【泰国】赤流星の斜亜
マスター名：久条巧
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| ■オープニング本文 ──事件の冒頭 ザワザワザワザワ 大勢の人々で賑わう街。 ここ泰国中央にある『桃華（とうか）』と呼ばれる小さな街では、現在とある事件に巻き込まれていた。 「なんてこったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 絶叫しているのは『桃華』にある『七星鳳凰拳』と呼ばれている武術道場の道場主・紅流賽（こう・りゅうさい）。 彼の道場にある宝物庫が破られ、中に納められていた『七星鳳凰拳秘伝書』が盗まれてしまっていた。 まあ、この一件は開拓者達の手によって残りの秘伝書は護られ、敵のアジトまで判ったのであるが‥‥。 ──ということで説明しよう 最近、この桃華の街の周囲を頻繁に盗賊集団が徘徊している。 旅人などを襲う様子はないものの、桃華の住人が街の外に出ると、盗賊集団に襲われるらしい。 最初のうちは脅かし程度であったが、やがて傷つけられる街の人も出てきた。 そしてつい先日、街の人の惨殺死体が近くの川に放置されていたのが確認された。 その日を境に、街からは『旅人を装って他の街に逃げる人々』が頻繁に出没しはじめたのである。 犯人は『風龍八十八聖』の一派、それも先日姿を現わした『赤流星の斜亜』と。その配下達。 い‥‥。 ●ということで話を戻すとしよう 「先日、疾風の天馬と言う赤流星の斜亜の使いとなのる男が手紙を持ってきた。 それによると、残りの秘伝書を我等のアジトまで持って来いと書かれていた。 それに従わなければ、全ての配下を伴って桃華に押し入ってくるということらしい。 これ以上街の人に危害をくわえられる事だけはさけねばならぬ‥‥」 泰拳寄合所の各道場主が顔を突き合わせて相談をしていた。 だが、どうしていいか判らぬまま時は過ぎていった‥‥。 そんな刻。 貴方たちはまたしても旅の途中でこの街にやってきた。 風の噂も聞き、今、この『桃華』を始めとする近隣の街や村が危険な状態にあることも理解した。 さて‥‥みなさんはどうしますか？ |
■参加者一覧
梢・飛鈴（ia0034）21歳・女・泰 
檄征 令琳（ia0043）23歳・男・陰 
水鏡 絵梨乃（ia0191）20歳・女・泰 
静雪・奏（ia1042）20歳・男・泰 
嵩山 薫（ia1747）33歳・女・泰 
神鷹 弦一郎（ia5349）24歳・男・弓 
リューリャ・ドラッケン（ia8037）22歳・男・騎 
レイア・アローネ（ia8454）23歳・女・サ |
| ■リプレイ本文 ●戦いは憎しみ深く ──泰国・桃華・大桃華飯店 盗賊達による被害が大きくなり、桃華の人々は正門から外へはあまり出る事が無くなってきた。 正門外の畑や森まで足を伸ばし、仕事を続ける者たちは特に慎重に作業に従事しているが、それでも被害者は増えはじめた。 そして現在。 外での作業は一時手を止め、正門内部での仕事を続けるようになってきたのだが、いつまでもそれが続けられる筈もなく。 「それにしても、大概懲りん奴らと言うか‥‥執念深い奴らアルなあ」 梢・飛鈴（ia0034）があきれたような声でそう告げる。 「まあ、このような場合には、絡め手で対策するのが手っ取り早いでしょうねぇ‥‥」 と檄征令琳（ia0043）が告げる。 彼の対策はずばり流言流布。 赤流星の斜亜がアヤカシらしいという噂を流布し、混乱を引き起こそうというものである。 すでに協力体勢にある街の泰拳士に頼み込み、この噂はかなり流されている。 相手がアヤカシならばと手を貸す泰拳士や街の人たちも現われはじめた。 「ただいまっ！！」 異性よく飯店に戻ってきたのは水鏡 絵梨乃（ia0191）と静雪・奏（ia1042）。 