【凰凱】地下闘技場・惨
マスター名:久条巧
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 難しい
参加人数: 7人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/06/04 16:44



■オープニング本文

──事件の冒頭
 ザワザワザワザワ
 大勢の人々で賑わう街。
 ここ泰国東方にある城塞都市『凰凱』では、ここ最近になって他国からやってくる観光客が増えている。
 あらたにアル・カマルとの貿易が開始され、そこからまた大勢の観光客が訪れていた。

「・・・・うむ。ではそろそろ第四回の試合を始めるとしよう」
 楽しげに告げる一人の老人。
 彼こそが今回行なわれている地下闘技場最強拳士トーナメントの責任者、愁白葵である。
 先日行なわれた第一試合の出来栄えに満足し、次の日程を組み込んでいたのである。
「その手筈は全て整っています。あとは開催を告知するだけ。・・・・ただ・・・・」
 と最近になって雇われた秘書官が話し掛ける。
「ふむ。なんじゃ?」
「噂では、アル・カマルの闘士も参加を表明しているとか・・・・」
「その程度のことなど気にしない。このトーナメントはどんな闘士でも参加は自由じゃて・・・・」
と告げた。

──場所は変わって凰凱・地下闘技場
「・・・・血と汗の匂いが充満していやがる・・・・。戦いの空気か。久しいな・・・・」
 褐色の肌をモツ男が静かにそう呟く。
「そこにいるのは誰だワン?」
 と地下闘技場警備の仕事をしていたわんドシ君に見つかってしまう男性。
「ああ、あんたここの人か。ここの大会に出たいんだが、どうすればいい?」
 そう告げると、そのままゆっくりとわんドシ君の元へと歩み寄る。
「ふむふむ。とりあえず参加申請について教えるからこっちにくるワン。だけど、ここの戦いは命を賭けた戦い、死んでも文句は言えないワン」
 と告げると、男はニィッと微笑って一言。
「死んでもまた生返りゃいい。俺のいた氏族では、それぐらいは当たり前だ」
 その言葉に頭を捻るわんドシ君であった。


■参加者一覧
雪ノ下・悪食丸(ia0074
16歳・男・サ
朝比奈 空(ia0086
21歳・女・魔
恵皇(ia0150
25歳・男・泰
秋霜夜(ia0979
14歳・女・泰
ロウザ(ia1065
16歳・女・サ
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
日御碕・神楽(ia9518
21歳・女・泰


■リプレイ本文

●静かなる
──紅道場
「ろーし! ろうざ おなかへった!」
 元気よくそう叫びつつ、道場の廊下を歩いているのはロウザ(ia1065)である。
 何の因果か偶然か、彼女もまた『地下闘技場トーナメント』に出場することとなったのである。
 それまでの帰還、彼女は秋霜夜(ia0979)のはからいでこの道場に住み込みで働くこととナった。
 まあ、はたらかざるもの喰うべからずというところである。
「よしよし、あとは廊下の雑巾がけが終ったら皆で食事にしようかのう」
 と紅老師も告げる。
「わかった、ろうざ がんばる!!」
 と告げて、ロウザはフルパワーで雑巾がけ開始。
「あのー、老師、ちょっといいですかぁ?」
 と紅老師に話し掛けているのは霜夜である。
「ふむふむ、なんぢゃ?」
「ちょっと気になったものですけれど‥‥紅美鈴っていう女性に心当りはありませんか?」
「美鈴がどうかしたのか?」
 きょとんとした表情でそう告げる老師。
「御存知でしたか‥‥あの、どういったお知り合いで?」
「孫じゃが?」
‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥

「はい了解しました。孫でしたか‥‥」
 美鈴の強さの一角が判ったような霜夜。
「では、老師と同じ流派で?」
「いやいや、酔八仙拳は教えておらぬよ。あの子は『春詠拳』の使い手じゃて。攻勢防御術を基礎とする流派ぢゃよ」
 その言葉にポン、と相槌を打つ霜夜。
「あのその、攻勢防御ってなんですか?」
「まあひらたく云うと『攻撃型防御』ぢゃよ。といってもワシも真似程度しか出来ぬからのう‥‥」
 と告げて、軽く演舞を行う老師。
 その滑らかな動きの殆どが防御の型で構成されている。
「ふむふむ‥‥護りから転じて責めに入る。しなやかな動きで受け流すと‥‥」
 その老師の動きの一つ一つをチェックし、次に戦うときの参考にしようというのであろう。
「霜夜、そろそろ始めるよー」
 と霜夜を呼ぶのは日御碕・神楽(ia9518)。
 いつものように老師の桃とで修練を行なっている。
「あー、はいはい。それでは老師、よろしくお願いします」
 と二人並んで老師に一礼。
 そしてそこからいつものように修行が始まった。

