【凰凱】地下闘技場・伍
マスター名:久条巧
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 不明
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/09/16 19:03



■オープニング本文

──事件の冒頭
 ザワザワザワザワ
 大勢の人々で賑わう街。
 ここ泰国東方にある城塞都市『凰凱』では、ここ最近になって他国からやってくる観光客が増えている。
 アル・カマルとの貿易が始まって数カ月。
 この凰凱にも大勢の旅人や商人が訪れていた。

「・・・・うむ。ではそろそろ第六回の試合を始めるとしよう」
 楽しげに告げる一人の老人。
 彼こそが今回行なわれている地下闘技場最強拳士トーナメントの責任者、愁白葵である。
 先日行なわれた第一試合の出来栄えに満足し、次の日程を組み込んでいたのである。
「その手筈は全て整っています。あとは開催を告知するだけ。それとご老巧には良い報告が・・・・」
 と最近になって雇われた秘書官が話し掛ける。
「ふむ。なんじゃ?」
「ジルベリア辺境より、『戦闘言語使い』のエレという女性が参加許可を求めています」
「辺境のエレ‥‥ほほう。輝魂闘士(ソル・ブレイカー)の称号を持つあの女性か。いいでしょう。特別枠にて松と伝えてくれ」
と告げた。



■参加者一覧
雪ノ下・悪食丸(ia0074
16歳・男・サ
朧楼月 天忌(ia0291
23歳・男・サ
秋霜夜(ia0979
14歳・女・泰
ロウザ(ia1065
16歳・女・サ
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
劫光(ia9510
22歳・男・陰
日御碕・神楽(ia9518
21歳・女・泰
ジークリンデ(ib0258
20歳・女・魔


■リプレイ本文

●静かなる意志
──泰国示源流道場
「今月もよろしくおねがいします」
 板張りの道場で静かにそう頭を下げているのは雪ノ下・悪食丸(ia0074)。
 ここ泰国にある示源流道場を訪れた彼は、自身の技である『示源流拳法』にさらに磨きをかけるべく、修行の為に訪れていたのである。
「はいはい。今月もよろしくお願いしますね。悪食丸さんがいらっしゃると、門下生にも活気がつきますので」
 と道場の女性師範な告げられて、さっそく悪食丸は修練を開始。
 隼襲、鬼腕、雲耀の三つの技を組み合わせる事による新しい投げ技。
 それを確率するために、悪食丸は大会までの間、住み込みで特訓を続けていた。

──その頃の山の中
 どどどどどどどどどどどど
 突然の熊の襲来。
 いつものように山篭りをしていたルオウ(ia2445)と、その修行の見届けにやってきていた朧楼月 天忌(ia0291)の二人は、修行中に偶然熊と遭遇。
 そのまま熊との一騎打ちに突入したルオウ(ia2445)であったが‥‥。
(まて、このまま逃げてもらちがあかない)
 と心の中で呟くルオウ。
 そのまま熊に向かって振り返り、心を落ち着けて周囲と一体化する事で『戦闘言語』で得た力の流出を沈め押さえ込む。
「力に流されず‥‥沈め‥‥一撃に集中し開放する!!」
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォッ
 刹那の間合い。
 ルオウの一撃は熊に届かず、逆に熊の右フックによって横の大木に叩きつけられてしまった。
「ぐはぁっ‥‥紙一重で急所は裂けたが‥‥肋骨何本かいったな‥‥」
「‥‥ここは任せろ」
 とルオウと熊の間に入った朧楼月。
 そのまま半身でゆっくりと構えると、左腕を前に差し出す。
「イメージ‥‥絶対なる楯‥‥」
──スバァァァァァァァァァァァァァッ
 すかさず襲いかかる熊の右フックを、朧楼月は右腕の『気の楯』によってそらす。
 もっとも、気が楯のように実体化したわけではなく、そういう気のイメージによる無駄の無い体捌きである。
「混沌なる鉾っ」
 そして右腕で熊に向かって抜き手の一撃を叩き込む。
──ドゴッ
 その一撃は決して致命傷ではない。
 が、熊の気を反らすことはできた。
「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 そこからルオウと朧楼月の反撃開始。
 かくして二人は、最高の食材を手に入れる事が出来た‥‥。


