠拳と彼女の技を学んでいった‥‥。

 そしてその劫光が学んでいるさ中、日御碕・神楽(ia9518)と秋霜夜(ia0979)の二人も、美鈴の元で『護りの技』を学んでいる所であった。
──バジィッッッッッッ
「いたたたたぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 美鈴の腕で受け流されて、そのまま壁に向かって飛んでいく霜夜。
「腕と腕が合わさったとき、バシッと何かが弾けたっ」
「私の陰陽体術と、貴方の『練気』が弾けて頂けです。そこまで綺麗に『練気』を行なえるのは凄いですね」
 エヘヘと笑いつつ立上がる霜夜。
「では、今度は私が」
 と神楽も立ち上がり身構えた。
 そのまま『螺旋』を駆使しつつ、美鈴の攻撃を受け流す。
 その流れの中で、神楽は一つの結論に達した。
「春詠拳というのは、『螺旋』が基本なのですね?」
「ええ。その通りです。貴方の求めている技、お見せしましょう」
 と静かに構えを取る美鈴。
 そのまま神楽も渾身の一撃を叩き込んでいくが、美鈴はその攻撃に軽く腕を合わせ、そのまま円の動きで受け流した。
 そのまま衝撃と反動に負けてしまった神楽は道場の壁を突き破って外に飛び出した。
「‥‥いたたた‥‥でも、理解しました‥‥」
「そうですか。お役に立てて嬉しいですわ」
 と美鈴もまた告げると、劫光も交えての乱取りを始めた‥‥。
「いや、ちょっと待て、この俺の技は‥‥」
「いいからいいから。掛かって来てください」
「よろしくおねがいします」
 ということで3人での乱取りと試合が繰り広げられていたそうな。


●厳粛なる
──凰凱・地下闘技場
 それでは、今回の戦いの記録を見ていきましょう


・青龍第壱試合
 雪ノ下悪食丸 vs 風のシュウエン
「青龍!! 示現流拳法、雪ノ下・悪食丸。対戦相手は所属なし、凰凱拳闘士のシュウエン」
 雪ノ下・悪食丸(ia0074)の対戦相手は覆面の拳闘士シュウエン。
「それではお手柔らかに。よろしくお願いします」
 抱拳礼の構えで叫ぶ悪食丸。
「アー、コレアイサツネ、ワカルワカル!!」
 とカタコトで返答すると、悪食丸を真似て挨拶を返すシュウエン。

 そして試合では。
 悪食丸とシュウエンの戦いは一進一退の攻防となった。
 というのも、シュウエンは悪食丸の動きをそっくり真似て、そのままの力で返してていたのである。
「ならば‥‥」
 と、突然悪食丸の攻撃が変わる。
 今までに戦った相手の動きをあちこちに取り入れ、シュウエンに真似られない戦術を生み出していったのである。
 そして止めはやはりこの技『刹那・雲耀』。
「ウォォォ、アニジャ、カタキヲタノムゥゥゥゥゥゥ」
 と絶叫するシュウエン。
 まあ、戦いはかなりきわどかったのはいうまでもない。


・青龍第弐試合
 朝比奈 空 vs怨
 朝比奈 空(ia0086)朧楼月の対戦相手はマスクを被った武道家の怨。
「では、よろしくお願いします」
「アイテニトッテフソクハナイ、ヨロシクタノムゼ」
 と挨拶を行う二人。
「それでは始めっ!!」
 その掛け声と同時に怨は朝比奈に向かって間合いを詰める。
「‥‥おかしいですわ」
 と、そのまま怨の攻撃を『月歩』で躱わしていく朝比奈。
 必死に攻撃を仕掛けてくる怨だが、朝比奈にはそれが『手加減』されているように感じられた。
「本気なのですか?」
「アア、ホンキダトモサ」
 と叫ぶが、どうも隙だらけ。
「では‥‥」
 スッと手を怨に向かってかざす朝比奈。
 その直後、怨が睡魔に誘われてその場に崩れていく。
「勝者、朝比奈っっっっっっっっ」
 そのまま勝利を宣言される朝比奈。
「あの‥‥怨さんって、ひょっとしてかなり弱いのでしょうか?」
 いえいえ、これでもほぼ全勝に近かった選手ですが。