街のあちこちにある道場を駆け巡り、戦いになったときに力を貸してくれる泰拳士を佐賀市に行っていたらしい。 「首尾はどうですか？」 「取り敢えず市街地で戦闘になったときには、あちこちの道場の泰拳士が護りに入ってくれます。極力街の外での戦いになると思いますので、そっちで一緒に戦ってくれる泰拳士さんにも話は振っておきました」 「ボクの方も大体の確約はいただいてきました。有事には力を貸してくれるそうでねしばらくはその為の連携を強める何かが必要ですね」 そう静雪が告げると、残っていた仲間たちも静かに肯く。 「私の方も、奏さんや絵梨乃さんと同じく、道場の説得に行って参りました」 そう告げるのは嵩山 薫（ia1747）。 「殆どの道場で共闘の約束をして頂きましたけれど、二つの道場がどうしても頭を縦に振ってくれませんでした‥‥」 そう切なそうに告げる嵩山。 「その二つだが。嵩山さんの後で俺も行ってきたが‥‥。やはり協力はして頂けない。戦うことに脅えてしまっていたな」 神鷹 弦一郎（ia5349）も椅子に座りつつそう告げる。 「そうでしたか。戦ってはくれないのですね」 「道場の師範代が死体になって川に浮かんだんだ‥‥門下生が離れなかっただけまだ人徳はあるらしいが‥‥戦う事を恐れている」 ──ギィィィィィィィィィィィィィィッ 「ふう‥‥今戻りました」 町の中を情報収集してまわっていた竜哉（ia8037）が飯店に戻ってくる。 「何かいい噂がありましたか？」 そう令琳が問い掛けると、竜哉は椅子に座らずに話を始める。 「旅泰街で主に聞き込んできたのですが、赤流星の斜亜、アヤカシが取り付いているらしいですね。それと、これは他の街から流れてきた商人から聞いた話なのですが、風龍八十八聖は、近々、大きな事件を起こす可能性があるそうです」 その竜哉の言葉に、一同は目を丸くする。 「その大きな事件っていうのは？」 「俺も詳しくはないのですが、どこかの城塞都市を襲う話が進んでいるようです。その前準備として、この付近での活動が活発になっているということらしいです」 その噂の出所もやはり旅商人。 どこまでが真実か信憑性がないが、それでも注意するに越したことはない。 「旅をしてきた拳士にも話を振ってきてやった。ここの飯店の泊まり客とか、別の飯店の客とかにもな」 レイア・アローネ（ia8454）がそう告げつつ飯店のなかに入ってくる。 「皆の話の通り、風龍八十八聖というのはかなりの手練れらしいな。それなりに心して掛からねばなるまい」 拳をパシィィィィンと鳴らしつつ、レイアが告げる。 その後、細かい打ち合わせなどを行ない、さらに決定事項を各道場に伝達すると、いよい開拓者一行は迎撃準備を開始した。 街の人々を出来る限り街の中心に集め、その当たりの建物や飯店を開放してもらい、そこに避難させる。 腕二児進のある拳士達は正面での迎撃班と郭建物の警護班に分散、住人の安全を第一に考えるように告げる。 そして一通りの準備が出来た二日後、街道を警戒していた街の人から、赤流星の斜亜が来た事を告げられた。 遠目に見て、街道を馬でやってくる武装集団の数が見える。 その数、およそ３００。 それが街の前方に広く分散して隊列を整えると、じっと街の方を監視している。 （隊列がかなりヤバイな。集団戦をよく知って居る陣形だ‥‥） 街の中で一番高い建物からその動きを眺めている弦一郎が、そう心の中で呟く。 そしてすぐさま敵の隊列を竹簡に記すと、それを伝令に持たせて前線へと走らせる。 ──そのころの前線 「あいやぁ‥‥この隊列はかなり厳しいアルよ」 弦一郎から渡された敵の陣形。 それを見て、飛鈴はそう呟く。 「どうしてですか？」 と嵩山も告げつつ覗きこむが、やはり数で攻めてくる事を前提とした隊列になっている。 正面からやってきても、１度に戦えるのは大体１０前後だが、大きくまわりこみ、側面からの突入も考えた配置になっていた。 