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■オープニング本文 ──事件の冒頭 さて。 先月の擂台賽において、皇帝陛下の暗殺 未遂事件が起きた。 それから王都より勅名が下った。 その内容は以下の通りであった。 ・擂台賽において、より 強固な警備隊性を行うように ・泰国東方において起きている『風龍八十八聖』を中心と下一連の事件の解決 ・凰凱沖合いにある大小様々な島の調査を行う事 ・ジルベリアとの直接商用航路の充実と拡大 これらの事を突きつけられて、現在凰凱の議会は右へ左へと大忙し。 どれぐらい大忙しかというと。 『今月の擂台賽は都合により中止となります』 という事である。 そのため、各道場では、来月の大会にそなえて、さらなる修行に明け暮れていた。 そしてそれは、紅道場と泰国新蔭流道場も例外ではなかった。 ──とある鉱山跡 そこは今は使われていない廃坑。 その広い敷地と迷宮にて、紅道場と泰国新蔭流道場の二つは合同で特訓を行う事になっていた。 「ということで、早速修行だワン」 と着ぐるみ拳士のわんドシ君も参戦、さらなる道の力を身につけようとしていた‥‥。 |
■参加者一覧
三笠 三四郎(ia0163)
20歳・男・サ
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
秋霜夜(ia0979)
14歳・女・泰
巴 渓(ia1334)
25歳・女・泰
赤マント(ia3521)
14歳・女・泰
リエット・ネーヴ(ia8814)
14歳・女・シ
劫光(ia9510)
22歳・男・陰
日御碕・神楽(ia9518)
21歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●時代と共に ──泰国・凰凱郊外‥‥とある修行場 「ふぉっふぉっふぉっ‥‥」 静かに笑いつつ、紅老師が目の前で構えている三笠 三四郎(ia0163)を観察している。 今回の三笠の修行内容は、円を基本とした構え、そしてそこからの進化である。 ──ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ 静かに気を練り上げつつ、三笠はそれを周囲に静かに放ちはじめる。 「天地陰陽戦陣‥‥序っ!!」 意識的には自分を中心とした円、そして球。 気による結界のよな空間で、そこに入るいかなる存在も感覚として捉えようとしていた。 「ほう‥‥いいかんじぢゃのう‥‥ほれ」 と、外で見ていた紅老師が近くに落ちている石を広い、それを軽く飛ばす。 (‥‥石‥‥) 結果以内に飛んできた石を感知すると、今度はそこから一転して攻勢に転ずる。 飛んできた石に意識を集中し、それを追尾するようにグレートソードを放つ。 ──ガギィッ その一撃で石はくだけ散る。 「ふむ。いい感じじゃのう‥‥気の練りかたも上達したようぢゃな」 「ありがとうございます。師父が気のコントロール方法を教えてくださったおかげです」 と丁寧に頭を下げる。 「いやいや、基礎がしっかりとしていたからこそぢゃて。そのままじっくりと続けていくがよかろうて」 と告げると、紅老師は近くで待機していた師範代に石を投げるように指示をする。 「では‥‥行きます。天地陰陽戦陣・序っ」 再び気の結界を張り巡らす三笠。 「では、次の様子を見る事にしようかのう」 と告げると紅老師は別の場所へと移動していった。 ──一方その頃 「侍超撃の構え!!」 起立した状態からそう告げると、水鏡 絵梨乃(ia0191)はゆっくりと半歩右足を引く。 そのまま左前の構えから右足を高々と上げると、そこから縦横無尽な踵落としを繰り出していく。 「サムライの一撃は岩をも砕く!! その踵に気をこめて!!」 