──その頃の山の中
「‥‥覚悟完了!!」
 戦闘言語を体得し、さらなる高みを目指す為、ルオウ(ia2445)は山篭りを行なっていた。
 日々野山を駆け巡り、岩肌を見つけてはそこに技を繰り広げる。
 それもこれも、戦闘言語を用いた場合の消耗を少なくする為である。
 まだルオウの身体は戦闘言語に耐えられない。
 1度の試合では1度のみ、複数回の使用は不可能であった。
 だが、ここから先、より強敵と戦う為には必要なファクターである。
「‥‥まだだ。もっと‥‥意識と肉体を繋ぎ合わせる‥‥その為の‥‥何かがたりない」
 あと一歩。
 それが見出せないまま、大会は始まった‥‥。


●厳粛なる
──凰凱・地下闘技場
「地上最強の称号が欲しいか!!」
 
 擂台の最前列にある台座の上で、一人の老人がそう叫んでいる。
 かれはこの地下闘技場トーナメントの主催者である愁白葵である。
「これから始まるトーナメントのルールについて説明する!!」
 そう叫ぶと、愁老師は静かに皆を見渡す。
「一つ!! 武具の使用を禁ずる!!」
「一つ!! キブアップ宣言した者に対しての超過打撃を禁止する!! 以上!!」
 
──ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオ

 観客の絶叫により闘技場全体が揺れた。
 そして選手達はそれぞれ、闘技場の4角にある4つの門から出ていった。
 門にはそれぞれ『白虎』『朱雀』『青龍』『玄武』と名前が刻まれている。
 どの民に選手が入るのかは自由だが、その向うにある4つの広間で戦う為のクジが引かれる。
 そのクジの順番に闘技場に向かい、そこで対峙した拳士と戦うというしくみになっている。
 正門横にある拳士一覧には、勝者には翡翠の腕輪が、敗者には黒炭の腕輪が飾られる。
 その数が多いほど、最強のなまえにちかづくということである。


●そして本戦
──凰凱・地下闘技場
 すでに戦いは始まっていた。
 それでは、今回の戦いの記録を見ていきましょう

・青龍第4試合
 雪ノ下悪食丸 vs グレートもふら仮面
雪ノ下・悪食丸(ia0074)の対戦相手は謎の仮面武道家グレートもふら仮面。
「それではお手柔らかに。よろしくお願いします」
 抱拳礼の構えで叫ぶ悪食丸。
「こちらこそよろしくでもふ!!」
 と同じく抱拳礼で挨拶を返すもふら仮面。
 実に好印象な二人の戦いが始まった。

 そして試合では。
 速攻対速攻。
 素早い動きと対さばきでお互いの攻撃を躱わしていく二人。
 だが、悪食丸よりも早くもふら仮面の速度が低下していった。
 そこを悪食丸が見逃すはずはない。
「そこです!!」
 すかさず隼襲を発動し、一気に相手の攻撃を躱わしつつ間合に飛込む。
 そこで鬼腕を発動、強化した豪腕によるスマッシュが炸裂。
 熊手のように構えた五本の指がもふら仮面の顔面を捕らえ、叩きつけられた!!
──ドゴグシャッ!!
 その一撃でもふら仮面は闘技場の床に崩れ落ちた。
「ふう‥‥形にはなりましたか‥‥」


