【Y日誌】海底神殿調査
マスター名:久条巧
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/10/08 01:24



■オープニング本文

──事件の冒頭
「‥‥で、今度はどちらの遺跡ですかぁ、教授。今までの報告書を読む限りでは、そろそろ大きな話になっているんじゃないですか?」
 開拓者ギルドカウンターでは、一人のギルド員が依頼主に向かってそう呟いていた。
 依頼人は考古学者のウェンリー・Y・ジョーンズ博士。
 あいかわらず山野を駆け巡る果てしない冒険を繰り返していたようである。
 つい先日もジルベリア郊外の神殿遺跡の調査を行なっていたというのに、もう次の調査の準備をしているようである。
「ジルベリア北方より船を出したい。ここじゃ、この座標に行きたいのじゃよ」
 手にした海図を広げると、ミハイル博士は印の付けられている海域を指でトントンと叩いた。
「随分と中途半端な場所ですね。近くに島はないですし。ここに何が有るというのですか?」
 そのギルド員の問い掛けに、ミハイル博士は周囲をキョロキョロと見渡してから、ギルド員に近付いて口を開いた。
「海底神殿じゃよ。古の海底神殿。そこの場所を探りだして調査したいのじゃよ」
 そうミハイル博士が呟いた時、ギルド員の瞳がまたしてもキラーンと輝いた。
「‥‥最近の博士は、どうも信用なりませんねぇ。その遺跡もまた、何もないとかいって‥‥本当は、何か古代の英知でも封印してあるんじゃないですか?」
 その言葉にドキッとしながらも、ミハイル教授は手にしていたペンダントをサッと素早くポケットにしまい込んだ。
「あ、ああ‥‥大丈夫じゃ。調査じゃよ調査。ほれ、件の遺跡神殿、あの追跡調査じゃて」
 そう告げると、考古学者は依頼金の詰まった袋をカウンターに預けていった。
「今回は‥‥海底に眠る神殿ですか‥‥その海域には最近、海賊らしき船が横行しているそうですから気を付けてくださいね‥‥」
 ギルド員はそう呟きながら、掲示板に依頼書を張付けた。


■参加者一覧
柊沢 霞澄(ia0067
17歳・女・巫
朧楼月 天忌(ia0291
23歳・男・サ
エメラルド・シルフィユ(ia8476
21歳・女・志
劫光(ia9510
22歳・男・陰
ラシュディア(ib0112
23歳・男・騎
琥龍 蒼羅(ib0214
18歳・男・シ
ルンルン・パムポップン(ib0234
17歳・女・シ
壬護 蒼樹(ib0423
29歳・男・志


■リプレイ本文

●またしてもくそぢぢい
──ジルベリアとある地区・ジョーンズ研究所
♪〜
 赤い巨神を知っている?
 海の向こうに小さな島。
 霧に隠れた小さな島の、雲の下の小さな島。
 王様と王妃様を護っている、忠実な赤い巨神。

 蒼い巨神を知っている?
 山の向こうの小さな島。
 雲の上の小さな島の、雲の下の小さな城。
 破壊と再生の門を潜って、蒼い巨神を探しにいこう。
♪〜

 そう歌を唄っているのはジョーンズ博士の助手であるキルミー女史。
「‥‥今頃、博士たちは遺跡にたどりついているでしょうか‥‥」
 そう窓の外を眺めるキルミー女史。
 その頃、ジョーンズ博士達はとんでもないことになっているようです。