・朱雀第参試合
 朧楼月 天忌 vsアンリエット
 朧楼月の相手はジルベリアの武道家・アンリエット。
「よろしくおねがいします」
「ああ、掛かってこい」
 と、さわやかな挨拶を交わす二人。
 まあ、どこがさわやかなのかは突っ込まないで欲しい。
「それでは始めッ!!」
 そう審判が叫んだ直後。
 朧楼月の視界からアンリエットが消えた。
「まあ、ここまではこの前の戦いと一緒だな‥‥と」
──ドッゴォッ
 突然何もない空間を力一杯殴りつける朧楼月。
 その刹那、朧楼月に殴りつけられ、大地にめり込んだアンリエットの姿がはっきりと見えた。
「高起動と一撃必殺、加えて『カマイタチ』による斬撃付きか。それだけ殺気を放っていたら、俺には無意味だ‥‥」
 と告げて擂台を後にする朧楼月。
 まさに一撃必殺で勝利を手にしていた。


・白虎第参試合
 秋霜夜 vs わんドシ君
 秋霜夜の対戦相手はわんドシ君。
 しかも、いままでの着ぐるみモードではなく、覆面に武胴着といういでたちである。
 ちなみに武胴着のわんドシ君、実はそのボディラインから女性であるということが判明。
「では、よろしくおねがいするワン!!」
「あーーー、声は本物のわんドシ君だぁぁぁぁ」
 なかば泣き出しそうに叫ぶ霜夜。

「それでは始めっ!!」
 その掛け声と同時に、激しい打撃戦が始まった。
「は、早い‥‥速すぎる‥‥」
「私にとって、あの着ぐるみは枷だワン‥‥」
「‥‥つまり、こここが貴方の本気ということですね?」
 と撹乱すると、霜夜はいきなり『破鎧撃』を叩き込む。
──ガシガシガシッ
 だが、それらは全て綺麗に受け流された。
「それは春詠拳!!」
「ええっと‥‥ちがいます」
 といきなり否定し、そのまま霜夜に向かって『破鎧撃』を叩き込んだ。
──ドゴォッ
 そのまま膝から崩れていく霜夜。
「霜夜さん。その技は、私が貴方の父上とともに戦っていた時代の通過点にすぎません。確かに貴方のそれは完成していますが、ワタシ達にとっては『普通の技』なのですよ‥‥」
 その言葉がきこえた直後、霜夜は静かに意識を失い始めていた。
(‥‥全力だったのに‥‥)
 なみだを流しつつ、霜夜は意識を失った。


・青龍第壱試合
 ルオウ vs 輝魂闘士のエレ
 ルオウの対戦相手は輝魂闘士のエレ。
「よおしっ。全力でいかせて貰う。よろしく頼むぜっ!!」
「ええ。こちらこそよろしくお願いします」
 エレに挨拶した後、ルオウは静かに開始線に戻る。
──ゾクッ
 と、突然ルオウの全身に寒気が走った。
(寒気‥‥い、いや、殺気‥‥目の前の女からか‥‥)
 そのまま意識を集中し、阿修羅を構えて戦闘言語を発動するルオウ。
(自分の事だけじゃダメだ。自分にクセがある様に相手にもクセがあるはず‥‥)
 さらに自己暗示を掛けると、ルオウもまた殺気を発する。
「それでは始めッ!!」
 試合が開始された。
 ルオウは相手の動きを全てみて、それを『鏡返し』する作戦に出た。
 練習ではかなりの成果をえたのであるが。
「覇ぁぁぁっ」
──ドッゴォォォォッ
 エレの刹那の蹴り。
 その一撃でルオウは意識が吹っ飛んだ。
(ちょ‥‥化け物かよ)
 それでも意識を保ちつつ、擂台に戻るルオウだが。
「ああ‥‥判った‥‥勝てない。審判、ギブアップを宣言する」
 と手をあげて叫ぶルオウ。
「いい判断です」
「‥‥決勝トーナメントでかならずあんたを叩き潰す 」
 ニィッと笑いつつそう叫ぶルオウであった。