・青龍第壱拾試合
 朝比奈 空 vs仁美・ブリュンスタッド
 朝比奈 空(ia0086)の対戦相手は御存知わがまま武道家令嬢の仁美・ブリュンスタッド。
「おーーーーーーーーーーーーーーーーーーっほっほっほっほっほっほっ。庶民風情がこのワタシと戦えるなんて10年早いですわ。今ならギブアップ宣言して頂いてもよろしくてよ」
 と挑発的に朝比奈に告げる仁美。
──プツン
 あ、朝比奈切れたか?
「それではよろしくお願いしますわ」
 とニコリと笑みを浮かべつつ、余裕を見せながら開始線に立つ朝比奈。
「ふん。まあその澄まし顔が一体いつまで続くのでしょうねぇ‥‥」
 と吐き捨てつつ開始線に立つ仁美。
 っていうかおまえ、キャラ変わった?
「それでは始めっ!!」
 その掛け声と同時に朝比奈に向かって殴りかかる仁美。
 その切れのいい直線的な攻撃を、朝比奈はすべて円で受け流していく。
(‥‥まるで隙だらけ‥‥)
 と心の中で呟きつつ、朝比奈は白梅香による一撃を加えていく。
 常に仁美の隙を窺い、確実に一撃一撃を叩き込んでいく朝比奈と、怒りに我を忘れて攻撃を続けていく仁美。
 結果は明らかであった。
 蓄積していったダメージに負けて、仁美が戦意喪失。


・玄武第五試合
 恵皇 vs紅老師
 恵皇(ia0150)の相手はごぞんじ紅老師。
「ふぉっふぉっふぉっ。それではお手柔らかに頼むぞ」
「おう。こちらこそ頼むぜ老師」
 と抱拳礼で挨拶を告げる恵皇。
 年長者にはあくまでも礼節を重んじる。
 それが恵皇の老師への礼儀であった。
 鏡の間での自身との対話。
 答えは出なかったが、自身の中に7つの敵が存在していると恵皇は理解した。
 それがなにものなのかはまだはっきりとはしていない。
 けれど、その7つの敵こそが、恵皇の力の源である事も事実。
 その釣り合いを取る方法は身につけられなかったものの、戦いになったら全てを忘れて己をぶつけていった。
「ほっほっほっほっ。これはあぶないのう‥‥」
 と笑いつつ攻撃を受止めていく老師。
 かなりの時間戦いは繰り広げられていったが、最後は恵皇のスタミナ切れで幕をとじた。
「‥‥恵皇の中の7つの宿星。それを見極めなさい」
「ああ、ありがとうよ‥‥」


・青龍第二十一試合
 秋霜夜 vs わんドシ君
 海月帽子着用の秋霜夜(ia0979)の相手は、ごぞんじわんドシ君。
「よろしくお願いします」
 と丁寧に抱拳礼で挨拶を交わす霜夜と、やはり抱拳礼で返すわんドシ君。
「さて、どれだけ強くなったか見せてもらうワン」
「では参ります」
 とお互いに開始線に立っと同時に、試合開始の合図がなされた。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォツ
 その刹那、激しい打ち合いが開始された。
 破軍が発動し、さらに泰練気法・壱まで発動させていく霜夜。
 そのまま激しいラッシュを叩き込みつつ、時折『三連剛体撃』を叩き込もうとする。
 が、まだ『三連剛体撃』は隙が大きすぎて間合とタイミングが見出せない。
「こ、こんなはずじゃあ‥‥」
「それじゃあそろそろいくワン。グットラックだワン」
 と掌底を叩き込むわんドシ君。
 それを腹部に受けた刹那、霜夜の膝がカクッとなり、そのまま闘技場の床に潰れてしまった。
「あ、あれ‥‥力がはいらない‥‥」
「柔体術の技だワン。霜夜の練と気の流れを狂わせたワン‥‥まあ試合が終ったらもとに戻るワン」
 と告げて立ちさって行った。
‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥

「し、審判さん!! わんドシ君が自分から闘技場をあとにしましたよっ!!」
 と叫ぶギャラリーの女性。
「ええっと‥‥わんドシ君戦意喪失とみなし、勝者霜夜っ!」
──えええええええ
 動揺する霜夜を横に、勝ち名乗りが揚げられてしまった‥‥。
「な、納得いかなーーーーーーーーい」
 そりゃそうだ。