技を繰り出しつつそう叫ぶ絵梨乃。 そして真っ直ぐだけでなく右上、左上と縦横無尽な踵落としを繰り出していった。 「次は狙弓脚っ」 そう紅老師が告げると、今度は身体の軸を逆にずらす。 膝を曲げたまま左脚を上げると、それを振り子の如くゆっくりと揺らす。 「狙った得物は逃がさない、百発百中の蹴り!!」 そう叫ぶと、絵梨乃は右足一本で身体がぶれないようにバランスを取ると、そこから正面に向かって左側倒脚を叩き込む。 「まだバランスが悪いのう‥‥」 「すいません老師」 「よいよい。次は‥‥胡蝶乱舞っ」 そう告げると、絵梨乃は今までとは違ったゆったりとした歩法を始める。 まるで舞を躍っているかの如く、綺麗な脚捌きを開始した。 「奉納舞を舞う巫女の如く、華麗なる歩みを‥‥」 そう告げたものの、時折紅老師が飛ばしてくる甘栗の皮がピシピシと身体にぶつかる。 「‥‥まだ見切れておらぬのう‥‥」 「はい」 「よいよい‥‥次は魅惑殺」 そう告げると、絵梨乃は艶めかしい動きを開始。 そこに威勢が居る事を想定しての密着した体勢、そこから相手を翻弄する動きを見せ付ける。 「‥‥まあ、説明いらぬのう。次は‥‥」 「ええええ‥‥つっこみは無しですか?」 「うむ、こればかりはのう‥‥」 と意味深な言葉を残しつつ、紅老師は次の型を読み上げる。 「志士連弾っ」 そう告げたときも先程の胡蝶乱舞の型を見せる。 ただ、時折激しい蹴りを組み込み、二つで一つの技のように仕上げていった。 「誠を護り、そして戦う志士の如く、その一撃で相手を粉砕する‥‥」 そう告げると、時折強烈な蹴りを繰り広げる。 「まあ、これもまだまだと‥‥」 と告げる紅老師。 「ふぉぉぉ。それはあんまりです‥‥」 「ふぉっふぉっふぉっ。では全てを駆使した『酔仙人骨』っ」 と告げたとキ、絵梨乃は今までに繰り出した全ての型を組み込んだ演舞を開始した。 その動きの一挙一足等をじっと観察する紅老師。 そして全てが終ったとき、紅老師は静かにこう告げた。 「今の型を全て、毎日100回ずつ。そして夜に1度だけ、全てを組み込んだ『酔仙人骨』を見せなさい‥‥」 「はい。どこがいけなかったのでしょうか」 「ふぉふぉ。それが判らぬのならまだまだぢゃて‥‥では」 と告げると、紅老師は次の修行場へと向かっていった。 ●わんドシ君絶好調だワン ──その頃の別の修行場 「こ。これをですか?」 そう呟いているのは秋霜夜(ia0979)。 彼女の目の前の大木には、一つの鐘が吊るされていた。 「そうだワン。意識と気を指先に集中。そして!!」 ──ビシィッ と鐘に向かってデコピンを行うわんドシ君 ──ゴウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン と豪快な音が鳴り響いた。 「す、すごい‥‥」 「これが『剛体術』だワン。君のお父さんの奥義の一つ、君なら使いこなせる筈だワン」 と告げた。 「お父さんの‥‥技」 ニィッと笑いつつ、霜夜はグッと腰を落として身構える。 そして意識を集中すると、鐘に向かってデコピンを叩き込んだ ──へちょっ 何も音がしない。 「い、いったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」 あ、霜夜の悲鳴はありました。 「こ、これ無理」 「無理ぢゃないワン。僕は出来たワン」 「そんなの‥‥」 「気合だワン。気合で全ては丸く収まるワン」 といい聞かされた、霜夜は再び修行を開始した。 「ではわたしも‥‥」 と日御碕・神楽(ia9518)もまた、霜夜と共にわんドシ君の元で修行をしている。 ──ヘニャッ と、同じ剛体法のレクチャーを受け、そして霜夜と共に釣られている鐘にデコピンを叩き込む神楽だったが。 