つまり、正面からの迎撃だけでは護りは不十分なのである。 「各道場に伝令をお願いします。左右及び後方の門でも隊列を組んで迎撃の準備を！！」 絵梨乃がそう伝令に告げて走らせた時、正面の敵から声が聞こえてくる。 「桃華の民よ。秘伝書を渡す準備はできたのかな？」 それは赤流星の斜亜。 「申し訳ありませんが、私達は貴方たちに秘伝書を渡すことはできません。どうしてもというのでしたら、私達を倒して手に入れてください」 そう啖呵を斬る嵩山。 「ほう。随分と威勢のいいお嬢さんだ。名をなんという？」 「嵩山流泰拳、十三代目が嵩山薫‥‥推して参るわ！」 そう告げてスッと構えを取る嵩山。 「惜しいな。強さと無謀を履き違えている‥‥その命、ここで散らせるとは」 そう告げると同時に、斜亜がスッと手を上げる。 それが戦いの合図。 次々と馬に跨った盗賊達が正門へと向かっていく。 「雑魚は黙って眠るアルっ！！」 素早く走りだすと、飛鈴はそのまま押し寄せてくる盗賊目掛けて旋風脚を発動。 鋭い正拳突きで敵を馬から落とすと、そこに目掛けてレイアが突撃！！ ──ズバァァァァァァァァァァァァァァァァツ レイアのスマッシュが炸裂。 その一撃で腕を飛ばされた盗賊は絶叫を上げつつその場に崩れていく。 「次に腕を切り落とされたいのは誰っ！！」 レイアのその叫びに、勇気ある盗賊は次々と馬から飛びおり、剣を抜いてレイアと飛鈴に向かって襲いかかっていった。 ──一方その頃 目の前には二人の盗賊。 竜哉は鉄爪を身に付け、ゆっくりと二人を対峙する。 （剣持ちと鉄爪の二人か‥‥色々と厄介ですね） そう思いつつ、摺り足で二人から間合を取る。 「色男さんよ。とっとと逃げちまいなよっ！！」 そう叫びつつ剣持ちの盗賊が切りかかる！！ ──ザサァァァァァァァァァァァァァァァッ その瞬間、予め確認してあったゆるい地面に爪先を差し、そのまま土を盗賊の顔目掛けて蹴飛ばす！！ 「ウワッ！！ 目、目がっ！！」 目くらましを受けた剣持ち。 と、その横から鉄爪使いが間合を詰めてくるが。 「遅いです！！」 交差法で強打を叩き込む竜哉。 その一撃を胸許に叩き込まれ、盗賊はその場に崩れる。 「まあ、大勢で押し寄せてきたのですから、それなりに覚悟はしている筈ですよね？」 ニイッと笑う竜哉。 そしてそのまま竜哉乱舞モードに突入。 しばらくして、袋叩きで意識を失っている盗賊が縛り上げられることとなる。 ──さらに 目の前を盗賊達が走る。 正面にむかって次々と駆けていく盗賊に対して、令琳は近くの茂みに隠れてこっそりと襲撃の気配を伺っていた。 「そろそろですね‥‥頼みますよ」 そう呟きつつ、懐から呪縛符を取出すと、瞬時に盗賊達に向かって投げ付ける。 「縛っ！！」 と、手から放たれた式が煙となり蛇のような姿を形成する。 それは素早く盗賊の四肢に纏わりつき、その動きをある程度鈍らせている。 「なっ、これはなんだっ！！」 その盗賊達は陰陽師を知らないらしく、式の存在に動揺の色を隠せない。 「それでは‥‥いきますね‥‥ヒック」 ほろ酔い気分の絵梨乃が、酔拳で動きを制御された盗賊達に次々襲いかかっていく。 ──ドゴバキドガボコッ あっと言うまに盗賊を叩きのめすと、桃華名物の『白酒（パイチュウ）』をグイッと一呑み。 「ふぅぅぅぅぅぅぅ。かなり効いてきます‥‥次はどなたでしょうか？」 そう告げつつ、再び令琳の呪縛符の犠牲となった盗賊を見つけては、そのまま叩きのめしていく。 ──さらに 「‥‥やはりねぇ‥‥」 近くの茂みから、先程見ていた敵の陣形から動きを予測した弦一郎は、奇襲のタイミングをじっと待っていた。 正面ではなく、手薄である左右に向かって敵の一団がこっそりと移動を開始しているのを確認すると、すぐさま伝令で防衛に付いている泰拳士に敵の動きを告げる。 