・朱雀第七試合
 ロウザ vs 神白龍
 ロウザ(ia1065)の対戦相手は称号持ちの神白龍。
「それではよろしくおねがいしますよ」
「わかった ろうざは ろうざ! みんな おぼえる! ろうざ がんばるぞ!」
 神白龍に挨拶した後、闘技場をぴよよ〜ん♪と刎ね回り観客にアピールするロウザ。
「それでははじめっ!!」
 直線的に攻撃を仕掛けてくるロウザに対して、神白龍もまた全身全霊を持って受止め、ぶつかっていく。
 投げ技と組技主体のロウザに対して、神白龍は一定の間合をとりつつ 攻撃を繰り広げていった。
 そしてロウザもまた、それらの攻撃を交わすことなく受止め、鬼腕で相手をガシっと掴む。
「いくぞ! ぐるるる‥!」
 ニィィと獣が牙を剥くような笑顔て叫ぶと、そのまま自分を軸に回転し神白龍を振り回していく。
──ヒュンッ
 そして投げ飛ばされつつもなんとか着地し、さらに反撃に転じる神白龍。
 結果‥‥。ロウザは神白龍にノックアウトされてしまっていた。


・白虎第四拾試合
 ルオウ vs エスメラルダ
 ルオウ(ia2445)の対戦相手はエスメラルダという名のジルベリアの魔女。
「ふふふ‥‥よけしくお願いしますわ」
 とにこやかに告げるエスメラルダ相手に、ルオウはにこやかに叫ぶ。
「よっしゃ、かかってきな。全身全霊を持って受止めてやるぜ」
 そんな事を叫びつつも試合は開始。
「最初から全開でいくぜぃ!!」
 と叫ぶと同時に、琉央は『戦闘言語』を発動。
「‥‥我はサムライ・ルオウなり‥‥我が拳は金剛の如く‥‥我が脚は疾風の如く‥‥我が心に迷い無し‥‥我が肉体に迷い無し‥‥我、己の生きざま全てを掛ける‥‥覚悟完了!!」
 ルオウの戦闘言語とエスメラルダの間十の発動はほぼ同時。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
 という巨大な爆発がルオウを包む。
 だが、その業火の中から飛び出して渾身の一撃を叩き込むルオウ。
 その一撃で勝負は決まった。
 エスメラルダは戦意喪失となりギブアップ。
「‥‥まあ物足りないが‥‥いいか‥‥」
 ちなみにあと少しでも長く炎の中にいたら、ルオウが負けであった。


・朱雀第七試合
 日御碕・神楽 vs 秋夜
 日御碕・神楽(ia9518)の対戦相手は、なぜか霜夜のとーちゃん。
「おお、神楽さん。いつも娘がお世話になっています」
 とペコリと挨拶する秋夜。
「こちらこそ、たびたびおじゃまして申し訳ありません」
「構いませんよ。少しでも賑やかなほうが愉しいですから」
「そういって頂けると助かります。また今度おじゃましますので」
 とまあ他愛もない会話が続いていた。
「それでは始めッ!!」
 その審判の合図と同時に、神楽は身構えた。
 相手の拍子に合わせて拍子をとり、相手の呼吸を知りその動きを先読みする。
 そして相手に先んじて視界から消えるかのように接近する。
『瞬脚』を応用した震脚から相手に踏み込んで、『破軍』で大地の気を練りみつつ『骨法起承拳』で螺旋の如く練りこんだ大地の気を掌に載せて相手に叩きつける。
 それが、今回の神楽の持つ全て。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォッ
 そしてそれは直撃した。
 だが、秋夜の剛体術と『何か』によってダメージは通らない。
「実にいい動きだ。気の練りこみもするどい。だが、まだまだ昇華できる。もっと己を鍛えてきなさい」
 と告げて秋夜は神楽のお尻を
──スパァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン
 と叩いた。
「痛ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい」
 その一撃で戦意喪失する神楽であった。
「イタタ‥‥はい、もっと修練します‥‥」

──Fin


●正門横・拳士一覧
 一部抜粋
・雪ノ下・悪食丸    :翡翠3黒炭1
・恵皇         :翡翠2黒炭2
・秋霜夜        :翡翠2黒炭2
・ルオウ        :翡翠4黒炭0
・劫光         :翡翠2黒炭0
・日御碕・神楽     :翡翠3黒炭1
・リリアーナ・ピサレット:翡翠1黒炭1
・朝比奈 空      :翡翠3黒炭0
・ジークリンデ     :翡翠1黒炭0
・朧楼月 天忌     :翡翠0黒炭1
・ロウザ        :翡翠0黒炭1