●そのとんでもない事
──とある海域・とある商船
「ふぉっふぉっふぉっ。これは予想外」
 縄で縛られているジョーンズ博士が、楽しそうにそう呟いている。
「楽しそうに笑わないでくださいよっ!!」
 と隣で縛られている柊沢 霞澄(ia0067)が哀しそうに告げる。
「まあ‥‥突然ぢゃったしのう‥‥」
 と落胆しつつ告げるジョーンズ博士。
 では、一体何が起こったのか説明しよう。
 海賊に襲われて、二人が捕まった、以上。
 そして現在、第一甲板上では残ったメンツが必死に戦いつづけている。
「‥‥で、あと何人、オレに締められてえんだ?」
 と呟く朧楼月 天忌(ia0291)。
 彼の目の前には、すでに10数人ほどの海賊が倒れている。
 血まみれの拳を構え、静かに告げる朧楼月に、残った海賊たちは少しずつ下がっていった。
「逃がすかバーカ」
 と呟くと同時に、手にした斬撃符を飛ばすのは劫光(ia9510)。
 瞬時に生み出された真空刃に襲われ、海賊達は次々と逃げはじめる。
「‥‥なにかこう、もっとスマートにいけないものかねぇ‥‥」
 逃げていく海賊達に止めといわんばかりに雷鳴剣を叩き込んでいるのは琥龍 蒼羅(ib0214)。
 チン、と刀を納めると、そのまま周囲の人たちを見渡す。
「こっちは大丈夫、怪我人はいない」
 と船室から壬護 蒼樹(ib0423)がヒョイと顔を出す。
「はーい。こっちの海賊は全て縛り上げましたのでー」
 と楽しそうに叫ぶのはルンルン・パムポップン(ib0234)。
 乗船してきた海賊の殆どは開拓者によって捉えられ、縛り上げられていた。
 残りは第二甲板で捕まっている博士と霞澄の二人を救い出すだけ。
 だが、そこには海賊の副船長とその手下達が待機していた。
「開拓者どもっ!! そろそろ武器を捨てておとなしくしやがれ!! でないとこの博士たちの頭が、胴体から離れるだけだぞッ!!」
 とにこやかに叫ぶ副船長。
「‥‥まあ、そんなに叫ばなくても‥‥」
 と副船長の背後から話し掛けているのはラシュディア(ib0112)。
「てっ!! てめえ、一体どこから姿を現わした」
「後ろからだ!! そして前からはもっと危険!!」
 振り向いて叫んだ副船長に向かって、ラシュディアは正面を指差す。
「前が危険だぁ?」
 と呟きつつ前を見た刹那。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
 素早く飛込んできたエメラルド・シルフィユ(ia8476)の飛び蹴りが副船長の顔面を痛打。
「‥‥と、こんなところかしら?」
 そう呟きつつ、気絶している副船長を捕まえて縛り上げるエメラルド。
「ということで、海賊さん達、全員降参しないと‥‥この副船長さん殺すわよ?」
 ニィッと微笑みつつ告げるエメラルド。
 ということで、海賊達は全員降伏。
 だが、隣接していた海賊船は船体を繋いでいたロープを切り離して高速で逃走していった。
「‥‥まあ、あれを追いかける必要はなしと。で、博士はなんで抵抗しなかった?」
 と劫光が問い掛けると一言。
「はっはっはっ。腰が抜けたのぢゃ‥‥」
 と告げる。
 それにはその場に居合わせた全員が大爆笑。
 ということで、皆が無事になったのを確認して、船は再び目的の座標へと向かっていった。


●海底神殿までなんメートル?
──ジルベリア近海・とある海域
「‥‥ふむ。このあたりぢゃな」
 と地図を広げつつ呟いているのはジョーンズ博士。
 海図によると航路からかなり離れた暗礁地帯に船は進んだ。
 そこの一角にある小さな島に船は接岸すると、そこで錨を降ろした。
 そして直径で500mもないその小島に開拓者とジョーンズ博士が上陸すると、早速調査が開始された。
「‥‥あの教授、海底神殿ですよね?」
 と問い掛ける霞澄に、ジョーンズ博士は静かに肯く。
「うむ。こっちぢゃこっち。海底神殿だからといって、海の底まで潜っていく必要はない。ここの島にある遺跡から地下へと向かい、そこから入っていくのぢゃよ‥‥」
 と告げると、ジョーンズ博士は周囲をゆっくりと見渡した。
──スーーーーーーーーーッ
 と深い霧が立ちこめてくる。
「しかし、この当たりの天候はすぐに変わるなぁ‥‥」
 と朧楼月が告げると、ルンルンが静かに。
「気を付けてください。魔力をおびた霧です‥‥明らかに自然のものではありません‥‥」
 と呟く。
 と、同時に全員が戦闘態勢に入った。
──ドゴォォォォォォッ‥‥ドゴォォォォォォォォォォォッ
 と、遠くから地響きが聞こえてくる。
 なにか巨大なものが歩いてくる音のように一同は感じた。
 そして‥‥
──ヴゥゥゥゥゥゥン
 霧の向うに、蒼い体躯の巨大な『アーマー』が姿を現わした。
 全長にして13m。
 あきらかにジルベリアの『アーマーナイト』の駆る『アーマー』とは大きさが異なる。
 あまりにも巨大すぎるのである。
 それが一瞬だけ姿を表わすと、そのまま霧の向うへと消えていった。
 そして、それが姿を現わした瞬間、開拓者達はその場に釘付けになってしまった。
 一言も言葉を発する事が出来ない。
 一歩も動く事が出来ない。

 恐怖からか?
 畏怖なのか?
 それとも崇高?
 