さらに弓を番えると、隙を見て攻撃をしかけていく敵の頭部を的確に打ち抜いていく。 「あとは斜亜と天馬か‥‥距離を詰めないとならないが‥‥」 そう呟いた時、再び敵の一団が側面にまわりこむ。 「これじゃあここから動けないか‥‥まあいい、正面は信じて、俺は甘んじてこの場所を引き受けよう‥‥」 再び矢を番える弦一郎。 その動き、いぶし銀の如く。 ──そして一騎打ち 正門手前。 静かに駆けてくる『疾風の天馬』。 その前では、静雪と嵩山の二人が身構えている。 「それじゃあ、そこを通して貰おうか？」 そう告げる天馬に対して、二人は一歩も譲らない。 「どうしてもというのでしたら、私達を倒して行ってください」 「もっとも、私達を相手に勝てたらの話ですけれど」 そう告げると同時に、二人が一斉に天馬に向かって戦いを仕掛ける。 上段からは嵩山が旋風脚からの掌打二段、下段では静雪の骨法起承拳による急所攻撃。 ──ガシガシッ 同時に仕掛けられたものの、上段は受け流し、下段は足でがっちりと受け固める天馬。 「いい攻撃です。が、隙が見えますよ‥‥」 そう告げつつ、後ろに下がる天馬。 ならばと、嵩山は右側面に、静雪が後方へとまわりこむと、再びコンビネーション攻撃。 ──ススッ‥‥ と、今度は静かにまわりこまれ、そのまま後ろを取られる嵩山。 ──ダンッ！！ と、さらに一歩踏込まれ、震脚と同時に肘鉄を叩き込まれる嵩山。 （こ、この威力は‥‥） 素早く反撃に転じようとするがも、そんな隙はない。 さらに左正拳を背骨に叩き込まれるとさらに右肩口からの体当たりを叩き込まれる！！ ──ダンッ！！ その三連撃で、嵩山は吹き飛ばされ意識を失いつつある。 「薫さんっ！！」 静流がそう叫ぶと同時に、嵩山が意識を取り戻し反撃に出る。 ──バシィィィィィッ 激しく叩き込まれる双手の掌底打。 それは威力こそ先程受けた三連撃には及ばないものの、天馬の体勢を崩すだけの力はあった。 そしてそこに泰練気法によって覚醒した静雪の改心の一撃が叩き込まれた！！ ──ドゴッ それは天馬の胸部にミシミシとめり込む。 「グファッ‥‥たいしたものだな‥‥」 そう呟きつつ、ヨロヨロと後ろに下がる天馬。 （い、いけますっ！！） （今ならっ！！） 二人はそう確信し一気に天馬に向かって間合を詰める。 ──ドゴドゴッ！！ と、その刹那。 二人は目に見えない何かに弾かれた。 「何っ！」 「誰ですか？」 そう叫ぶ二人の前には、斜亜が静かに立っている。 「斜亜‥‥」 「貴方を倒して、この街は護ります！！ 邪なる武術には、決して屈しません‥‥」 そう叫ぶ静雪と嵩山。 「時間がかかり過ぎた‥‥貴殿ら開拓者の実力は十分に理解できた。ここは引かせてもらうとしよう‥‥」 そう告げると、斜亜は全員に撤退の合図を送る。 そして身動きの取れる敵は次々と撤収していく。 その殿には、天馬と斜亜の二人がついていた。 「逃げるのですか！！」 「戦術的撤退というやつだよ‥‥それでは‥‥」 そう告げて、斜亜は一人街道の真ん中に陣取る。 その動きに合わせて、竜哉とレイアの二人も嵩山たちの元に駆け寄る。 ──ピィィィィィィィィィィィィィィィィッ と、斜亜が口笛をふいた刹那、横の森から１頭の馬が駆け寄ってくる。 それにヒョイと飛び乗ると、斜亜はそのまま姿を消した‥‥。 ●そして 斜亜の襲撃失敗から、いきなり情況は変わった。 街の周囲では盗賊の姿を見る事はなく、街の人たちが教われるという事件も無くなった。 以前のように街は活気を取り戻し、大勢の旅人や商人が訪れるようになった。 だが、本当に平和は訪れたのだろうか。 秘伝書は各道場にて厳重に保管されているものの、またいつかそれが狙われる可能性もある。 その時､この街は、護りきることができるのだろうか‥‥。 一抹の不安はあるものの、この街を信じて、開拓者たちは再び旅に出た。 ──Ｆｉｎ |