やはり今ひとつであろう。 「それなら」 と今度は構えを返る神楽。 そして ──ダン!! キィィィィン 震脚によって大地が震えた。 そして叩き込んだ一撃は、鐘をゆっくりと鳴らした。 「ほう。まぐれだワン」 「そそそ、そんなぁぁぁぁ」 と絶句する霜夜。 「これで‥‥剛体法が?」 と告げる神楽に、わんドシ君は一言。 「そのまま続けるワン。神楽の目指す高みは、まだまだ先だワン‥‥」 ──さらにその頃・廃坑 ヒュゥッ 真っ暗な廃坑。 その中で巴 渓(ia1334)は石を投げていた。 その先の坑道には、赤マント(ia3521)が静かに立っている。 「‥‥」 その飛んでくる石の中から、赤マントは自分にあたるであろう石とそうでない石を感覚的に捉えると、あたる石に向かって『紅砲』を叩き込む!! ──ゴゥッ その一撃で石は砕け、その場に落ちる。 「まだまだだなぁ。隙があり過ぎ、そして戻る間合がズレているって」 と巴が客観的に告げる。 「ふぅ。難しい。ここまで難しいとは思わなかったが」 と告げると、赤マントは引き続き巴に意志を投げるように告げる。 「はいはい‥‥それじゃあいくぜ」 と告げると、今度は石を4つ同時に投げる。 ちなみに二つは命中ルート、二つはギリギリ外れ。 ──ヒュヒュッ‥‥ボトッ 今度は意志を躱わしたものの、外れていた石に逆に辺りにいった感じであった。 「おいおい‥‥どういう事だい? しっかりしてくれよ」 「判って居るけれど‥‥どうにも‥‥」 と告げる。 そして今一度、赤マントはじっくりと構えはじめた。 (丹田で脈動している己の龍。これをコントロールしつつ、その高速移動で分身体を覚醒させる) すべては龍のコントロール。 それを察したのか、巴がゆっくりと立上がる。 「それじゃあ、今度は本気でいくぜ」 「ヨロシク!!」 と告げると同時に、巴は己の体内の気を消しはじめる。 (‥‥巴の気配‥‥気が消えた?) そして素早く間合を詰めると、そのまま赤マントに向かって連打を叩き込む!! 「ぐはぁっ!!」 そのまま紅砲に飛ぶ赤マント。 「まだまだっ‥‥感覚を研ぎ澄まして‥‥そこができないとっ!!」 その巴の叫びに同調して、龍のコントロールに成功した。 (‥‥いける?) そのまま構えていたとき、巴の一撃が叩き込まれた‥‥。 ──フッ と、突然赤マントの姿が消滅した。 そして離れた場所の瓦礫から、赤マントが姿を現わした。 「幻惑かっ!!」 そのまま渾身の一撃を叩き込む巴。 だが ──フッ とその場に居た筈の赤マントの姿が消滅し、ちょっと離れた場所に姿を現わした。 「ははっ。いい技じゃねーか」 「ハアハアハアハア‥‥そう何度も連発できはない技ですけれどね」 ちなみにたった数秒、その技が決まったとき赤マントの両脚から血が吹出した。 皮膚が裂け、血管が破裂していたのである。 「技の副作用‥‥ですか」 「ああ。まだコントロールできていない。少し休んだら続けるぞ」 と告げる巴。 やがて、そこには三笠や絵梨乃も合流することとなった。 ──そして・今度は外 「ちがーーーう、両腕に気を溜め込んで」 「はいはい、このように‥‥」 と両腕に気を集めているのはリエット・ネーヴ(ia8814)。 「そして、その気を大地に注ぎ、地脈を使って気を増幅し、柱とするワン」 と告げて、わんドシ君も大地に拳を叩き込む。 ──ドッゴォォォォォォォォォォォォォッ と、突然気の柱が生み出され、リエットの周囲に柱の塊が無双している。 それは意識を集中したリエットにはなんとなく見えていた。 「す、すごい‥‥」 と告げると、今度はリエットが気を大地に叩き込む。 そして (コントロール。地脈を詠み、そして‥‥) わんドシ君の正面に一本の気の柱が形勢される。 常人にはまったく見えず、感じ取る事も出来ないであろう。 