とある書物の実在性
マスター名:久条巧
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 7人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/09/13 03:08



■オープニング本文

──事件の冒頭
 場所はジルベリアのとある辺境。
 そこにある、とある街には、それはそれは大層綺麗な‥‥セクシーなお嬢様が住んでいました。
 その女性の名前は『ビラスィー』。
 彼女の実の母親は病気ですでにこの世にはおらず、唯一血の繋がった父親と、その再婚相手の女性との3人で過ごしていました。
 ある日の事。
 母親の言いつけで、ビラスィーは近くの森へ薬草を摘みに向かいました。
 と、そこでビラスィーは3人組の無頼漢に襲われてしまったのです。
 男達はただただ『済まない。お嬢様には悪気はないんだ‥‥』と謝りつつもクレイモアやバスタードソードでビラスィーを殺そうとしました。
「何故‥‥何故私が殺されなくてはならないのっ!!」
 そう高飛車に叫ぶビラスィーに、無頼漢の一人が申し訳なさそうに一言。
「すべて奥様のいいつけですだ‥‥」
「奥様は、お嬢様を亡き者にし、先代の奥様の残した遺産を独り占めにしようと企んでいますだ。ああ、申し訳ないですだ‥‥袋一杯の金貨を手付けで貰っていますだ、お嬢様、死んで戴くDEATHだ!!」
 そう告げつつもビラスィーと無頼漢の戦いは続きます。
 ですが、いつまでも戦えるお嬢様ではありませんでした‥‥。
 ついに崖際まで追い詰められた時、お嬢様は堪忍して男達に懇願しました。
「なら、お母様の払った倍額を払ってあげるから‥‥命だけは助けて‥‥」
 金で解決かよ!!
 ですが、男達はビラスィーが身につけていた宝石を受け取ると、そのままビラスィーに町には戻らないようにと言いつけてその場を立ち去ってしまったのでず。

 さて、ビラスィーは困り果ててしまいました。
「わたしを亡き者にして遺産を取り上げようとはお母様もなかなかやりますわ‥‥ですが、このビラスィー、その程度の策謀に陥るような娘ではありませんわ‥‥」
 と呟くと、早速行動を開始したのです。
 
 そのまま近くの村まで向かうと、ビラスィーはその村に在った酒場に足を運びます。
 丁度そこには7名の開拓者達が居ました。
「母親に命を狙われているの‥‥お願い、力を貸して!!」
 かくして、ビラスィーの復讐劇が始まったのです‥‥。


■参加者一覧
巴 渓(ia1334
25歳・女・泰
秋桜(ia2482
17歳・女・シ
白犬(ib2630
16歳・男・シ
朱月(ib3328
15歳・男・砂
色 愛(ib3722
17歳・女・シ
寿々丸(ib3788
10歳・男・陰
蘭 聖夜(ib4030
17歳・男・シ


