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■オープニング本文 ──事件の冒頭 ザワザワザワザワ 大勢の人々で賑わう街。 ここ泰国東方にある城塞都市『凰凱』では、ここ最近になって他国からやってくる観光客が増えている。 アル・カマルとの貿易が始まって数カ月。 この凰凱にも大勢の旅人や商人が訪れていた。 「・・・・うむ。ではそろそろ第五回の試合を始めるとしよう」 楽しげに告げる一人の老人。 彼こそが今回行なわれている地下闘技場最強拳士トーナメントの責任者、愁白葵である。 先日行なわれた第一試合の出来栄えに満足し、次の日程を組み込んでいたのである。 「その手筈は全て整っています。あとは開催を告知するだけ。・・・・ただ・・・・」 と最近になって雇われた秘書官が話し掛ける。 「ふむ。なんじゃ?」 「今までの4回でかなりノかずの参加者が怪我などで欠場する状態となっています。そろそろ手練れの物が絞られてきたのではないかと‥‥」 「その程度か。まあ怪我人が出るのはすでに予想済み。そしてその結果欠場枠が増えるのものう‥‥」 と告げた。 |
■参加者一覧
雪ノ下・悪食丸(ia0074)
16歳・男・サ
朝比奈 空(ia0086)
21歳・女・魔
恵皇(ia0150)
25歳・男・泰
朧楼月 天忌(ia0291)
23歳・男・サ
秋霜夜(ia0979)
14歳・女・泰
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
劫光(ia9510)
22歳・男・陰
日御碕・神楽(ia9518)
21歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●静かなる意志 ──泰国示源流道場 「示現流に恥じぬよう務めますので、お力をお貸し下さい」 板張りの道場で静かにそう頭を下げているのは雪ノ下・悪食丸(ia0074)。 ここ泰国にある示源流道場を訪れた彼は、自身新しい技である『示源流拳法』を生み出すべく訪れていたのである。 「ふむふむ。まあ、頑張ってみてください。元々私達の示源流はこの泰国にやってきてから徒手での戦いも組み入れています。けれどそれとして独立したものではなく、むしろ剣術の延長というところでした。まあそれを一つの流派として大系するのはかなり時間が掛かるでしょう‥‥」 と告げられたが、協力はしてくれるという約束を取り次いでもらった。 そこからが悪食丸の地獄の時間。 蜻蛉と鬼腕、そして唐竹割の3つの技を組み込んだ技を作るべく、悪食丸は日夜道場で修練を続けていた。 ──その頃 いきなり掌底が秋霜夜(ia0979)の顔面に直撃。 「ど、動作が見えない‥‥これって‥‥」 そう動揺する霜夜の前で、『仁美・ブリュンスタッド』がニコリと微笑む。 「えぇっと。天儀の体術の一つ、『無拍子』というものをジルベリア風に改良したものですよ‥‥相手に動きを悟られないのではなく、意識を別の場所に集めるものです‥‥そうすれば‥‥」 ──ダン!! とまたしても身構えていた霜夜の胸部に仁美の肘撃が直撃。 「ぐはぁっ!!」 「なんとなく判りますか?」 「む、無理。なにが起きているのかさーっぱり」 「まあそうでしょうねぇ。では壱から順を追って説明しましょう」 ということで、霜夜はかつてのライバルである仁美からレクチャーを受けることとなったのであった。 ●命を賭して ──凰凱・春詠拳道場 「ふぅん。羅刹師父の直弟子ですか‥‥」 そう告げつつ、劫光(ia9510)をじっと見る紅美鈴。 「師父は言っていた‥‥陰陽体術会得者が他にもいる、と。そしてその名は紅美鈴だ、と‥‥」 そう告げる劫光。 「私の道場に入りたいという事かしら?」 「ああ。俺の『北斗星君』を極めたい‥‥その為の助力を頼みたい」 そう告げられて、美鈴は静かに頭を縦に振る。 「いいでしょう。それじゃあ基礎から始めましょうか‥‥」 ということで、劫光の特訓もいよいよ再開。 ●殺戮の聖騎士 ──その頃の紅道場 静かに座禅を組んでいるのは恵皇(ia0150)。 過去2回、紅老師と対戦している彼。 そして過去の敗因にある共通点。 「スタミナ不足‥‥というよりも、体捌きか‥‥」 そう呟くと、恵皇はゆっくりと立ち上がり、そのまま型を一通り流す。 一連の動きを終えたとき、自分のからだの何処に無理が掛かっているか。 「右腕から肩‥‥左腰、そしてそこから脚の先まで‥‥微妙にハリがある‥‥ここか」 そう呟くと、今度はそこに意識を集中して型をなぞる。 それを繰り返しつつ、恵皇は自身の体捌きを少しずつ修整していった。 そして道場では、さらにルオウ(ia2445)もまた紅老師からレクチャーを受けている所であった。 「師匠。戦闘言語は一体どうやったら持続時間を伸ばすことができるんだ?」 「いやいや、そもそもあれは一撃必殺、一つの試合で何度も多用するものではないが‥‥」 と告げられつつ、再び修練に入る二人。 「‥‥師父、ひとつ試したい技があるのですが‥‥」 「ほう。試すとは。いいぢゃけろう、やってみなさい」 と告げると、そのままルオウは静かに戦闘言語を唱えはじめる。 「‥‥普賢三昧耶大金剛輪‥‥」 やがてルオウ(ia2445)の身体から異質な『何か』が溢れ出す。 そしてその刹那!! ──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォッ 一瞬の一撃。 それで師父が後方に吹き飛び、壁を破壊した。 「師父!!」 そう叫んで走り出すが、戦闘態勢が解除できない。 ルオウの中の破壊衝動が溢れたままであった。 「うぉぉぉぉ。駄目だぁぁぁ。誰か止めてくれぇぇぇ」 そう絶叫しつつも一気に間合を詰めていこうとするルオウ。 「はいはい。それでは‥‥」 「仕方ない゛すねぇ」 と告げつつ、紅老師とルオウの間に立つ日御碕・神楽(ia9518)と霜夜の二人。 そして二人はそのまま素早くルオウの腕を取ると、一気に床板にルオウを叩きつける。 ──ドッゴォォォォォォォォォォォッ その一撃でルオウは失神。 「おおう。いいタイミング」 「霜夜さんこそ、あのタイミングは絶妙ですね!!」 とお互いをベタ誉めである。 「ふう‥‥いたたたた。肩が抜けたぞ」 と告げつつゆっくりと立上がる紅老師。 「大丈夫ですか?」 「お怪我は?」 「肩を少しなあ。まあ、油断したわしが悪かった。しかし‥‥あのモード、確かルオウは『破羅伝模怒』とか言っておったな‥‥」 「それは?」 と問い掛けたとき。 「戦闘言語の上位技の一つですわ。ご無沙汰しています老師」 と一人の女性が道場に入ってくる。 「マチュアか。久しいのう‥‥ああ、紹介しよう。こやつらはうちの道場の内弟子の神楽と霜夜、そして転がっているのがルオウじゃ」 と告げられて、マチュアと呼ばれた真紅の髪の女性がニコリと微笑む。 「はじめまして。マチュアと申します。紅式酔八仙拳師範・同ジルベリア戦闘言語聖騎士です」 その後ろのものがなんなのか判らない二人。 「戦闘‥‥?」 「あ、判りやすく説明しますと、ジルベリアで私が経営している道場の名前です」 あらあっさり。 「で? こんな時期にどうしたのぢゃ?」 「こちらで行なわれている地下闘技場トーナメントの招待状が届いたので馳せ参じました‥‥」 ということで、ここから先はどうなったかというと‥‥。 ●厳粛なる ──凰凱・地下闘技場 「地上最強の称号が欲しいか!!」 擂台の最前列にある台座の上で、一人の老人がそう叫んでいる。 かれはこの地下闘技場トーナメントの主催者である愁白葵である。 「これから始まるトーナメントのルールについて説明する!!」 そう叫ぶと、愁老師は静かに皆を見渡す。 「一つ!! 武具の使用を禁ずる!!」 「一つ!! キブアップ宣言した者に対しての超過打撃を禁止する!! 以上!!」 ──そして試合開始 それでは、今回の戦いの記録を見ていきましょう ・青龍第九試合 雪ノ下悪食丸 vs 紅美鈴 「青龍!! 