●日常のなかの非日常
──凰凱郊外、とある浜辺
「砂の上での震脚‥‥足を取られますわ」
 と告げているのは日御碕・神楽(ia9518)。
 秋霜夜(ia0979)とともに海水浴に来て修行を行なっていた二人、なぜか一緒に仁美・ブリュンスタッドも同行していた。
「まあまあ。そこをクリアーできれば、もっと凄いことができるようになりますよ」
 とにっこりと微笑む仁美。
「では霜夜さんはワタシと無限組み手で‥‥」
 と波打ち際へと移動すると、そこで霜夜と仁美は組み手を開始。
「あたたたたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 すかさず三連剛体撃を発動する霜夜。
 だが、それを仁美はなんなく躱わす。
「な、なんであっさりと‥‥」
「‥‥発動時に癖がありますわ。注意深く見ていれば、それはすぐに気が付きますわ」
 とはいえ、そのへんの武術家では躱わすのは不可能。
 そこまで技が昇華していることに、霜夜はまだ気付いていない。
「‥‥軽い歩法で、そこからの震脚。砂に波紋を残さず‥‥」
 そして静かに特訓を続ける神楽。
 二人の特訓の成果は、まもなく‥‥。

──そのころの紅道場
「わははわはは、これたのしい」
 と紅道場裏手の竹林で書けぬけているのはロウザ(ia1065)。
 歩法と体捌きのための特訓施設にゃってきていたロウザとジークリンデ(ib0258)の二人、それぞれが自分自身の特訓を開始していた。
 次々と襲いかかるトラップの数々、それを相手に必死にゴールへと向かっていくロウザ。
 だが、途中でトラップに引っ掛かってはスタート地点まで叩き戻される。
 それをただひたすらに繰り返していた。
 そしてジークリンデはというと。
「ここの石は御神石といってな、この竹林を護る要石じゃて。ここがもっとも精霊力の高まっている場所ともいえるのう‥‥」
 と紅老師に案内されてやってきたのは、竹林のさらに奥、霞みかかった空間。
「‥‥清浄なる精霊。強い意志‥‥ここはすばらしい場所ですわ」
 とにこやかに告げる。
「ああ、じゃが、一つ忘れてはいけないことがある」
 と紅老師が静かに告げる。
「判っています。精霊は大いなる力と意志の存在るけっして人間程度の力でそれを支配することは考えず、精霊を敬い、力を借りよ‥‥ですわね」
 と告げるジークリンデ。
 と、ニィッと微笑って紅老師は静かに肯くと、そのままその場を後にした。

──そして春詠拳道場
 劫光(ia9510)は静かに道場主である紅美鈴をじっと観察していた。
 この道場に来てから、劫光は美鈴が『陰陽体術』を駆使している所を見ていない。
「春詠拳はどうにも受けからの反撃に主眼を置いた武術という様に見受けているんだが‥‥それと陰陽体術とどう繋がりがあるのだろうか‥‥?」
 と呟く劫光。
「正解ですね。私達の春詠拳は護りの体術、攻めの体術ではないですわ」
 と告げる。
「なら、陰陽体術はどこに‥‥」
「では今度、大会でぶつかったときに手合わせしましょうか? 『完全制御』する陰陽体術をその時に見せてあげますわ。まずは‥‥自身の右腕の制御からね‥‥力を人差し指一点にあつめる訓練をしてください」
 と告げると、劫光はそのまま命ぜられたとおりの訓練を開始する。
「‥‥思ったよりも、一点集中には意識が‥‥」
 なかなか思うように進まない劫光であった。


●厳粛なる
──凰凱・地下闘技場
「地上最強の称号が欲しいか!!」
 擂台の最前列にある台座の上で、一人の老人がそう叫んでいる。
 かれはこの地下闘技場トーナメントの主催者である愁白葵である。
「これから始まるトーナメントのルールについて説明する!!」
 そう叫ぶと、愁老師は静かに皆を見渡す。
「一つ!! 武具の使用を禁ずる!!」
「一つ!! キブアップ宣言した者に対しての超過打撃を禁止する!! 以上!!」
 
──そして試合開始
 それでは、今回の戦いの記録を見ていきましょう

・青龍第九試合
 雪ノ下悪食丸 vs 輝魂闘士のエレ
「青龍!! 示現流拳法、雪ノ下・悪食丸。対戦相手はジルベリア輝魂闘士のエレっっっ」
 雪ノ下・悪食丸(ia0074)の対戦相手は戦闘言語の使い手・エレ。
「それではお手柔らかに。よろしくお願いします」
 抱拳礼の構えで叫ぶ悪食丸。
「では、こちらこそ!!」
 と同じく抱拳礼で挨拶を返すエレ。
 元々紅式酔八仙拳道場であるエレ、礼節は紅老師直伝。