・朱雀第壱試合
 劫光 vs 秋夜
 劫光の対戦相手は秋夜。
「・・・・さて。羅刹の弟子。成果を見せて戴くか」
 と告げる秋夜。
「‥‥ああ。あんた相手には、全て出しきらないと勝てなさそうだからな」
 そんな事を叫びつつも試合は開始。
 すかさず劫光は北斗星君で『火輪』使用。
『瘴気回収』を使い北斗星君で腕に纏った炎を倍化しそれを集中し制御。
「ほう。それではいくとするか。羅刹の値が性と意志だったからな」
 と告げて懐から二枚の呪符帯を取出すと、静かに印を組み韻を紡ぐ。
「右手に燃えし火輪・・・・左手に凍れし氷柱・・・・対極の力一つとなりて彼のものを打ち砕け・・・・」
 その刹那、秋夜の両手にも二つの籠手が生み出される。
「‥‥それは師父の技だぁぁぁぁぁぁ」
 と叫びつつ秋夜に向かって飛びかかる劫光。
──ガシィィィィィッ
 と劫光の荒ぶる攻撃を軽く受け流す秋夜。
「その程度‥‥か」
「貴様が‥‥」
 と叫びかけた刹那。
 劫光はハッと我に返る。
 全身に展開していた『北斗星君』が不安定になりはじめた。
 そして秋夜を振り返った解き、秋夜はニィッと笑った。
「そうでしたね‥‥師父」
 と突然冷静になる劫光。
 と、右手に展開していた『火輪』を手刀の先端に一点集中。
 そしてゆっくりと身構えた。
「ああ、正解だ。陰陽体術を駆使するものにとって大切なもの。常に冷静であれ‥‥だ」
 と告げると、秋夜は見ずから擂台を降りる。
「審判、ギブアップだ」
「なんだと、まだ結果は、試合は終っていない」
「終ったよ。俺の役目と、羅刹との約束はな」
 と告げて会場を後にした。


・白虎第壱拾試合
 日御碕・神楽 vs 呂布
 日御碕・神楽(ia9518)の対戦相手は、女性拳術家の呂布。
「ええつと‥‥よろしくですぅ」
「日御碕・神楽です。お願いします!」
 二人とも挨拶を終えると静かに構えを取る。
 そして両者ゆっくりと開始線に立つと、そのままじっと開始の合図を待つ。
「それでは始めっ!!」
 
──ダン!!
 その合図と同時に、神楽は後方に吹っ飛ばされた。
 いや、正確には両者ともにお互いの技で擂台の外に吹っ飛ばされたのである。
「同門の技!!!!」
 立ち上がりつつ叫ぶ神楽。
「ええ。本家のお嬢さま‥‥」
「本家? 一体どういうこと?」
 混乱しつつ立ち上がり構える神楽。
「貴方の家『日御碕』に伝わる『紅鳳院流』。だが、それには『闇』の歴史があったとしたら?」
 と告げると、すぐさま戦闘を続ける神楽と呂布。
「『闇』ですって? それは一体?」
「知らなければ結構。今日は挨拶までに‥‥では失礼」
 と告げると、呂布と名乗った女性はそのまま擂台の外に飛び出し、スッときえていった。


・青龍第六試合
 ジークリンデ vs 桃(トウ)
 ジークリンデ(ib0258)の対戦相手は、凰凱新蔭流の武道家・桃。
「よろしくおねがいします」
「ええ、こちらこそよろしくお願いします」
 と二人そろって丁寧に挨拶をかわす。
「それでは始めっ!!」
 と開始の掛け声が上がった。
 その戦いはまさに千差万別。
 精霊拳を駆使するジークリンデと、新蔭流を駆使する桃。
 次々と繰り出される桃の攻撃を、ジークリンデはアクセラレートにより加速し躱わしていく。
 そして隙あらばアクセラレートによって加速した連撃が桃を襲う。
 それを華麗な体術によって躱わしていく桃。
 だが、その桃の体術に陰りが見えはじめた頃、ジークリンデはその隙を逃さず止めの一撃を放った!!
「雷撃拳っ!!」
 精霊力を限界まで高めた渾身の加速、そしてその一撃。
 それにより桃は意識を失い、その場に崩れていった。

──Fin

●正門横・決勝進出拳士一覧
 一部抜粋 
・ルオウ        :翡翠5黒炭2 
・日御碕・神楽     :翡翠5黒炭2 
・朝比奈 空      :翡翠5黒炭0 
・雪ノ下・悪食丸    :翡翠4黒炭3 
・劫光         :翡翠4黒炭1 

〜ここから決勝敗者復活トーナメント〜
・恵皇         :翡翠3黒炭2 
・秋霜夜        :翡翠3黒炭4 
・朧楼月 天忌     :翡翠2黒炭1 
・ジークリンデ     :翡翠2黒炭0 
・リリアーナ・ピサレット:翡翠1黒炭1 
・ロウザ        :翡翠1黒炭1