示現流拳法、雪ノ下・悪食丸。対戦相手は春詠道場、紅美鈴っっっ」 雪ノ下・悪食丸(ia0074)の対戦相手は春詠拳の使い手・紅美鈴。 「それではお手柔らかに。よろしくお願いします」 抱拳礼の構えで叫ぶ悪食丸。 「はい。こちらこそお願いします!!」 と同じく抱拳礼で挨拶を返す美鈴。 いつもながら、悪食丸の対戦相手はじつに礼節を重んじている。 そして試合では。 悪食丸は打・投・絞・極・寝の6種の技を駆使して攻防を繰り広げて格闘している。 一方の美鈴は防戦一方、悪食丸の全ての技を受け流している。 やがて悪食丸はタイミングを計り観客への見せ時も考えてから素手で蜻蛉の構えを取り蜻蛉と鬼腕を発動させた。 「示現流拳法必殺、大・断・絶っ!!チェストォォォォォッ!!」 そう叫んでの一撃。 だが、それを美鈴は腕で受止める。 「陰陽体術・明星‥‥」 そのまま隙の見えた腹部に向かって美鈴の一撃がたたきこまくれ、勝負は決した。 「まだまだ修練が足りないですか‥‥」 「いい戦いってましたけれどね。実践でもっと力をつけないと‥‥ ・朱雀第壱拾八試合 朝比奈 空 vsマチュア・ロイシィ 朝比奈 空(ia0086)の対戦相手は今回より参戦したジルベリアの闘士・マチュア・ロイシィ。 「さて初陣ですのでよろしく」 「こちらこそよろしくお願いします」 と丁寧に挨拶を行う二人。 「それでは始めっ!!」 その掛け声と同時に朝比奈に向かって駆け出すマチュア。 その効き迫る攻撃を一つ一つ認知し、朝比奈はすべて円で受け流していく。 (・・・・鋭い攻撃‥‥ぎりぎり交わすなんてことはできないです) 今までの対戦相手とは次元が違う。 そう考えた朝比奈は『力の歪み』を発動し、短期決戦に持ち込もうとした。 「‥‥歪みねぇ‥‥いててて‥‥いいねぇ、この感じ。ゾックゾクしてくるね‥‥」 と楽しそうに告げるマチュア。 そのままマチュアの連撃と朝比奈の歪みと白梅香の攻撃が次々と叩き込まれていった。 そして最後に擂台に立ってたいたのは‥‥。 「はあはあはあはあ‥‥もう限界です‥‥これ以上は‥‥ですから立たないでください」 と消耗しきった体で叫ぶ朝比奈。 その近くでは擂台に大の地で倒れているマチュアの姿があった。 「楽しかったねぇ‥‥またやろうね‥‥」 と告げて、マチュアは意識を失った。 ・白虎第七試合 恵皇 vs鈴村式鬼 恵皇(ia0150)の相手はそこそこ美形のにーちゃん『鈴村式鬼』。 「よろしくおねがいします」 「ああ、こちらこそよろしくな!!」 さわやかな挨拶を交わす二人。 「それでは始めッ!!」 そう審判が叫んだ直後。 ──ドッゴォォォ 刹那の一撃。 過去の擂台賽において式鬼の得意とした先手必勝の一撃である。 だが、そんなことは当然恵皇も熟知。 「‥‥そ、そんな‥‥」 刹那の攻撃にタイミングを合わせたカウンター。 それがもろにヒットしたのである。 音もなく崩れていく式鬼に、恵皇は一言。 「わりい。あんた老師より遅いわ‥‥」 とにこやかに告げた。 まあ、式鬼の速度は決して遅くはない。 むしろかなり早かった筈。 ただ‥‥。恵皇がそれよりも強くなりはじめていたのである。 ・玄武第八試合 秋霜夜 vs 仁美・ブリュンスタッド 白猫面つけた秋霜夜の相手は、彼女の特訓相手の仁美・ブリュンスタッド。 「よ‥‥よろしくお願いします」 と丁寧に抱拳礼で挨拶を交わす霜夜と、やはり抱拳礼で返す仁美。 「あらあら。まあ仕方ないですわね。完膚なきまでに叩きつぶしてさしあげますわ」 とニコリと微笑みつつ告げる仁美。 「それはどうでしょうか」 「では参ります」 とお互いに開始線に立っと同時に、試合開始の合図がなされた。 ──ドッゴォォォォツ その刹那、激しい打ち合いが開始された。 いつものように破軍が発動し、さらに泰練気法・壱まで発動させていく霜夜。 そのまま激しいラッシュを叩き込みつつ、時折『三連剛体撃』を叩き込もうとする。 が、やはり発動タイミングが全て見切られており、かつ、霜夜の攻撃の全てを仁美は躱わしている。 