■リプレイ本文

●7人の猛者
──ジルベリア郊外‥‥とある街
「はい。父は健在です‥‥一応は街の名士ですので、そこそこに人望はありますけれど‥‥」
 と静かに巴 渓(ia1334)に告げるビラスィー。
 街の酒場に助けを求めてきたビラスィーに共感した8人の戦鬼‥‥開拓者は、とりあえす情況を確認する為にビラスィーをすわらせると、ゆっくりと色々と話しはじめた。
「成る程ねぇ。と言うことは、ビラスィーに力を貸してくれる協力者としては父親は信用していいっていうことか。それじゃあ‥‥秋桜‥‥」
──ガバッ
 と、秋桜(ia2482)の名前を呼んだ白犬(ib2630)の口を両手で塞ぐ秋桜。
「それはどなたでしょう? 私は紫煙丸。そのような人物は知りません」
 と、覆面までして正体を隠している秋桜。
「チッチッチッチッ。紫煙丸です。御間違えのないように‥‥」
「‥‥なあ、秋桜は誰に向かって話をしているんだ?」
「ですから紫煙丸と申しますって‥‥」
 さらに朱月(ib3328)にまでそう突っ込みを入れる秋‥‥
「紫煙丸!!」
 はい、紫煙丸でした。
「まあ、手伝う以上はそれなりの見返りは戴くとして‥‥取り敢えず、この御面でも被っていなさい」
 とビラスィーに兎面を手渡す色 愛(ib3722)。
「はい。で、どのように手を貸して頂けるのでしょうか?」
「‥‥まあ、深夜に屋敷に忍び込み、そのまま継母を捕まえて成敗っていうのが得策だよな」
 と巴が告げる。
 それについては一同異議無しだったが。
「私達の立場上もあります。殺しは無しで猛反の方針でいかかですか?」
 と紫煙丸が告げる。
「父親の手を借りた方が早いと思うが」
「ですが、それには問題が‥‥」
 と告げて、紫煙丸が巴の耳に何かを告げる。
 そして腕を組み考え込む巴。
「いや‥‥しかし‥‥ちょっとまてよ‥‥ここがこうなって‥‥うーーーーーーーーーーーーーん」
 ああっ、巴の思考が爆発寸前。
「では、色々と忍び込む為の準備が必要ですよね。ビラスィーさん、ちっょと手を貸して頂けませんか?」
 と告げるのは白犬。
 そのままビラスィーと二人で別室に入り、何かの準備を行なっていた。
「ふぅーん。とりあえず忍び込むにしても、屋敷の見取り図と父親の居る場所は知っておく必要がありますね」
 と告げるのは寿々丸(ib3788)。
 いずれにしても潜入工作が必要であることは確定である。
 ならば、その為の屋敷の見取り図などが必要になる。
「それならば、ここにあるっす‥‥」
 とスッと突然姿を現わしたのは蘭 聖夜(ib4030)。
 そのまま懐から巻き物を取り出すと、それをテーブルの上に広げた。
「聖夜、一体何処から?」
「いやいや、ビラスィーお嬢様から話を聞いて、いてもたっても居られなくなったっすよ。で、まずは内部潜入して細かいところの調査を行なってきた訳っす」
 ドヤ顔(正確にはモフラの仮面を付けている為、ドヤ顔は見えないが、雰囲気はヒシヒシと伝わってきた)でそう説明する聖夜。
「ふぅん。いい仕事しているわね? で、父親は?」
「この部屋っすよ。内部で何か大きな物音がしても大丈夫なように、一服盛ってきたっす。朝まで絶対に目を醒ます事は無いッスよ」
──スパァァァァァァァァァァァァァァン
 と、突然どこからともなく取出したハリセンチョップで、全員が一斉に聖夜の後頭部をぶん殴る。
「ダメじゃん」
「まあ、それでもやるしかないか‥‥全員準備に入ってくれ」
 と巴が告げたとき、奥の扉がギィィィィィィィィィィィッとひらき、二人のビラスィーが姿を現わした。
「こ、これほどとは‥‥」
「そっくりですなぁ」
「替え玉としては完璧ですねぇ‥‥」
 と告げる一行。
「いや。こんなに似せる必要あったの? ねぇ。教えて頂戴!!」
 と皆の視線を感じつつ、必死に力説する白犬であったとさ。