 兎に角、霧の向うに蒼き巨神が消えるまで、開拓者達はなにもできなかった。
 やがて霧もスッと消え、再び太陽の光が島に溢れんばかりに注がれた。
「‥‥参った。こんなことがあるなんて‥‥」
 と冷や汗を拭いつつラシュディアが呟く。
「今のは現実? それとも幻?」
 とエメラルドが周囲に問い掛ける。
「さあな。ただ判っていることは、幻だったとしてはあまりにも‥‥目の前の現実を認めるしかないって事だろう?」
 と劫光は目前にあった巨大な足跡を指差した。
「蒼い巨神を知っている? 山の向こうの小さな島。雲の上の小さな島の、雲の下の小さな城。破壊と再生の門を潜って、蒼い巨神を探しにいこう‥‥。さて、歌の中の一節、山の向こうの小さな島。それは海図ではここを差している。が、雲の上の小さな島の、雲の下の小さな城というのがどうも‥‥」
 と腕を君で考えるジョーンズ博士。
「まあ、ここで悩んでも仕方ないだろう? まずは先に進まないか?」
 と琥龍が告げると、一行はようやく思い腰を上げはじめた。


●ジャイアントホール
──とある島の中央。
 そこには直径で100mほどの縦穴があった。
 冷たくて潮の香りがする風が突風のように吹き出す穴。その内部壁には、螺旋階段のようなスロープが続いている。
 そして例の巨大な足跡は、ここに繋がっているようである。
 だが、スロープ自体がかなり頑丈な岩を組み込んで作られている為、足跡はもう続いていない。
 そのスロープの幅から考えると、このスロープは例の巨神のために作られているようにも見える。
「‥‥しかし、どこまで降りるんだ?」
 と蒼樹が呟く。
 スロープを降りはじめてからすでに1時間、かなりの深さまで下りたように感じる。
 降りるほどに太陽の光が届かなくなり、後半にはランタンに火を灯す事になった。
 そして3時間後、ようやく最下層までたどりつく。
 そこから6つの方角にトンネルが続いている。
 高さは大体20m、その向うにはまだ何も見えない。
「‥‥信じられぬ。このような場所が存在していたとは!!」
 今まで沈黙を続けていたジョーンズ博士がようやく口を開いた。
「まあ、ここまでに存在したトラップは0。殺気を放つ存在0。きわめて安全な遺跡というかんじだが?」
「ここまではねぇ‥‥」
 と呟く琥龍。
「周囲6つの回廊全てから感じる『あやかし』の気配。これに対処する方法は?」
 とエメラルドがラシュディアに問い掛ける。
「各個迎撃‥‥っていう訳にはいかないのか!!」
 それぞれの回廊に見えるあやかしの数はざっと100以上。
 それらが一斉にこの場所にやってきた場合、全員が生還できる確率は0。
「ここは逃げつつ戦うという事でOK?」
 と朧楼月が告げる。
 彼自身も現在の自分達の戦闘力からはじき出した。
 生きて帰る為には逃げるしかないと。
「それでは‥‥全員撤収!!」
 その劫光の掛け声と同時ニ、全員がスロープを駆け昇る。
 殿には肉弾戦チーム、その次がルンルンと霞澄。
 そして先頭にはジョーンズ博士が立っている。
 次々とスロープを昇ってくるあやかしを迎撃しつつ、一行はとにかくスロープを駆け昇っていった。
 飛行型アヤカシが一体も居なかったのが幸いしたが、全員がスロープから地上に出たときにはすでに日はどっぷりと暮れていた。
「ふぅ‥‥とりあえず一旦船に戻ろう。それから明日からどうすればいいか考えよう」
 とジョーンズ博士が告げたため、一旦全員が帰還していった。


●そして
 残った日数の殆どを費やして、一行はスロープの調査を行った。
 二日目からの調査で判ったのは、6つの回廊のうち二つは途中で天井が崩れた埋まっていること、そしてそこに『瘴気溜り』が発生しアヤカシが出現していたらしい。
 残った4つのうち二つがさらに下りのスロープになっていたが、かなり深くまで進んでいたらしく調査は断念。
 残った二つのスロープだが、人が入れるぐらいの扉が無数にあった回廊と、巨神サイズの扉があった回廊の二つが存在。
 そして人が入れるぐらいの扉だが、鍵か何かが仕掛けられていたらしく、今回の調査ではその内部まで調べる事は出来なかった。

 さて、無事に調査を終えた一行は一旦ジルベリアへと帰還していった。
 再度調査にやってくる為には、もう少しいろいろと準備をしておく必要があるらしい。

♪〜
 赤い巨神を知っている?
 海の向こうに小さな島。
 霧に隠れた小さな島の、雲の真下の小さな島。
 王様と王妃様を護っている、忠実な赤い巨神。

 蒼い巨神を知っている?
 山の向こうの小さい島。
 雲の上の小さな島の、雲の下の小さな城。
 破壊と再生の門を潜って、蒼い巨神を探しにいこう。
♪〜

 一行が島を離れる際、その歌声が島から聞こえてきた。
 女性の、哀しい歌声であった‥‥。