 そして試合では。
 悪食丸は修行によって体得した『刹那・雲耀』を駆使。1度はエレを追込んだものの、戦闘言語からくの出される拳戟全てを躱わす事は出来ず、そのままノックアウト。
「‥‥もう少し実践で鍛えてくださいね。技はほぼ完成したといっても過言ではないでしょう」
「ありがとうございます‥‥もっと実践ですね‥‥」


・朱雀第壱試合
 朧楼月 天忌 vs怨
 朧楼月の対戦相手はマスクを被った武道家の怨。
「最初から全力でいかせてもらうぜ」
「アア、カカッテキナチキンヤロウ」
 と喧嘩口調で挨拶を行う二人。
「それでは始めっ!!」
 その掛け声と同時に朧楼月は怨に向かって間合いを詰める。
(隠しもなにもしねえ、かかってきな)
 と大胆にも相手の間合いに飛込んでいく朧楼月。
「バカカオマエハ」
 と素早く拳戟を叩き込みに行く怨だが、そのことごとくを受止められ、流され、そして極限まで鍛えた肉体で受止められた、
「‥‥あんた弱すぎる‥‥秋夜の小指にも満たない‥‥」
 と呟くと、そのまま顔面目掛けて拳を一撃。
 それで怨はノックアウトだった‥‥。
「ああ、ちっとも暴れたりねぇ‥‥」
 そりゃそうだ。


・白虎第伍試合
 秋霜夜 vsアンリエット
 霜夜の相手はジルベリアの武道家・アンリエット。
「よろしくおねがいします」
「はい、こちらこそよろしくね、アンリエットちゃん」
 と、さわやかな挨拶を交わす二人。
「それでは始めッ!!」
 そう審判が叫んだ直後。
 霜夜の視界からアンリエットが消えた。
「え? 何?」
 と周囲に走る気配を探す。
「背後?」
 すかさず振り向き、そのままガードにはいる秋夜。
──ガシィィィィィィィィィッ
 と、三連脚をガードする霜夜。
「‥‥なんて重い蹴り‥‥」
 とアンリエットを見る。
 と、その瞳には挨拶の刻にあったようにすがすがしさはない。
 対象物を得物と捉え、破壊する殺戮者の瞳であった。
「‥‥これは‥‥ごめんなさい」
 すかさず間合いを話す。と、同時に大地を『蹴って』間合いを詰めると、アンリエットの身体にむかって『三連剛体撃』を叩き込む!!
「破鎧撃っ」
──ゴキゴキベキッ
 それは確実に急所を破壊した。
 左胸部、腹部、頚部の三ヶ所に直撃すると、そのままアンリエットは大地に崩れた、
「勝者‥‥霜夜っ!!」
 勝ち名乗りと同時に霜夜はアンリエットの元に駆けつける。
「大丈夫‥‥生きている‥‥いそいで手当を!!」

・青龍第壱試合
 ロウザ vs 仁美・ブリュンスタッド
 野生児ロウザの相手は、御存知仁美・ブリュンスタッド。
「れい!!」
 と素早く叫ぶロウザに、仁美は釣られて挨拶。
「よ‥‥よろしくお願いします」
「ろうざ おまえ たおす! ぐるるる!」
 と指差しビシィッ! と構えるロウザ。
 そのロウザの糸を理解したのカ、仁美も拳を構えて突き出す。
「いいわ、かかってらっしゃい!!」
 そして試合は始まった。
 観客に『魅せる』為の試合展開をするロウザと仁美。
 まさに一進一退の攻防が繰り広げられた。
 そのままいつまでも続くかと思われた試合だったが、採集的には仁美が体力切れでゲームセット。
「楽しかったわね!!」
「ああ、たのしかった、またただかう」
 と握手を躱わす二人であった。


・青龍第弐試合
 ルオウ vs 神白龍
 ルオウの対戦相手はまたしても称号持ちの神白龍。
「よおしっ。こんどももらったぁっ、よろしく頼むぜっ!!」
「こちらこそよろしくお願いします」
 神白龍に挨拶した後、ルオウは静かに開始線に戻る。
(‥‥以前のような雰囲気がない‥‥なんだ?)
 今までの修行の成果を全て引出すチャンス。
 