だが、わんドシ君にはそれがはっきりと見えていた‥‥らしい。 「そ、それだワン」 「ふぅん。いい感じじゃねーの」 とエリットが技を披露したので、楽しそうに告げる劫光。 「‥‥劫光だワン。修練は終ったワン?」 とわんドシ君が問い掛ける。 「いや。休憩。羅刹師父、鬼だから‥‥」 と遠くを見つめる劫光(ia9510)。 そのまましばし、エリットの技を眺めていた劫光だが、やがて坑道手前の広場へと戻っていった。 ──そして 「陰陽体術。他の国や土地では使う事の出来ない技。この凰凱の持つ地脈霊脈龍脈の織り成す技の一つと知るがいい」 と仮面を付けた羅刹師父が告げる。 「で、ずーーーっと瞑想ばっかりで、そろそろ次に進みたいんだが」 と告げる。 「うむ。では、一つ問う。陰陽とは?」 「陰陽の術は本来倒すべきアヤカシを自身の力として呼び出す、術というよりは業‥‥」 と返答する劫光。 「全は個、個は全。1人の力に限界があるのと同様、腕力にしても呪力にしてもそれ単体では限界がある」 「ではいかんとする?」 「‥‥体術も、呪力も、気功も‥‥己の持つ全ての力を、一瞬で同時に解放しぶつける」 そう告げると、劫光は利き手に陰陽術で瘴気を圧縮する。 「ほほう。瘴気の具現化とはな‥‥」 そう告げる羅刹。 だが、どうしてもイメージが固まらない。 「今、劫光が行なおうとしている技は『北斗星君』と呼ばれる陰陽でも禁忌の技。踏込むと戻れなくなる可能性がある‥‥それでも‥‥」 「ああ。それでも俺は‥‥力が欲しい」 と叫ぶ。 「ならば、己の力の一部を利用せよ。それ為さずして具現化は不可能」 「‥‥ならば!!」 と何かを掴んだ劫光。 斬撃符を取出して己の腕に張付ける。 それを媒体として呪符を発動、そこから意識と根性のみでコントロールを開始。 腕の周囲にまとわりついていたカマイタチが輝き、やがて右腕を覆う手甲の形になった。 「こ、これが‥‥」 「うむ。それが劫光の『北斗星君』。まずはそれを身に纏ったままで生活を続けられるように‥‥」 と告げた刹那、手に装着されていた手甲がスッと消えた。 「ハアハアハアハア‥‥こ、これを付けたままで生活だって? 意識が他に向いたら消えちまうこれをか?」 「ああ‥‥この通りに」 と告げた刹那、羅刹師父もまた呪符帯を取出し発動。 やがてそれは師父の身体を覆う漆黒の鎧と変化した。 「そ。それが‥‥師父の『北斗星君』?」 「名を『貪狼』。俺の肉体の一部であり、装甲であり、呪符帯でもある」 と呟く。 「す、すげぇ‥‥」 ゴクッと喉が鳴る。 そして劫光はゆっくりと立上がると、再び特訓を続けていった。 ●そして 今回の特訓において、幾つかの成果は出はじめている。 ・三笠は『天地陰陽戦陣・序』を張る事が可能となった。ただし、まだそこからの攻撃のタイミングが甘い ・絵梨乃は『酔仙人骨』の型を完成させる。但し、今はまだ紅老師との特訓を命じられている。まだまだ動きが甘いとの事 ・霜夜と神楽の二人は、とりあえず『剛体法』の基礎まで修得。ここからどう成長するか楽しみである。 ・赤マントは体内の龍を二匹まで解放、二つ分身を作り出すがどうにもまだ安定しない。 ・リエットは『気脈撃柱』の修得を完了。但し気の練りこみがまだ弱く、飛び道具としては不可能。まだ大地を媒介として発動するのみ、打撃としては使えない。 ・劫光は右手に作り出した『北斗星君・手甲』を最大4分持続可能。まだ『真名』を決めていない為安定していないのではという意見があり。 ・巴は他の7名との同時組み手を開始。結果として他の仲間たちのコンビネーションの不具合を感知、そこの調整に時間を裂く。 ということで今回の修練は終った。 それぞれ身につけた技をこれからどう伸ばすかが楽しみであろう。 ──Fin |