「あ、あらら‥‥あれれ?」 「ええ。いい感じですけれど」 ──ドゴォッ その言葉ののち、霜夜は意識を失った。 無拍子からの八連撃。 その全てが急所に叩き込まれたのである。 霜夜は生きているのが奇跡であろう。 ・朱雀第壱拾試合 ルオウ vs 神白龍 ロウザ(ia1065)の対戦相手は称号持ちの神白龍。 「よおしっ。よろしく頼むぜっ!!」 「こちらこそよろしくお願いします」 神白龍に挨拶した後、ルオウは静かに開始線に戻る。 (称号持ちか‥‥まああなんとかなるか‥‥) 今までの修行の成果を全て引出すチャンス。 まだ制御不能の『破羅伝模怒』は使わず、今の時点で使える俺の全てで全勝を護りろうと考えたルオウ。 そのまま激しい戦いが繰り広げられた。 この日最長の2時間38分。 「これで終わりだ。いくぜぇ‥‥『ルオウ・ダイナマイトぉ!!』」 『戦闘言語』で高めた力を貯めて、相手に一気に駆け出すルオウ。 そして見よう見まねで震脚で踏み込むと、パワーをあげたアックスボンバーを白龍に叩きつけ、力を一気に解放する。 「これが俺のぉ‥‥全開だああああぁ!!」 そう叫びつつ擂台に向かって白龍を叩きつけるルオウ。 それで勝負は決した‥‥。 ・玄武第六試合 劫光 vs わんドシ君 劫光の対戦相手は御存知わんドシ君。 「・・・・よろしくお願いしますワン」 とにこやかに告げるわんドシ君相手に、劫光はにこやかに叫ぶ。 「‥‥リミッター解除だ。全力で行かせてもらうぜ」 そんな事を叫びつつも試合は開始。 素早い動きと連撃で劫光を翻弄するわんドシ君。 劫光もまた、『九字護方陣』を展開し、自身の身を強化しつつ接近戦を挑んでいった。 そのままわんドシ君の攻撃を耐え、鍛えた右手につけた呪布帯に『火輪』を使用した『北斗星君・天津甕星』を宿すと、更に『瘴気回収』で外気を取り込んでいく。 「‥‥まずは‥‥単体の技を極める‥‥俺の拳が真っ赤に燃える!! お前を倒せと、轟きぃぃぃぃ叫ぶ!!」 燃え盛る手をわんドシ君に向かって叩き込む劫光。 だが、同時にわんドシ君の拳も劫光の顔面にヒット。 そのまま両者相打ちかと思いきや、ぎりぎりで立上がる劫光。 「‥‥いける‥‥この技はいける‥‥」 劫光の制御可能技。 あのわんドシ君ですから一撃で落ちた。 これをどう昇華させるか‥‥。 ・白虎第八試合 日御碕・神楽 vs 紅老師 日御碕・神楽(ia9518)の対戦相手は、なぜか紅老師。 「ふむふむ、どれ、ここまでの成果を見せて貰うとするかのう」 と抱拳礼をする紅老師。 「こちらこそ、師父といえどてかげんはしません」 「うんうん。ではその心意気にめんじてねこちらも本気でやらせてもらおう」 と告げて、ゆっくりと開始線に立ちつ両者 「それでは始めッ!!」 その審判の合図と同時に、神楽は身構えた。 相手の拍子に合わせて拍子をとり、相手の呼吸を知りその動きを先読みする。 いつもの技の準備なのだが。 いつものようすではない、本気で酔八仙拳の構えをとった紅老師の前で、なにもできない。 ただ、緊張とで汗がにじみ出し、恐怖に身体が震えはじめた。 「どうした? かかって来なさい‥‥」 「判っています‥‥けれど‥‥」 と告げたとき、トン、と老師が一歩前に出た。 「ヒッ!!」 その瞬間、神楽は地面にしゃがんだ。 「ま、参りました‥‥」 「ふむふむ。この程度の気合、己の気合で弾けなくてはのう‥‥神楽は精神面ももっと強くならないと」 と告げつつ、倒れている神楽に手を差し伸べた。 「あ、ありがとうございます‥‥」 この時点ですでに神楽は戦闘不能。 ──Fin ●正門横・拳士一覧 一部抜粋 ・雪ノ下・悪食丸 :翡翠3黒炭2 ・恵皇 :翡翠3黒炭2 ・秋霜夜 :翡翠2黒炭3 ・ルオウ :翡翠5黒炭0 ・劫光 :翡翠3黒炭0 ・日御碕・神楽 :翡翠3黒炭2 ・リリアーナ・ピサレット:翡翠1黒炭1 ・朝比奈 空 :翡翠4黒炭0 ・ジークリンデ :翡翠1黒炭0 ・朧楼月 天忌 :翡翠0黒炭1 ・ロウザ :翡翠0黒炭1 |