●そして仕事
──ジルベリア郊外・ビラスィー自宅
 時は深夜。
 先に潜入工作を行なってきた聖夜の案内で、静かに屋敷に侵入する一行。
 あらかじめ調べておいた用心棒達の待機部屋を探し出すと、まずは一行はそこに突入。
「き、貴様達、一体なにものだ!!」
「問われて名乗る阿呆ではない!!」
 まずは巴が啖呵を斬る。
「何が目的だ!!」
「奥方様の御命‥‥頂戴しますわ」
 と今度は紫煙丸が告げる。
「一体どこから入ってきた!!」
「玄関からだ!! 生憎我々はアヤカシではない!!」
 と止めに聖夜がボケをかます。
「ふん、そんな挑発に乗るものかよっ!!」
 と相手の用心棒も一歩も引かず。
 それならばと、突入した開拓者と用心棒との激しい戦いになった。
──ピーーーーーーーーーーーゴロゴロゴロゴロ
 と、突然用心棒の動きがぎこちないものになっていった。
「い、一体どうしたのですか?」
「まあ、こんなこともあろうかと、聖夜と共に侵入し、貴様達の飲食物に超強力下剤をセットしておいただけだっ!!」
 紫煙丸の疑問には、朱月から威勢良く報告があった。


──そして
 1刻ほどして、敵用心棒を全て縛り上げた一行は、次なる部屋へと向かうことになった。

 とある部屋。
 そこは普段継母が使っている。
 その日も、継母は部屋でぐっすりと熟睡していたのである。
(プッツーーーーーーーーーーーーーン)
 その光景を見て、朱月と愛の二人は素早く継母をふん縛り上げる事になった。
 だが、必死に抵抗する継母を、誰も止める事が出来なかった。
「き、貴様達、一体だれの差し金で?」
 そう継母が告げたとき、スッと白犬が扮装したビラスィーが室内に入ってきた。
「お母様‥‥どうしてわたしを狙ったりしたのですか?」
「遺産だぁね。旦那とビラスィー、アンタたちが死んだら、莫大な遺産がわたしの手元に届くようなしくみになっている。そのためには、夫もビラスィーも邪魔なのよっ!!」
 そう叫んだと同時に継母は懐から取り出したナイフを力一杯白犬に投げ飛ばした。
──ズバァッ
 そのナイフを逸早く感知し、それを回し蹴りで弾き飛ばす愛。
「‥‥ビラスィーはうちの義兄弟になったの。今度この子に手ぇだしたら大盗賊のうちの親が黙ってないわよ」
──スパァァァァァァン
 聖夜に引き続き、今度は愛が全員からハリセンの応酬を受けていた。
「まあ、いずれにしてもこれ以上の権利を与えることはない‥‥良き母親となるのならば、その縄はほどいてやろう」
 と告げる巴。
「そうですわ。親が子の暗殺を依頼し、子が親に仕返すなど、旦那様が知ればどれだけの心労かは想像も及ばない‥‥」
 と最も伝えたい一文を残して、紫煙丸がそう告げる。
「‥‥けれど。私は‥‥遺産が欲しいのよっ。その為にあの男に取り入って近寄って‥‥結婚までしてあと一息だったのに‥‥」
 そう叫ぶ継母。
「‥‥最低。あんな何様のつもりよ‥‥」
 と、白犬に変装していたビラスィーがスッと前に出る。
 そして継母の横面に一発ビンタを叩き込むと、そのまま一言。
「あんたのしている事は犯罪。いい、このまま私達の前から姿を消して頂戴。今なら母親の蒸発っていう事で幕は降りるから‥‥そうでないと」
 と告げたとき、朱月がビラスィーの前に出る。
「ビラスィーが手を汚すことはない。その為の我々だ‥‥」
 と告げて、継母の方を向く。
「で、どうしますか? 今の立場を利用して、そのままで居座りつづけるか、ここで我々に首を刎ねられるか‥‥」
──ヒッ!!
 と恐怖のあまり声に鳴らない声を発する継母。
「で、出て行きますわっ!! こんなお金にならないこと、やってられませんわっ!!」
 そう告げると、継母は自身の身体を縛っている縄から解放された。
 そしてなにも言わず建物の外へと消えていった‥‥。


●後日談
 開拓者達の手によって、無事に娘が生きて帰ってきた。
 が、時同じくして継母の姿が消えた。
 ビラスィーは父に突発性の病気で慰安の旅に出かけたと告げて、この物語は幕を閉じるのでありました。

──Fin