 今回の戦いでは力を一気に解放。
「これが俺の、戦闘言語『破羅伝模怒』だああああああっ!!」
 力を解放し全身に纏って咆哮をあげる獅子の如く特攻するルオウ。
「戦闘言語は勉強しましたから‥‥」
 と告げると同時に、白龍はスッと護りの構えを見せた。
 そこからが恐怖。
 ルオウの攻撃は全て最小限の動きで流され、その隙を付いて練により威力の増した拳戟を叩き込まれるルオウ。
 そのまま激しい戦いが繰り広げられた。
 この日の戦いもかなり長く、1時間55分。
「これで終わりだ。いくぜぇ‥‥」
 『戦闘言語』で高めた力を貯めて、相手に一気に駆け出すルオウ。
 だが、その力の全てを受止められ、そのまま擂台に向かって顔面から叩き落とされたロオウ。
 それで勝負は決した‥‥。
「神龍拳鏡返し‥‥このまえのお返しです‥‥」
 そのままルオウは意識を失った。


・青龍第伍試合
 劫光 vs 春詠拳の美鈴
 劫光の対戦相手は御存知、美鈴。
「・・・・あら、ずいぶんと早かったわね」
 とにこやかに告げる美鈴に、劫光はにこやかに叫ぶ。
「‥‥リミッター解除だ。全力で行かせてもらうぜ」
 そんな事を叫びつつも試合は開始。
 すかさず劫光は北斗星君で『火輪』使用。
『瘴気回収』を使い北斗星君で腕に纏った炎を倍化しそれを集中し制御。
「制してこその力だ!それを過つ事は無い、二度と!」
「いい心掛けですね‥‥」
 と告げると同時に、美鈴の右腕にも何かが間と割りついた。
(何だ?)
 そのまま連撃を叩き込む蛾ね美鈴はそれらを『右腕』で受け流していく。
 そして受け流されるたびに、劫光の『火輪』が力を失い、そして消滅した。
「なん‥‥だと?」
「これが陰陽体術・春詠拳よ‥‥」
 ならばとルオウも間合いを取る。
 そして静かに印を組み韻を紡ぐ。
「時を越え、法を越え、確執を越え、我は異界の扉をノックする。我でない我との繋がりを通じて汝に呼びかけん。現れ出でて力を貸せ、『復讐の王』よ!」
 その言葉と同時に、ルオウの拳が真紅に染まる。
「それはダメっ!!」
 すかさず間合いを詰めていく美鈴。
 そして術が完全に発動するまえに、劫光は美鈴の攻撃でノックアウトした。


・白虎第壱拾試合
 日御碕・神楽 vs 緋蝉
 日御碕・神楽(ia9518)の対戦相手は、女性拳術家の緋蝉。
「日御碕・神楽です。お願いします!」
礼をしつつ構える。
「はい、こちらこそよろしくおねがいします」
 と礼を返す緋蝉。
 そして両者ゆっくりと開始線に立つと、そのままじっと開始の合図を待つ。
「それでは始めっ!!」
 
──ダン!!
 その合図と同時に、神楽は後方に吹っ飛ばされた。
「震脚‥‥これは私の技!!」
 そのまま受け身をとって立上がる神楽。
「ごめんなさい。貴方の技はすべて研究させてもらったわ‥‥」
 とニィッと笑いつつ告げる緋蝉。
 そこから先、神楽の攻撃は一撃も通らない。
 全て受け流され、躱わされ、そしてカウンを叩き込まれる。
「‥‥そんな‥‥このままじゃ‥‥」
 何時もより巫女の舞を意識した体裁きで相手の攻撃をいなしながら、スピードに緩急をつけて幻惑。
 だか、その動きにさえ相手はあわせてきた。
「だからいったでしょう? 研究済みなのですわ」
──ドゴォッ
 再びクリーンヒット。
 すでに満身創痍の神楽。
 そのまま大地に神楽が崩れるかと思ったとき。

──ドンッ

 遥か後方に吹き飛ばされた緋蝉。
 そのまま意識を戻すことなく試合終了。
「む、無拍子だぁ‥‥」
 神楽の動きを見てそう叫ぶ霜夜。
「霜夜さ‥‥」
 そのまま意識を失う神楽。
 どうにか勝ち星を得たものの、無意識からの無拍子ははたして偶然の技なのか‥‥。


──Fin

●正門横・拳士一覧 
 一部抜粋 
・雪ノ下・悪食丸    :翡翠3黒炭3 
・恵皇         :翡翠3黒炭2 
・秋霜夜        :翡翠3黒炭3 
・ルオウ        :翡翠5黒炭1 
・劫光         :翡翠3黒炭1 
・日御碕・神楽     :翡翠4黒炭2 
・リリアーナ・ピサレット:翡翠1黒炭1 
・朝比奈 空      :翡翠4黒炭0 
・ジークリンデ     :翡翠1黒炭0 
・朧楼月 天忌     :翡翠1黒炭1 
・ロウザ        :翡翠1黒炭1